血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2017年1月15日日曜日

梅毒感染に気をつけて下さい!!!

2016年1年間の梅毒患者が4518人(速報値)を超えました。

この患者数は1974年以来42年ぶりのこととなります。

患者全体の約80%を占める男性は各年齢層から偏り少なく報告されていますが、女性は20代が女性全体の50%超を占め患者増加が際立っています。

最近の梅毒は男性の同性間の性的接触による感染だけでなく、異性間での感染も広がり患者増加傾向が見られますが、この増加の原因は突き止められていません。

特に妊婦が梅毒トレポネーマ感染すると死産・流産のほか、胎盤を通して赤ちゃんが感染し先天性梅毒となります。

これを防ぐには妊婦健診を必ず受けることです。

異性間性交による梅毒患者増加は、その裏にHIV感染者の増加が考えられます。

梅毒トレポネーマにに感染すれば、HIVの感染リスクが極めて高くなりますので、不安な行為をした場合には必ず梅毒検査を受けることです。

梅毒はコンドームでは完全に予防できませんし、オーラルセックスでも感染することを認識しておく必要があります。

梅毒トレポネーマは、性行為で性器や肛門、オーラルセックスでも性器や咽頭に感染します。

梅毒検査のただしす受け方に関しては、当ブログに紹介しておりますから再度ご確認下さい。


2017年1月2日月曜日

ヘルペスウイルスについて-8.HHV-8(カポジ肉腫ウイルス)-

【HHV-8とは】

ガンマヘルペスウイルス亜科に属するウイルスの一種で、ヒトヘルペスウイルス8(HHV-8:human herpesvirus 8)、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス,または単純にカポジ肉腫ウイルスと呼ばれています。

HHV-8は他のヘルペスウイルスとは異なり,カポジ肉腫や悪性リンパ腫などの悪性腫瘍の発症と関連していることが最大の特徴です。

カポジ肉腫を発症するのは、主に地中海系またはユダヤ系の高齢の男性、アフリカの一部地方出身の小児と若い男性、臓器移植を受けて免疫抑制剤を投与されている患者、そしてエイズ患者です。

【感染経路】

HHV-8の感染経路は正確に把握されていません。

男性の同性間性的接触者(MSM)で感染率が高いことや,感染者の唾液にHHV-8が検出されることから,男性の同性間性的接触のアナルセックスや唾液から感染することが疑われています。

外国ではMSMに感染者が多いといわれ、特に米国ではMSMの8~24%がHHV-8に感染しています。

日本人の健常者でもおよそ1%が感染していますが、その殆どは感染経路が不明です。

ほかのヘルペスウイルスと同様一度感染したら生涯ウイルスは体内に潜伏すると考えられています。

健康な人であれば、感染しても何も症状は出ることがありませんので治療の必要はありません。

殆どの人は感染しても一生、発症しないで終わります。

非常に稀ですがHHV-8が原因で悪性リンパ腫などの悪性腫瘍を発症することがあります。


【HHV-8とHIVの関係】

HHV-8に感染している人がHIVに感染し、エイズを発症したり、何らかの理由で免疫不全になるとカポジ肉腫を発症する可能性があります。

日本ではエイズの人のおよそ5%がカポジ肉腫を発症しているといわれています。

【カポジ肉腫とは】

血管のがんの一種で、エイズの男性同性愛者に多いという特徴があります。

エイズの代表的な合併症として重要な疾患"エイズ関連カポジ肉腫"として知られています。

皮膚や口の中に赤茶色の斑点ができて、これが大きくなり、さらに肺や消化管などの内臓に発症すると死亡することもあります。

日本では外引くに比べて非常に少ないですが、HIV感染者の男性の同性間性的接触(MSM)のHIV感染者が増加し、カポジ肉腫も増えています。

"エイズ関連カポジ肉腫"は、殆どが男性の同性間性的接触(MSM)で、女性に発現することは極めて稀です。

ごくまれにですが、エイズとは関連がなく、高齢者や移植などの免疫不全症の人に発症する場合もあります。

【治療】

カポジ肉腫が皮膚に少数できている場合は、手術または液体窒素で凍結させて除去します。

多数できている場合は放射線療法を実施します。

HIVを抑える薬が、カポジ肉腫にも有効であることがわかっています。

患者の免疫能が回復すると消退する症例もあり、プロテアーゼ阻害薬を含むAZT, ddIなどの強力な抗レトロウイルス療法(HAART:highly active anti-retroviral therapy )には抗カポジ肉腫効果も期待できます。

何れにしてもこれらの治療は初期の病変にはよく効きますが、進行した病変では効かないことがあります。

【検査】

HHV-8は健康な人でも約1%は感染しており,感染していても健康な人では症状はありませんので,一般的には検査は不要です。

HHV-8の検査には抗体検査とDNA検査があります。

1.抗体検査

一度でもHHV-8に感染すると血液中にHHV-8に対する抗体が存在しますのて、過去に一度でもHHV-8に感染した人は陽性になります。

この検査はこの血液中のHHV-8に対する抗体をエライサ法や免疫蛍光法で調べます。

過去に一度でもHHV-8に感染した人は陽性になります。

2.DNA検査

血液中のHHV-8を直接、PCRと呼ばれる方法で検出します。

DNAの検査はカポジ肉腫などを発症している人を対象にします。


【カポジー肉腫の種類】

1.古典的カポジ肉腫

エイズとは無関係に風土病的に発症するカポジ肉腫で、地中海沿岸のほか、世界各地に認められています。

2.アフリカ風土病型カポジ肉腫

アフリカの小児に発生するカポジ肉腫です。

3.エイズ関連カポジ肉腫

エイズ患者に合併するカポジ肉腫で、男性の同性間性的接触者(MSM)に限られる。

4.医原性カポジ肉腫

臓器移植など免疫抑制剤投与に関連して起こる医原性のカポジ肉腫。

2017年1月1日日曜日

迎春

明けましておめでとうございます。

皆様方のご健康とご多幸をお祈りいたします。

旧年中は皆様方にご利用いただきありがとうございます。

本年も皆様方のお役に立てるよう頑張っていきますのでよろしくお願いいたします。

平成28年 元旦 血液の鉄人

2016年12月25日日曜日

ヘルペスウイルスについて-7.HHV-4(エプスタイン・バール・ウイルス=Epstein-Barr virus:EBV)ー

【HHV-4とは】

ガンマヘルペスウイルス亜科に属するウイルスの一種です。

HHV-4は、伝染性単核球症(伝染性単核症)を引き起こすウイルスです。

日本では2~3歳までに70%が感染し、 20代では90%以上がこのウイルスの抗体を持つという調査結果があります。

HHV-4の感染者の約15~20%は、無症状の状態でウイルスを持っており、唾液中に排泄している事からして、感染予防を行うことはまず不可能です。

言い換えれば、ほとんどの成人はすでに、小児期に感染して、抗体を持っていることからして、 特に感染予防法は無いのが実際です。

一度感染して症状が治まれば、再感染はしませんが、ヘルペスと同じように免疫力が低下した場合、発病することもあります。

【HHV-4の感染源と感染経路】

思春期以降は唾液を介して感染することから、多くはディープキスによって感染することから"キス病"とも呼ばれています。

ディープキスや飲み物の回し飲みなどから、唾液を介して口から感染します。

小児期に感染していない人が、HHV-4を含む唾液が口の中にはいると、ほぼ100%感染し、50%の人が発病します。

【HHV-4の感染の症状】

一般に、「発熱」、「咽頭痛」、「リンパ節腫脹」の三徴を特徴する症状が現れます。

1~2歳程度の幼少児の初感染では、発熱と口蓋扁桃の膿栓(白苔)を伴った腫脹・発赤が見られる程度の症状を呈さないことからして、この年齢の幼少児の初感染では伝染性単核球症と診断されないことが多く咽頭炎または扁桃炎と診断されている症例が多いのが実情です。

青年期あるいはそれ以上の年齢で初感染した場合は、発熱・全身倦怠感・口蓋扁桃の発赤腫脹・咽頭痛・全身特に頚部のリンパ節腫脹・肝脾腫を引き起こします。

【HHV-4の治療】

幸いな事にほとんど自然に治ってしまいます。

思春期以降に感染した場合、約50%が発病しますが、約4~6週間で症状は自然になくなると言われています。

6ヶ月以上症状が続く場合は重症化している可能性があり、注意が必要ですので受診されることです。

【検査を受ける時期】

唾液を介するオーラルセックスの後、4~6週後に症状が出ますので、その際に受診して検査を受けることです。

しかし、感染しても症状が出ない人もありますから、検査を受ける時期を判断するのは難しいです。

【HHV-4の検査】

血液検査では、ほとんどの症例でAST・ALT値の上昇が見られることから、肝炎と診断を誤ることがあります。

白血球総数は、正常かやや増加、好中球数は正常かやや減少し、リンパ球の著しい増加、異型リンパ球の出現(5%以上になることが多い)が特徴的です。

抗EBV EA-IgG抗体または、抗EBV VCA-IgM、抗EBV VCA-IgG抗体、抗EBNA-IgG抗体の抗体価を測定する。

抗EBNA抗体が初感染後、数ヶ月を経ないと出現しないのに対し、抗EA、VCM抗体は急性期にも出現します。

【感染パターンの分類】

1.初感染パターン

抗EBNA抗体陰性、抗VCA-IgGまたは/かつIgM抗体陽性となりますが、抗EA抗体は偽陰性が多いが、EA陽性ならば急性感染の可能性が高い。

2.既感染パターン

抗EBNA抗体陽性、他の抗体は(通常)陰性となれば、このような場合は症状の原因としてEBV感染は考えにくい。

EBウイルスについては、抗CMV-IgGおよびIgMを調べたり(IgM陽性例は急性感染の可能性が高い)、血液中のEBウイルスDNAを核酸増幅法(PCR)で調べることもある。

【治療】

伝染性単核球症に特異的な治療法はなく、対症療法が中心となります。

抗生物質は、伝染性単核球症それ自体には効き目がありません。

しかし、伝染性単核球症になると、比較的高率に細菌による混合感染を起こすことがあるので、血液検査所見から細菌による混合感染が疑われた場合には、抗生物質の投与を行います。

発熱が長期に持続する、全身状態が著しく不良である、血球減少が見られ血球貪食症候群の合併が懸念される、などの重症で例では、副腎皮質ステロイド投与やガンマグロブリン大量投与が行われることもあります。

【HHV-4とHIVの関係】

HHV-4感染は、性行為感染症でありませんので、HHV-4に感染してもHIVに感染しやすくなることはありません。

2016年12月19日月曜日

ヘルペスウイルスについて-6.HHV-5(ヒトサイトメガロウイルス)ー

【HHV-5とは】

ベータヘルペスウイルス亜科に属し、ヒトサイトメガロウイルス(human cytomegalovirus:HCMV)と呼ばれています。

※サイトメガロウイルス(CMV)とも呼ばれます※

※本稿ではサイトメガロウイルス(CMV)と呼ばずにHHV-5として解説していきます※

宿主の細胞の核内に光学顕微鏡下で"フクロウの目(owl eye)"様の特徴的な封入体を形成する特徴があります。す。

※封入体とは、ウイルスに感染した細胞の核内にみられる顆粒状の異常な構造物のことをいいます※

このウイルスは種特異性が強く、ヒト以外の動物には感染しません。

日本人の場合、乳幼児期の感染率が高く大多数の人が感染し抗体を持っていることから再感染することはありませんが、ヘルペスと同様に再発することはあります。

健康な人は感染しても症状が出にくいですが、乳幼児期に感染していない人で、性的に活発な若い成人層に感染が多いとされています。


【HHV-5の感染源と感染経路】

HHV-5は、感染者の体液(唾液、涙、母乳、尿、便、血液、腟液、精液など)に周期的に排出され、これらの体液との密接な接触により感染します。

したがって性行為・オーラルセックスによって感染する。

以上のことから性行為感染症のひとつに分類されています

感染方法としては、

1.先天性感染

妊娠中に母親が初めて感染して、それが胎盤を通して胎児に感染した場合に、出産時に異常がある場合が1割程度あります。

2.後天性感染

感染者の体液(唾液、涙、母乳、尿、便、血液、腟液、精液など)に周期的に排出されるこれらの体液との密接な接触により感染します。

ただし、乳幼児期などに一度感染していれば再度感染することはありません。

一度感染すると再度感染しませんが、体内にHHV-5が潜んでいるため免疫力が低下すると症状が出ることがあります。

【HHV-5の感染の症状】

男女ともに同じような症状が出ます。

主な症状としては、

倦怠感(だるさ)
発熱
のどの痛み
首のリンパ節のはれ
湿疹が出る
肝臓や脾臓の拡大、肝機能異常など

【HHV-5の治療】

治療薬としてはガンシクロビル、フォスカーネット、シドフォビル、バラシクロビルなどの抗ウイルス薬、抗CMV高力価免疫グロブリン、ヒト型抗CMV単クローン抗体などあります。

【検査を受ける時期】 

ウイルスを含む体液や血液に接触してから、20~60日後に症状が出ますが、感染しても全く症状のでない人もあります。

検査を受ける時期としては、ウイルスを含む体液や血液に接触してから、20~60日後に受ける必要があります。

また、何らかの自覚症状を感じたら医療機関で早期診断を受ける必要もあります。

【HHV-5の検査】

1.mRNAを検出するNASBA (nucleic acid sequence based amplification )法
2.ウイルス抗原を検出するantigenemia 法
3.DNA 検出するPCR 法
4.直接ウイルスを分離する方法
5.抗体検査

【抗体検査の判定方法】

○IgM陰性、IgG陰性の場合・・・過去・現在において感染なし。

○IgM陰性、IgG陽性の場合・・・過去にCMVに感染経験があり、既にCMVに対する免疫を保持しており、CMVは体内に潜んだ状態になっていると考えられる。

○IgM陽性、IgG陰性の場合・・・最近CMVに初めて感染したこと考えられます。。

○IgM陽性、IgG陽性の場合・・・比較的最近CMVに感染したと考えられますが、それが初感染か再感染または再活性化かの区別はできません。

【HHV-5と妊娠】

妊娠中にHHV-5に初感染すると、胎児に先天性の障害が発生する可能性があります。

最近では、妊娠可能な年齢の女性における抗体保有率が90%~70%まで下がっていることが明らかになっていることから、妊婦の間でHHV-5の初感染者が増えていまする。

したがって妊娠前にはHHV-5に感染した既往があるかを知っておく必要があります。

【HHV-5とHIVの関係】

AIDSで死亡した人の約70%以上にHHV-5感染が見られています。

HHV-5に感染しているとHIVに感染しやすくなるのではなく、HIVに感染して体の免疫機能が低下することにより、 HHV-5に感染しやすくなると言うことです。

2016年12月12日月曜日

ヘルペスウイルスについて-5.HHV-3(水痘・帯状疱疹ウイルス)-その2.帯状疱疹について-ー

【帯状疱疹の感染源】

水痘が治癒した後に脊髄知覚神経節に潜伏感染したHHV-3が回帰発症して起こります。

また加齢、免疫抑制剤の使用等、細胞性免疫の低下によって潜伏しているHHV-3が再活性化し発症します。

※体内に侵入して感染したHHV-3は、感染者が免疫不全や体調不良に陥ると体内に潜むHHV-3は、再び目覚め(再活性化する)帯状疱疹を引き起こします、これを回帰発症と言います※

【帯状疱疹の症状】

ほとんどの場合、体の左側か右側のどちらか片方の神経に沿って帯状にあらわれ、体の両側にまたがることはほとんどありません。

虫に刺された様な、あるいは虫に噛まれたような痛みと赤いひとつの発疹が出来るのが最初です。

その後チクチクとした痛みが増し、痛みを感じた場所にブツブツとした赤い発疹ができ、小さな水ぶくれとなって帯状に広がっていきます。

この症状は、特に胸から背中、腹部などによくみられ、顔や手、足にも現れます。

この症状が現れるのは体の左右どちらか片側だけ、一度に2ヵ所以上の場所に現れることはほとんどありません。

約1週間水疱は痂皮形成し、2~3週間で色素沈着を残して治癒します。

【帯状疱疹の治療】

対症療法により2~3週間で治癒します。

薬剤としてはアシクロビル、ビダラビン(Ara-A)が有効です。。

※帯状疱疹治癒後の後遺症として,三叉神経第1枝や肋間神経に生ずる持続性で刺すように痛みが続くヘルペス後神経痛(「帯状疱疹後神経痛」)が起こることが多いです※

治りにくく1年以上も痛みが続くこともあります。

【帯状疱疹は他人に感染するのか】

帯状疱疹が他人に感染することはあまりありません。

しかし、水疱の中にはHHV-3が存在し、水痘にかかったことがない人には感染する可能性もあります。

この場合の感染は、帯状疱疹の症状ではなく、水痘と同じ症状が出ます。

帯状疱疹の水疱が治るまでは、水痘に感染したことのない赤ちゃんや子供、妊婦には接触しないようにする必要があります。

【水痘・帯状ヘルペス検査】

水痘・帯状ヘルペス抗体検査にはCF法、EIA法によるIgM抗体とIgG抗体検査があります。

初感染である水痘を疑う場合は、IgM抗体またはCF法ペア測定を行います。

再活動の帯状疱疹ではIgG抗体ペア測定を行います。

リアルタイムPCR検査もあります。

【ワクチンについて】

帯状疱疹に使われるワクチン(Zostavax)は、日本では使用されていません。

アメリカで使用されている帯状疱疹に使われるワクチン(Zostavax)と、水ぼうそうに使われるワクチン(Varivax)では濃度が全く異なります。

Zostavaxの濃度はVarivaxの10倍以上含まれています。

そのことから帯状疱疹ワクチン(Zostavax)を、水痘予防のために子供に接種することはありません。

水痘ワクチン(Varivax)を帯状疱疹の予防のために使用することもありません。

日本においては、帯状疱疹専用のワクチンは存在しますが、未だ広く認識されていないことから、費用は自費負担(2016年4月の時点)となり、およそ6,000~9,000円のところが多いようです。

※2016年3月から、現在まで水痘の予防の目的で使われていた乾燥弱毒生水痘ワクチン(「ビケン」)が、50歳以上の人に限って、帯状疱疹の予防にも使えるようになっていますので、帯状疱疹の予防について心配な方は、医師に相談されることです※

次回はHHV-6(ヒトサイトメガロウイルス=human cytomegalovirus:HCMV)について解説いたします。

2016年12月5日月曜日

ヘルペスウイルスについて-4.HHV-3(水痘・帯状疱疹ウイルス)-その1.水痘について-ー

水痘・帯状疱疹ウイルスは、α-ヘルペスウイルス亜科に属するウイルスで、HHV-3と呼ばれますが別称としてVZV(Varicella Zoster virus)とも呼ばれています。

ヒトに対して水痘(Varicella)と帯状疱疹(Zoster)を引き起こすウイルスです。

このウイルスは、初感染としては水痘を発症します。

水痘が治癒した後は、脊髄後根神経節に潜伏し続け何らかの原因で免疫力が低下するとウイルスが再び活性化し、帯状疱疹を引き起こします。

顔面神経の膝神経節に潜伏していたものが再発した場合は、皮膚症状・顔面神経麻痺・難聴・めまいを引き起こします。

【水痘の感染】

患者の鼻腔粘液、水疱からでる浸出液との接触で感染します。

典型的な症状を引き起こす1~2日前から空気感染(飛沫感染)します。

潜伏期は11~21日です。

【水痘の症状】

顔から発疹が出始め、有髪頭部から体全体に出現し、やがて手足全体にも出現します。

発熱は発疹の出現する最初の3~4日のみ認めることが多いです。

発疹の出始めは、小さい紅疹で数時間で丘疹となりやがて水泡に変化していきます。

痂皮の脱落まで1~2週間かかります。

※すべての発疹が痂皮となれば、他人に感染させることはありません※

【痂皮とは】

皮膚の表面出来た小水疱、水疱あるいは膿疱が炎症を起こし破れ、壊死塊またはびらん面の分泌物が凝固して一時的に表面を覆ったものを言います。  

【水痘の終生免疫】   

HHV-3に感染して水痘となり、完治すれば終生免疫を獲得し、二度と水痘になることはありません。

しかし、回帰発症と言われるものがあります。

それが帯状疱疹です。

【水痘の合併症】

髄膜炎、脳炎、神経炎、肺炎。催奇形性あり。

※免疫抑制剤を使用中(免疫抑制状態)の時にHHV-3に感染すると、無数の水疱が出来出血することからは重症化しやすく(出血性発疹)死亡率が高くなります。

【検査】

体液性免疫の有無を見る血液検査と、細胞性免疫を調べる方法としての皮内テストがあります。

血液検査としては、水痘ウイルスの抗体を調べる検査としてELA法が一番多く用いられています。

水痘の抗体が血清中に残っていなくても、細胞の中に抗体がある場合もあることから、皮内テストも合わせて行います。

皮内テストは、水痘・帯状疱疹ウイルスの一部から作られた水痘抗原を皮内接種して反応を見るテストで、結核の抗体を調べるツベルクリン反応と同じ原理です。

※水痘の判断は視診が主となります※

現れた症状を見て行う場合がほとんどで、水痘による水疱は特徴的ですから発症後2~3日で診断はつきます。

子供の水痘の診断のために、上記のような検査を実施することはまずありません。

【治療】

ヘルペスウイルスなので、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルが有効です。

水痘、帯状疱疹とも同容量を使用します。

【予防】

水痘ワクチン・帯状疱疹ワクチンを接種します。

日本では長く任意接種ででしたが2014年より定期接種となっていることから、1歳になってから間隔をあけて2度の接種を行う。

【大人の水痘予防について】

水痘の感染発症が心配なときは、抗体検査を受けるのではなく予防接種を受けることです。

仮に既に水痘に感染していて水痘に対する抗体があったとしても、予防接種を受けても健康上の問題はありません。

次回はHHV-3(水痘・帯状疱疹ウイルス)の帯状疱疹について解説いたします。