血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2013年8月26日月曜日

アレルギー検査について-3.特異的IgE検査-

Ⅰ型アレルギーはIgE依存型と呼ばれ、IgEが大きく関与しています。

体内に呼吸や飲食物の摂取、薬剤、注射、接触などによって異物(抗原)が入ってくると、それを防ぐために血清中にIgG、IgA、IgM、IgD、IgEなどの抗体ができますが、アレルギーに密接に関係する抗体はIgE抗体です。

体の中に出来たIgE抗体に、再び抗体のできるきっかけとなった抗原が入ってくると、急激に反応し、発疹、発熱、鼻汁、涙、かゆみ、ショックなどのアレルギー性疾患を引き起こします。

特異的IgEはアレルギーを引き起こす原因物質(アレルゲン)を特定するための検査です。

【検査方法】

血液を使い酵素免疫測定法の一種であるFEIA法(Fluorescence-Enzyme Immunoassay)で検査します。

【基準値】

特異的IgE抗体の正常値は健常者で0.34 UA/ml以下です。

抗体のある場合、0.35~100までの数値で示します。

これをRAST値と云います。

そして0.35~100までの間を1~6までの6段階に分類します。

これをRASTスコアと言います。

RASTスコアの数値が高いほど抗体が多いことを意味します。

【判定】



クラス1は疑陽性つまりアレルゲンである疑い、クラス2以上は陽性つまりアレルゲンの可能性が高い、クラス4以上は強陽性で大部分の患者さんがアレルギー反応を示すといわれています。

※IgE抗体が証明されてもアレルギー症状が認められない人もいます※

また、クラスの上昇はアレルギーの悪化を意味し、減少は改善を意味します。

次回は特異IgE抗体検査の検査項目について解説いたします。

2013年8月19日月曜日

アレルギー検査について-2.好酸球検査-

好酸球は本来、寄生虫による感染症で増加する白血の一種ですが、肥満細胞や好塩基球のヒスタミン遊離を抑制する作用をもち、アレルギー疾患で血中に増加することが知られています。

従って体にアレルギー反応が出ると増加します。

ただし好酸球が増加してもアレルギー性疾患とも必ずしも言えませんが、アレルギー性疾患に増える場合が多いのでアレルギー性疾患の指標にはなります。

特にアトピー性アレルギーの場合に好酸球は著明に増加します。

好酸球増多はアレルギー反応が起きた後30分ぐらいからはじまり、数時間でピークとなり以後減少していきますので、発作直後に出る水性鼻汁には好酸球は少なく、その後水粘性になった鼻汁中に多くなります。

特にアレルギー性鼻炎では、血液中より鼻粘膜での増加が顕著となります。

【検査方法】

顕微鏡を用いて鼻汁中の好酸球の数を調べます。

【判定】

全視野で1個でもあれば陽性とし、割合によって(1+)~(3+)で表します。

アレルギーの約90%は陽性となります。

非アレルギーでの陽性は1~2%と少ないことから、アレルギー性か否かの判断の指標となります。

好酸球は正常の人では鼻汁の中には認められません。

※好酸球検査は鼻アレルギーの検査としては大変重要な検査です※

2013年8月12日月曜日

アレルギー検査について-1.はじめに-

今回は、アレルギーの検査に関して簡単明瞭に解説してみます。

血液の中には"IgE"と呼ばれる免疫グロブリンが含まれています。

この"IgE"がアレルギーを引き起こす源であると知られていることから、アレルギー検査といえば一番に血液中の"IgE"の量を測定することになります。

この"IgE"はいろいろの外界の物質に対して反応する"IgE"が存在します。

そのためにどの物質に対する"IgE"かということを調べるために、IgE-RAST検査があります。

このIgE-RAST検査は、どの物質に反応する"IgE"が血液中に存在するかを調べることが可能となっています。

医者が皆さんに、「アレルギーの検査をやってみましょうか?」と言うときは大体はこの血液中の"IgE"量の測定と個別の物質に対するIgE-RAST検査の2種類を指します。

ここで注意しなければいけないことは、

もしも皆さんが、アレルギー性の疾患と言われている病気になったとしてこの検査を受けて、例えば卵に陽性の反応が出たとしても、あなたの病気の原因が卵だと言うことにはなりません。

その理由としては、『あなたの血液の中には卵に強く反応する"IgE"という免疫グロブリンがありますよ』、ということを言っているだけなのです。

病気と卵が関係しているということを意味しているのではないのです!!

中には卵を食べて調子が悪くなる、というのならそれは卵が関係あるのかも知れませんが。

アレルギー検査を受けるのは、自分で今の自分の事は知っておいたほうがいいと思う時です。

次回からアレルギー検査それぞれについて解説していきます。

2013年8月5日月曜日

糖尿病検査-各種糖尿病検査の違いとは-

今まで解説してきた、HbA1c、1,5-AG及びグリコアルブミンの大きな違いは何でしょう。

一言に言って血糖のコントロール状態を把握できる期間が異なるということに尽きます。

1.HbA1c:採血前の約1~2カ月間の血糖のコントロール状態を把握。

2.1,5-AG:採血前の直近数日間の血糖のコントロール状態を把握。

3.グリコアルブミン:採血前の直近約2週間の血糖のコントロール状態を把握。

今までに紹介した3項目の検査の持つ特徴を知った上で使い分けることにより血糖のコントロール状態をより適切に把握することができることになります。

前回までの解説を再度お読みいただければ幸いです。

2013年7月29日月曜日

糖尿病検査-グリコアルブミン検査-

【グリコアルブミンとは】

血清中のタンパクの一種のアルブミンとブドウ糖が結合したものをグリコアルブミンといいます

グリコアルブミンの半減期がHbA1cの半減期の約半分であることから、血糖のコントロール状態をより早く敏感にとらえることが出来ます。

即ちグリコアルブミンの場合、HbA1cではわからない直近約2週間の血糖コントロール状態を把握できることから、経口血糖降下薬の投与やインスリン治療を開始して間もない患者の治療効果を知ることができます。

【グリコアルブミンを調べると何がわかるのか】

血液の中を流れている間に徐々に糖と結合してできるため、グリコアルブミンを測定することによって、直近約2週間の血糖値のコントロール状態を知ることができます。

グリコアルブミンは、血糖値がより高く、血糖値の高い状態がより長く続くほど増えていくことから、糖尿病で血糖値の高い状態が続くほどグリコアルブミンの検査値は高くなります。

一般的にグリコアルブミンは、HbA1cを約3倍した値となるといわれています。

【事例】

HbA1cが5.0%なら、グリコアルブミンは約15%。

【基準値】

11~16%

※測定法の違いから医療機関によって基準値が異なる場合もあります※

【検査結果の解釈】

高 値 糖尿病、甲状腺機能低下症

低 値 ネフローゼ症候群、甲状腺機能亢進症、肝硬変

2013年7月22日月曜日

糖尿病検査-1,5-AG(1.5アンヒドログルシトール)検査-

【1,5-AG(1.5アンヒドログルシトール)とは】

1,5-AG(1.5アンヒドログルシトール)とは、血液中にブドウ糖に次いで多く含まれる糖で、多くの食物中に含まれていますが、栄養素としての役割はなく、尿糖と一緒に排泄されます。

血液中の1,5-AGは、尿糖が出るほど減少していくことから、数値が低いほど血糖コントロールが悪いと言えます。

【血糖コントロールの指標となる1,5-AG】

1,5AGは、腎臓の糸球体で濾過されますが、そのほとんどが尿細管で再吸収され、1日の尿中排泄と経口摂取量がほぼ均衡するため、血液中の濃度はほぼ一定しています。

糖尿病などで尿糖が増加すると、尿中への排泄が増加し血中濃度は低下し、このため、軽症糖尿病の過去数日間の血糖コントロールの指標として利用されています。

【1,5-AGを調べると何がわかるのか】

血糖が高くなれば、血液中の1,5-AGは低くなり、血糖が下がれば1,5A-Gは血中で増加するなど、軽微な血糖改善や、軽度の悪化を確実に捉えることが可能となります。

1,5-AGの値を調べれば、その時点での血糖のコントロール状態が明らかになりますので、糖尿病の治療効果、薬の増減、その経過観察に欠かせない検査となっています。

フルクトサミンやグリコヘモグロビン検査では、月や週単位での血糖コントロール状態がわかりますが、この1,5-AGは前日の状態までリアルタイムに把握可能となります。

尚且つ食事が検査に影響を与えることももありません。

【基準値】

男性:15~45μg/ml

女性:12~29μg/ml

【検査結果の解釈】

男女とも13μg/ml以下になると、血糖のコントロール状態が不十分と判断されます。

※1,5‐AGは血糖変動の把握に優れている反面、血糖コントロールが非常に悪い場合には検査結果の差が少なくなるため、病状の評価がしにくくなります※

【注意】

漢方薬の人参養栄湯や加味帰脾湯、葛根湯、小紫胡湯、大紫胡湯などには多量の1,5‐AGが含まれているため、これらを服用していると糖尿病のコントロールとは無関係に影響を受けて高値となる場合があるので注意が必要です。

2013年7月15日月曜日

糖尿病検査-ヘモグロビンA1c検査-

【ヘモグロビンA1cとは】

ヘモグロビン(Hb)とは、赤血球に含まれているタンパク質の一種で、酸素と結合して酸素を全身に送る役目を果たしています。

更にヘモグロビン(Hb)は、血液中のブドウ糖と結合するという性質をも有しています。
ブドウ糖と結合した物の一部分が、ヘモグロビンA1c(HbA1c)と呼ばれます。

血液中に余分のブドウ糖があって、高血糖状態が長く続くとヘモグロビンとブドウ糖は、どんどん結合していきます。

即ちこのヘモグロビンA1cの値が高ければ高いほど多くのブドウ糖が余分に血液中にあって、ヘモグロビンと結合していることになりま。

ヘモグロビンA1cは一度作られると、赤血球が死滅するまでは血液中から消滅しません。

赤血球の寿命は120日ほどであり、この半分くらいにあたる時期の血糖値の平均を反映します。

従ってヘモグロビンA1cの値は、過去1ヶ月~2ヶ月の、血糖状態を表すので、血糖値よりも正確な血糖状態を知ることができます。

【ヘモグロビンA1cを調べる理由】

血糖値は検査前の食事や飲酒、それに検査をする時間によって変動するのに対し、ヘモグロビンA1cはそれらにほとんど影響を受けないという特徴があるからです。

【ヘモグロビンA1cの検査方法】

血液をHPLC法(高速液体クロマトグラフィ法)や免疫学的法で検査を行います。

※検査当日の食事制限必要ありません※

【ヘモグロビンA1cの単位】

2012年4月1日より、日本糖尿病学会では一般的な診療におけるヘモグロビンA1cの数値を、国際標準値(NGSP値)と併せて表記します。

これまで使用していたJDS値よりおよそ0.4%高くなります。

【JDS】=Japan Diabetes Society(日本糖尿病学会値)

【NGSP】=National Glycohemoglobin Standardization Program(国際標準値)

【ヘモグロビンA1cのコントロールの評価とその範囲】


※国際標準値の(NGSP)が6.5%以上の場合糖尿病が強く疑われます※