血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2012年6月25日月曜日

性行為感染症検査-11.咽頭淋菌検査TMA法-


TMA法(Transcription Mediated Amplification )の特徴としては、


1.1回の検査で咽頭のクラミジアトラコマチス・淋菌の結果が同時に検査が可能。


2.他の遺伝子検査と比較して高い特異性(ニセの陽性反応が出にくい)を有して、咽頭検査に適している。



3.他の遺伝子検査法と比較して約1,000倍高感度で検出可能である。


4.口の中の非病原性の細菌との反応がほとんどないことから偽陽性反応の出現率が極めて低い。


これらのことから咽頭淋菌感染の検査としては、極めて優秀な検査法です。

咽頭淋菌検査に、PCR法を行うと偽陽性反応が出ることを婦人科、泌尿器科、性病科の医師に周知徹底されていないことと、喉の専門家の耳鼻咽喉科医も十分周知徹底されていないのが実情です。

誤った検査法を採用して、咽頭淋菌感染症でもないのに、咽頭淋菌感染症と診断され、不必要な治療を行われている患者もいることは確かです。

※咽頭淋菌陽性と診断されて、幾ら抗生物質を服用しても治らない場合は、間違った検査法による偽陽性反応の可能性もあります※

咽頭淋菌の検査を受けるときには、検査名を良く聞き、PCR検査でなく、SDA法かTMA法を受けることです。

2012年6月17日日曜日

性行為感染症検査-10.咽頭淋菌検査SDA法-


近年風俗店でのオーラルセックスにより、咽頭への淋菌感染が多く報告されています。

オーラルセックスで淋菌が喉に感染しても、ほとんど症状が出ることはなく、仮に症状が出てても一種の咽頭炎のような症状ですから、喉への淋菌感染を疑う人は殆どいないのが実情です。

その為に咽頭淋菌感染は、感染していることに気づくことなく、相手に感染させるという危険性を伴います。


咽頭の淋菌感染検査としては、培養検査やPCR法がありますが、口腔内の常在菌であるナイセリア属などを検出してしまい、感染ない人を誤って淋菌陽性(偽陽性反応)としてみなしてしまうことが多く起こります。

そのことから、咽頭淋菌検査は常在菌のナイセリア属と淋菌との鑑別が可能なSDA法を使用すべきです。


SDA法(Strand Displacement Amplification)は、BD社が独自に開発した核酸増幅検査法のことです。

4種類のプライマーとDNAポリメラーゼおよび制限酵素を利用してターゲットDNAを増幅しながら蛍光プローブによりリアルタイムに検出を行なうことで、検体中の目的の微生物DNAの有無を調べます。

SDA法は、口腔内の常在菌の口腔内ナイセリア属との交差性が極めて少ないため、咽頭検体での検査が可能です。

検査方法としては、スワブと呼ばれる綿棒で喉の奥を拭って検査します。


咽頭淋菌感染の検査は、PCR検査を用いるのではなく、SDA法またはTMA法で検査をする必要があります。

【注意】

本来、咽頭の淋菌検査は耳鼻咽喉科で受けるべきですが、耳鼻咽喉科の一部では検査を実施していない施設もあります。

最近では、泌尿器科、性病科でも咽頭の淋菌検査を積極的に実施しています。

検査を受けられる時は、事前に咽頭淋菌検査としてSDA法またはTMA法を実施しているかを事前に問い合わせて下さい。

間違ってもPCR検査による咽頭淋菌検査を受けてはいけません。

PCR法による淋菌検査は、性器感染に関しては優れた検査法ですが、咽頭淋菌検査ではニセの陽性反応が出て、咽頭に淋菌感染がなくても陽性となってしまいます。

※TMA法については、次回紹介致します※

2012年6月11日月曜日

性行為感染症検査-9.クラミジア抗体検査-


クラミジア感染症は、我が国においては性行為感染症の中で一番多く見られる感染症です。

クラミジア感染症の検査の中で血液で検査されるクラミジア抗体検査について解説してみます。

クラミジア抗体検査は、IgA、IgGの2つの抗体を検査します。

これら抗体の検査結果の解釈としては、クラミジアに感染した直後はIgA抗体、IgG抗体とも陰性ですが、少しするとIgA抗体が陽性になってからIgG抗体も陽性になります。

まとめますと、

クラミジア感染→IgA抗体産生→IgG抗体産生→そしてIgA抗体はIgG抗体が産生された後しばらくして消失という状態となります。

治療によってIgA抗体が陰性化し、最後にIgG抗体が陰性化しますが、陽性化、陰性化するまでの期間は個人差があり一概には言えません。

また、完治してもIgG抗体の陰性化は10年近くかかる場合もありますし、一生陰性化しない場合もあります。

一般的に保健所では、無料でクラミジア抗体検査をしています。

しかし、このクラミジア抗体検査が問題になることが多くあります。

クラミジアに感染するとクラミジアに対する感染抗体が身体の中に出来ます。

この感染抗体を調べるのがクラミジア抗体検査ですが、この検査はクラミジアそのものを見つける検査ではありません。

本来感染病原体のクラミジアその物を見つけてこそ感染していると言えますが、感染抗体があれば、即感染しているとはいえません。

特にクラミジア抗体検査は、特異性(信頼性)が低いことから、感染していないのに陽性(偽陽性)となることが多くあります。

従って、クラミジア抗体検査は信頼性が低くあまりお薦めできる検査ではありません。

問題となるのは、一度も性交渉していないにもかかわらずIgA抗体陽性、IgG抗体陰性という人もいますし、IgG抗体陽性という人もいます。

「保健所でクラミジア抗体陽性と言われた」人の中に上記のような人が多く見られ、実際にクラミジアに感染している人はそのなかで20~30%程度です。

その逆に実際にクラミジアに現在感染しているのにもかかわらず、クラミジア抗体検査では陰性(偽陰性)となることもあります。

この原因は、クラミジア感染抗体が出来ていない時期に検査を受けたことです。

クラミジアに感染して感染抗体が出来る時期は、かなりの個人差があり感染後、数週間で抗体が出来る人もいれば、3ヶ月たっても出来ない人も存在します。

従って、血液を採取して信頼性の低い抗体検査をおこなうより、感染の可能性がある粘膜(咽頭、子宮頸部、尿道、肛門など)から検体を採取し、その抗原(クラミジア)を調べるのが一番信頼出来る結果が得られます。

大切なことは、クラミジア抗体検査の結果はあくまでも”参考”と考えるべきで、抗体検査が陽性になっても必ずしも現在感染しているわけではないということと、陰性と出たからといって(特に危険な性交渉から時間がたっていないときは)100%安心できるわけではないことには注意すべきです。

現在一部の進歩的な保健所は、クラミジア抗体検査の不備を認めて抗原検査に移行しているようです。



2012年6月3日日曜日

性行為感染症検査-8.鼠径リンパ肉芽腫-


性行為感染症のひとつで、クラミジア・トラコマチスのL型によって引き起こされます。

性器や咽頭に感染するクラミジア感染症とは全く別の感染症です。

淋病、梅毒、軟性下疳以外のもうひとつの性病という意味で「第四性病」と呼ばれることもあります。

現在、鼠径リンパ肉芽腫は、日本ではほとんど見られず、主に発展途上国に多い病気ですが、海外での無防備な性行為で感染して帰ってくる人がいます。

鼠径リンパ肉芽腫の化膿疹のある部分によってはコンドームでの感染予防は出来ません。

鼠径リンパ肉芽腫は、感染してから1~4週間後に、男女ともに性器(男性は主に亀頭・包皮・前部尿道など、女性は主に外陰部・膣・子宮頚管など)に痛みを伴わない発疹が出来、発疹はやがて水泡になり、水泡が破れて潰瘍になります。

その後、鼠径リンパ腺(太股付け根のリンパ腺)が硬く腫れ上がり、次第に化膿して最終的には破裂して、そこから膿が流れ出てきます。

これを治療をせず1年以上経つと、直腸や肛門部のリンパ腺まで症状が広がり、男女ともに性器に象皮病のような症状が現れます。

【検査法】

感染するような行為をしなかったかどうかの問診後、専用の細い綿棒状の物で化膿している部分の分泌物を採取して、クラミジア抗原の有無を調べ検査が一番信頼出来る結果が得られます。

上記に記載したような症状が現れた時には、直ぐに皮膚科を受診することです。

抗生物質の服用で3~4週間で治癒します。

2012年5月29日火曜日

性行為感染症検査-7.性器ヘルペス検査


性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(HSV)が原因で発症する性行為感染症のひとつです。

従来は口唇周囲は1型単純ヘルペス、性器とその周囲は2型単純ヘルペスとされていましたが近年、オーラルセックスによって性器ヘルペスでも1型感染の割合が増加してきています。

昔のように、1型は口唇ヘルペス、2型は性器ヘルペスと分類することは出来なくなってきています。

【検査法】

通常用いられる補体結合反応や中和抗体検査等の血液で行う血清診断法では、幼少時に1型に感染している人は、陽性となってしまいますから、性器ヘルペスか否かの判断は出来ません。

初めて単純ヘルペスウイルスに感染した場合は、急性期と回復期のペア血清(2本の血清)で抗体検査を行い、有意の抗体上昇によって診断することが可能です。

単純ヘルペスウイルスは、同一個体において幼少期の1型感染、青年期以降の性器への1型及び、2型感染、再発による病変形成といった様々な病態を取り得るので、血液による抗体検査から1型感染2型感染の判断は出来ません。

従って、性行為やオーラルセックスの2~10日前後に以下のような症状があるときには、直ぐに皮膚科を受診することです。

・感染部位(ペニスや外陰部)に痛痒さを感じ患部が赤くなり、徐々に〝痒み〟や〝痛み〟が強くなります。

・男女とも患部に小さな水泡ができ、チクチクと痛みが伴います。

・水泡が破れると、ジクジクした状態になります

2012年5月20日日曜日

血液一般検査-番外編-CD4/CD8検査-


白血球には、T細胞(細胞性免疫に関与)、B細胞(液性免疫に関与、抗体を産生する) 、null細胞(T細胞でもB細胞でもない)があります。

このうちCD4陽性細胞は、B細胞の免疫グロブリン産生を補助し、CD8陽性細胞は免疫グロブリン産生を抑制します。

リンパ性の悪性腫瘍や免疫不全症では、T細胞とB細胞の比率、さらにCD4陽性細胞、CD8陽性細胞の比率が変わるため、診断や治療経過観察のためにこの検査は行われます。

CD4陽性細胞は、HIVが非常に結合しやすいために、HIV感染症ではHIVがCD4陽性細胞に感染し細胞を破壊することから、CD4が低値となります。

逆に成人T細胞性白血病(ATL)では、HTLV-1がCD4陽性細胞に感染しCD4陽性細胞が腫瘍化し増殖します。

検査方法としては、血中のT細胞とB細胞の比率を、それぞれの細胞に特異的なモノクローナル抗体により測定します。

【基準値】

CD4 25~56%
CD8 17~44%
CD4/CD8比 0.6~2.9

※基準値は、検査施設によって若干異なります※


【基準値より上昇】

1.CD4

・成人T細胞白血病、HHV-6感染

2.CD8

・EBウイルス感染症

【基準値より下降】

1.CD4

・HIV感染、特発性CD4陽性細胞減少症、先天性免疫不全症候群

2.CD8 

先天性免疫不全症候群

【HIV感染とCD4の数の関係】


※HIV感染すると、通常1年間に60~100個/μlずつ低下しますが、AIDSの発症が近づくと
低下速度が速くなる傾向が見られます。


※CD4陽性リンパ球数が少ないほどAIDSの発症が近いので、500個/μl以下となれば、抗HIV薬の予防投与を開始します。


※350個/μl以下となった場合には、積極的に抗HIV薬による治療を開始する必要があります。


※100個/μl以下になりますと、ほとんどがAIDSを発症してしまいます。

2012年5月13日日曜日

血液一般検査-7.血小板数-


血小板の数が減少したり、その機能が低下すると、出血が止まりにくくなります。

その為、軽く何かに身体を当てても内出血をして青あざができたり、けがをしても出血がなかなか止まらなかったり、鼻血が出やすい、歯肉から出血することが頻回に起こります。

貧血があって慢性出血が疑われるときには、必ず血小板数の検査は行なわれます。

逆に、血小板の数が余りにも多くなりすぎると、血液が固まりやすくなり、血液が固まってできた血栓が血管をふさいで、脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こす危険性が増大します。

血液1μl中の血小板数が10万以下で血小板減少症、40万以上で血小板増多症とされます。

10万以下になると血が止まりにくくなり、さらに5万を切ると自然に鼻血が出たり皮下出血が始まって皮膚に紫色の斑点が出たりします。

3万以下では腸内出血や血尿が起こります。

2万個以下になると頭蓋内出血を起こすなど生命も危険になります。

血小板が極端に増加している場合は、血栓症が引き起こされるのを予防するためワーファリンなどの薬剤を投与します。

※血小板の異常な増減には、重い病気が隠されていることが多いので、血液内科のある専門病院で精密検査を受けることをおすすめします。


【基準値】

13.0万~34万/μl

※自動血球計算機で測定しますから、使用する機種によって若干の変動があります。

【基準外】

Ⅰ.減少

1.軽度の減少 5~15万

・白血病、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、抗腫瘍化学療法後、薬剤性血小板
減少症、巨赤芽球性貧血、膠原病、脾機能亢進、肝硬変、ウイルス感染など。

2.中等度の減少 2~5万

・白血病、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、抗腫瘍化学療法後など。

3.高度の減少 2万以下

・白血病、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、抗腫瘍化学療法後など。

Ⅱ.増加

1.中等度の増加 40~80万

・慢性的な出血、鉄欠乏性貧血、術後、膵臓摘出、感染症、慢性骨髄性白血病など。

2.高度の増加 80万以上

・本態性血小板血症、慢性骨髄性白血病、真性多血症など。

2012年5月6日日曜日

血液一般検査-6.白血球分類検査-


白血球は、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球の5種類に分類することが出来ます。

白血球を染色してこれら5種類に分類する検査を白血球分類検査または、血液像と呼びます。

これら5種類の白血球は、身体が正常な状態のときはそれぞれの占める割合が一定範囲内に保たれていますが、身体になんらかの異常が発生すると比率に変化が現れます。

これら5種類の白血球の働きを簡単に説明しておきます。

1.好中球

白血球の半分以上を占め、外界から病原菌や異物が侵入すると増加して、病原菌や異物を食べて分解し生体に無害なものにします。

感染症に感染した時や炎症があるときに増加します。

2.リンパ球

免疫を司り、Tリンパ球とBリンパ球があり、病原菌が侵入した時に、その病原体に対する抗体を作って撲滅する働きをするとともに、侵入した病原体を記憶する働きを持っています。

ウイルス感染で増加します。

3.単球

マクロファージ(大食細胞)とも呼ばれ、病原菌や異物などを食べて生体に無毒なものにし、免疫抗体を作り出すことを促す働きをします。

4.好酸球

生体の防御反応に関与し、アレルギー性疾患に感染すると増加します。

寄生虫に感染すると増加します。


5.好塩基球

ヒスタミンやヘパリンなどの物質を含み、アレルギーや血管拡張などの作用に関与することから、細胞内の顆粒(ヒスタミン等)を放出し即時型アレルギーをおこします。

【基準値】

好中球 40~70%
リンパ球 20~45%
単球 3~7%
好酸球 0~5%
好塩基球 0~2%

※白血球分類は、自動血球計数機で自動的に分類されることから、使用機器の種類により基準値は若干異なることがあります。

【白血球増加の原因】

1.好中球

感染症、炎症、血液疾患及び膠原病など。

2.リンパ球

ウイルス感染症、リンパ性白血病など。

3.単球

感染症、悪性腫瘍、単球性白血病など。

4.好酸球

アレルギー疾患、寄生虫感染、慢性骨髄性白血病など。

5.好塩基球

慢性骨髄性白血病、粘液水腫など。

【白血球の減少】

1.好中球

ウイルス性肝炎、インフルエンザ、急性白血病など。

2.リンパ球

AIDS、再生不良性貧血など。

3.単球

細菌により血液中に毒素が分泌されて発症する内毒素血症など。

4.好酸球

感染症の感染初期など。

5.好塩基球

甲状腺中毒症、過敏症などの急性のアレルギー反応など。

2012年4月29日日曜日

血液一般検査-5.白血球数-


白血球は、身体の組織に侵入した細菌や異物を取り込み、消化・分解し無毒化します、更に身体の免疫機能を司ります。

そのことから、白血球が増加したり、減少したりするということは、身体のどこかに細菌・ウイルスなどの異物などが侵入した時や、身体の中の何処かで炎症を起こしていると考えられます。

白血球数が減少すると、免疫機能の低下から身体の抵抗力が衰えて感染症にかかりやすくなります。

3000個以下になると、感染症に罹りやすくなることから十分な感染症対策注意が必要となります。

特に1000個以下になると無菌室に入り、感染症に感染しないようにしなければなりません。

逆に2万個以上になった場合、慢性白血病や敗血症などの恐れがあります。

【基準値】

3,300~9,000個/μl

※自動血球測定器の機種によって若干の変動があります。

※白血球数は個人差が大きく、また同じ人でも朝は少なく、夜になれば増加する傾向があります。

そのため多少の変動はあまり気にする必要はありません。

【軽度~中等度の増加】 10000~50000

細菌による感染症、自己免疫疾患、重症の代謝異常(腎不全、肝不全など)、薬物中毒、白血病、骨髄増殖性疾患、妊娠、心理的ストレスなど。

【高度の増加】50000以上

白血病、骨髄増殖性疾患、重篤な感染症、悪性腫瘍の全身転移など。

【軽度から中等度の減少】 1000から3000

再生不良性貧血、ウイルス感染症、抗癌剤の投与、薬剤アレルギー、放射線治療、癌の骨髄転移、悪性貧血、脾機能亢進症など。

【高度の減少】1000以下

再生不良性貧血、抗癌剤の投与、薬剤アレルギー、放射線治療、癌の骨髄転移、悪性貧血、ウイルス感染症、AIDSなど。

※白血球の数だけでは、どの様な疾患に感染しているかわかりにくいことから、白血球の種類を調べる白血球分類検査を同時に行います。

※HIVに感染しても感染初期は、一過性に白血球数は軽度減少しますが、本来の数値に戻りますから、HIV感染を白血球数で判定することは出来ません。

※HIVに感染して数年が経過後、目に見えて白血球数が減少してきますが、これはHIVが白血球を破壊することに由来し、免疫機能を司る白血球が減少することによりやがて免疫不全に陥り、AIDSの発症が起こります。

白血球分類検査に関しては、次回紹介致します。

2012年4月22日日曜日

血液一般検査-4.赤血球恒数-


赤血球恒数とは、赤血球の大きさ、赤血球に含まれるヘモグロビンの量を調べる検査のことを言います。

この赤血球恒数には、以下の三種類があります。

1.MCV(平均赤血球容積):血中に含まれる赤血球の大きさを表す。

2.MCH(平均赤血球血色素量):血中に含まれる赤血球1個あたりのヘモグロビンの量を表す。

3.MCHC(平均赤血球血色素濃度):血中に含まれる赤血球1個あたりのヘモグロビン濃度を表す。

貧血になる疾患には、その病態によって特徴的な赤血球恒数の異常を示すものがありますから、赤血球恒数を調べることによって、「小球性低色素性貧血」、「正球性正色素性貧血」、「大球性高~正色素性貧血」の3つの型に分類して鑑別診断を進めることがてきます。

【赤血球恒数の計算方法】

1.MCV(平均赤血球容積)= ヘマトクリット値 / 赤血球数 × 1000 

※ヘマトクリット値、つまり容積を 赤血球数で割ったもので、赤血球の1個あたりの容積の平均値。
   
2.MCH(平均赤血球血色素量) = 血色素量 / 赤血球数 × 1000

※一定量の中の血色素量を、赤血球数で割ったもので、赤血球の1個あたりのヘモグロビン量の平均値。
   
3.MCHC(平均赤血球血色素濃度)= 血色素量 / ヘマトクリット値 × 100  

※個々の赤血球の容積に対する血色素量の比を%で表したもので血色素濃度の高低、すなわち低色素性、高色素性の程度を表す。

注:これらの計算は、自動血球計算機で血液検査を行うことにより、自動的に計算されます。

【基準値】

MCV  男性:84.9~99.6   女性:80.6~98.7  (fl )
MCH  男性:27.5~32.3   女性:25.0~31.9  (pg)
MCHC  男性:31.2~33.8   女性:30.3~33.4  (g/dl)

※使用する自動血球計算機の種類により若干数値が変動します。

基準値を外れた場合

・MCV:79fl以下、MCHC30%以下の場合

小球性低色素性貧血で、鉄欠乏性貧血、鉄芽球性貧血、セラセミアの疑い。

・MCV:80~100fl、MCHC31~35%の場合

赤血球とヘモグロビン数に異常がない貧血で、溶血性貧血、急性出血、腎性貧血、再生不良性貧血などの疑い。

・MCV:101fl以上、MCHC31~35%の場合

大球性貧血で、巨赤芽球性貧血、腎性貧血の疑い。

2012年4月15日日曜日

血液一般検査-3.ヘモグロビン量及びヘマトクリット値


1)ヘモグロビン量(Hb)

ヘモグロビンは赤血球に含まれ、酸素を運搬する働きをすることから、この量が低下すると貧血となります。

反対にヘモグロビン量の増加は赤血球の増加に伴って見られます。

【基準値】

男性 13.8-16.6g/dL

女性 11.3-15.5g/dL

減りすぎている場合

・鉄欠乏性貧血:鉄分の不足による貧血で特に若い女性に多くみられます。

・病気や傷口からの出血が原因の貧血:痔、胃潰瘍、子宮筋腫など、日々気付かないほどの少量の出血でも、長期に続くと貧血になります。

・悪性貧血:ビタミンB12の不足。

・再生不良性貧血:骨髄の造血機能の低下。

・溶血性貧血:赤血球の寿命が短くなって、骨髄での赤血球の製造が間に合わない。

増えすぎている場合

・激しい運動後など身体が脱水状態の場合、循環血漿量が減少するため、見かけ上高値となります。

・高地居住者の場合、酸素濃度が少なく、その状況下で体内に酸素を必要量取り込む必要があるために高値となります。

・喫煙者では高値を示すことがあります。

2)ヘマトクリット値(Ht)

血液中に占める血球の割合を示します。

貧血があるとヘマトクリット値は低下し、多血症では増加します。

【基準値】

男性 40~52%

女性 35~47%

減りすぎている場合

・貧血:大部分は女性に多い鉄欠乏性貧血、悪性貧血、再生不良性貧血、白血病やがんの転移による貧血です。


増えすぎている場合

・脱水症状:全身の衰弱がひどく、飲食物を口からとれない、日射病、熱射病など。

・多血症:赤血球が徐々に増え、白血球や血小板も増えてくる。

※赤血球数やヘモグロビン量の検査結果を加味して赤血球恒数(次回解説予定)を求めれれば、貧血の種類や性質をおおよそ診断することができます。

※ヘモグロビン量とヘマトクリット値は、現在では自動血球計算機で赤血球数とともに自動的に測定されます。

※使用する自動血球計算機の機種によって基準値は若干異なります。

2012年4月8日日曜日

血液一般検査-2.赤血球数-


赤血球はヘモグロビン(血色素)を主成分として出来ています。

ヘモグロビンは、肺から取り込まれた酸素と結合して身体の各細胞に酸素を運び、同時に不要になった炭酸ガスを肺に運ぶ働きをしています。

赤血球の数を調べることにより、赤血球数が少ない病気や赤血球数が多すぎる病気が分かります。

赤血球の数が少ないと、全身運搬される酸素量が減少し、立ちくらみを起こしたり、血液を早く全身に運び酸素の運搬量を増やそうとすることから、脈が速くなったり、動悸、息切れといった貧血症状を起こします。

また、赤血球の数が多すぎる場合は、赤血球の数そのものは正常ですが脱水などで血液中の液体成分が減って相対的に赤血球の濃度が高くなっている場合は、水分を補給すれば問題ありません。

赤血球数そのものが増えている場合は、心臓や肺の病気で不足しがちになる場合の酸素供給を補うために増える二次性多血症と、病気のために赤血球が多く作られる真性多血症があります。

真性多血症は注意が必要な病気で、赤血球だけでなく白血球や血小板も増加しています。
赤血球数が多すぎるために血栓ができやすく、脳梗塞を起こしたりしますので、積極的に赤血球数を減らす治療が必要になります。

一方、ストレス多血症と呼ばれるものがありますが、これにはストレス、高血圧、喫煙、肥満などが関係していることがあり、中年男性に多くみられますが、これは生活習慣を改めることにより改善されます。

【基準値】

男性 430~570万/μl

女性 380~500万/μl

※基準値は検査方法や測定方法、測定機器、用いる試薬、単位などにより値が異なります。

男女とも1μl(=1mm3)中の赤血球数が300万個以下の場合は、明らかな貧血と診断されます。

ただし貧血の種類は、その他の検査を組み合わせて行わないと解りません。

赤血球の数が増えすぎて600~800万個になる場合は、多血症(赤血球増多症)と考えられます。

※HIVの感染の判断は、赤血球数検査では解りません。

2012年4月1日日曜日

血液一般検査-1.血液一般検査の種類-


血液一般検査とは、体調が悪くなり受診した時や健康診断では必ず行われる検査のひとつです。

検査を実施する理由としては、身体に異常があるとそれが血液にいち早く反映されるため、病気の有無の判断や健康状態を調べる上で血液一般検査はとても重要な検査のひとつと言えます。

血液一般検査の検査項目には、以下の種類があります。

1.赤血球数

2.ヘモグロビン量及びヘマトクリット値

3.赤血球恒数

4.白血球数

5.白血球分類

6.血小板数

上記の検査を順次わかりやすく解説していきます。

2012年3月25日日曜日

炎症マーカー検査-2.赤血球沈降速度検査-


赤血球沈降速度検査とは、赤血球が試験管内を沈んでいく速度を測定する検査で、一般に血沈、ESRとも呼ばれます。

抗凝固剤を使用して固まらないようにした血液をガラス管に入れて一定時間放置すると赤血球が下へ沈み、その上部に淡黄色の血漿が残ります。

液の上端から赤と透明の境界線までの長さが赤血球の沈んだ距離に相当し、1時間に何mm沈んだかを測定します。

この検査は、主に身体の中に炎症をともなう病気の有無や程度がわかりますが、異常がなくても異常値を示すことがあり、逆に、明らかに病気であるのに正常値になることもあるため、この検査だけで診断を下すことはできません。

また、特定の病気を診断する事もできません。

当然HIV感染の判断もできません。

【基準値】

男性…1~10mm(1時間後)
女性…2~15mm(1時間後)

軽度亢進:<25mm
中等度亢進:25~50mm
高度亢進:>50mm

※変動範囲は、個人差があることから20mm以内であれば、あまり問題にはなりません。
※女性では軽い貧血があるときや妊娠後期、生理時に沈降が進み、やや高値になります。

【異常な場合に疑われる病気】

1.高値の場合

感染症…肺炎、結核、腎盂腎炎など
心臓病…心筋梗塞、心内膜炎、心筋炎など
消化器病…肝炎、胆のう炎、膵炎、潰瘍性大腸炎など
免疫の異常…全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチなど
血液疾患…多発性骨髄腫、白血病、悪性貧血など
がん…ほとんどの進行中のがん

2.低値の場合

多血症、異常ヘモグロビン症、播種性血管内凝固症候群(DIC)、低フィブリノゲン血症など

最近では、自動測定機器を使用して、1時間値及び2時間値を計算上から求めることが出来る自動赤沈測定装置が利用されています。




2012年3月18日日曜日

炎症マーカー検査-1.CRP検査-

身体の中に炎症の有無を調べる検査です。


今回はその中のひとつのCRP検査(C反応性蛋白)について解説します。

CRPとは、「C-リアクティブ・プロテイン」の略で、炎症や組織細胞の破壊が起こると血清中に増加するタンパク質の一種です。

肺炎血球(ストレプトコッカスニューモニエ)が持っているC多糖体に反応するため、C反応性タンパクと名づけられました。

体内で炎症反応が起こり、組織が破壊されると血液中のC反応性蛋白が増え、炎症が収まると正常値に戻る性質を持っています。

CRP検査では、単に体内で炎症が起こっていることしか分からず、その炎症の程度が重大かそうでないかということは分かりません。

「HIVに感染すると身体の中に炎症が起きることから、CRPでHIVに感染の判断はできるか?」と言う質問をよく受けますが、CRPは単に身体の中で炎症があることしか分からず、その炎症の原因を特定できないことから、HIVの感染の判断指標にはなりません。


【CRPの基準値】

定  性

(-) :陰性
(±) :偽陽性
(1+) :弱陽性
(2+) :陽性
(3+) :強陽性

定  量

基準値:0~0.3mg/dl

基準値外

軽度   :(0.3~1mg/dl)
中程度 :(1~10mg/dl)
重度   :(10mg/dl~)
 
※定量値の値は、検査に使用する機器によって若干異なります※

陽性反応が強い場合は、結核などの細菌感染症、膠原病、リウマチ熱、心筋梗塞、肝硬変、敗血症、悪性腫瘍などが疑われます。

弱陽性の場合は、ウイルス性疾患、急性肝炎、脳炎、内分泌疾患などの疑いがあります。

2012年3月11日日曜日

性行為感染症検査-6.梅毒血清検査法その8.新生児梅毒の梅毒検査-


梅毒に感染した母親から胎盤を経由して胎児に感染します。

先天性梅毒を防止するために産婦人科では、妊娠早期に母親の検査をしていますが、最近出産直後に産婦人科を訪れる母親が見られ、この場合梅毒検査をしていないことから、胎児に梅毒感染してしまう事例が見られます。

母親の治療をしていないと、胎児梅毒の場合は、流産、早産、死産の可能性が高くなります。

発症の時期によって、梅毒の症状を備えて生まれる胎児梅毒、生後1~2か月で発症する乳児梅毒、7~8歳頃に発症する晩発梅毒に分類されます。

新生児の梅毒検査を行う際に注意することは、TPHAやFTA-abs検査を実施しますと、実際は新生児に梅毒感染がなくても、母親由来のTP抗体で陽性となってしまいます。

実際に梅毒に感染しているか、母親由来のTP抗体による陽性反応かの判断をする場合は、IgM-FTA-abs検査を実施します。

1.TPHAやFTA-abs検査が陽性でIgM-FTA-abs検査が陰性の場合は、母親由来のTP抗体を検出していることから、梅毒の治療は必要ありません。

この場合のTPHAやFTA-abs検査の陽性反応は、3~6ケ月後に陰性化します。

2.TPHAやFTA-abs検査が陽性または陰性であっても、IgM-FTA-abs検査が陽性の場合は、新生児は梅毒に感染していることから、治療が必要となります。

この様にIgM-FTA-abs検査は、新生児の梅毒感染の早期判断に利用されています。

2012年3月4日日曜日

性行為感染症検査-6.梅毒血清検査法その7.梅毒の治療効果判定法-


梅毒に感染して一度身体の中にTP抗体が出来てしまいますと、一生涯TP抗体は消えることがありませんので、TPHAやFTA-absは陽性のままとなります。

そのことから、梅毒の治療効果を判定するのにはTPHAやFTA-absを利用することは出来ません。

STSによって治療効果の判定を行います。

間違ってTPHAやFTA-absを治療効果の判定に利用しますと、STSが陰性になっているにもかかわらず、TPHAやFTA-absは陽性の状態が続くことから、いつまでも不必要な抗生物質の投与を行い、TPHAやFTA-absの陰性化を待つという誤った治療が行われることがあります。

現実、STSが陰性化して梅毒は完全に治癒しているにもかかわらず、TPHAやFTA-absが陽性のためTPHAやFTA-absの陰性化を目指して、延々と治療を続けることがよく見られます。

梅毒の感染の判断には、STSとTPHAやFTA-absを組み合わせて検査を行い、梅毒感染であると判断された後の治療効果の判定には、STSを使用して検査を行います。

TPHAやFTA-absは、治療効果判定の指針検査とはなりません。

2012年2月26日日曜日

性行為感染症検査-6.梅毒血清検査法その6.梅毒検査法による梅毒診断法-


各種梅毒検査の結果から、その判定法を解説します。

一般的に梅毒検査法は、STSとTPHA及びFTA-absを組み合わせて検査しますが、今回はこれに早期に信頼出来る結果が得られるIgM-FTA-absを組み合わせて判定方法を以下に示します。


【梅毒血清検査法による梅毒診断法】


※クリックしますと表が拡大します※

2012年2月19日日曜日

性行為感染症検査-6.梅毒血清検査その5.IgM-FTA-abs検査-


FTA-abs検査は、IgG型のTP抗体を検出する検査法ですが、IgM-FTA-abs検査はIgM型のTP抗体を検出するための検査法です。

梅毒に感染した初期には、IgM抗体が先に出来て、その後IgG抗体が出来ます。

このIgM抗体は、梅毒に感染後1週間程度で身体中にできることから、IgM-FTA-abs検査は梅毒に感染後1週間で受ければ信頼出来る結果が得られます。

そのことからして、早く感染の診断を下したい時に利用される検査法です。

梅毒感染後早く陽性となる順番は、以下のとおりとなります。

1.IgM-FTA-abs検査

感染後1週間

2.FTA-abs検査

感染後3週間

3.STS検査(ガラス板法、RPR検査)

感染後4週間

4.TPHA検査

感染後5~6週間

2012年2月12日日曜日

性行為感染症検査-6.梅毒血清検査その4.FTA-abs検査-


FTA-abs検査(梅毒トレポネーマ蛍光抗体吸収検査:Fluorescent Treponemal Antibody-absorption Test)は、スライドグラスに梅毒病原体であるトレポネーマ・パリーダムの菌体成分を吸着させ、TP抗体を間接蛍光抗体法で検出する検査法です。

非病原性トレポネーマとの交差反応による偽陽性反応を防止する意味で、非病原性トレポネーマで患者血清を事前に吸収処理して検査することから、偽陽性反応の出現率が低いのが特徴です。

吸収処理した血清を、トレポネーマ・パリーダムを吸着処理したスライドグラスの上に滴下し、乾燥しないようにして37度で一定時間反応させた後、血清成分を洗い流し、クライドグラスに蛍光抗体をのせ再び37度で反応後、蛍光色素を洗い流した後に、蛍光顕微鏡で観察します。

1.陽性

血清中のTP抗体+梅毒トレポネーマの菌体成分+蛍光抗体色素=梅毒トレポネーマが蛍光を発する。

2.陰性

血清中にTP抗体が存在しないことから、蛍光抗体色素が梅毒トレポネーマに吸着しないことから梅毒トレポネーマは蛍光を発しない 

TPを利用するFAT-abs検査は、感染後3~4週後にTPHA検査より早く陽性となりことから、STS陽性、TPHA陰性の場合の梅毒鑑別に利用されます。

FTA-abs検査もTPHA検査同様、一旦陽性となると治療して梅毒が完治しても、一生涯陽性反応が続くことから、治療の判定には適さない検査法です。

2012年2月7日火曜日

性行為感染症検査-6.梅毒血清検査その3.イムノクロマト法TPHA検査-


代表的な迅速検査法のエスプラインTPについて解説します。

【測定原理】

酵素免疫測定法を測定原理としたイムノクロマト法による血清または血漿中のTP抗体検出用試薬です。

この検査法は、TPの主要抗原と考えられているTpN47とTp15-17の2種類のリコンビナント抗原を使用しています。

検体滴下部に滴下した血清または血漿中にTP抗体が存在すると、酵素標識抗原〔アルカリホスファターゼ(ALP)標識リコンビナント抗原(TpN47)およびアルカリホスファターゼ(ALP)標識リコンビナント抗原(Tp15-17)〕と反応した後、展開液によりメンブレン上を移動し、判定部に固定されたTP抗原と結合して、血清または血漿中のTP抗体を介した3者のサンドイッチ複合体を形成し青色のラインが出現します。

反応確認用のレファレンスラインは、メンブレン上のTP抗原と異なる位置(下流側)へ抗ALP抗体を固定化したもので、固定化TP抗原とのサンドイッチ複合体形成に関与しなかったALP標識抗原と結合し、標識抗原の酵素反応によりラインが出現を確認することにより、血清または血漿、標識抗原、基質の展開および酵素反応が正常に行われたことを確認できます。

【操作上の注意】

血清または血漿を滴下後15分で判定する。

15分を経過後に青色のラインが出現しても陽性と判定しない。

必ずレファレンスラインに青色のラインが出現していることを確認する、レファレンスラインに青色のラインが出現していないときは再度検査を実施する。

【 判定方法 】

シート上に出現する青色ラインの有無を肉眼で判定します。

反応過程は複雑ですが、原理自体はいたってシンプルな方法を用いているため、従来の方法に比べ短時間で結果が得られます。

【判定ラインの画像】

1.陰性の画像

青色のレファレンスラインが認められ、青色の判定ラインが認められなかった場合。



※レファレンスラインの画像は省略しています※

2.陽性の画像


青色のレファレンスラインが認められ、青色の判定ラインが2本または1本認められた場合。


※レファレンスラインの画像は省略しています※

【検査のデメリット】

1.肉眼で判定するため、判定者個人による判定誤差が見られる。

2.測定時間を厳守しないと、陰性、陽性の判定が異なることがある。

2012年2月1日水曜日

性行為感染症検査-6.梅毒血清検査その2.TPHA検査-


TPHA(Treponema Pallidum Hemagglutination Test)は、梅毒病原体である梅毒トレポネーマ・ハリーダム(以下TPと略します)の菌体成分を抗原として使用する検査方法です。

梅毒の病原体であるTPの菌体成分を吸着させたゼラチン粒子が、TPの感染抗体によりゼラチン粒子の凝集反応を起こす状態を見て判断します。

※発売当初は、TPの菌体成分をタンニン酸処理した羊の赤血球に吸着させたものでしたが、現在はゼラチン粒子に吸着させています。

梅毒検査にTPHAを採用することのメリットは、偽陽性反応を引き起こすことが極めて少ないことから本検査が陽性の場合は、ほぼ間違いなく梅毒と判断できます。

デメリットとしては、梅毒トレポネーマに感染しても、TPHAで陽性を示すのは、感染後5週以降であるために、早めに診断をしたいという場合には不向きです。

そのために、早い時期にTPHAだけで梅毒の診断をすると感染を見逃すことがあります。

また、一度梅毒トレポネーマに感染してTPHAが陽性となると、抗生物質で治療して完治しても、陽性反応はまず一生涯消えることがありません。

そのためTPHA検査のみを使用して、陽性と判定されても、梅毒は治癒しているにもかかわらず、再度治療するという誤った認識をしている医師も見られます。

※治療判定の際の検査方法については、別途紹介します※

【附 則】

近年採用された全自動検査機器を使用しての『TPLA』は、従来のTPHAに比べて1週間前後早く陽性になる傾向があります。

2012年1月25日水曜日

性行為感染症検査-6.梅毒血清検査その1.STS検査-


梅毒トレポネーマが、感染して生体の組織を破壊したときに血液中に出てくる脂質カルジオリピンに対する抗体を検出する検査法を総称してSTS(Serologic Test for Syphilis)と呼びます。

ガラス板法、RPRカード法があり、血液中に抗体がなければ陰性となりますが、抗体があった場合には陽性と判定され、梅毒に感染している可能性ありと判定されます。

1.ガラス板法

カルジオライピン・レシチン抗原で感作したコレステリン粒子と患者血清をガラス板上で混和し、凝集塊の有無を顕微鏡で観察する検査。

2.PRテスト(Rapid Plasma Reagin Test)

カルジオライピン・レシチン抗原を吸着させた炭素粒子と、患者血清とを混和してできる凝集塊の有無を肉眼で観察する検査。

これらSTSは、感度に優れ、比較的早期から陽性になる反面、梅毒に感染していなても陽性となる生物学的偽陽性(BFP:Biological False Positive reaction)には常に留意が必要です。

生物学的偽陽性反応は、肝疾患、ウイルス感染症、自己免疫疾患、妊娠などで非特異的に抗体が産生される結果、抗カルジオリピン抗体保有者となり、梅毒に感染していないにもかかわらず陽性反応を示すことがあります。

※また、全く健康な人でも検査のたびにSTSが常に陽性となる人も存在します。

従ってSTSが陽性となっても生物学的偽陽性反応の可能性があることから、すぐに梅毒に感染しているとは言えません。

※STSが陽性となれば、必ず梅毒トレポネーマを使用したTPHA FTA-absで検査をしてから梅毒感染の判断を行う必要があります。

【STS検査を受ける時期】

これらの検査は、梅毒に感染すると4週程度で陽性となることから、行為から30日で受ければ信頼できる結果が得られます。

2012年1月19日木曜日

性行為感染症検査-5.咽頭淋菌検査-


淋菌が咽頭に感染することがありますが、性器に感染したときに比べて症状がほとんどでないことから、感染に気づく人は非常に少ないのが現実です。

仮に感染があっても喉の違和感、軽い咳など咽頭炎の症状しか出ませんので、耳鼻咽喉科を受診しても淋菌に感染す可能性のある行為をしたと医師に申告しないと単なる咽頭炎と診断されて、淋菌感染を見逃すことになります。

咽頭の淋菌感染の検査は非常に難しいことを解説しておきます。

口腔内には非病原性菌の常在菌であるナイセリア属が、わかっているだけで11種も存在しています。

病原性のある淋菌も実はこのナイセリア属です。

淋菌咽頭感染検査には、PCR法は使用できない!!

遺伝子増幅法であるPCR法はナイセリア属と交差反応を示すため、このナイセリア属の細菌を淋菌と間違えて検出してしまい、淋菌に感染していなくても陽性となってしまいます。

いわゆる"偽陽性反応"が起こるわけです、そのために淋菌の性器感染検査に使用される遺伝子増幅法であるPCR法は咽頭感染の検査には適していません。

それでは、淋菌の咽頭感染検査にはどの様なものがあるのでしょうか?

咽頭淋菌感染の検査は、ナイセリア属と交差反応をしめさないSDA法(Strand Displacement Amplification)または、TMA法(Transcription Mediated Amplificatio)による検査を行います。

咽頭に淋菌が感染しているかどうか、SDA法やTMA法検査を受けてないと分かりません。

淋菌に感染している不安があれば検査を受けてみてください。

自覚症状がなくても感染するリスクのある行為をした場合は、必ず検査を受けることです。

2012年1月15日日曜日

性行為感染症検査-4.性器感染の淋菌検査-


淋病は淋菌によって引き起こされる性行為感染症のひとつです。

淋病の症状

男 性

尿道内に感染して増殖し、尿道炎症状を引き起こします。

典型的な症状としては、感染後2~7日後に、灼熱感を伴う排尿痛があり、尿道口より膿が出ます。

しかし、排尿痛のみや尿道から少の膿しか出なかったり、全く症状の出ない場合もあります。

女 性
 
尿道に感染することは殆ど無く、膣から子宮頚管におよび子宮頚管炎を引き起こします。

症状としては、オリモノの増加、膿の混ざった悪臭のあるオリモノなどですが男性に比べ症状が少なく感染に気づく人は少ないのが実情です。

80%以上が無症状です。

感染に気づくことなく放置していますと、子宮頚管から上行性に子宮、卵管を経由して腹腔内へ感染が進みます。

淋菌の感染率は、1回の性行為で低くて30%高い場合は80%です。

検査法

男性の場合は尿や性器からの分泌物(膿)を採取し、女性の場合には膣の分泌物を採取し検査します。

1.顕微鏡検査

検査物をグラム染色して、顕微鏡で淋菌の有無を検査。

非常に簡単な検査ですが、検査物に淋菌が少ない場合には、感染していても陰性となってしまう欠点があります。

2.淋菌培養検査

検査物から淋菌を採取して培養し、増殖させて光学顕微鏡で調べる。

淋菌の生命力が非常に弱いことから、検査物採取から時間が経過しますと、淋菌が死滅して感染していても陰性となることから、この検査法はあまり利用されていません。

3.核酸増幅検査法

1)PCR(Polymer Chain Reaction)法

淋菌のDNAを化学的に増幅させて検査する方法です。

非常に感度がよく優れた検査法です。

2)SDA(Strand Displacement Amplification)法

PCR法とは検査の原理が異なりますが、核酸増幅検査のひとつです。

この検査方法は、クラミジア感染症と淋菌感染症の同時検査ができることと、検査の感度、精度もPCR法と同等かそれ以上ある優れた検査法です。

3)TMA(Transcription Mediated Amplification)法

SDA法同様、クラミジア感染症と淋菌感染症が同時に検査出来ます。

2012年1月11日水曜日

性行為感染症検査-3.咽頭クラミジア検査-


咽頭クラミジアは、クラミジア・トラコマチスが喉に感染して起こる性行為感染症のひとつです。

感染経路は、キスやオーラルセックスで感染します、また性器に感染したクラミジアが喉へ感染することもあります。

咽頭クラミジアの症状は、殆ど無くあっても風邪の症状に似た症状あるいは軽い咽頭炎を起こす程度ですから大多数の人が感染しても分からないのが現実です。

症状が咽頭炎や扁桃腺炎などに似ているために内科や耳鼻咽喉科を受診しても、診察した医師がクラミジア感染に気づくことは殆ど無く、単なる細菌感染による症状と診断して、セフェム系の抗生物質を処方されて、服用することによりその抗生物質が効けばこれらの症状は改善され治癒してしまいますので、クラミジア感染があったとは夢にも思わないのが実情です。

咽頭クラミジアの検査は、喉の奥をスワブという綿棒で拭って検査する方法(ぬぐい液法)と口腔内のうがい液(うがい液法)を検体として核酸増幅法(PCR法)と呼ばれる検査方法で調べます。

咽頭クラミジア検査では、うがい液を使用した検査の方が検出率が良いことから、最近ではうがい液による検査が多く採用されています。

ディープキスやオーラルセックスを行い、数日後に喉に違和感があれば、直ぐに受診する必要があります。

しかし、現実は感染してもまず自覚症状がないことから、極端な話し、一度でもディープキスやオーラルセックスをした経験のある人ならクラミジアに感染している可能性は〝ゼロ〟ではなく、知らず知らずのうちに感染している可能性があるので、特に風俗店を利用したことがある、不特定多数の異性とディープキスやオーラルセックスの経験のある人は、一度、しっかりと咽頭クラミジア検査を受けることを強くお勧めします。

咽頭クラミジア検査は、耳鼻咽喉科の取り扱いとなりますが、すべての耳鼻咽喉科で検査を実施しているとは限りませんので、事前に問い合わせることをお勧めます、また最近では泌尿器科や性病科でも検査を実施している所が多くなってきています。

2012年1月8日日曜日

性行為感染症検査-2.性器クラミジア検査-


性器クラミジア感染症は、クラミジア・トラコマチスによって引き起こされる性行為感染症のひとつです。

男性の性器クラミジア感染症は、尿道に軽い炎症を引き起こし、排尿時に尿道が僅かに痛んだり、尿道から濃い分泌物が少し出ることから異常にに気づきますが、症状が軽い場合は、感染に気づくことはありません。

女性の場合は、全くといってよいくらい症状がなく、ほとんの人が感染に気づくことはありません。

仮に症状が出ても、わずかなおりものがや、不正子宮出血や下腹部痛が出る程度です。

男女とも多くの感染者が、感染に気づくことなく放置して、パートナーや第三者に感染させていることが危惧されています。

男性の検査法

早朝あるいは、排尿からかなり時間が経った後の排尿の最初の尿には、分泌物が多く含まれているのでこれを検査に使用します。

昔のようにペニスに綿棒を入れて検査をすることはありません。

尿でクラミジアの核酸増幅法(PCR法、およびLCR法)などの抗原検査法を行います。


女性の場合

子宮頸管から綿棒で組織の一部を拭い取り、その組織でクラミジアの核酸増幅法(PCR法、およびLCR法)などの抗原検査法を行います。

また、女性の場合は尿による検査は一般的には実施しません。

検査を受ける時期は、男女とも感染するリスクのある行為をした次の日から受けることができますが、余裕を持って1週間前後で受ければよいでしょう。。

※最近では、子宮頸部、尿道、肛門などを綿棒で軽くこすってその場でクラミジアを調べる迅速検査が多く利用されています。

※過去から現在までの間にクラミジアに感染したことがあるかどうかを血液で調べるクラミジア抗体検査もありますが、信頼性が低いことから検査を受ける価値はありません。

理由としては、血液でのクラミジアのIgG抗体とIgA抗体という2種類のクラミジア抗体を調べますが、過去の感染と現在の感染の区別化つきにくいことと、治療が完了してもIgG抗体だけでなくIgA抗体も陽性となることがあるために、感染中なのか治癒しているのは鑑別ができないからです。

2012年1月5日木曜日

性行為感染症検査-1.HPV検査-


HPV(ヒトパピローマウイルス)は、女性が生涯で50-80%が感染すると言われており、仮に感染しても、ほとんどが自覚症状もなく、生体の免疫力でHPVが体外へ排除されてしまうと言われており、ほんの一部の人がHPVを体内から排除できず、HPV感染が持続することで病気になります。

HPVが引き起こす病気としては、性器コンジローマ、子宮頸がん、腟がん、外陰がん、喉頭咽頭がん、肛門がん、陰茎がんなどがあります。

子宮頸がんの99%が、HPVの持続感染が原因でがんになると言われています。

HPVは、100種類を超える型に分類されており、子宮頸がん発生に関連するHPVは13種類(16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68)で、これらをハイリスク型と呼んでいます。

またコンジローマの原因となる2種類の型(6、11)も存在します。

HPV検査は、グループ検査と型判定検査の2種類があります。いずれの方法においても子宮頸腟部から細胞を採取して検査を行うものです。

次に、HPVが男性に及ぼす影響ですが、現時点ではHPVが男性に与える影響については、不明な点が多く、稀に高リスク型HPVが陰茎がんなどを引き起こすことがあります。

しかし、これは、子宮頚がんの発生に比べてはるかに低い頻度です。

男性の場合は、入浴の際に陰茎亀頭部周辺を綺麗に洗う事によって陰茎がん発生の予防が可能だからです。

男性がHPVに感染すると、HPVが尿道から前立腺内に侵入して留まり、精液の中に混じり排出されることがあるので、HPVの混ざった精液によってセックスパートナーへ感染する可能性も当然あります。

女性のHPV検査は、積極的に行われていますが、男性のHPV検査はあまり行われていません。

その理由としては、陰茎以外にも肛門周辺、肛門内、尿道口、陰茎亀頭部周辺にもHPVは存在するため検査範囲が広すぎるためです。

更に、HPVに感染しても症状が殆ど無いことからして、感染していても気づくことがないことから、積極的にHPV検査を受ける男性はほとんでいないようです。

1.グループ検査

子宮頸がんの発生に関連の深い13種類のHPV感染の有無を判定する方法で、13種の型のいずれかに感染していれば陽性となりますが、どの型に感染しているかを特定することはできません。

2.型判定検査は

どのHPV型に感染しているのかを調べる検査です。

2012年1月1日日曜日

明けましておめでとうございます。

急な用務で更新が遅れていますが、数日後から更新を開始いたしますのでご期待ください。

今年も皆様のお役に立てる情報を発信して行きますので、よろしくお願いします。

血液の鉄人