血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2015年6月3日水曜日

膠質反応について-1.総論-

【膠質反応とは】

血清アルブミンとガンマーグロブリンの増加を調べる検査です。

【膠質反応は何を調べる検査】

肝機能検査のスクリーニング検査として使用されます。

ガンマーグロブリンが増加すると、肝臓の線維化・慢性肝炎・肝硬変に病態が進展していることが疑われるために膠質反応を調べることにより病気の程度を調べられる検査です。

【どのようにして検査するのか】

検査前日の夕食の後は絶食し、翌日の空腹時に採血をし、血液を遠心分離し得られた血清成分に検査試薬を加え、その混濁する具合を調べます。

【血清とは】

血液を採取して、遠心分離すると試験管の底には血液が固まりその上層部に黄色い液体が得られます。

これが血清です。

生化学検査の多くはこの血清を用いて検査を行います。

【異常が見られたら】

膠質反応の検査だけでは、診断を確定できないので、GOT・GPT、γ-GTP、ALP、LDH、血清総たんぱく分画、γ-グロブリン、コレステロールなどの測定も行ない、肝臓の病気かどうかを確かめます。

【膠質反応の種類】

ZTT(Zinc sulfate Turbidity Test:硫酸亜鉛混濁試験)とTTT(Thymol Turbidity Test:チモール混濁試験)があります。

※次回からZTT及びTTTについて紹介します※

2015年5月16日土曜日

HIV感染による初期症状について

HIVに感染した時の初期症状についてよく質問されますので、臨床検査とは直接的には関係ありませんが紹介しておきます。

【いつ頃現れるのか】

HIVに感染してから通常2~6週以内に現れます。

【HIVに感染した人全てに現れるのか】

感染した人の約半数から2/3に、これらの症状が起こることがあります。

 全ての感染者にこのような症状が現れるとは限りませんし、全く症状の現れない人もあります。

【初期症状はどのくらい続くのか】


大部分が数日で治り消失しますが、2週間程度続くこともあります。

また症状の続く期間は人によりまちまちです。

【初期症状が収まった後に再度初期症状が出ることがあるのか】

HIVに感染して感染初期に出るから"初期症状"と言います。

初期症状が出て、消失した後に再度初期症状は出ることはありません。

【初期症状が出なければHIVに感染していないのか】

HIVに感染して初期症状が全く出ない人もありますし、出ても軽く気づかない人もあります。

初期症状は何もしなくて放置しておいても自然に消失しますから、初期症状が出ないからHIVに感染していないとは絶対に言えません。

【主な初期症状の一覧】


【初期症状でHIVの感染は判断できるのか】

上記の症状はHIVに感染していなくても他の感染症でも出ますから、これらの症状だけでHIVの感染の判断はできません。

※HIV感染の判断は、適切な時期に適切なHIV検査を受けないと分かりません※




2015年4月20日月曜日

HIV検査に応用されている検査手法について-7.セロディア・HIV-1/2について-

【セロディア・HIV-1/2とは】

HIV-1抗体およびHIV-2抗体検出用試薬です。

【販売メーカ】

富士レビオから販売されています。


【検査原理】

ゼラチンを粒型化した人工担体に不活化処理HIV-1抗原および不活化処理HIV-2抗原をそれぞれ吸着させ、これらの感作粒子が検体中のHIV-1抗体またはHIV-2抗体と反応し、凝集することを応用した粒子凝集反応法(PA法:Particle Agglutination Test)検査です。
【検出抗体】

ヒト血液中のHIV-1抗体とHIV-2抗体を区別して検出出来ます。

【特異性】

非常に高い特異性を有することからヒト血液中のHIV-1抗体とHIV-2抗体を区別して検出できます。

【非特異反応の出現率】

ゼラチン粒子に対して非特異的に反応をするヒトがいることから、0.03%以下の偽陽性反応が見られます。

【検出可能なグループとサブタイプ】

HIV-1の以下のタイプに対する抗体は全て検出可能

グループM(サブタイプA~H)

グループ0

グループN

HIV-2のサブタイプA~Gに対する抗体は検出可能

【日本での普及率】

HIV抗体スクリーニング検査で陽性となった場合、HIV-1抗体とHIV-2抗体のどちらを有するかを検査して、HIV-1またはHIV-2の感染であることを区別する目的で利用されている。

【判定基準】

・陽 性 

未感作粒子の反応像の読みが(-)で、HIV-1感作粒子またはHIV-2感作粒子の反応像の読みが(+)以上を示すものを陽性と判定。

・陰 性 

未感作粒子の反応像の読みが(-)で、HIV-1感作粒子またはHIV-2感作粒子の反応像の読みが(-)を示すものを陽性と判定。

・判定保留

未感作粒子の反応像の読みが(-)で、HIV-1感作粒子またはHIV-2感作粒子の反応像の読みが(±)を示すものを判定保留判定。

・非特異反応

未感作粒子の反応像の読みが(+)で、HIV-1感作粒子またはHIV-2感作粒子の反応像の読みが(+)又は(-)を示すものを非特異反応として判定保留判定。

※判定保留又は非特異反応の場合は、再度検査を実施する※

【結果判定】

1.HIV-1感作粒子とHIV-2感作粒子が共に陽性:HIV-1とHIV-2の感染。

2.HIV-1感作粒子のみが陽性:HIV-1の感染。

3.HIV-2感作粒子陽性:とHIV-2の感染。

4.HIV-1感作粒子とHIV-2感作粒子が共に陰性:HIV-1とHIV-2の感染は無し。

※HIV-1とHIV-2陽性の確認は、ウエスタンブロット法などの異なる専用試薬で再検査を実施する※

【利用上の注意】

セロディア・HIV-1/2は、HIV-1とHIV-2の感染を区別する検査ですから、HIV抗体のスクリーニング検査としては利用できません。

あくまでもHIV抗体のスクリーニング検査で陽性となった場合に初めて使用して、HIV-1とHIV-2のいずれかに感染しているかを判断するために使用する検査法です。

2015年4月9日木曜日

HIV検査に応用されている検査手法について-6.もうひとつのリアルタイムPCR検査 アキュジーン m-HIV-1について-

HIV検査のPCR検査は、リアルタイムPCR検査がよく知られていますが、現在わが国で
実施されているもう一つのPCR検査の"アキュジーン m-HIV-1"について解説してみます。

【アキュジーン m-HIV-1とは】

HIV-1 RNAを定量的に検出するRT-PCR法(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)を用いた検査です。

【販売メーカ】

アボット社が販売しています。

【最小検出感度】

検体量0.6ml→40コピー/ml

検体量0.5ml→75コピー/ml

検体量0.2ml→150コピー/ml

【測定範囲】

40コピー/ml~10の7乗コピー/ml

【特異性】

100%

【非特異反応の出現率】

おそらく0%

【検出可能なグループとサブタイプ】

HIV-1の以下のタイプは全て検出可能

グループM(サブタイプA~H)

グループ0

グループN

※HIV-2は検出できない※

【HIV-1 グループPは検出可能なのか】

メーカはグループPでの検出検討をしていないのでコメントできないとの回答

現実グループPで検査を行わないと検出出来るか否かは不明です。

【検査はどのようにするのか】

アボット社のAbbott m2000rtアナライザーを使用して全自動で検査を行います。

【アキュジーン m-HIV-1はリアルタイムPCR検査なのか?】

リアルタイムPCR検査です。

【TaqMan HIV-1「オート」の比較】

感度、特異性、検出可能なHIV-1はTaqMan HIV-1「オート」と同じ。

【日本での普及率】

日本国内では、TaqMan HIV-1「オート」が先行販売されたことから、後発販売となったアキュジーン m-HIV-1の普及率は低いのが現状です。


2015年3月30日月曜日

HIV検査に応用されている検査手法について-5.日本におけるHIV抗原抗体検査について-

【HIV抗原抗体検査とは】

第四世代のHIV抗原抗体検査のことです。

【HIV抗原抗体検査とは】

HIV-1の抗原の一部であるp24を検出できる特徴があり、尚且つHIV-1/2の抗体をも検出できる検査法です。

しかし、HIV-2の抗原は検出できません。

【何処で検査が受けられるのか】

医院やクリニックから検査を受ける検査専門の会社では、第三世代の抗体検査から全て第四世代の抗原抗体検査に切り替えられています。

大都市の保健所の一部でも採用されていますが、ほとんどの保健所では受けることは出来ません。

大学病院や大手の病院では、検査室で実施している場合が多いです。

【適切な受ける時期は】

不安な行為から30~50日前後(30日で検出可能)でHIV-1の抗原であるp24を検出出来ますが、HIV-1/2の抗体は不安な行為から12週で検出できます。


【現在使用されている第四世代HIV抗原抗体検査キット】




【キットについての解説】

1.アーキテクト Ag/Ab コンボアッセイ・ダイナパック

被検検体にアクリジニウム・エステルを標識した抗体と固相化抗体を反応させサンドイッチ法により測定する検査であるCLIA(Chemiluminescent Immunoassay:化学発光免疫測定法)を利用した検査法です。

2.アキシム HIV Ag/Ab コンボアッセイ・ダイナパック

被検検体にアクリジニウム・エステルを標識した抗体と固相化抗体を反応させサンドイッチ法により測定する検査であるCLIA(Chemiluminescent Immunoassay:化学発光免疫測定法)を利用した検査法です。

3.ジェンスクリーン HIV Ag-Ab

電解反応により生成されるエネルギーによりルテニウムピリジン錯体を励起して発光させる化学発光法の一種であるECLIA(Electro Chemiluminescent Immunoassay:電気化学発光免疫測定法)を利用した検査法です。

4.エンザイグノスト HIV インテグラ

電解反応により生成されるエネルギーによりルテニウムピリジン錯体を励起して発光させる化学発光法の一種であるECLIA(Electro Chemiluminescent Immunoassay:電気化学発光免疫測定法)を利用した検査法です。

5.バイダスアッセイキット HIV DUO Ⅱ

蛍光基質を用いた酵素免疫測定法であるELFA (Enzyme Linked FluorescentAssay:) 法を採用し、ツーステップサンドイッチ法により検体中の抗原と抗体を検出
します。

6.エクルーシス試薬 HIV combi

試薬の反応により、複合体が形成させこの複合体を磁力で集磁した後に洗浄を行い、未反応物を除去後、発光試薬を添加し発光量を測定するECLIA(Electrochemiluminescence Immunoassay:電気化学発光イムノアッセイ)を利用した検査法です。

7.ルミパルス HIV Ag/Ab

被検検体にアクリジニウム・エステルを標識した抗体と固相化抗体を反応させサンドイッチ法により測定する検査であるCLIA(Chemiluminescent Immunoassay:化学発光免疫測定法)を利用した検査法です。

8.ルミパルスプレスト HIV Ag/Ab

被検検体にアクリジニウム・エステルを標識した抗体と固相化抗体を反応させサンドイッチ法により測定する検査であるCLIA(Chemiluminescent Immunoassay:化学発光免疫測定法)を利用した検査法です。

9.HISCL HIV Ag+Ab試薬

被検検体にアクリジニウム・エステルを標識した抗体と固相化抗体を反応させサンドイッチ法により測定する検査であるCLIA(Chemiluminescent Immunoassay:化学発光免疫測定法)を利用した検査法です。

10.エスプライン HIV Ag/Ab

イムノクロマト法を応用した迅速抗原抗体検査です。

日本においては迅速抗原抗体検査はこれ一種類しか存在しません。

※発売当初、血液中に多量のHIV-2抗体が存在すると見逃す危険性が専門家により指摘されことから、メーカは自主回収し改良を行い現在のキットは見逃す危険性はありません※
【自動分析装置とは】

1~9の検査は、自動分析装置で検査を行います。

それぞれのメーカが独自に自動分析装置を販売していますので、この自動分析装置を使用して自動で検査を行います。

2015年3月14日土曜日

HIV検査に応用されている検査手法について-4.日本におけるHIV抗体検査について-

現在は、第一世代及び第二世代のHIV抗体検査キットは何処のメーカも製造販売していません。

従って現在日本で使用されているHIV抗体検査は、第三世代のHIV抗体検査です。

以下に現在保健所及び医療機関で使用されている第三世代のHIV抗体検査を紹介しておきます。

現在使用されている第三世代HIV抗体検査キット






【キットについての解説】

1.ダイナスクリーン HIV-1/2

迅速抗体検査または即日抗体検査と呼ばれている検査で、迅速HIV抗体検査はわが国ではこれ一種類しかありません。

以前はダイナボットが製造・販売していましたが現在は、製造はダイナボットで、販売はアリーアメデイカルがしています。

2.ルミパルス オーソ HIV-1/2

エライサ法の一種のCLIA(Clinical Laboratory Improvement Amendments:化学発光免疫測定法 )を利用した検査法です。

3.ルミバルスプレスト オーソ HIV-1/2

エライサ法の一種のCLIA(Clinical Laboratory Improvement Amendments:化学発光免疫測定法 )を利用した検査法です。

4.ジェネディア HIV-1/2ミックスPA

ゼラチン粒子を単体にし、この単体にHIVの抗原成分を吸着させこのゼラチン粒子の凝集を利用した検査法です。

PA法とは、Particle agglutination method (ゼラチン粒子凝集法)のことです。

5.ケミルミ Centaur  HIV-1,2抗体

エライサ法の一種のCLIA(Clinical Laboratory Improvement Amendments:化学発光免疫測定法 )を利用した検査法です。

6.ビトロス HIV-1/2抗体

エライサ法の一種のCLIA(Clinical Laboratory Improvement Amendments:化学発光免疫測定法 )を利用した検査法です。

7.ランリーム HIV-1/2 抗体

ラテックス粒子の表面にHIVの抗原を吸着させ、検体中のHIV抗体と抗原抗体反応をさせて、その生成物による濃度を吸光度としてとらえ、既知濃度の標準物質から得た標準曲線から検体中のHIV抗体の濃度を測定する方法です。

8.HISCL HIV ab試薬

エライサ法の一種のCLIA(Clinical Laboratory Improvement Amendments:化学発光免疫測定法 )を利用した検査法です。

※ 1~8の検査は、不安な行為から12週以降に受ければ信頼できる結果が得られます。

※ 1,4の検査は、肉眼で判定します。

※ 2,3,5~8の検査は、自動分析装置で検査を行います。


2015年3月2日月曜日

HIV検査に応用されている検査手法について-3.第三世代抗体検査(2)-

(2)PA法

【PA法とは】

PA法というHIV検査のは日本の富士レビオが開発した検査法です。

PA法とはゼラチン粒子凝集法のことで、Particle Agglutinationの頭文字のPAを取って命名されています。

【測定原理】

ゼラチンを粒型化した人工担体にリコンビナントHIV抗原(HIV-1/gp41、HIV-1/p24、HIV-2/gp36)を吸着させたもので、この感作粒子が検体中の抗HIV-1抗体または抗HIV-2抗体と反応し、凝集することを応用した粒子凝集反応試薬です。

HIVの抗原を吸着させたゼラチン粒子に血清を加えて一定時間静置して、ゼラチン粒子の凝集の有無を肉眼で判定します。

【検査方法】

マイクロプレートで血清を4倍・8倍・16倍と希釈し、8倍の所に未感作粒子(ゼラチン粒子のみでHIV抗原は吸着させていない)を、16倍の所に感作粒子(HIV抗原を吸着させたゼラチン粒子)を滴下してよく混和し、2時間静置します。

【測定結果の判定法】

血清中にHIV抗体が存在しなければ、ゼラチン粒子は一点に集中しますが、HIV抗体が存在すればゼラチン粒子は円形に広がります。

【反応像の読み】

(-):ゼラチン粒子がボタン状に集まり、外周縁が均等でなめらかな円形を示す。

(±):ゼラチン粒子が小さなリングを形成し、外周縁が均等でなめらかなもの。

(+):ゼラチン粒子リングが明らかに大きく、その外周縁が不均等で荒く、周辺に凝集の見られる。
(++)凝集が均一に起こり、凝集粒子が底全体に膜状に広がっているもの。

【判定基準】

陽性:未感作粒子に凝集なしで感作粒子に(+)~(++)の凝集が見られる。

陰性:未感作粒子と感作粒子共に凝集が見られない。

判定保留:未感作粒子に凝集なしで感作粒子に(±)の凝集が見られる。
この場合は再度検査を実施し直す。

再検査:未感作粒子と感作粒子共に(±)以上の凝集が見られる。
この場合は再度検査を実施し直す。

【判定の解釈】

陽性の場合は、HIV-1とHIV-2の何れの抗体が存在するかの判断はできません。

確認試験でHIV-1とHIV-2の何れの抗体があるかを検査し直します。

【偽陽性反応の出現率】

およそ0.3%と低いのが特徴です。

【検査の信頼性】

不安な行為から12週以降に受けて陽性となれば、HIVに感染している可能性が極めて高いです。

※陽性の場合は、必ず確認試験で本当の陽性か否かを調べる必要があります※