血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2019年11月28日木曜日

血液型について-5.後天性獲得B(acquired B)について-

ABO式血液型は時には理解しづらい現象を引き起こします。

今回は本来A型である人がAB型に変化する事例を紹介します。

直腸・結腸癌の患者の状態が悪くなるとA型患者が後天的にB型抗原を獲得して一見AB型様の反応を示す現象が起こることがあります。

後天性獲得Bは、直腸・結腸癌の癌患者が細菌感染を起こした時に、A抗原が少し変異してB様抗原になって抗Bと弱く反応しAB型と判定されます。

直腸・結腸癌の患者の状態が改善されるに従い後天性獲得BのB型は少しずつなくなり、本来のA型に戻ります。

直腸・結腸癌の患者の状態が改善されずに不幸にも死亡した患者は、後天性獲得Bのままであることが多いことが経験されています。

後天性獲得Bは、A型の人がなり、O型の人が後天性獲得Bになることはありません。

この後天性獲得BのB型抗原はヒト由来及び動物免疫由来の抗B判定血清で起こりますが、モノクロ-ナル抗体由来の抗B血液型判定用血清とは反応しません。

※モノクローナル抗体とは、単一の抗体産生細胞に由来するクローンから得られた抗体※

※ヒト由来及び動物免疫由来抗体は、複数の抗原で免疫されてできたもので、ポリクローナル抗体と呼ばれる※

現在のABO式血液型判定にはヒト由来及び動物免疫由来判定用血清はほとんど使用されることなく、大部分がモノクローナル抗体由来の判定用血清を使用していることから後天性獲得Bは検出されなくなってきています。

モノクローナル抗体由来の判定用血清の使用が主流になったことから、後天性獲得Bは消えてなくなったということになります。

血液の鉄人も40年以上前に63歳の女性の直腸がん患者が後天性獲得Bとなった症例を経験しています。

2019年11月18日月曜日

血液型について-4.白血病によるA型の変化-

ABO式血液型は、一生不変であることは周知の事実ですが、ある種の疾患によつて稀に変化することがあります。

そう白血病になるとA型が変化することがあるんです。

白血病の末期になると、A型があたかも0型のように、あるいは完全に0型に変化することがあります。

しかし、白血病が寛解するともとのA型に戻り、悪化すると再び0型に変化します。

※寛解とは、病気が永続的であるか一時的であるかを問わず症状が好転またはほぼ消失し、臨床的にコントロールされた状態を言います※

この現象は自血病の病状が悪化するのに正比例して本来のA型がよリー層O型に近づきます。

また、この現象は白血病の種類に関係なく発現するが、すべての白血病患者に発現するとは限りません。

B型がO型に、AB型がO型に変化することも報告されていますが、何故かA型の変化が圧倒的に多いのが現実です。

白血病が誘引となってABO式血液型が変化する原因については、諸説があり確定的なことは解明されていません。

血液の鉄人もA型の白血病患者の血液型がO型に変化した事例を数例経験しています。

2019年11月11日月曜日

血液型について-3.AB型とO型の親からAB型の子供は生まれるのか??!!-

ABO式血液型は、例外なくメンデルの遺伝の法則に従つて遺伝するために親子鑑定に応用されてきました。

ところが"両親のいずれかがAB型の時には、0型の子供は生まれることはなく"、また"両親のいずれかが0型の時には、AB型は生まれない"との原則に例外があることが1966年に発見された。

1966年、大阪府赤十字血液センターの山口英夫博士(2019年死去)らは、0型とAB型の両親から家族3名全員がAB型の家系を発見しました。

このAB型の血清学的性質従来のAB型とは異なり、A型およびB型抗原は普通のAB型の反応よりかなり弱いものでこの遺伝学的背景は従来のメンデルの遺伝の法則によつては到底説明出来ませんでした。

その後、多くの研究者により同様の家系が発見されるに至つて、このメンデルの遺伝の法則に基づかない遺伝様式も説明可能となりました。

山口らは、この特殊な遺伝をする血液型を“Cis AB(シスAB)"と命名しました。

ABO式血液型の遺伝は、A遺伝子とB遺伝子は異なつた染色体に乗つて遺伝しますが、“CisAB"はA遺伝子とB遺伝子が同一染色体に乗つて遺伝するためにこのような異例の遺伝様式をしたわけです。

普通のAB型は"trans AB(トランスAB)"と呼ばれ遺伝子型はA/Bと表記されますが、この特殊な遺伝子型をA2B3/0と表記します。

普通はAB型とO型の両親からは、A型とB型が生まれAB型は生まれません。

普通のAB型の遺伝の場合:A/BとO/O→A/OとB/OなりA型とB型が生まれAB型は生まれません。

CisABの遺伝の場合は、A2B3/0とO/O→A2B3/0とO/OとなりAB型が生まれます。

この“Cis AB"の発現頻度は00012%と非常に稀なために、遺伝様式がメンデルの遺伝によることがないことから親子鑑定にも大きな影響を与えたり、産婦人科による新生児の取り違え騒動に発展することがあるので注意が必要です。

血液の鉄人もCisABの家系を数家系見つけていますが、産婦人科による新生児の取り違えや家系騒動となった事例を経験しています。

この血液が発見された当時は、興味あることにこの“ClsAB"の家系は徳島県と石川県に多く見られていましたが、現在は人の往来が多様化されたためにこの傾向は見られなくなっています。

2019年11月1日金曜日

重症熱性血小板減少症候群

重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome:SFTS)は、SFTSウイルスを保有しているマダニに咬まれることにより感染するダニ媒介感染症で、感染症法では四類感染症に位置付けられています。

【SFTSウイルスとは】

SFTSウイルスは2011年に中国より報告されたマダニ媒介性の新興ウイルス感染症で、国内SFTSウイルス自体は,以前から国内に存在していたと考えられていましたが,平成25年1月に初めての症例が確認され,現在までに,全国では24府県で475例(うち69例で死亡)の症例が確認されています(2019年9月25日現在)。

【感染経路】

主にSFTSウイルスを保有するマダニに刺咬されることで感染する。

 【潜伏期】

6~14日

【臨床症状】

発熱、消化器症状(嘔気、嘔吐、腹痛、下痢、下血)を主張とし、ときに、腹痛、筋肉痛、神経症状、リンパ節腫脹、出血症状などを伴い、血液所見では、血小板減少(10万/μL未満)、白血球減少(4000/μL未満)、血清酵素(AST、ALT、LDH)の上昇が認められる。

【致死率】

10~30%程度。

【診断】

血液、血清、咽頭拭い液、尿から病原体や病原体遺伝子の検出、 血清から抗体の検出。

【治療】

特効薬はなく対症療法しか存在していません。

【予防】

草の茂ったマダニの生息する場所に入る場合には、長袖、長ズボンを着用し、肌の露出を極力さけ、マダニに咬まれない予防措置を講じる

【日本に存在するマダニ】

日本には、命名されているものだけで47種のマダニが生息するとされていますが、これまでに実施された調査の結果、複数のマダニ種(フタトゲチマダニ、ヒゲナガチマダニ、オオトゲチマダニ、キチマダニ、タカサゴキララマダニ)からSFTSウイルスの遺伝子が検出されて、日本国内ではフタトゲチマダニとタカサゴキララマダニがヒトへの感染に関与しています。

【ペットから感染する可能性は】

SFTSウイルスに感染して重症熱性血小板減少症候群に類似する症状を呈したネコに噛まれて重症熱性血小板減少症候群を発症した患者が確認されています(第92回日本感染症学会発表.2018年)。

同様にSFTSウイルスに感染して重症熱性血小板減少症候群様症状を呈したイヌとの接触により重症熱性血小板減少症候群を発症した患者も確認されています(第92回日本感染症学会発表.2018年)。

これらはまれな例ですが、ペツトや野良猫などからの感染も気をつける必要があります。

ペットに付いているマダニに触れたからといって感染することはありませんが、マダニに咬まれれば、その危険性はありますので、ペットのマダニは獣医師に相談して駆除する必要があります。

2019年10月23日水曜日

糖尿病と膵臓がんの関係

【膵臓の働き】

膵臓という臓器は、極めて重要な臓器で、胃酸で酸性になった食べ物を中和する"膵液"を分泌して消化を促す働きをする、インスリンやグルカゴンなど血糖値を調節するホルモンを分泌して全身のバランスを保つふたつの働きをする大切な臓器です。

膵臓は、胃の裏側の体の深部に位置し消化液を運ぶ膵管が張り巡らされています。

【糖尿病と膵臓がんは関係ある??!!】

膵臓がん患者の26%は糖尿病患者というデータがあります。

糖尿病患者の場合、男性では膵臓がんの発症リスクが健康な人に比べ2.1倍、女性で1.5倍高いとというデータがあります。

【膵臓がんの原因とは】

膵臓がんの原因のほとんどが膵炎です。

膵炎は、血液中に糖分が増えることで起こります。

【膵臓がんの予防】

以上のことからして糖尿病を予防するような食事や運動などで生活習慣を改善するように日頃から心がけることが、膵臓がんの予防になるということなのです。

膵臓がんはがんのなかでも、発見しにくく発見されたときにはすでに手遅れのケースが多いことから、「早期発見がしにくい」「転移しやすい」「治癒が難しい」「生存率が低い」と、四つの悪条件がそろったがんと言えます。

【膵臓がんは治るのか】

医学の進歩に伴い多くのがんは治る病気となりつつありますが、膵臓がんだけは例外で、5年生存率はステージ1で40.1%、ステージ4になると1.5%、全症例で9.2%と極めて予後の悪いがんといえます。

更に最近では、膵臓がん罹患者数も死亡者数も年々しつつあります。

【何故膵臓がんは見つけにくいのか】

膵臓がんの90%以上が、膵管の細胞にできるので発見しづらい原因となっています。

更に悪いことには膵臓がんは、特徴的な自覚症状がほとんどなく、腹痛、黄疸、腰や背中の痛み、食欲不振、体重減少などの症状が現れますが、これらの症状は他の疾患でも現れることからついつい膵臓がんを見をとしてしまうことになります。

症状が進行してから発見されたときには、すでに手遅れとなっています。

進行した場合、症状としては、が挙げられますが、胃炎や膵炎の場合も同じ症状になります。

【膵臓がんの検査】

膵臓は肝臓と同様に「沈黙の臓器」と呼ばれ、よほどがんが進行しないと検査に至らないのです。

エコー検査(超音波検査)でも、胃や腸のなかにあるガスや体内脂肪の影響で診断しにくいのが現実です。

ふだんから健康に気を使い、定期的に人間ドックを受けていたにもかかわらず、膵臓がんは発見されず、自覚症状が出てから精密検査をし初めて膵臓がん診断される人が殆どで、このような場合膵臓がんが発見されたときにはかなり進行していて、手遅れが多いのが現実です。

最近では、CT=Computed Tomography(コンピューター断層撮影)が膵臓がんの早期発見に比較的有効とされていますが、撮影のために使用する造影剤には副作用リスクがあり検査を受ける際には注意が必要となります。

更に有効な検査としては、MRI=Magnetic Resonance Imaging(磁気共鳴画像)を利用したMRCP=Magnetic Resonance Cholangiopancreatography(磁器共鳴胆管膵管造影検査)という検査がありますが、自覚症状がなく、膵臓がんの疑いがないのにこれを受ける人はまずいません。

最近で注目されているより高度な検査方法としてERCP=Endoscopic Retrograde Colangiopancreatography(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)やEUS:=Endoscopic Ultrasonography(超音波内視鏡)がありますが、実施している医療機関が少ないうえ、費用が高額であることからほとんど利用されていません。

2019年10月14日月曜日

謹んで台風19号(ハギビス) により被災された皆様にお見舞い申し上げます。

この度の台風19号(ハギビス) により被災された皆様ならびにそのご家族の皆様に、心よりお見舞い申し上げます。

皆様の安全と被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

2019年10月8日火曜日

血液型について-2.ABO式血液型と体質関係-

血液型と病気の関連性については1980年代には、異常なほど論議されましたが2000年に世界で特に権威のある学術雑誌のひとつと評価されているイギリスの科学雑誌『Nature』に、"胃腸管に関するいくつかの形質に弱い相関が確認できるが、血液型と疾患の相関については再現性よく示されたものは無い"と総説が掲載され終止符が打たれました。

この論文の発表後今日まで数多くの発表がなされてきましたが、ストレス抵抗性や病気のリスクなどの健康面へ影響があるという科学的に証明された報告は一部しか存在していまん。

2000年にNatureに掲載された総説では、"胃腸管に関するいくつかの形質に弱い相関が確認できるが、血液型と疾患の相関については再現性よく示されたものはない"という、ABO式血液型と体質関係を否定する内容であった。

ABO式血液型以外の血液型では、特定の血液型のみある種の病気に感染しないというものがいくつか報告されていますので次回から紹介いたします。

また一生涯変化しない血液型がある種の疾患によって、変化することも知られていますので、これも順次紹介いたします。