血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2018年9月2日日曜日

便中カルプロテクチン検査

便中カルプロテクチン検査は2017年6月に潰瘍性大腸炎の病態把握を目的として検査される検査として保険収載されました。

【便中カルプロテクチン検査とは】

潰瘍性大腸炎の検査として利用されます。

潰瘍性大腸炎の検査としては、大腸内視鏡検査が用いられてきましたが、患者の負担が大きいことが欠点でしたが、この度患者の糞便を用いる簡便な体外診断薬が登場したのが便中カルプロテクチン検査です。

便中カルプロテクチン検査は、潰瘍性大腸炎の再燃を早期に発見したり、内視鏡検査の回数を減らすなど、潰瘍性大腸炎の経過観察を大きく変化させる検査と言えます。

潰瘍性大腸炎の炎症の再燃を確定診断するには内視鏡検査など他の検査所見を含めた総合的な判断が必要となりますが、少なくともこの便中カルプロテクチン検査が陰性であれば炎症の再燃はないと判断出来ます。

【潰瘍性大腸炎とは】

潰瘍性大腸炎は、大腸粘膜に慢性の炎症を生じ、下痢や血便、腹痛を頻回に引き起こす原因不明の疾患で、寛解と再燃を繰り返しやすい疾患です。

潰瘍性大腸炎は、根本的な治療法がないうえに近年若年層を中心として増加傾向にあります。

根本的な治療法がないことから、寛解維持が診療の目標となっています。

【便中カルプロテクチンとは】

カルプロテクチンは、好中球の顆粒中に豊富に含まれてれており、腸管局所で炎症が起こると白血球が腸管壁を通じて管腔内に移行します。そのため、糞便中のカルプロテクチン量を測定することで、腸管炎症度を把握することが可能になり、慢性的な炎症性疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病等)の診断補助ならびに内視鏡検査の実施判断を補助します。

便中カルプロテクチンを調べることは、直接的に腸管粘膜の炎症の程度を知ることになります。

カルプロテクチンは、腸内細菌で分解されることなく、常温で1週間以上安定していることから検査がしやすい利点があります。

便中カルプロテクチンは、潰瘍性大腸炎の診断及び疾患活動性の評価、再燃予測を知る上で大変有用な検査です。

潰瘍性大腸炎の診断の上で便中カルプロテクチンを検査することにより、内視鏡検査の適応患者を選択する事が可能となります。

要するに潰瘍性大腸炎の診断の上で、内視鏡検査・CT検査・腸注などの検査は浸潤性や被爆等の問題から訴えの軽い患者全員に実施することは大変難しいことから、簡易的に実施できる便中カルプロテクチンは有用視されている訳です。

【検体】

糞便1~3gで検査可能

【基準値】基準値

50.0mg/kg以下
炎症性腸疾患の診断補助の指標

300mg/kg以下
潰瘍性大腸炎の病態把握の指標

【測定方法】

蛍光酵素免疫測定法

【検査の判断】

カルプロテクチン検査を行って高い数値が出れば、2~4週間後に再検査を実施し、連続して高い数値が出たり、上昇し続けるような場合には、再燃を強く疑い、症状がなくても内視鏡検査の必要性がある。

3~6ケ月に一度程度、定期的に測定しながら、ある程度の上昇があれば再燃を疑内視鏡検査を実施する。

カルプロテクチン検査は陰性的中率が高いので、陰性であれば内視鏡検査の省略も可能となる。

カルプロテクチン濃度が低ければ炎症が起こっていないと判断し、内視鏡検査に進む必要はなくなる。

2018年8月21日火曜日

消毒・殺菌・滅菌・除菌について-4.除菌・抗菌-

除菌・抗菌という言葉は専門用語ではなく、どの程度まで病原菌を駆除できるかという曖昧な意味合いを持つ言葉です。

1.除菌とは

除菌とは「増殖可能な菌を対象物から有効数減少させる」という意味で、洗剤や漂白剤など「雑貨品」の表示にも使える言葉です。

家庭用合成洗剤・石鹸の公正競争規約の中に、台所用洗剤のスポンジ除菌と、住居用洗剤、洗濯用洗剤の除菌表示のための統一基準が設けられています。

すべての菌を除去する・すべて駆逐すると思われがちですが、実際は消毒と除菌は同じ程度なのです。

したがって除菌よりも効果が高い場合は殺菌になります。

いくら除菌しても菌は生き残り、10分から数時間で2倍に増殖できるのが細菌で、90%の細菌を殺しても、1~10時間後には元に戻ってしまいます。

2.抗菌

抗菌とは、菌を殺したり減少させるのではなく、"菌の増殖を抑制、あるいは阻害する"という意味しかありません。

抗菌は菌の増殖を阻害するという意味で、除菌よりも弱い効果しかありません。

よく抗菌文具や抗菌スリッパという言葉を耳にしますが、これらには菌がいないのではなく、菌が繁殖しにくいというだけです。

近年、日本国内においては清潔志向や安全志向が高まり、それに伴い抗菌加工製品の市場は拡大しており、そもそも日本人は、他の国と比較して清潔・安全志向が高い傾向にあるのが事実です。

近年多くの感染症が報告され、細菌に対する不安感や恐怖心が急速に増大し、その結果細菌への防衛策として、抗菌加工を施した製品が市場で多く販売、消費されるようになってきています。

【おまけ】

抗菌という言葉は、近年新しく使われ出した言葉で、現在までのところ抗菌という言葉について法令や業界、また学術的にも共通の定義あるいは認識がされていません。

一部の関係業界団体では、それぞれ独自に抗菌に関する用語の定義を定めており、各関係業界団体における抗菌の定義は、概ね"細菌の増殖を抑制する"としているが、その内容の表現には若干の違いがみられるのが現状です。

2018年8月8日水曜日

消毒・殺菌・滅菌・除菌について-3.滅菌-

滅菌とは、すべての細菌を死滅させることを言います。

増殖性を持つあらゆる微生物(主に細菌類)を完全に殺す、又は除去する状態を実現するための作用・操作のことを言います。

対照物を限りなく無菌に近づけるために、国際的に採用されている現在の基準としては「滅菌操作後、100万個のうち1個の対象物に微生物が付着している確率」で滅菌できれば良いとされています。

【滅菌方法】

1.火炎滅菌

菌を直接、ガスバーナー等で焼く方法で、一般的には検査器具の滅菌に利用される。

2.乾熱滅菌

ガスまたは電気を利用した機器で、乾燥させたまま160~180℃くらいの熱で滅菌を行う。ガラスや金属製品、手術器具などの滅菌に利用される。

3.高圧蒸気滅菌

オートクレーブで2気圧の飽和水蒸気によって温度を121℃に上昇させ、20分間処理する。
培地、包帯、ガーゼなどの滅菌に利用される。

医療機関における器材の再使用のための蒸気滅菌の第一選択は高圧蒸気滅菌です。

この方法は短時間で滅菌出来ますが、高温高圧に耐えられない材質のものには利用できない。

4.ガンマ線滅菌

医療機器の製造工程において利用される。

ガンマ線は透過力が強いことから人畜にも危害が及ぶため、人が作業する場所で同時に滅菌を実施することはできない。

5.ガス滅菌

オートクレーブが使用できないプラスチック製品等にエチレンオキサイドガスを使用して滅菌を行い。

高熱に弱い素材のものにも適用できることと、筒状や複雑な形状である医療機器についてもエチレンオキサイドガスが浸透するため適用しやすい利点があるが、ガス毒性が強く残留ガスが人体等に悪影響を及ぼす可能性があることに注意が必要とされる。

滅菌は殆どの場合医療現場で行われ、日常生活で行われることはまずありません。

【まとめ】

滅菌とは第十四改正 日本薬局方によると物質中の全ての微生物を殺滅または除去することを言い、生存する微生物がゼロである状態を指します。

2018年7月24日火曜日

消毒・殺菌・滅菌・除菌について-2.殺菌-

殺菌とは、特定の細菌を殺すことを言い、言い換えれば病原性や有害性を有する糸状菌、細菌、ウイルスなどの微生物を死滅させる操作のことです。

要するに殺菌とは、対象物に付着する菌を殺すことで、殺す対象や程度を含みません。

そのため10%の菌を殺して90%の菌が残っていても"殺菌した"ことになるため、有効性に対する厳密な保証はありません。

要するにどの程度の菌を殺すことが殺菌となるのか、明確な定義はありません。

ちなみにこの殺菌という言葉、洗剤などには使うことは出来ません、殺菌というのは、薬事法で医薬品や医薬部外品に使用できる言葉なのです。

殺菌剤とは、病原性を有する微生物を殺す、または増殖を抑止するための薬剤のことを言い、殺菌薬とも言います。

殺菌剤は抗生物質や抗真菌薬を除外し、微生物を非選択的に殺すものを呼ぶのが普通です。

また医療機器の殺菌のみ、あるいは皮膚にのみ用いるものは消毒薬と呼ぶことがことが多い。

殺菌剤としては以下のようなものがありま。

・ヨウ素剤 ― ヨードチンキ、ポビドンヨード

・塩素類 ― 次亜塩素酸ナトリウム

・マーキュロクロム液

・グルコン酸クロルヘキシジン-ヒビテン

・アルコール類 ― エタノール、イソプロパノール

・オキシドール(過酸化水素水)

・逆性石鹸 ― 塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウムなど

・フェノール類 ― クレゾール石鹸液など

2018年7月15日日曜日

消毒・殺菌・滅菌・除菌について-1.消毒-

日常生活で消毒・殺菌・滅菌・除菌・抗菌などの言葉をよく耳にされると思いますが、それぞれどのようなことなのかはっきりと理解しづらいのが現実でしょう。

今回これらについてわかりやすく解説して行きます。

初回は消毒についてです。

消毒とは、生存する微生物の数を減らすために用いられる処置法で、必ずしも微生物をすべて殺滅したり除去するものではありません。

要するに消毒とは、人体に有害な病原性を持つ微生物を除去・無害化することです。

消毒はあまり明確な概念ではなく、被消毒物の用途や消毒の対象となる微生物の種類など、消毒の目的により必要とされる消毒が異なります。

人体に有害な病原性を持つ病原性微生物を、死滅または除去させ、害のない程度まで減らしたり、あるいは感染力を失わせるなどして、毒性を無力化させることをいいます。

消毒も殺菌も、"薬事法"の用語で、一般に消毒殺菌という言い方をする場合がありますが、消毒の手段として殺菌が行なわれることもあります。

人体に有害な病原性を持つ病原性微生物の病原性をなくする方法としては殺菌以外にもありますから、滅菌とも殺菌とも違うという意味で使い分けがされています。

【薬事法とは】

正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」と言います。

従来「薬事法」と呼ばれていた法律が、平成25年11月に改正さ、この際の大きな改正点は、再生医療に関する再生医療等製品の規定が新設された点です。

【消毒方法】

手や指などはアルコール・石鹸・ヨウ素・過酸化水素(オキシドール)・塩素で消毒します。

医療機器などは煮沸したり加熱したりして消毒します。

2018年7月10日火曜日

お見舞い申し上げます

この度の大雨等による被害を受けられた皆様に謹んでお見舞い申し上げます。

一日も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。

2018年7月5日木曜日

もっと知ろうHIV検査-6.感度と特異度-その3.感度と特異度の関係-

理想的には感度100%、特異度100%であれば、完全に正しく病気の有無を判定しうる理想的な検査となりますが、実際はそのような検査は残念ながらまだ存在していません。

そのために検査結果には偽陽性と偽陰性が必ず存在します。

HIVスクリーニング検査は、HIVに感染していない人が誤って陽性(僞陽性反応)と判定されたり、あるいはHIVに感染している人を誤って陰性(僞陰性反応)と判定される可能性を常に持っています。

この原因は、HIV検査に限らず医療におけるすべての検査は、感度・特異度共に100%である検査は存在しないからです。

従って感度、特異度がともに高い検査は、その検査を実施するだけで疾患の有無を高い確率で判定できることになります。

一般的にスクリーニングに使用される検査は、陽性者を見逃さないために感度を高くしていることから、逆に特異度は低いということになります。

反面確認検査に利用される特異度の高い検査は、本当の陽性者のみを見つけることから感度が低いことにより感染初期の本当の陽性者を見逃すことがあります。

要するに診断を確定する検査は、感度は低いでが特異度が高いことからこの検査が陽性となるとその疾患に感染していると言えますが、実施する時期が早いと感度が低いことから真の陽性者を見逃してしまうことがあるのです。

今までのことをまとめますと、HIV検査は感度、特異度共に100%の検査キットを製造すれば良いという結論に達しますが、感度、特異度共に100%のHIV検査は存在しません。

※HIV検査に限らずどの様な検査でも感度、特異度共に100%の検査は存在しません※

感度が高いHIV検査は、スクリーニング検査(除外診断)に使用され、特異度の高い検査は、病気を確定する検査(確定診断)に使用されます。

感度と特異度の両方が高い検査を何故使用しないのかと多くの方が疑問に思われると思いますが、そんな究極な検査は存在しないのが現実なのです。

なぜなら、感度と特異度の二つはお互いにトレードオフの関係があるからです。

※トレードオフ(Trade-off)とは、一方を追求すれば他方を犠牲にせざるを得ないという状態・関係のことを言います※

※感度を追求すれば当然特異度は犠牲となり、特異度を追求すれば当然感度は犠牲となるということです※

まとめますと感度が高い検査は特異度が低い検査であり、感度が低い検査は特異度が高い検査となります。

従って感度と特異度を考えながら検査を実施する必要があるわけです。
 

【本当のHIV陽性を決定するのはどうするのか】

1.感度・特異度共に高いHIV検査を複数回実施する。

2.日にちを変えて採血して感度・特異度共に高いHIV検査を再度実施する。

3.ふたつ以上の検査結果を組み合わせて真の陽性か、ニセの陽性かの判断を行います。