血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2012年11月4日日曜日

HLA検査-4.HLAと強直性脊椎炎との関連性-


強直性脊椎炎とは、脊椎、仙腸関節、股関節や肩の関節などに炎症が起こるいくつかの病気をまとめて脊椎関節炎と呼びますが、強直性脊椎炎はその中の代表的な病気です。

強直性脊椎炎は、病状が進行すると脊椎の間に強直が起こるのが特徴です。

強直性脊椎炎の原因は、未だ明らかにはされていません。

強直性脊椎炎の患者は、白人では0.4%と多く、日本人では、0.0065%と低く中国・韓国人は、発生頻度が高いとされています。

また、男女比は12:1と男性に多く、発症年齢は、10歳~35歳です。


しかし、強直性脊椎炎はHLAのうち、ある特定の遺伝子型であるHLA-B27をもつ人が多いことが明らかにされています。

しかし、強直性脊椎炎の患者の中には、HLA-B27以外のHLA型を有する人もいること、病気を起こすのはHLA-B27をもつ人の中でも一部であることからして、HLA-B27だけが強直性脊椎炎を引き起こすとは言えません。

※HLA-B27を有する人、即ち強直性脊髄炎ではありません※

現実、強直性脊椎炎の人の90%がHLA-B27陽性であるという事実は間違いありません。

このことは、HLA-B27の頻度の多い国でも少ない国でも同様の結果がみられます。

強直性脊椎炎とHLA-B27の関連については、

1)HLA-B27自体が関与するという説

2)HLA-B27と極めて近くに存在するほかの遺伝子が原因とする説

二つの仮説がありましたが、近年では、種々の研究結果からHLA-B27自体が原因であるという説を強く支持されています。

現在では、HLA-B27 がどのようにして強直性脊椎炎を引き起こす原因になるのかということが研究の焦点になっています。

2012年10月28日日曜日

HLA検査-3.HLAと関節リウマチの関連性-


HLAタイプと関節リウマチの発生率に関連性があることが現在では明らかにされています。

ある種のHLAタイプを持つ人は、間接リウマチになりやすい傾向があります。

関節リウマチの患者を調べた結果では、患者のおよそ70%がHLAのDR4を持っていることが明らかにされています。

その結果として、HLAのDR4を持っている人が関節リウマチになる危険率は、HLAのDR4を持っていない人の4~5倍であり、症状も重度になりやすくなります。

関節リウマチの人全てがHLAのDR4を持っているのではなく、関節リウマチの人の60-70%くらいが持ち、健康な人でもおよそ40%がこの遺伝子を持っているといわれています。

HLAは関節リウマチを引き起こす決定要因というよりは、関節リウマチの遷延化や重症化に関与するとも考えられています。

現時点では、何故間接リュウマチになるかという原因は解明されていませんが、関節リウマチの発症には遺伝的因子と環境的因子が複雑に関与していると考えられています。

では、素朴な疑問として関節リウマチ患者の家系内に関節リウマチの人が多いのは何故でしょう?

関節リウマチを引き起こす遺伝因子の影響は、絶対的なものではなく発症に関わる関与は遺伝がおよそ30%人が多く存在しても当然のことと言えます。

【注意】

※HLAのDR4を保有している人は、必ず間接リユマチを発症するとは限りません。

2012年10月21日日曜日

HLA検査-2.HLAと病気との関係-


多くの研究者により、HLAとある種の病気とに関係があることが明らかにされています。

自分自身のHLAを知ることによって、どのような病気に、どの程度かかりやすいかがわかることがあります。

ただし、ある種の病気を発症させるマーカーとなるHLAをもつ人が必ずその病気を必ず発症するわけではありません。

自分のHLAを知ることによって日頃から体調に気を配り検診回数を増やすなどの自己管理で病気を防ぐことが可能となります。

ひとつ例を上げますと、Ⅰ型糖尿病に他人より4倍なりやすいHLAのB54、DQB1*04:01、DRB1*04:05などを持つ人は、日頃から食生活に気をつけて生活することにより、糖尿病を予防することも可能となります。

次回からは具体的な病気とHLAの関係を解説しいたします。

2012年10月16日火曜日

HLA検査-1.HLA検査とは-


HLAは1954年に白血球の血液型として発見されたことから、「Human Leukocyte Antigen」と命名されてその頭文字を取って一般的にHLAと呼ばれています。

日本語では、「ヒト白血球抗原」と訳されています。

HLAは発見当初は、白血球だけに存在すると考えられていましたが、ほぼすべての細胞と体液に分布していていることから、組織適合性抗原(ヒトの免疫に関わる重要な分子)として働いていることが明らかにされています。

一般には、HLAは臓器移植の時に調べられる検査しとして認識されています。

HLAもメンデルの遺伝の法則に従って遺伝しますから、遺伝子は父親と母親から受け継がれることになります。

人はHLAの遺伝子型ごとにふたつの型を有します。

その理由としては、父親と母親の型を1つずつ受け継いでいるからです。

両親から受け継いだ遺伝子の染色体は一対で、そのためにHLAも同様に両親から受け継いだふたつの型が一対となってひとつのセットを形成しています。

これを「HLAハプロタイプ」と呼びます。

HLAはA,B,C,DR,DQ,DPなど多くの抗原の組み合わせで構成され、さらにそれぞれが数十種類の異なるタイプ(アリル)をもち、ハプロタイプの組み合わせは、数万通り存在します。

※ハプロタイプは、生物がもっている単一の染色体上の遺伝的な構成(DNA配列)のことを言います。※

HLAはある種の疾患やHIV感染に関与していることが明らかになってきています。

次回からはこれらについて順次解説していきます。

2012年10月7日日曜日

性交行為感染症検査-15.ヒトパピローマウイルスタイピング(HPVタイピング)-その3.PapiPlex(TM)法-


HPVタイピング解析法:PapiPlex(TM法)

PapiPlex(TM)法は、株式会社ジェネティックラボで開発されたHPV解析法で、迅速・簡便なおかつ低コストで高い再現性を有する優れた検査です。

PapiPlex(TM)法の検出感度は、反応液中に100コピーのHPVゲノムDNAが存在すれば、16種類全ての型で検出・同定が可能です。

【同定可能なHPV型】

HPVの6、11、16、18、30、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、66の16種類が特異的に検出できます。

更に複数の型のHPVが感染していた場合でも各々の型について同定することもできます。

【保険点数】

2000点で、健康保険が適応となりますから、自己負担は3割で600点即ち6000円です。

※受診してこの検査を受けると検査代金以外に、初診料・検査管理料・採血料などが加算されます※

2012年9月30日日曜日

性交行為感染症検査-15.ヒトパピローマウイルスタイピング(HPVタイピング)-その2.検出可能なタイプとは-


HPV検査は、14種のHPVハイリスク型の中の一種でも感染が見られれば「陽性」となり、その後細胞診で定期的な追跡検査が行われます。

しかし、この検査では感染しているHPVの型別の判定や、尖圭コンジローマを起こす6型・11型の診断はできません。

感染しているHPVの型を調べるのがHPVタイピング検査です。

HPVタイピング検査は、子宮頸癌と関係が深いハイリスク型の中で、特に日本人と関係が深い14種類(16,18,31,33,35,39,45,51,52,53,56,58,59,68型)と、子宮頸癌とは直接関係はありませんが性行為感染症のひとつの尖圭コンジローマを引き起こす6,11型の感染の有無も調べることが可能です。

HPVは、およそ80%の人が一度は感染しますが、多くは自然に体内から消えていきます。

がんになるのは、体内から消えることなく持続的に感染が続いたごく一部の場合です。

男性が問題になるのは6型、11型の感染によるイボの発症ですが、尖圭コンジローマは感染してから、3週間~8ケ月(平均で3ケ月)しないと、イボが発現して来ません。

そのイボは、男性では亀頭周辺だけでなく陰裏、肛門周辺や外尿道口など、女性では外陰部、膣、子宮頚部、肛門周辺や外尿道口などに出来ます。

当然この検査は、女性だけでなく男性も受けることが可能です。

2012年9月23日日曜日

性交行為感染症検査-15.ヒトパピローマウイルスタイピング(HPVタイピング)-その1.検査の意義


HPVはヒトの皮膚、膣、口腔などに感染してイボをつくるウイルスです。

このウイルスの中には子宮頸がんを引き起こす型があり、それらを「ハイリスク型」呼び、14種類が知られています。

また、「ローリスク型」と呼ばれる6型、11型は尖圭コンジローマを引き起こしますが、これらは子宮頸がんとは関係ありません。


HPVは、現在100種類以上の遺伝子型が同定されています。

例えば、子宮頸癌からは16, 18, 31, 33, 35, 39,45, 51, 52, 56, 58, 59, 68, 82, 26,53,66の各型が証明されています。

HPVの6型、11型は尖圭コンジローマの原因です。これらは子宮頸がんとは関係ありません。

子宮頸がんを引き起こすHPVは、16型、18型がその代表で、16型が全体の過半数、HPV18型が約10%を占めています。

この「ハイリスク型」のHPVの感染があるかどうかを調べる検査をHPV検査と言いますが、このHPV検査では、「ハイリスク型」のどの型に感染しているのかは判断できません。

その為に、高度な技術を用いてHPVの遺伝子(DNA)の型を解析し、HPVの遺伝子型を調べる検査が「HPVタイピング検査」です。