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2012年2月26日日曜日

性行為感染症検査-6.梅毒血清検査法その6.梅毒検査法による梅毒診断法-


各種梅毒検査の結果から、その判定法を解説します。

一般的に梅毒検査法は、STSとTPHA及びFTA-absを組み合わせて検査しますが、今回はこれに早期に信頼出来る結果が得られるIgM-FTA-absを組み合わせて判定方法を以下に示します。


【梅毒血清検査法による梅毒診断法】


※クリックしますと表が拡大します※

2012年2月19日日曜日

性行為感染症検査-6.梅毒血清検査その5.IgM-FTA-abs検査-


FTA-abs検査は、IgG型のTP抗体を検出する検査法ですが、IgM-FTA-abs検査はIgM型のTP抗体を検出するための検査法です。

梅毒に感染した初期には、IgM抗体が先に出来て、その後IgG抗体が出来ます。

このIgM抗体は、梅毒に感染後1週間程度で身体中にできることから、IgM-FTA-abs検査は梅毒に感染後1週間で受ければ信頼出来る結果が得られます。

そのことからして、早く感染の診断を下したい時に利用される検査法です。

梅毒感染後早く陽性となる順番は、以下のとおりとなります。

1.IgM-FTA-abs検査

感染後1週間

2.FTA-abs検査

感染後3週間

3.STS検査(ガラス板法、RPR検査)

感染後4週間

4.TPHA検査

感染後5~6週間

2012年2月12日日曜日

性行為感染症検査-6.梅毒血清検査その4.FTA-abs検査-


FTA-abs検査(梅毒トレポネーマ蛍光抗体吸収検査:Fluorescent Treponemal Antibody-absorption Test)は、スライドグラスに梅毒病原体であるトレポネーマ・パリーダムの菌体成分を吸着させ、TP抗体を間接蛍光抗体法で検出する検査法です。

非病原性トレポネーマとの交差反応による偽陽性反応を防止する意味で、非病原性トレポネーマで患者血清を事前に吸収処理して検査することから、偽陽性反応の出現率が低いのが特徴です。

吸収処理した血清を、トレポネーマ・パリーダムを吸着処理したスライドグラスの上に滴下し、乾燥しないようにして37度で一定時間反応させた後、血清成分を洗い流し、クライドグラスに蛍光抗体をのせ再び37度で反応後、蛍光色素を洗い流した後に、蛍光顕微鏡で観察します。

1.陽性

血清中のTP抗体+梅毒トレポネーマの菌体成分+蛍光抗体色素=梅毒トレポネーマが蛍光を発する。

2.陰性

血清中にTP抗体が存在しないことから、蛍光抗体色素が梅毒トレポネーマに吸着しないことから梅毒トレポネーマは蛍光を発しない 

TPを利用するFAT-abs検査は、感染後3~4週後にTPHA検査より早く陽性となりことから、STS陽性、TPHA陰性の場合の梅毒鑑別に利用されます。

FTA-abs検査もTPHA検査同様、一旦陽性となると治療して梅毒が完治しても、一生涯陽性反応が続くことから、治療の判定には適さない検査法です。

2012年2月7日火曜日

性行為感染症検査-6.梅毒血清検査その3.イムノクロマト法TPHA検査-


代表的な迅速検査法のエスプラインTPについて解説します。

【測定原理】

酵素免疫測定法を測定原理としたイムノクロマト法による血清または血漿中のTP抗体検出用試薬です。

この検査法は、TPの主要抗原と考えられているTpN47とTp15-17の2種類のリコンビナント抗原を使用しています。

検体滴下部に滴下した血清または血漿中にTP抗体が存在すると、酵素標識抗原〔アルカリホスファターゼ(ALP)標識リコンビナント抗原(TpN47)およびアルカリホスファターゼ(ALP)標識リコンビナント抗原(Tp15-17)〕と反応した後、展開液によりメンブレン上を移動し、判定部に固定されたTP抗原と結合して、血清または血漿中のTP抗体を介した3者のサンドイッチ複合体を形成し青色のラインが出現します。

反応確認用のレファレンスラインは、メンブレン上のTP抗原と異なる位置(下流側)へ抗ALP抗体を固定化したもので、固定化TP抗原とのサンドイッチ複合体形成に関与しなかったALP標識抗原と結合し、標識抗原の酵素反応によりラインが出現を確認することにより、血清または血漿、標識抗原、基質の展開および酵素反応が正常に行われたことを確認できます。

【操作上の注意】

血清または血漿を滴下後15分で判定する。

15分を経過後に青色のラインが出現しても陽性と判定しない。

必ずレファレンスラインに青色のラインが出現していることを確認する、レファレンスラインに青色のラインが出現していないときは再度検査を実施する。

【 判定方法 】

シート上に出現する青色ラインの有無を肉眼で判定します。

反応過程は複雑ですが、原理自体はいたってシンプルな方法を用いているため、従来の方法に比べ短時間で結果が得られます。

【判定ラインの画像】

1.陰性の画像

青色のレファレンスラインが認められ、青色の判定ラインが認められなかった場合。



※レファレンスラインの画像は省略しています※

2.陽性の画像


青色のレファレンスラインが認められ、青色の判定ラインが2本または1本認められた場合。


※レファレンスラインの画像は省略しています※

【検査のデメリット】

1.肉眼で判定するため、判定者個人による判定誤差が見られる。

2.測定時間を厳守しないと、陰性、陽性の判定が異なることがある。

2012年2月1日水曜日

性行為感染症検査-6.梅毒血清検査その2.TPHA検査-


TPHA(Treponema Pallidum Hemagglutination Test)は、梅毒病原体である梅毒トレポネーマ・ハリーダム(以下TPと略します)の菌体成分を抗原として使用する検査方法です。

梅毒の病原体であるTPの菌体成分を吸着させたゼラチン粒子が、TPの感染抗体によりゼラチン粒子の凝集反応を起こす状態を見て判断します。

※発売当初は、TPの菌体成分をタンニン酸処理した羊の赤血球に吸着させたものでしたが、現在はゼラチン粒子に吸着させています。

梅毒検査にTPHAを採用することのメリットは、偽陽性反応を引き起こすことが極めて少ないことから本検査が陽性の場合は、ほぼ間違いなく梅毒と判断できます。

デメリットとしては、梅毒トレポネーマに感染しても、TPHAで陽性を示すのは、感染後5週以降であるために、早めに診断をしたいという場合には不向きです。

そのために、早い時期にTPHAだけで梅毒の診断をすると感染を見逃すことがあります。

また、一度梅毒トレポネーマに感染してTPHAが陽性となると、抗生物質で治療して完治しても、陽性反応はまず一生涯消えることがありません。

そのためTPHA検査のみを使用して、陽性と判定されても、梅毒は治癒しているにもかかわらず、再度治療するという誤った認識をしている医師も見られます。

※治療判定の際の検査方法については、別途紹介します※

【附 則】

近年採用された全自動検査機器を使用しての『TPLA』は、従来のTPHAに比べて1週間前後早く陽性になる傾向があります。

2012年1月25日水曜日

性行為感染症検査-6.梅毒血清検査その1.STS検査-


梅毒トレポネーマが、感染して生体の組織を破壊したときに血液中に出てくる脂質カルジオリピンに対する抗体を検出する検査法を総称してSTS(Serologic Test for Syphilis)と呼びます。

ガラス板法、RPRカード法があり、血液中に抗体がなければ陰性となりますが、抗体があった場合には陽性と判定され、梅毒に感染している可能性ありと判定されます。

1.ガラス板法

カルジオライピン・レシチン抗原で感作したコレステリン粒子と患者血清をガラス板上で混和し、凝集塊の有無を顕微鏡で観察する検査。

2.PRテスト(Rapid Plasma Reagin Test)

カルジオライピン・レシチン抗原を吸着させた炭素粒子と、患者血清とを混和してできる凝集塊の有無を肉眼で観察する検査。

これらSTSは、感度に優れ、比較的早期から陽性になる反面、梅毒に感染していなても陽性となる生物学的偽陽性(BFP:Biological False Positive reaction)には常に留意が必要です。

生物学的偽陽性反応は、肝疾患、ウイルス感染症、自己免疫疾患、妊娠などで非特異的に抗体が産生される結果、抗カルジオリピン抗体保有者となり、梅毒に感染していないにもかかわらず陽性反応を示すことがあります。

※また、全く健康な人でも検査のたびにSTSが常に陽性となる人も存在します。

従ってSTSが陽性となっても生物学的偽陽性反応の可能性があることから、すぐに梅毒に感染しているとは言えません。

※STSが陽性となれば、必ず梅毒トレポネーマを使用したTPHA FTA-absで検査をしてから梅毒感染の判断を行う必要があります。

【STS検査を受ける時期】

これらの検査は、梅毒に感染すると4週程度で陽性となることから、行為から30日で受ければ信頼できる結果が得られます。

2012年1月19日木曜日

性行為感染症検査-5.咽頭淋菌検査-


淋菌が咽頭に感染することがありますが、性器に感染したときに比べて症状がほとんどでないことから、感染に気づく人は非常に少ないのが現実です。

仮に感染があっても喉の違和感、軽い咳など咽頭炎の症状しか出ませんので、耳鼻咽喉科を受診しても淋菌に感染す可能性のある行為をしたと医師に申告しないと単なる咽頭炎と診断されて、淋菌感染を見逃すことになります。

咽頭の淋菌感染の検査は非常に難しいことを解説しておきます。

口腔内には非病原性菌の常在菌であるナイセリア属が、わかっているだけで11種も存在しています。

病原性のある淋菌も実はこのナイセリア属です。

淋菌咽頭感染検査には、PCR法は使用できない!!

遺伝子増幅法であるPCR法はナイセリア属と交差反応を示すため、このナイセリア属の細菌を淋菌と間違えて検出してしまい、淋菌に感染していなくても陽性となってしまいます。

いわゆる"偽陽性反応"が起こるわけです、そのために淋菌の性器感染検査に使用される遺伝子増幅法であるPCR法は咽頭感染の検査には適していません。

それでは、淋菌の咽頭感染検査にはどの様なものがあるのでしょうか?

咽頭淋菌感染の検査は、ナイセリア属と交差反応をしめさないSDA法(Strand Displacement Amplification)または、TMA法(Transcription Mediated Amplificatio)による検査を行います。

咽頭に淋菌が感染しているかどうか、SDA法やTMA法検査を受けてないと分かりません。

淋菌に感染している不安があれば検査を受けてみてください。

自覚症状がなくても感染するリスクのある行為をした場合は、必ず検査を受けることです。