血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2013年5月6日月曜日

尿検査-No.7 ウロビリノーゲン-


尿中のスクリーニング検査は、テステープ(試験紙法)による定性法で実施されます。

尿に専用のテステープを浸し、色の変化で判定します。

尿中ウロビリノーゲンは、肝臓や胆のうの機能の異常を診断する尿検査の一種です。

ウロビリノーゲンは、古くなった赤血球が肝臓で分解されてできるビルビリンという成分が胆汁となり腸に排出され、そこで腸内細菌により分解されたものです。

ウロビリノーゲンは、腸から少量吸収され、肝臓でビリルビンとなりますが、すべてがビリルビンとはならず、一部は腎臓から尿中へ排泄されます。

従って健康な人でも微量のウロビリノーゲンが尿中に検出されるのが普通で、多く検出される或いは検出されない場合は異常と判断します。

【便秘・下痢とウロビリノーゲンの関係】

頑固な便秘の場合、便が長時間腸内に停滞しているため、ウロビリノーゲンが吸収される量がふえるために、陽性を示すことがあります。

下痢の場合、腸内の内容物が留まっている時間が短くなり、腸内細菌によってウロビリノーゲンに変換されにくくなるため、陰性を示すことがあります。

【ウロビリノーゲンの生理的変動】

1.年齢による変動

新生児の場合、腸内細菌叢が未発達なためにビリルビンをウロビリノーゲンに変換できないために陰性となります。

2.日内変動

一般的にすべての人は、ウロビリノーゲンが尿中へ排泄される量には日内変動があり、夜間や午前中には排泄が少なく、午後に増加して午後2時~4時頃に排泄量がピークとなります。

【検査の目的】

1.尿のスクリーニング検査として

2.肝障害や胆道系疾患を疑う時

【基準値】

プラスマイナス (±)

※基準値は施設ごとで異なる場合があります※

【ウロビリノーゲンが異常値を示す病態】

1.陽性の場合

胆道が閉塞され、ビリルビンを含む胆汁が腸に排泄されないため陰性となります。

肝疾患(肝炎、肝硬変など)・溶血性貧血・心不全・腸閉塞・過度の便秘など

2.陰性の場合 

※テステープでは判定不能※

重度の肝障害によりウロビリノーゲンの前段階であるビリルビンが作られないため陰性となります。

胆石・胆管閉塞・腎機能障害(高度)・下痢・抗生剤の長期使用など

【検査時の注意事項】

ウロビリノーゲンは、放置しておくと酸化されてウロビリンに変化してしまうので、新鮮な尿で検査する必要があります。

陽性または陰性反応が出た場合は再検査・精密検査受ける必要があります。

2013年4月29日月曜日

尿検査-No.6尿糖検査-


尿糖とは、血液中の糖(ブドウ糖)が尿中に漏れ出てきたものです。

健康な人の場合、尿中にブドウ糖が漏れ出すのはほんのわずかです。

腎臓は、血液中のブドウ糖がかなり高値になっても、尿中に漏出させない仕組みになっています。

血糖値が160~180mg/dlを超えないと、糖は尿中には出てきませんが、糖尿病などで血糖値がこれ以上に高くなると、腎臓での糖の処理能力が限度を超えて尿中に糖が排泄されるようになります。

尿糖検査は糖尿病を見つけ出すスクリーニング検査として実施されますが、尿糖が陽性となっても必ずしも糖尿病とは言えません。

【尿糖の検査方法】

尿試験紙を尿で濡らしたときの変色の変化で判断する定性検査と、1日分の尿にどれくらいの糖が出ているかを測定する定量検査があります。

尿試験紙での定性検査で尿糖が出ていると認められた場合に定量検査が行なわれます。

【検査結果の判定】

尿中に糖が排泄されていなければ、尿試験紙による定性検査では陰性(-)となります。

定量検査でも、尿中の糖の量が1日1g以下なら基準範囲です。

副腎皮質ホルモンなどの服用や妊娠中などに陽性になることがあります。

【検査の注意】

検査当日の食事はいつもの通りで構いませんが飲酒は控えるべきです。

【基準値】

定性検査…陰性(-)

定量検査…1日1g以下

【尿糖検査が陽性の場合】

尿中に糖が排泄されていた場合、空腹時の血糖値や血中インスリン濃度の検査を行い、ブドウ糖負荷試験などを調べて総合的に診断します。

尿糖が陽性の場合約10%が糖尿病に移行する可能性がありますので、年に一度は検査を受けておくべきです。

また、腎性糖尿、甲状腺機能亢進症などのホルモン異常、クッシング症候群などが考えられますが、これも各種検査を実施して総合的に診断します。

2013年4月22日月曜日

尿検査-No.5尿蛋白検査.その2.正常蛋白③その他の原因蛋白-


異常がなくても一次的に尿中に蛋白が排泄されることは、前回と前々回に紹介した以外にもに多くありますから紹介しておきます。

①食餌性蛋白尿

大量の蛋白質を摂取した時に一時的に尿中に蛋白が排泄されます。

②運動性蛋白尿     

激しい運動後に一時的に尿中に蛋白が排泄されます。

③冷水浴後蛋白尿    

冷たい風呂などに入った後一時的に尿中に蛋白が排泄されます。

※①~③の場合再検査では陰性となる場合がほとんどで、問題はありません※


④妊娠、生理前、精液や膣分泌物の混入などによっても尿蛋白が陽性を示すことがあります。

【妊娠と尿蛋白】

妊娠すると尿の中に蛋白が排泄されやすくなります。

これは、妊娠すると腎臓の糸球体でろ過される血液量が増えるためで、腎血漿流量は妊娠前に比べ約30%、糸球体濾過量は約50%増加します、そのために糸球体に負担がかかることから尿へ蛋白が排泄されやすくなります。

【注 意】

妊娠中に尿蛋白が陽性となった場合は、妊娠中毒症や腎疾患の可能性もありますので注意が必要ですし、妊娠により腎盂や尿管が拡張することから、膀胱炎や腎盂腎炎などの尿路感染症に罹りやすくなり、その影響で尿の中に蛋白がでることがありますので、注意が必要です。

【お願い】

今後の記事作成の参考にさせて頂きますので、当ブログをお読みになりましたら、右サイド上部の『ブログ評価』を宜しくお願いいたします。




2013年4月15日月曜日

血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋: 尿検査-No.5尿蛋白検査.その2.正常蛋白②熱性蛋白尿-

血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋: 尿検査-No.5尿蛋白検査.その2.正常蛋白②熱性蛋白尿-: 発熱時に一時的に尿中に蛋白が排泄されますが、熱が下がると尿中への排泄が無くなり、尿中の尿蛋白は陰性となります。 発熱による蛋白尿ですから、熱が下がると蛋白尿も消える一過性のものですから心配はありません。


解熱後に再度尿検査を行い尿蛋白が陰性であれば、熱性蛋白尿と判断されます。

【注 意】

解熱後も尿蛋白が陽性の場合は、熱性蛋白尿ではなくほかの原因による尿中への蛋白の排泄によるものですから、精密検査の必要があります。

尿検査-No.5尿蛋白検査.その2.正常蛋白②熱性蛋白尿-


発熱時に一時的に尿中に蛋白が排泄されますが、熱が下がると尿中への排泄が無くなり、尿中の尿蛋白は陰性となります。

発熱による蛋白尿ですから、熱が下がると蛋白尿も消える一過性のものですから心配はありません。

解熱後に再度尿検査を行い尿蛋白が陰性であれば、熱性蛋白尿と判断されます。

【注 意】

解熱後も尿蛋白が陽性の場合は、熱性蛋白尿ではなくほかの原因による尿中への蛋白の排泄によるものですから、精密検査の必要があります。

2013年4月8日月曜日

尿検査-No.5尿蛋白検査.その2.正常蛋白①起立性蛋白尿-


腎臓やその他の器官が悪くなくても尿中に蛋白が排泄されることがあります。

これを、『生理蛋白』、『正常蛋白』、『良性蛋白』と呼びます。

今回は、『生理蛋白』のひとつの『起立性蛋白尿(別名 体位性蛋白尿)』について解説致します。


起立性蛋白尿とは、寝ていたり、横になっていたりして、直立していないときには尿中に蛋白は排泄されませんが、立っている時や、腰を曲げたりしている時に尿中に蛋白が排泄されます。

起立性蛋白尿は、10歳代の若年者に多くみられ、長期間持続する場合もありますが、予後は良好です。

【起立性蛋白尿の原因】


起立性蛋白尿は、腎臓の血管の尿をつくる部分である糸球体での腎臓の静脈が圧迫されて、うっ血を起こしそのために、尿中に蛋白が排泄されると考えられています。


【起立性蛋白尿の検査】

起立性体位によって尿中に蛋白が認められるが、横になることにより採取した尿中から蛋白が認められなければ、『起立性蛋白尿』と判断されます。

起床時尿で3日連続で蛋白が認められなければ、起立性蛋白尿と判断されます。

【起立性蛋白尿の対応】

起立していることにより、腎静脈が圧迫されて起こるものですから病的なものではありません。

小児などに多く背骨が曲がっていることから腎臓の血管が圧迫され、尿中に蛋白が排泄されますが、成長するに従い尿中への蛋白の排泄はなくなりますから心配はありません。

蛋白が大量に出ることはなく,顔や体がむくむ,尿の量が減ることもありません。

【注 意】

※起立性蛋白尿が成人以降に出現する可能性は低いので、病的な蛋白尿であるとの前提で臨む必要があります※

2013年4月1日月曜日

尿検査-No.5尿蛋白検査.その1.異常蛋白-


尿中に蛋白が存在するかを調べる検査です。

健常な人でも蛋白が尿に排泄されていることがありますが、テステープでの定性法で検査する場合では、陰性になるくらいの微量(150mg以下/日)です。

一般的には、アルブミンのような大きい蛋白は、腎臓の糸球体と呼ばれる濾過器を通過できないので、尿の中にはほとんど排出されません。

小さな蛋白の場合、糸球体を通過することができますが、糸球体より下部にある尿細管と呼ばれる器官で吸収されることから、これも尿の中にはほとんど排泄されません。

腎臓に障害が発生して、糸球体や尿細管に障害が起きると、蛋白を濾過・吸収する能力が低下するため、尿中に蛋白が排泄され尿蛋白が陽性となります。

【テステープによる尿蛋白陽性と定量との関係】

1+ : 尿蛋白が30~99mg/dl相当
2+ : 尿蛋白が100~299mg/dl相当
3+ : 尿蛋白が300~999mg/dl相当
4+ : 尿蛋白が1000~  mg/dl相当

※テステープの種類によって若干の違いが起こることがあります※


【基準値】

定性法 陰性(-)

定量法 20~120mg/日

※基準値は施設ごとで異なる場合があります※

【尿蛋白検査が陽性(高値)を示す】

腎臓より前の段階で異常があり、尿蛋白が陽性になるものを"腎前性"、腎臓に異常があるために陽性となるものを"腎性"、腎臓より後の臓器(例えば膀胱など)が影響して陽性となるものを"腎後性"と区別します。

1.腎前性蛋白尿

腎臓自体には異常がなく、腎臓以外の臓器の障害や感染症・悪性腫瘍などにより、血液中に低分子蛋白の増加がおこり、その結果、尿細管での蛋白の再吸収が追いつかなくなる病態で起こります。

【疑われる疾患】 多発性骨髄腫・溶血性貧血・膠原病・心不全など

2.腎性蛋白尿

腎臓の障害部位によって以下のふたつに分類されます。

1)糸球体性蛋白尿

糸球体は、血液をろ過する働きがあり、アルブミンのような大きな蛋白は通常、糸球体を通過することはできません。

しかし、糸球体に障害が起こると、アルブミンが糸球体を通過できるようになるため、蛋白が尿の中に通常時よりも多く出現します。

2)尿細管性蛋白尿

尿細管では通常、糸球体でのろ過作業によって通過してきた低分子の蛋白を体内に再吸収する働きがありますが、尿細管が障害を受けると、蛋白の再吸収ができなくなるため、蛋白が尿の中に通常時よりも多く出現します。

【疑われる疾患】 急性又は慢性腎炎・ネフローゼ症候群・アミロイド腎・カドミウム中毒・ビタミンD中毒など

3.腎後性蛋白尿

前立腺炎や膀胱炎、腎臓より下部の腫瘍などの影響により、血液や粘液などが尿に混入し、これらの影響で蛋白が尿の中に通常時よりも多く出現します。

【疑われる疾患】 膀胱炎・前立腺炎・腫瘍(膀胱、前立腺など)・膀胱や尿管結石など