血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2013年10月9日水曜日

臨床検査の基準値とは

臨床検査で参考にする基準値は,統計学的に算出した数値範囲を用いています。

臨床的検査学的に異常を示さず病気がなく健康な人の集団を健常者とし、その健常者の測定結果を集計すると左右対称の山型になります。

このうちの極端に高い数値2.5%と低い2.5%を除き,この平均値をはさんだ健常者の95%が含まれる範囲を基準値とします。

要するに検査を受けた人が病気であるのか、病気でないのかを、大まかに解釈する時に参考にする数値が基準値です。

健常者の95%が基準値の範囲内に収まりますが、疾患の徴候がない健康な人でも基準値から外れることがあり、反対に、検査値が基準範囲に収まっている人でも臨床的な症状を示す場合もあります。

その為、かつては『正常値』と呼ばれていましたが、統計的な平均値は現在では『基準値』と呼ばれています。

疫学的な統計データに基づく基準値は、正常範囲に収まる個人の多様性や個別差を十分にカバーすることが出来ませんので、正確な診断には基準値との比較だけではなく、医師による個別的な診察が必要となります。

また、定期的に健康診断を受けていると、疫学的な統計データに基づく基準値とは異なる"自分固有の基準値"が算出されるので、これを記録しておくことにより、自分自身の日頃の基準値を知ることが出来ますから、自分の体調の変化や病気の有無は"自分固有の基準値"との比較で判断する事ができます。

例えば今回検査を受けて得られ検査値と、前回の検査値に大きな変化が見られる場合などには、何らかの体調の変化や病気の徴候を疑う必要性があるということになります。

【注意事項】

基準値は検査方法、機器の種類、試薬の種類などによって、微妙にことなりますから、病院や医学書より多少に異なりますから、基準値の数値は絶対的なものではありません。

基準値内で数値が動くことは、心配ないことですから、気にする必要はありません。

2013年10月3日木曜日

アレルギー検査について-8.アレルギー血液検査の問題点-

アレルギー検査を受けて、異常な数値が出ることがあります。

これは何を意味しているのでしょうか?

1.数値は高くなっていても問題となる症状が出ていないことがあります。
 この場合は、問題にならない場合もあります。

2.逆に、数値は低くてもなんらかの症状が出ていることがあります。

これは注意が必要となります。

特に、MAST33のような即時型のアレルギー検査は要注意です。

 【事例】

例えば、牛乳を飲んだ場合で考えてみますと、

即時型検査では、数値が低く問題ないように見えても遅延型検査を受けると高い数値になっていることがあります。

これは、即時型の検査だけではアレルギーの存在を見逃すことがあるということです。

このような状態の人は多く存在します。

この原因としては日本で遅延型のアレルギー検査が始まったのはつい最近で分からなかったからにほかなりません。

従ってアレルギー検査は即日型検査だけでなく、遅延型検査も受けておく必要があるということになります。

【まとめ】

1.アレルギー検査を受けておくことによりアレルギーの原因となる物質を特定しておきそれを避ける事が可能となる。
特にピーナッツやソバ、エビ、カニなどによる即日型アレルギーの防止に役立つ。

2.いま出ている症状の原因を特定して、その治療を行う。

3.異常値が出ても、何の症状も問題もない場合がある時は、あまり気にする必要はない。

4.アレルギー検査の結果は、絶対的な検査ではなく、気に留めておくだけの場合もあることを認識して受けることです。

2013年9月23日月曜日

アレルギー検査について-7.アレルゲン刺激性遊離ヒスタミン検査-

アレルゲン刺激性遊離ヒスタミン検査(HRT :Histamine Release Test)は、 (好塩基球) ヒスタミン遊離試験とも呼ばれています。

血液中から分離した好塩基球という白血球の一種にアレルゲンを添加し、 そのとき放出されたヒスタミンの量を測定し、アレルゲンに対する反応性を調べます。

この検査は、特異的IgE抗体と結合した好塩基球が原因アレルゲンと反応して、 アレルギー症状を引き起こす原因物質であるヒスタミンを遊離したかどうかを検査するので、 同じin vitro(イン・ビトロ:試験管内での検査)の検査でありながら、特異的IgE検査よりも生体内の反応をより的確に反映するという特徴があります。

血液を調べるため、アナフィラキシーショックなどの危険性がある負荷試験よりも安全に実施ができます。

【どのような場合に検査をするのか】

食物を負荷することで強い症状(アナフィラキシーショック)を誘発するリスクが高いと思われる患者の場合は、 負荷試験を行わずに抗原診断の補助検査として使用できます。

特に汗アレルギーの患者に、アトピー性皮膚炎の原因特定に利用できます。

アトピー性皮膚炎の患者では、"ヒト汗抗原"に対して陽性を示す患者さんがおよそ80%存在すると言われています。

従ってアトピー性皮膚炎では、自分の汗に過敏に反応し、皮膚症状が悪化すると言われていましたが、 最近の研究によって"ヒト汗"のアレルゲンの正体は、健常人にも常在するカビの一種が産生する蛋白である事分かりました。

【検査の種類】

1.HRT乳幼児期用食物:卵白、オボムコイド、オバルブミン、牛乳、小麦

2.HRT学童・成人期用食物:ソバ、ピーナッツ、エビ、カニ、ゴマ

3.HRTアトピー性皮膚炎:ヒト汗、ヤケヒョウヒダニ、ネコ上皮、イヌ皮屑、カンジダ

2013年9月16日月曜日

アレルギー検査について-6.遅延型アレルギー検査-

遅延型(Ⅳ型)アレルギーは、細胞の中のTリンパ球が引き起こすアレルギーで、即時型(Ⅰ型)アレルギーに対し、発現が遅く抗原(アレルゲン)を体内に取り込んでから半日から数日たって反応がおこります。

これは、IgGやIgAといわれる抗体が関与していることがわかっています。

遅延型アレルギーの代表格は、"接触性皮膚炎"で、俗に言う「化粧品かぶれ」、「うるしかぶれ」などといわれているものです。

【遅延型アレルギーの特徴】

アレルゲンとの接触後、数時間から数日経って初めて反応が出ることから、原因の特定が困難なアレルギーですです。

一般的に遅延型反応は、食物アレルゲンに対する過敏性からきていることが多いです。

このタイプのアレルギーは、よく"隠れアレルギー"とも呼ばれます。

【遅延型アレルギー検査】

遅延型フードアレルギー検査を実施します。

日本人の食生活にお馴染みのある乳製品、野菜、果物、肉、魚、ナッツ、穀類、緑茶、烏龍茶、コーヒー、スパイス、昆布などをバランスよく揃えた、96種類の日本標準パネルで検査を行います。

※遅延型アレルギー検査は、現時点ではに関して、日本での検査は不可能なことから医院によっては、血液をアメリカへ送って検査を依頼していますので、結果を得るまでには時間がかかる上、高額な費用がかかります※

※USバイオテック研究所 日本正規代理店で検査キットを購入して、血液採取セットで血液を取り、USバイオテック研究所に郵送して検査を依頼することが可能です※

およその価格は、50000~70000円前後します。


【判定基準】

CLASS 0~6までの7段階に分類されます。

CLASS 4~6:強陽性⇒ 6ヶ月間の摂取制限。

CLASS 3 :中等度陽性⇒ 3ヶ月間の摂取制限。

CLASS 0~2:低反応⇒ 現状のままでOK


【おまけ】

アトピー性皮膚炎は、即時型アレルギーの代表格と思われがちですが、最近の研究によって遅延型アレルギーによっておこる側面もあることが明らかにされつつあります。

2013年9月9日月曜日

アレルギー検査について-5.アトピーの検査-


今回は、アトピーの検査を紹介します。

1. CAP16 アトピー乳幼児

乳幼児においてアトピー性皮膚炎単独だけでなく、気管支喘息単独やアトピー性皮膚と気管支喘息合併症に対する検査で、食餌系アレルゲンに乳幼児で重要な室内アレルゲンとスギの吸入系アレルゲンを組み合わせた検査です。


【食物系】 

牛乳 
卵白 
オボムコイド 
ソバ 
コムギ(実) 
大豆 
ピーナッツ 
エビ 
サケ 
マグロ、
イクラ

【吸入系】
 
ダニ1 
スギ 
ネコ皮屑 
イヌ皮屑 
ゴキブリ

2.CAP16 アトピー学童

学童期のアレルギー疾患に対応できるよう食餌系アレルゲンと吸入系アレルゲンをバランスよく組み合わせた検査です。

【食物系】 

牛乳 
卵白 
ソバ 
コムギ(実) 
大豆 
ピーナッツ 
キウイ 
エビ 
カニ 
マグロ

【吸入系】 

ダニ1 
スギ 
カンジダ 
ネコ皮屑 
イヌ皮屑 
ゴキブリ

3.CAP16 アトピー成人

成人のアトピー性皮膚炎単独だけでなく、気管支喘息やアレルギー性鼻炎との合併症にも対応したアレルゲンの検査で、皮膚常在菌のカンジダ、マラセチアをも組み合わせてあります。

【食物系】 

ソバ 
コムギ(実) 
大豆 
ピーナッツ 
キウイ 
エビ 
カニ 
サバ

【吸入系】 

ダニ1 
スギ 
カンジダ 
マラセチア 
ネコ皮屑 
イヌ皮屑 
ゴキブリ 


【検査目的】

アレルギー性鼻炎などで患者さん自身が気づかなかった感作を発見することができます。
【検査費用】
実施料1430点(健康保険利用で3割負担:約5000円)

【検査方法】

FEIA法(酵素免疫測定法)

【検査検体】

1.0mlの血清で検査可能です。

【判定基準】


2013年9月2日月曜日

アレルギー検査について-4.MAST33(同時多項目アレルゲン特異的IgE測定)-

33項目のアレルゲンを1回で測定できる保険適応の検査です。

【検査アレルゲンの内容】

・食餌アレルゲン14項目

1.ソバ
2.小麦 
3.ピーナッツ 
4.大豆 
5.コメ 
6.マグロ 
7.サケ 
8.エビ 
9.カニ 
10.チェダーチーズ 
11.ミルク 
12.牛肉 
13.鶏肉 
14.卵白


・花粉アレルゲン9項目

1.オオアワガエリ 
2.ハルガヤ 
3.カモガヤ 
4.ブタクサ混合物Ⅰ
5.ヨモギ 
6.スギ 
7.ヒノキ 
8.ハンノキ 
9.シラカンバ

・環境アレルゲン4項目(通年性)

1.コナヒョウヒダニ 
2.ハウスダストⅠ 
3.ネコ皮屑 
4.イヌ皮屑

・その他アレルゲン6項目

1.ペニシリウム 
2.クラドスポリウム 
3.カンジダ 
4.アルテルナリア
5.アスペルギルス 
6.ラテックス

【検査目的】

アレルギー性鼻炎などで患者さん自身が気づかなかった感作を発見することができます。

【検査費用】

実施料1430点(健康保険利用で3割負担:約5000円)

【検査方法】

CLEIA法

【検査検体】

0.5mlの血液で検査可能です。

【判定基準】


2013年8月26日月曜日

アレルギー検査について-3.特異的IgE検査-

Ⅰ型アレルギーはIgE依存型と呼ばれ、IgEが大きく関与しています。

体内に呼吸や飲食物の摂取、薬剤、注射、接触などによって異物(抗原)が入ってくると、それを防ぐために血清中にIgG、IgA、IgM、IgD、IgEなどの抗体ができますが、アレルギーに密接に関係する抗体はIgE抗体です。

体の中に出来たIgE抗体に、再び抗体のできるきっかけとなった抗原が入ってくると、急激に反応し、発疹、発熱、鼻汁、涙、かゆみ、ショックなどのアレルギー性疾患を引き起こします。

特異的IgEはアレルギーを引き起こす原因物質(アレルゲン)を特定するための検査です。

【検査方法】

血液を使い酵素免疫測定法の一種であるFEIA法(Fluorescence-Enzyme Immunoassay)で検査します。

【基準値】

特異的IgE抗体の正常値は健常者で0.34 UA/ml以下です。

抗体のある場合、0.35~100までの数値で示します。

これをRAST値と云います。

そして0.35~100までの間を1~6までの6段階に分類します。

これをRASTスコアと言います。

RASTスコアの数値が高いほど抗体が多いことを意味します。

【判定】



クラス1は疑陽性つまりアレルゲンである疑い、クラス2以上は陽性つまりアレルゲンの可能性が高い、クラス4以上は強陽性で大部分の患者さんがアレルギー反応を示すといわれています。

※IgE抗体が証明されてもアレルギー症状が認められない人もいます※

また、クラスの上昇はアレルギーの悪化を意味し、減少は改善を意味します。

次回は特異IgE抗体検査の検査項目について解説いたします。