血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2014年11月27日木曜日

エボラ出血熱-5.検査法-

【検査材料】

血液・血清・咽頭拭い液・尿

【検査方法】

1.分離・同定によるエボラウイルスの検出

2.PCR法によるエボラウイルスの遺伝子の検出

3.エライサ法によるエボラウイルスの抗原の検出

4.関節蛍光抗体法によるエボラウイルスのIgM抗体及びIgG抗体の検出

5.エライサ法によるエボラウイルスのIgM抗体及びIgG抗体の検出

【検査の判断基準】

Ⅰ.以下に記載したいずれかが満たされた場合,"エボラウイルス感染症"と判定する。

1.検体からエボラウイルスが分離される。

2.検体から PCR法でエボラウイルスの遺伝子が検出される。

3.検体からエライサ法でエボラウイルス抗原検出される。

4. エライサ法でエボラウイルス核蛋白が検出される。

5.間接蛍光抗体法またはエライサ法で、症状の急性期と回復期に採血したペア血清中のエボラウイルスの核蛋白に対する抗体価が,4倍以上有意に上昇する結果が得られる。

Ⅱ.以下に記載した場合は"エボラウイルス感染症"を疑う。

エライサ法でIgM抗体が検出された場合。

Ⅲ.陰性(エボラウイルスの感染なし)

上記に記載した1~5までの結果が陰性の場合。

2014年11月16日日曜日

エボラ出血熱-4.エボラウイルスの感染源-

【感染源】

・血液

・臓器及び組織

・唾液

・汗

・尿

・糞便

・膣分泌液

・精液

・母乳

・嘔吐物

【エボラウイルスの体外での生存期間】

液体又は乾燥有機物の中でも、室温では相当の日数、生存及び感染力を維持している。

汚染から6日後の室内環境から感染性を有するエボラウイルスが回収された事例が報告されています。

4℃でも数日間生存可能。

-70℃では永久的に感染能力を有しています。

凍結乾燥(フリーズドライ)でも感染能力を永久的に有しています。

体外でのエボラウイルスは、安定して感染力を長く有しますが、消毒剤には極めて感受性が高く簡単に死滅してしまいます。

【侵入経路】

傷のない皮膚は感染防護バリアがあることから感染はしません。

引っ掻き傷、切傷(大小問わず)、発疹、及び擦過傷は正常なバリア機能を損傷していることから、ウイルスは簡単に侵入します。

特に怖いのは飛沫感染することです。

ウイルスを含む血液や体液、唾液などが付着することによりウイルスが粘膜組織を通過して体内に侵入することも出来ます。

粘膜組織は眼、口、喉、肺、鼻腔内、膣組織、腸管、及び尿管を含む 箇所から感染します。

発病した人又は死亡した人以外の霊長類の取り扱及び葬儀の儀式における遺体との接触によっても感染します。



2014年11月6日木曜日

エボラ出血熱-3.消毒について-

【エボラウイルスの特性】

ウイルスは脂質を含む「エンベロープ」と呼ばれる膜で包まれているタイプと、エンベロープを持たない小型球形ウイルスに分類することが出来ます。

エボラウイルスはエンベロープと呼ばれる膜を持つウイルスであり,消毒薬抵抗性は低く、多くの消毒液が有効です。

【エンベロープとは】

エンベロープは偽装・宿主細胞への吸着の役割を果たすため、感染能力は高いのですが、このエンベロープを壊すことにより感染能力がかなり低下するのがエンベロープタイプのウイルスの特徴です。

エンベロープは、水に溶けにくく油に溶けやすい性質のため、エタノールなどの消毒薬によって簡単に破壊することがで可能です。

つまり、エンベロープタイプのウイルスは薬物耐性が低い(多くの消毒剤が有効)ということになります。

【消毒剤】

エボラウイルスのエンベロープは、アルコールなど簡単に破壊することが可能ですから、アルコール消毒液が有効となります。

以下に有効な消毒液を紹介しておきます。

1.アルコール

消毒用エタノール,70v/v%イソプロパノール


2.次亜塩素酸ナトリウム溶液

ミルトンR, ピューラックスR, テキサントR, ハイポライトRなど

3.グルタルアルデヒド

ステリハイドR, グルトハイドR, サイデックスRなど

4.加熱

60℃で 30~60 分間加熱

5分間の煮沸

【消毒方法】

1.手指の消毒

石けんを使用して流水で洗う。

手指に有機汚染物(血液、嘔吐物など)が付着しているとアルコール手指消毒剤の効果が低下するので、先に石けんを使用して手指に付着している有機汚染物を払い流してからアルコール手指消毒剤を使用する必要があります。

70~90%エチルアルコール(エタノール)ベースの手指除菌剤は、確実にエボラウイルスを死滅させます。

2.衣類などの消毒

水 10 に対し家庭用漂白剤1(10%v/v)を加えた塩素消毒剤に10分間つけ置きすればウイルスは死滅します。

3.器具・荷物

体液が付着した器具や道具、荷物などは家庭用漂白剤を水道水で2~3倍に薄めてこれを布などに染み込ませて拭き取れば十分効果が得られます。

2014年10月27日月曜日

エボラ出血熱-2.エボラウイルスとは-

【エボラウイルスの分類】

エボラ出血熱を引き起こすエボラウイルスとは、フィロウイルス科エボラウイルス属に属するウイルスです。

フィロウイルスとは、ラテン語で"糸"と言う意味です。

大きさは、80~800nmの細長いRNAウイルスで、ひも状、U字型、ぜんまい型など形は決まっておらず多種多様です。

【発見】

1976年にスーダン(現:南スーダン)のヌザラ (Nzara) という町で男性患者から発見されています。

【起源】

現時点では不明ですが、おそらくコウモリやげっ歯類が保有しているものが何らかの理由で人に感染したと考えられています。

【感染様式】

エボラウイルスに感染し、症状が出ている患者の血液、分泌物、吐物、排泄物や患者の体液等に汚染された医療器具物質に十分な防護なしに触れた際、ウイルスが傷口や粘膜から侵入することで感染します。

しかし、症状のない患者からは感染しませんし、空気感染もしません。

【ウイルスの危険度】

人類が発見したウイルスの内で最も危険なウイルスのひとつとされています。

数個のエボラウイルスが体内に入るだけで感染すると言われており、ひげ剃りあとの小さな傷や、目に見えない手先の擦り傷に微量のエボラウイルスが付着するだけで感染する可能性が指摘されています。

エボラウィルスはWHOのリスクグループ4の病原体に指定されており、バイオセーフティーレベル(BSL)は最高度の4が要求されています。

国は、世界保健機関が定めたウイルスの危険度バイオセーフティーレベルに応じて、ウイルスを扱うことができる施設を定めていますが、エボラウイルスのBSLは最高レベルのBSL-4で、国内では国立感染症研究所と茨城県つくば市の理化学研究所バイオリソースセンターの2ケ所でしか取り扱う事ができません。

現実これら国内のBSL-4の2ケ所の設備は、地域住民の理解が得られず稼働できないのが現状です。

従って現時点で日本国内にエボラ出血熱が発生すれば、検査やウイルスの解析のできる施設はないということです。

このように日本では、BSL-4に属するウイルスが侵入すればお手上げの状態です。

【予防ワクチン】

2014年10月現時点で医療現場で使用できる現在存在しませんが、WHOは2015年には予防ワクチンが出来上がり、使用可能と発表していますがその効果は今だ不明です。

【治療薬】

やはり2014年10月現在存在していませので、患者の症状にあわせた対症療法しか出来ません。

エボラ出血熱へ治療効果があるとされる薬剤としては、富山化学が開発した抗インフルエンザ薬として承認されているアビガン(一般名ファビピラビル)がありますが、この薬剤は現時点ではエボラ出血熱の治療薬としては承認されていません。

海外で使用されて、治療に成功したという報告もされていますが引き続き臨床検討が必要とされています。

それ以外に米国、カナダなどの未承認薬が治療効果がみられるとの報告がされていますが、完全な治療薬ではなくまだまだ臨床検討をする必要があります。

【日本国内での医療体制】

日本国内で患者が発生した場合は、全国で45ケ所の医療機関で対応すると国はしていますが、日本国内ではエボラ出血熱の治療経験のある意思が皆無に等しく、上記にも述べましたように検査体制も全く整っていないことからして、完全に対応はできないと指摘する専門家が大勢を占めています。

過去にもHIV感染者が出た時でも、大パニックとなり受け入れ拒否をした医療機関が続出したことからしても、十分な医療は難しいと考えざるを得ません。

取り越し苦労であれば良いのですが。

2014年10月14日火曜日

エボラ出血熱-1.エボラ出血熱とは-

西アフリカのギニアから2014年3月に始まったエボラ出血熱の流行は、シエラレオネ、リベリア、ナイジェリアへと拡大し、過去最大の流行となっており、未だに終息する気配はなく欧米への飛び火が懸念されております。

エボラ出血熱がわが国に上陸するのは時間の問題とも言われています。

今回から数回にわたってエボラ出血熱についての解説を行います。

【エボラ出血熱とは】

エボラウイルスによって引き起こされる感染症。

【エボラウイルス】

大きさが80~800nmの細長いRNAウイルスで、ひも状、U字型、ぜんまい型など形は決まっておらず多種多様です。

【エボラ出血熱の由来】

1976年に旧ザイールなどで初めて発見され、エボラの名は初期の患者発生地域の川の名称に由来する。

【エボラ出血熱の潜伏期間】

感染後2~21日間。

【臨床症状】

発熱や頭痛、のどの痛みが現れ、下痢や肝臓・腎臓機能の異常が生じ、末期には吐血や下血をして死に至る。

【感染源】

患者の血液や嘔吐物や排泄物などに触れることで感染します、空気感染はせず、症状のない人からの感染は起こりません。

【予防ワクチン】

2014年10月現在存在しません。

【治療法】

特異的な治療法は現時点ではありません。

患者の症状に応じた対症療法を行うことしか出来ません。

【死亡率】

致死率は50~90%と極めて高い。

2014年10月7日火曜日

デング熱-5.簡易検査検査-

日本国内でのデング熱感染者は、少なくなりつつありますが未だ油断はできません。

反面海外旅行で感染する人の報告が増加しつつあります。

特にマレーシアでは、デング熱が例年を上回る流行を見せており、年初来の死者数は9月末までに149人、患者数は75200人となり死者数、患者数ともに昨年の3倍を超えていることからしても、海外での感染には十分注意が必要です。

今回はデング熱検査のひとつで簡易検査について解説いたします。

【Dengue NS1 DetectTM Rapid Test 】

Inbios 社製でイムノクロマト・ストリップ法によりヒト血清からデングウイルスの NS1 タンパク(non-structural protein 1)を同定するための簡易検査キットです。

【検査をする時期】

デング熱ウイルスに感染して、血液中にデング熱のIgG抗体とIgM抗体 が上昇してくる前の感染初期の検体からデング感染を推定できます。

【検査方法】

1.製品に添付の Chase Buffer Type A をウエルに滴下する。

2.テストストリップのサンプル・パッドに検査検体を50μLを注意深く滴下する。

※テストストリップのバッファー・パッドの部分やウエルのバッファーには直接検体を滴下しない用に注意する※

3.直ちに検査検体を滴下したテスト・ストリップを下にしてウエルに浸す。

4.30分放置後肉眼でラインの出現を読み取る。

※結果の読み取りはかならず検査開始後30分から45分の間に読み取る、尚45分経過後の結果は信頼性はありません※

【検査結果の判定】

陽性:コントロールとテストの領域に赤色のバンドが出た場合は陽性と判定します。

※テストバンドの色が薄い場合も陽性と判定する※

※テストバンドの赤色は検体中の NS1 抗原の濃度により変化する※

※テストバンドの色が薄くても明らかに赤い線が出ている場合は陽性と判定する※

陰性:コントロールの領域にしかバンドが出ていない場合は陰性と判定します。

※テスト領域のバンドはテスト開始後30分経過しないと出現しない※

再検査:コントロール領域にバンドが出ない場合は、たとえテスト領域にバンドが出ていたとしても検査無効とし、再度検査を実施する※

【このキットは現在利用可能なのか】

検査試薬は試験研究用試薬で、厚生労働省が臨床検査キットとして承認していませんので、医療機関での診断用途には使用できません。

診断用検査としてはPCR検査か抗体検査を利用するしかありません。

この簡易キットは、2014年10月現在、日本では製造されておらず全て外国から輸入されています。


2014年9月29日月曜日

デング熱-4.デング熱の臨床検査-

2014年9月27日時点での日本国内でのデング熱患者は、150人となりました。

今回は、デング熱の臨床検査について解説いたします。

【検査の種類】

発症初期の1~5日目は非構造蛋白抗原(NS1)を検出するために遺伝子検査を実施する。

特にNS1抗原は簡易キットを使用して非構造蛋白抗原(NS1)の検査を実施する。

解熱する前後の4日以降は特異的IgM抗体のの検査を実施する。

発症から1週間以降の回復期であれば血清中IgG抗体の上昇を確認する。

【ウイルス分離や核酸検出検査】

ウイルス抗原検出よりも正確ですが、手間と費用がかかるためあまり用いられていないのが現状です。

【PCR検査】

PCR検査が2012年に導入されていますが、利用されるのはこれからです。

【役立つ臨床検査とは】

デングウイルス特異抗体、免疫グロブリンG(IgG)型及び免疫グロブリンM(IgM)型の検査は、感染の後期において診断を確認するのに役立ちます。

【IgG抗体とIgM抗体とは】

IgGとIgM抗体は共に、感染後5~7日後に体内に出来、IgM抗体の最高レベル(力価)は最初の感染後に現れるますが、IgM抗体は二度目または三度目の感染でも体内に作りだされます。

IgM抗体は、最初の感染後30~90日で検出されなくなりますが、すぐに再感染が起きた場合は、再び検出されます。

IgG抗体は、感染して一度体内に出来ると数十年以上もの間検出されることからして、症状がない場合、過去の感染歴を知るのに有用です。

血液中のIgG抗体は、最初の感染の14~21日後にピークに達しその後の再感染では、より早い段階でピークに達し、力価は通常さらに高くなります。

IgGとIgMの両抗体は、感染したウイルスの血清型に対する防御免疫を有しています。

【IgG抗体とIgM抗体検査の利用法】

IgG抗体検出のみでは通常感染の有無の診断を下さず、14日後に再度血液を採血し、IgG抗体のレベルが4倍以上増加した場合はデングウイルス感染し判断します。

尚、デング熱の症状が見られる場合はIgM検出で診断を確定します。

※IgGおよびIgM抗体を用いる検査は、黄熱ウイルスなどの他のフラビウイルスと交差反応を起こすため、偽陽性反応を引き起こすことから血清学的検査では判断が困難な場合も多く見られることがあります※

簡易検査キットに関しては、次回解説いたします。