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2014年9月29日月曜日

デング熱-4.デング熱の臨床検査-

2014年9月27日時点での日本国内でのデング熱患者は、150人となりました。

今回は、デング熱の臨床検査について解説いたします。

【検査の種類】

発症初期の1~5日目は非構造蛋白抗原(NS1)を検出するために遺伝子検査を実施する。

特にNS1抗原は簡易キットを使用して非構造蛋白抗原(NS1)の検査を実施する。

解熱する前後の4日以降は特異的IgM抗体のの検査を実施する。

発症から1週間以降の回復期であれば血清中IgG抗体の上昇を確認する。

【ウイルス分離や核酸検出検査】

ウイルス抗原検出よりも正確ですが、手間と費用がかかるためあまり用いられていないのが現状です。

【PCR検査】

PCR検査が2012年に導入されていますが、利用されるのはこれからです。

【役立つ臨床検査とは】

デングウイルス特異抗体、免疫グロブリンG(IgG)型及び免疫グロブリンM(IgM)型の検査は、感染の後期において診断を確認するのに役立ちます。

【IgG抗体とIgM抗体とは】

IgGとIgM抗体は共に、感染後5~7日後に体内に出来、IgM抗体の最高レベル(力価)は最初の感染後に現れるますが、IgM抗体は二度目または三度目の感染でも体内に作りだされます。

IgM抗体は、最初の感染後30~90日で検出されなくなりますが、すぐに再感染が起きた場合は、再び検出されます。

IgG抗体は、感染して一度体内に出来ると数十年以上もの間検出されることからして、症状がない場合、過去の感染歴を知るのに有用です。

血液中のIgG抗体は、最初の感染の14~21日後にピークに達しその後の再感染では、より早い段階でピークに達し、力価は通常さらに高くなります。

IgGとIgMの両抗体は、感染したウイルスの血清型に対する防御免疫を有しています。

【IgG抗体とIgM抗体検査の利用法】

IgG抗体検出のみでは通常感染の有無の診断を下さず、14日後に再度血液を採血し、IgG抗体のレベルが4倍以上増加した場合はデングウイルス感染し判断します。

尚、デング熱の症状が見られる場合はIgM検出で診断を確定します。

※IgGおよびIgM抗体を用いる検査は、黄熱ウイルスなどの他のフラビウイルスと交差反応を起こすため、偽陽性反応を引き起こすことから血清学的検査では判断が困難な場合も多く見られることがあります※

簡易検査キットに関しては、次回解説いたします。

2014年9月20日土曜日

デング熱-3.デング熱と鑑別が難しいチクングニア熱とは-

2014年9月19日時点での日本国内でのデング熱患者は、17都道府県で141人となりました。

現時点で重症の人がいないのが幸いです。

今回は、デング熱と非常によく似たチクングニア熱について解説しておきます。

【チクングニア熱とは】

チクングニア熱(Chikungunya fever:CHIKV)は、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカなどにより媒介されるウイルス性の伝染病で、デング熱やウエストナイル熱と症状が非常によく似ています。

チクングニアの名前は、スワヒリ語の「折り曲げる(that which bends up)」に由来しています。

【ウイルス】

チクングニアウイルス(CHIKV)はトガウイルス科アルファウイルス属に属する節足動物媒介性ウイルスです。

【潜伏期間】

感染から発病まで(潜伏期)は2~12日と言われていますが、一般的に気2~7日です。

感染しても発症しない(不顕性感染)場合もありますが、その頻度は不明です。

【臨床症状】

ウイルスを保有する蚊に刺されてから2日から長くても2週間程度の潜伏期間の後に、40℃に達する高熱と斑状丘疹が出来、関節が激しく痛む、頭痛や結膜炎、羞明(眩しがること)などを引き起こします。

発熱は2日ほど続き急に収まりますが、その後関節痛、頭痛、不眠、全身疲労などは5日から7日ほど継続します。。

小児とくに新生児では嘔吐、下痢、脳髄膜炎などを生じる場合がありますが、予後は一般的に良好です。

 CHIKVの感染は、消耗性疾患(debilitating illness)ですが、非致死性で、最も頻繁に見られる症状は発熱、関節痛、発疹、頭痛、全身倦怠、嘔気、嘔吐、筋肉痛、リンパ節腫脹です。

【デング熱との鑑別は】

症状がデング熱と類似しており、症状からの鑑別は難しく確定診断にはRT-PCR、ウイルスの分離、血清検査などの検査が必要となります。

【治療法】

特異療法は存在しないため、発熱に対する通常の対症療法を行うだけとなります。

ステロイドやアスピリンは副作用の恐れがあり使用は控えるべきです。


病気からの回復は年齢によって異なる。若い患者が5-15日で回復するのに対し、中年では1-2.5月を要し、年を取るほど時間がかかる。また病気の程度も若いほうが軽い。

妊婦に対して悪影響はありません。

致死率は0.1%と極めて低い。

【予防法】

デング熱やウエストナイル熱と同様で蚊に刺されないことです。

デング熱と同様にワクチンも、予防薬もありません。

2014年9月13日土曜日

デング熱-2.デング熱の臨床症状と血液検査の詳細について-

デング熱の発症者は9月12日現在、17都道府県で115人となり以前終息する様子はありません。

【臨床症状】

蚊に刺された3~7日後に、発熱(38~40℃)、頭痛(目の裏が痛い)、関節痛、下痢などの症状が5~7日感続き、熱が下がる頃に全面が赤くなり、中に白い斑点がポツポツとある皮疹が現れるのが特徴です。

特に高熱に加え、頭痛、目の奥の痛み、ふしぶしの痛み、筋肉の痛みがあれば感染が強く疑われますが、咳、のど痛、鼻水などの症状がある場合はデング熱の可能性は低いです。

発熱から5~7日後の熱が下がり始める頃に全身倦怠感が強く表れ、重症化する可能性があるので注意が必要です。

【血液検査】

発熱の3日目ごろから白血球数と血小板数が少なくなります。

白血球、血小板の減少が特徴的です。

"デング出血熱"の場合は、

①ヘマトクリット値は同性同年代の人に比べて20%以上上昇。

②血小板数は減少し、100000以下となる。

③出血凝固時間は延長する。

④補体は活性化されて、C3は減少し、C3a、C5aは上昇する。

【入院の必要性】

高熱が続いて体力が消耗するか倦怠感が強い為に、食事や飲水が十分にできないことから入院に至る人が多いです。

【異なるタイプのウイルスに感染すると重症化しやすい】

デングウイルスは血清型で4つのウイルス型(DENV-1、DENV-2、DENV-3、DENV-4)に分類されています。

血清型の異なるウイルスによる2度目の感染をすると重症化しやすくなります。

同じ血清型のウイルスに再感染しても発症することはないと考えられています。

過去に感染したことのある人が他の血清型のデングウイルスに感染した場合は、初回の感染で中和能を有さない感染増強抗が体内に多量に産生され、2回目の感染時に大量の免疫複合体が血液中に形成されるから、体内の炎症が強く現れデング出血熱を引き起こすと考えられています。

【発症率】

デングウイルス感染者のうち、発症するのは10~50%で、重症化するのはそのうちの数%程度です。

注意しなければいけないこととして、妊婦や母体からの移行免疫の切れる6カ月以上の乳幼児、糖尿病の患者は重症化しやすい傾向があることです。

2014年の世界保健機構(WHO)の発表では、重症化するのは感染者200名に1~2名程度、死亡に至るのは感染者中約6000名に1名と推定されています。

【注意点】

デング熱ウイルス感染が認められている地域では、ヒトスジシマカ(ヤブ蚊)に刺されないよう、長袖等を着て可能な限り肌を露出しないような服装をすることと、虫除けスプレーを使用する対策を取る必要があります。

ヒトスジシマカは、11月下旬まで活動すると言われており、特に9月のヒトスジシマカは越冬卵を産むために活発に吸血活動を行っています。

熱い8月よりも9月や10月上旬にこそ危険とされていますので、晩夏から秋にかけても決して油断大敵です。

蚊に刺された後に発症が疑われるような症状が出た場合には、素人判断をしないで早めに医療機関を受診することです。

2014年9月5日金曜日

デング熱-1.デング熱とは-

【デング熱の現状】

デング熱は、熱帯や亜熱帯の全域で流行しており、東南アジア、南アジア、中南米で患者が多く発生しており、年間5000万~1億人が発症しているという疫学統計があります。

日本に最も近い流行地は台湾です。

日本国内では海外で感染し、帰国後に発症する例は年約200件報告されていますが、国内での感染は1945年以降は確認されていませんでした。

今回の流行で2014年9月5日の時点で、14都道府県で68人の感染者が報告されていますが、今後共感染者は増加すると考えられます。

【デング熱の病原体】

デングウイルス(Dengue virus)が原因の感染症です。

【感染経路】

蚊によって媒介され主たる媒介蚊は、ネッタイシマカ(日本には生息していません)です。

日本にでは、青森県以南のほとんどの地域でみられるヒトスジシマカも媒介します。

人から人への感染はありません。

【症状】

ウイルスを持つ蚊に刺されてからおよそ2~15日の潜伏期の後、発熱や頭痛、筋肉痛、発疹などの症状が出現し、はしかの症状に似た特徴的な皮膚発疹もでます。

大半は1週間程度で回復しますが、まれにデング出血熱に発展し、出血、血小板の減少等を引き起こしたり、デングショック症候群に発展して出血性ショックを引き起こすと重症化し、死亡する場合もあります。

デング熱とは知らずに一般的な頭痛薬を使用すれば症状が重篤化する恐れがあります。

更にアセトアミノフェン以外の解熱鎮痛薬を使うと、血小板の減少を促し、出血を助長する恐れがあります。

今の時期蚊に噛まれて、もしデング熱が疑われるような症状が出たら自己判断で薬を使用せずにすぐに専門医に診てもらうことです。

【予防ワクチンと治療法】

治療薬はなく、予防するワクチンも存在しません。

症状を緩和する対処療法をしてウイルスが体内から消失するのを待つしかありません。

【検査法】

検査法としては、

1.細胞培養によるウイルス分離

2.ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるウイルスの核酸検出

3.ウイルス抗原検出や特異抗体などの血清学的検査

※検査法については後日解説します※

【予防対策】

蚊に刺されないようにするしか対策はありません。

可能な限り肌の露出の少ない衣服を着用することと、蚊は色の濃いものに近づく傾向があるので、白など薄い色のシャツやズボンを着用して虫よけスプレーを服の上から小まめにかける必要があります。

2014年8月29日金曜日

喀痰検査-1.喀痰とは-

【喀痰とは】

「痰を吐くこと」、あるいは単に「痰」を指す言葉です。

【痰は何処で造られるのか】

痰は呼吸器系の粘膜からしみ出る粘液の分泌物でねばねばした流体で、呼吸器系で作られた粘液に限り咳によって出される粘液で色は透明色~黄色をしています。

【痰の主成分は】

痰は呼吸器系の粘膜からしみ出る分泌物で、その成分には肺や気管支、咽喉頭など気道からはがれた細胞も含まれていますのでこれらの細胞に異常があったり、異物(細菌、ウイルス、ほこりなど)や血液成分が混じっていたりすると、痰に変化があらわれます。

従って痰を調べれば、肺や気管支など呼吸器のさまざまな情報を得ることができる訳です。

【痰の性状】

漿液性や粘液性、膿性、血性などに分けられます。

【痰の色】

痰は、病気によって色や性質が異なってきます。

色が白色や透明で、粘液性痰や漿液性痰は健康人にも見られます。

無色透明か半透明でサラッとした痰は、ほとんどが風邪をひいた時に出るか、細菌感染のない気管支炎の場合に出ます。

無色透明でも、粘りがある痰は気管支ぜんそくの時にでゼイゼイという喘鳴を伴ない、痰が切れにくくなります。

緑色の痰も細菌感染によるものですが、インフルエンザ桿菌や緑膿菌感染による場合が多いです。

痰が黄色く見えるのは細菌感染を起こしているために、集まった白血球と細胞などがたくさん含まれているから黄色く見えます。

褐色ややや黒みをおびた茶色の場合は、気管支拡張症、肺結核、肺梗塞、肺がんなどのときに見られます。

錆色即ち鉄についた錆のような色や赤みがかった褐色の場合は、特に肺炎球菌肺炎や肺化膿症、心不全、肺うっ血などの時に見られます。

ピンク色の場合は、肺にうっ血がある時や心不全などの時に見られます。

鮮紅色や多量の血液を含む場合は、肺結核、肺がん、気管支拡張症などの時に見られます。

機械的刺激により痰にに血液が混ざる場合もありますが、この場合はひつこい咳が長く続いたり、強い咳払いや咳が重なることにより気道の粘膜が傷つきその傷ついた場所から出血し痰に混ざります。

これは機械的刺激による出血で回数も多くなく、数回で消失する場合心配ありませんが、繰り返し起こるようであれば病的なものの可能性もあります。

【痰の臭い】

一般的には臭いはありませんが組織の崩壊が強い場合は、腐敗臭を呈することもあります。

腐敗臭のするばあいは、悪性腫瘍や肺化膿症など。

アセトン臭のするばあいは、糖尿病に合併した感染症など。

【喀痰検査とは】

1.喀痰細菌検査

痰に混じっている細菌や真菌(カビ)など、肺炎や気管支炎の原因になっている菌を突き止めます。

この検査には、採取した痰をガラスに塗りつけて顕微鏡で菌を見つける塗抹検査と、痰の中の菌を培養で増やし、菌の種類を確認する培養検査の2つの方法があります。

菌の培養には2~3日、結核菌は2ヶ月ほどかかります。

最近では遺伝子検索によって早く結果がわかるようになってきています。

2.喀痰細胞診

痰の中にがん細胞が含まれているかどうかを調べる検査です。

2014年8月23日土曜日

HTLV-Ⅰ検査-3.セロディア HTLV-Ⅰ-

【セロディア HTLV-Ⅰとは】

ゼラチン粒子凝集反応検査で血清又は血漿中の抗HTLV-Ⅰ抗体を検出する試薬で、ウイルス(HTLV-Ⅰ)そのものを検出する試薬ではありません。

【測定原理】

ゼラチンを粒型化した人工担体に不活化処理したヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-Ⅰ)抗原を吸着させたもので、この感作粒子が血清又は血漿中の抗HTLV-Ⅰ抗体と反応し、凝集することを応用した粒子凝集反応(Particle Agglutination Test:PA法)です。

【検査時間】

反応時間が短く、2時間後に判定可能です。

【特徴】

PA法は抗HTLV-Ⅰ抗体のIgMとIgG型の抗体を測定することが出来検出感度は極めて高く、偽陽性率は0.05~0.59%と極めて低いのでですが、妊婦では高率に偽陽性反応が出現する欠点があります。

【判定】

以下に凝集パターンと判定を示します。






【判定の解釈】

陽性となった場合、後日採血をし直してPA法で再検査を行うか、ウエスタンブロット法での確認検査をします。

ウエスタンブロット法で判定保留となった場合は、ウエスタンブロット法で再検査します。

更に精度の高いPCR法があり、HTLV-Ⅰ感染が疑われるときや特に他の方法で判定が困難なときに実施する事があります。

HTLV-Ⅰ感染初期では、抗体が産生されなかったり、産生されていても抗体の量が少ない場合があり偽陰性反応を起こすことがあります。

感染が疑われる場合には判定結果が陰性であっても、経時的に検査し、また他の検査(抗原検査、血液形態学的検査)結果、臨床症状を加味して総合的に判断する必要があります。

2014年8月16日土曜日

HTLV-Ⅰ検査-2.HTLV-I-

【HTLV-Ⅰとは】

HTLV-Ⅰ(human T-cell leukemia virus type I)は、ALTを引き起こすウイルスです。

【HTLV-Ⅰの感染経路は】

主な感染経路は、HTLV-Ⅰ感染者の母親から子供への母乳を介した母子感染です。

性行為による感染は,キャリアの男性の精液を介する感染がほとんどと考えられていますが,HTLV-1の感染力は非常に弱く,反復継続した性行為を行う男女間における男性から女性への感染が主なものです。

性行為による感染のほとんどは、男性の精液中のHTLV-1感染リンパ球による女性への感染ですから、コンドームを使用して膣内への射精を防げば、感染は予防できます。

また、女性の膣分泌液の中には、感染リンパ球がほとんどいないことから、女性から男性に感染することはまずありません。

男性から女性へのHTVL-1の感染のメカニズムは、精液中に存在するHTLV-1感染リンパ球により子宮頚管上皮細胞が感染し、それがTリンパ球に感染し、血中で感染リンパ球が増加して感染が成立すると考えられています。

一般的にHTLV-1は男性から女性へ感染しますが、ペニスに性行為感染症が有り、ペニス粘膜に潰瘍が存在する場合には、女性から男性への感染が起こることが報告されています。

唾液や汗から感染することはありません。

献血の血液に関しては、検査を行っていることから輸血による感染ありません。

HTLV-Ⅰが人から人に感染するためには、キャリアの持つHTLV-Ⅰ感染細胞が生きたまま大量に人の体にはいることが必要ですから、オーラルセックスやキスでの感染は起こりませんし、単なる共同生活・風呂場・プール・食事・トイレ・床屋のタオル・剃刀・バリカンなどから感染することもありません。

【夫婦のいずれかがキャリアの場合の夫婦間感染は】

性行為の場合は、精液中のリンパ球の中のHTLV-1が感染することから、おもに夫から妻に感染します。

夫婦間の性交渉での感染は、10年間でHTLV‐Ⅰ抗体陽性の妻から夫へは、0.4%と極めて稀ですが、逆にHTLV‐Ⅰ抗体陽性の夫から妻へは60%と高い感染率が報告されています。

性交渉によるHTVL-1の感染は、コンドームを使用することで感染防止が可能です。

しかも、成人してからの感染の場合、ATL発症についての報告はありません。

いずれにしても、HTLV-1が体内に入ったからといって必ずしも感染することは限りません。