血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2016年6月29日水曜日

HIV検査に応用されている検査手法について-8.ダイナスクリーン・HIV Comboの判定(陽性事例)

検体滴下20分後にコントロールラインと抗原判定ライン及び抗体判定ラインを肉眼で観察し、赤色ラインの有無を確認して判定する。

1.陽性・・・抗原及び抗体判定窓及びコントロール判定窓の両方に赤色ラインが現れた場合。

(1)HIV-1のp24抗原陽性・・・Cのコントロール判定窓に赤色のラインが認められ、AGの抗原判定窓に赤色ラインが認めら、ABの抗体判定窓に赤色ラインが認められない。


(2)HIV抗体陽性・・・Cのコントロール判定窓に赤色のラインが認められ、ABのHIV抗体判定窓に赤色のラインが認められ、AGの抗原判定窓に赤色ラインが認めらない。


(3)HIV-1抗原とHIV抗体が共に陽性・・・Cのコントロール判定窓に赤色のラインが認められ、AGの抗原判定窓とABのHIV抗体判定窓の両方に赤色のラインが認められる。


C・・・コントロールライン
AG・・・抗原ライン
AB・・・抗体ライン

2016年6月21日火曜日

HIV検査に応用されている検査手法について-8.ダイナスクリーン・HIV Combo

イムノクロマトグラフ法による第四世代の抗原抗体検査法で、血清、血漿及び全血中のHIV-1 p24 抗原及びHIV-1・HIV-2抗体の検出をおこなう迅速HIVスクリーニング検査試薬です。

【販売メーカ】

アリーアメディカル株式会社から販売されています。

【検査原理】

イムノクロマトグラフ法を原理とするHIV-1p24抗原と抗HIV-1抗体、抗HIV-2抗体を検出する試薬です。

検体中にHIV-1p24抗原が存在する場合は、抗原はテストストリップのビオチン化抗HIV-1p24リコンビナント抗体、セレニウムコロイド標識抗HIV-1p24マウスモノクローナル抗体と結合し、固相化されたアビジンにビオチンが結合することにより、抗原判定窓に赤色のラインが形成されます。

また、検体中に抗HIV-1又は抗HIV-2抗体が存在する場合、抗体はセレニウムコロイド標識HIV抗原と結合し、固相化されたHIV抗原に結合して抗体判定窓に赤色のラインが形成されます。

この形成される赤色ラインを肉眼で観察して血中にHIV-1p24抗原及び抗HIV-1抗体、抗HIV-2抗体の有無を判定します。

【検査方法】

1.検体(血清・血漿)を50μLを検体滴下部位に滴下後、20分間静置。

2.検体が全血の場合は、50μLを検体滴下部位に滴下して、染み込むまで1分間静置してから、全血展開液を1滴滴下して19分間静置。

3.20分が経過してから肉眼でラインの有無を判定する。

【非特異反応の出現率】

肉眼で赤色ラインを判定することから、1~5%前後の偽陽性反応が見られます。

【感度】

適切な時期に受けることで、抗原及び抗体は、ほぼ100%検出可能です。

【検出可能なグループとサブタイプ】

HIV-1抗原

HIV-1 group M subtype A、B、C、D、F、G、H 、CRF01-AE、CRF02-AG、HIV-1 group O の全てのHIV-1抗原。

HIV抗体

HIV-1 group M subtype A、B、C、D、F、G、H、J、K、CRF01-AE、CRF02-AG、CRF03-AB CRF05-DF、CRF09-A/U、CRF11-cpx、HIV-1 group O、HIV-2の全てのHIV抗体。

【日本での普及率】

2015年6月に厚生労働省に認可され、2015年12月より販売されましたから、同じ抗原抗体検査のエスプラインHIV Ag/Abに様に普及していないと考えられています。

今後保健所や医院で採用されるものと考えられます。

【測定結果の判定法】

検体滴下20分後にコントロールラインと抗原判定ライン及び抗体判定ラインを肉眼で観察し、赤色ラインの有無を確認して判定する。

1.抗原陽性・・・抗原判定窓及びコントロール判定窓の両方に赤色ラインが現れた場合。

2.抗体陽性・・・抗体判定窓及びコントロール判定窓の両方に赤色ラインが現れた場合。

3.抗原抗体が共に陽性・・・抗原判定窓、抗体判定窓及びコントロール判定窓に赤色ラインが現れた場合。

4.陰性・・・・・コントロール判定窓だけに赤色ラインが現れ、抗原判定窓及び抗体判定窓には赤色ラインが現れない場合。

5.判定無効(再検査)・・・コントロール判定窓に赤色ラインが現れない場合。

※判定ラインの赤色の強さは、HIV抗原または抗HIV抗体の力価を定量的に反映していませんので、ラインの色が濃いいから抗原や抗体が多く血液中にあるとは限りません※

【検査時の注意】

検体滴下20分後に肉眼で判定する。

40分を超えて判定することは出来ません。

※反応時間が40分を超えた場合は、誤判定を招く恐れがあるので再度検査をし直す必要があります。

【検査費用】

保険点数

実施料121点+検体検査判断料144点で265点

※この点数に初診料等が加算されます※

※自費診療の場合は、個々の医療機関によって異なります※

【検査を受ける時期】

1.HIV-1抗原は、不安な行為より30日から50日前後で受けることにより信頼できる結果が得られます。

※50日以上経過して受けると、血液中のHIV-1抗原の量が少なくなっていていることから、陽性であっても偽陰性反応を呈することがあります※

2.HIV-1及びHIV-2抗体は、不安な行為から12週以降に受けることにより信頼できる結果が得られます。

2016年6月6日月曜日

AIDS指標疾患

今回はAIDS指標疾患について解説いたします。

AIDS指標疾患とは、HIV感染者がこの疾患を発症した段階でAIDS患者と診断される、23種類の疾患を指します。

当然HIV検査及びその確認検査で陽性であることが前提となります。


A. 真菌症    

 1.カンジダ症(食道、気管、気管支、肺)
 2. クリプトッコカス症(肺以外)
 3. コクシジオイデス症
 4. ヒストプラズマ症
 5. ニューモシスチス肺炎

B. 原虫感染症

 6. トキソプラズマ脳症(生後1カ月以後)
 7. クリプトスポリジウム症(1カ月以上続く下痢を伴ったもの)
 8. イソスポラ症( 1カ月以上続く下痢を伴ったもの)

C. 細菌感染症  

 9. 化膿性細菌感染症
10.サルモネラ菌血症(再発を繰り返すもので、チフス菌によるものを除く)
11. 活動性結核(肺結核又は肺外結核)
12. 非結核性抗酸菌症

D. ウィルス感染症

13. サイトメガロウィルス感染症(生後1カ月以後で、肝、脾、リンパ節以外)
14. 単純ヘルペスウィルス感染症
15. 進行性多巣性白質脳症

E. 腫瘍

16. カポジ肉腫
17. 原発性脳リンパ腫
18. 非ホジキンリンパ腫(a. 大細胞型・免疫芽球型、b. Burkitt型)
19. 浸潤性子宮頸癌

F. その他

20. 反復性肺炎
21. リンパ性間質性肺炎/肺リンパ過形成:LIP/PLH complex(13歳未満)
22. HIV脳症(痴呆又は亜急性脳炎)
23. HIV消耗性症候群(全身衰弱又はスリム病)

日本国内において1985年から2014年までの統計によるAIDS指標疾患の上位3位は、以下のとおりです。

1位 ニューモシスチス肺炎

2位 カンジダ症

※カンジダ症は食道、気管、気管支、肺に発症するカンジダ症で、性器カンジダ症や口腔カンジダ症は含みません※

3位 サイトメガロウイルス感染症

1~3位の疾患で全体のおよそ68%を占めています。

2016年5月31日火曜日

いきなりエイズとは

HIVに感染しても、すぐにAIDSを発症しません。

一昔前までは、HIVに感染後8~10年でAIDSを発症していましたが、最近では発症時期が早くなり早い場合は3~5年で発症しています。

これはHIVの変異によるものと考えられています。

HIVが体内に侵入すると免疫細胞を破壊することにより、徐々に感染者の免疫力を低下させていきます。

免疫力がある程度以上に下がると健康なときには感染しないような感染症(日和見感染症)をはじめとした、HIVに特徴的な疾患(AIDS指標疾患)に感染しやすくなります。

HIV感染者の免疫力は、CD4陽性リンパ球の数値で判断しますが、この数値が一定以下に下がったり、数値に関係なくAIDS指標疾患に感染した状態が、AIDSと呼ばれます。

日本におけるHIV感染症の特有な特徴として"いきなりエイズ"があります。

要するにHIVに感染するような危険な行為をしてもHIV検査を受けること無く放置し、体調が悪くなった時に医療機関を受診しその時に日和見感染症をきっかけにHIV感染が発見される、いわゆる"いきなりエイズ"の報告数が多いことです。

日本ではHIV・AIDS患者の新規報告数に占めるAIDS患者(=いきなりエイズ患者)の報告数の割合は、30%程度の高値で推移しています。

この高い数値は日本以外の先進国では見られません。

HIVに感染しても、早期に診断されれば、抗HIV薬でHIVの増殖を抑え、免疫力の低下を未然に防ぐことでAIDSの発症をおさえることが可能となっています。

そして普通の人と同様の社会生活を送れ、天寿をまっとうできる様になってきています。

更に自分がHIV感染者であると知っていれば、性交渉などにおいても適切な予防対策をとることができ、他人への感染を防げることにもなります。

HIV/AIDSに関する医療はこの10年で著しく発展し、一昔前までは「HIV感染イコール死」とされていましたが、HIVに感染したからといってすぐに生死に関わるといった病気ではなくなってきました。

HIV感染を早期に発見し早期治療がより重要なのです。

感染に気づくこと無く"いきなりエイズ"になって初めてHIV感染に気づき、治療を開始しても良い効果が得られません。

従ってHIVに感染するような行為をした場合には、必ず適切な時期にHIV検査を受けることが非常に重要となります。

リスクのある行為をした、心配な症状がある人は、ぜひ検査を受けに行くことをお勧めします。

当然HIVに感染しないように予防措置をとることは更に重要なこととなります。

2016年5月14日土曜日

HIV検査の原理について

HIV検査には、抗原抗体検査・抗体検査がありますが、これらの検査には種々の検査原理が利用されています。

今回はHIV検査に利用されている検査原理について解説いたします。

HIV検査には以下の検査原理が利用されています。

1.化学発光免疫測定法(CLIA:Chemiluminescent Immunoassay )

2.化学発光酵素免疫測定法(CLEIA:Chemiluminescence Enzyme Immunoassay)

3.蛍光酵素免疫測定法(FLEIA:Fluorescence Enzyme Immunoassay)

4.酵素免疫法(EIA:Enzyme Immunoassay,ELISA :Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)

5.ラテックス凝集法(LA:Latex Agglutination)

6.イムノクロマト法(IC:Immunochromatography)

7.人工担体凝集法(PA:Particle Agglutination)

※1~7の検査原理は、第三世代抗体検査、第四世代抗原抗体検査に利用され、各メーカから種々の検査キットが販売されています。

※1~5は、全自動の検査機器によって自動的に検査されます。

※6~7は検査技師や医師が手で検査を行い肉眼で判定します。

※リアルタイムPCR検査は、1~7には含まれていません※

HIV検査を受ける際には、上記に記載されたどの検査原理で検査するのかを必ず確かめておく必要があります。


2016年5月1日日曜日

セカンドオピニオン-4.セカンドオピニオンを受けた後になすべきこと-

セカンドオピニオンを受け、別の医師の意見を聞くことによって、ご自身の病気や治療方針についての考えが変化したか否か、再度担当医に報告しこれからの治療法について再度相談する必要があります。

セカンドオピニオンに対する担当医の意見を聞くことで、治療への理解がより深まり、納得する治療を選択することが可能となる場合もあります。

セカンドオピニオンの結果、セカンドオピニオン先の病院で治療を受けることになった場合には、今後の治療を円滑にすすめるためにこれまでの治療内容や経過などを紹介状などで引き継ぐ必要があります。

治療はセカンドオピニオン先の病院で行い、紹介元医療機関(最初受診した医療機関)では治療後の経過観察を行う場合もあります。

治療を受けるうえで、「本当にこの治療法で良いのか?」「もしかして、治療方針が間違っていないかな?」、「他の選択肢があるのではないか?」などと不安に思った場合は、積極的にセカンドオピニオンを利用すべきです。

疑問や不安を持ったままでは円滑に治療を受けることは出来なくなります。

医師との信頼関係があってこそ自分の命をあずけることが出来るのです。

最後にセカンドオピニオンを受ける意味合いをまとめてみますと、

1.主治医が提示した治療方法のほかに、良い治療方法がないかどうかを判断できる。

2.主治医の治療方針に間違いがないかを判断できる。

3.セカンドオピニオンを検討するということは、主治医の治療方針に疑問を持つということなので、「主治医に失礼」、「医師が気分を害する」、「その病院にいけなくなる」と考えがちですが、最近ではセカンドオピニオンは一般的なものとして認知されていますので、遠慮無く利用すべきです。

4.逆に医師からしても、自分の担当する患者が治療に関する知識を高めれば、それだけ納得して治療に専念してもらえるので、セカンドオピニオンの活用には理解を示しています。

5.セカンドオピニオンは主治医に対して決して失礼ではありません。

6.自分の命を守ることになるかもしれないセカンドオピニオンは、絶対に利用すべきです。

7.セカンドオピニオンを嫌う医師には自分自身の命を預ける必要はありません!!



2016年4月15日金曜日

セカンドオピニオン-3.利用することの意味合い-

セカンドオピニオンを利用する際の注意として、ファーストオピニオン(はじめの意見)を大切にする必要があります。

セカンドオピニオンを利用したがどの意見を選んでよいかわからなくなってしまうことのないように、最初に求めた担当医の意見(ファーストオピニオン)を十分に理解しておくことが重要となります。

最初の診察で、自分自身の病状・進行度、なぜその治療法を勧められるのかなどについて十分に理解しないまま、セカンドオピニオンを受けてもかえって混乱する結果となってしまいセカンドオピニオンを利用した意味がなくなってしまいます。

以下にセカンドオピニオンを利用する際の注意事項をまとめてみました。

1.セカンドオピニオンを受けるためには、担当医に、セカンドオピニオンを受けたいと考えていることを伝えて診療情報提供書(紹介状)、血液検査や病理検査・病理診断などの記録、CTやMRIなどの画像検査結果やフィルムを準備してもらう必要があります。

2.セカンドオピニオンを受ける医師や病院の選び方としては、最近では"セカンドオピニオン外来"を設置しているところがふえています。

3.セカンドオピニオンをどこで受けるかがわからない時には、がん診療連携拠点病院などのがん相談支援センターに問い合わせると、その地域のセカンドオピニオン外来を行っている病院や、専門領域などの情報を得ることができます。

4.ガンと診断されて手術を勧められたけれでも手術よりも放射線治療を検討したいといった、具体的な治療方法に関する希望がある場合には、ガンの放射線治療を専門とする医師にセカンドオピニオンを受けるという方法もあります。

5.セカンドオピニオンを受けるために必要な手続き(受診方法、予約、費用、診察時間、必要な書類など)は、医療機関によって異なりますから事前に確認が必要となります。

6.セカンドオピニオン外来は、基本的に公的医療保険が適用されない自費診療で、病院によって費用が異なることも念頭に入れておく必要があります。

7.セカンドオピニオンを受けるときには、限られた時間を有効に利用するために何を相談したいかを事前に整理しておく必要があります。