血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2015年12月31日木曜日

脂質検査-2.総コレステロール-

総コレステロール(Total-cholesterol:T-CHO)の「総」とは、体に良いHDLコレステロールと体に悪いLDLコレステロールを合算値を意味しています。

コレステロールには、悪玉(LDLコレステロール)と善玉(HDLコレステロール)があり、コレステロールは人間の体に欠かせない脂質のひとつですが、増えすぎると血管壁に蓄積し、動脈硬化の原因となります。

脳動脈で起きれば脳梗塞に、心臓の冠状動脈で起きれば心筋梗塞を引き起こします。

【検査目的】

総コレステロールは脂質代謝の異常を調べる検査です。

【基準値】

140~219mg/dL

※閉経後の女性は、ホルモンの関係で上昇する傾向があり、150~239mg/dlを基準値としています※

※総コレステロール値は個人差があり、遺伝的な体質や食生活の内容、ストレスによっても左右されることから、多少の変動なら神経質になる必要ありません※

【異常値】

基準値より高い・・・脂質異常症、高コレステロール血症、ネフローゼ症候群、高血圧、動脈硬化、膵臓疾患、糖尿病、脂肪肝、甲状腺機能低下症、心疾患など。

基準値より低い・・・肝硬変、肝臓がん、栄養障害、甲状腺機能亢進症、アジソン病など。

※基準値より高くても200~239mg/dLであれば、食事や運動で改善できるレベルであり、必ずしも病気とはいえません※

※240mg/dL以上になると早期改善する必要があり、270mg/dL以上では食事や運動だけでは改善されないことから投薬療法を実施します※

【異常値がみられた時の対応】

総コレステロール値が異常値の場合、HDLとLDLのどちらが異常値なのか、逆に総コレステロール値が基準値内でもHDLとLDLが正常範囲に入っているかを個別に判断しなければ意味がありません。

※HDLとLDLに関しては次の機会に解説いたします※

【検査を受ける際の注意点】

食事によって栄養素が血液中に増えるため、正しい測定が出来生なることから、総コレステロール値を測定する場合は、原則として前日の夕食後は飲食を禁止し、空腹の状態で採血をします。

2015年12月23日水曜日

脂質検査-1.中性脂肪-

中性脂肪とは、人間の体を動かすエネルギー源となる物質で、別名トリグリセライド(TG:triglyceride)と呼ばれています。

体の中に存在する脂肪を総称して「体脂肪」と呼びますがが、体脂肪のほとんどは中性脂肪です。

中性脂肪は活動のエネルギー源として脂肪細胞の中に蓄えられますが、たまり過ぎるといわゆる肥満やメタボリックシンドロームの状態になり、生活習慣病にかかる可能性が高くなります。

中性脂肪とコレステロールはどちらも脂質の一種ですが、中性脂肪はエネルギー源で、余分な中性脂肪は、肝臓などに蓄えられます。

コレステロールは、細胞膜を作ることや筋肉を作るホルモンの原材料となります。

【検査目的】

狭心症、心筋梗塞、脳卒中などの動脈硬化性疾患を予防するために調べます。

中性脂肪の値が高い場合には動脈硬化の危険度が高く、低い場合には栄養障害やそれを引き起こす病気が考えられます。

【基準値】

30 ~149mg/dl

※検査をする機器や施設によって異なる場合があります※

【異常値】

29以下:低中性脂肪血症

150~299:軽度高中性脂肪血症

300~749:中等度高中性脂肪血症

750以上:高度高中性脂肪血症

【高くなる原因】

過食

過度の飲酒アルコール

遺伝的体質

【検査を受ける際の注意点】

食後30分程度してから上昇し始め、4~6時間後に最も高くなることから、検査は早朝空腹時に行ないます。

【おまけ】

巷では中性脂肪が高いとよくない!と言われますが、人が生きていく上で必要なエネルギー源であることからある程度の数値は必要になります。

血液中の中性脂肪が増えすぎると、動脈硬化の危険が高まりますが、日本人の場合は、心筋梗塞の人のコレステロール値はそれほど高くなく、中性脂肪が高値を示す例が多いといわれています。

2015年12月7日月曜日

肝機能検査-9.血清総蛋白(TP:total protein)

血清総蛋白とは、血清中に含まれる蛋白の総称です。

現在、100種以上の蛋白の存在が知られています。

血清中には、およそ7~8%の蛋白が含まれています。

血清総蛋白は、アルブミンが60%とグロブリンが20%が主な成分です。

働きとしては、血液中のさまざまな物質を運んだり、体液の濃度を調整しています。

【検査目的】

肝臓や腎臓の異常、全身状態などを調べる検査です。

血清蛋白の中で最も多く存在するアルブミンは肝臓で合成されるため、肝機能障害の疑いがあるときは、まずこの検査を行います。

【基準値】

男性:6.5~8.2g/dL

女性:6.5~8.2g/dL

【異常値】

● 血清総蛋白が8.5g/dL以上・・・・高タンパク血症

原因:血液濃縮(脱水症)、免疫グロブリンの増加、多クローン性(疾患自己免疫性疾患、慢性炎症性疾患、肝硬変、慢性肝炎、悪性腫瘍、感染症)、単クローン性(多発性骨髄腫、マクログロブリン血症、本態性M蛋白血症)

● 血清総蛋白が6.0g/dL以下・・・・低蛋白血症

原因:肝硬変、栄養不良、ネフローゼ症候群、甲状腺機能亢進症

【蛋白分画】

5つのグループに分画されます。

※( )内は基準値※

1.アルブミン:(60~70%)

上昇・・・・脱水

低下・・・・低蛋白血症、ネフローゼ症候、肝硬変、慢性肝炎、慢性腎炎、栄養不良

2.α1‐グロブリン:(2~3%)

上昇・・・・急性又は慢性炎症、低蛋白血症、ストレス、自己免疫疾患

低下・・・・急性肝障害

3.α2‐グロブリン:(5~10%)

上昇・・・・ネフローゼ、急性及び慢性炎症、自己免疫疾患、悪性腫瘍、ストレス

低下・・・・肝障害、低蛋白血症

4.β‐グロブリン:(7~11%)

上昇・・・・ネフローゼ、妊娠、溶血

低下・・・・慢性肝障害

5.γ‐グロブリン:(10~20%)

上昇・・・・肝硬変、慢性肝炎、骨髄腫、自己免疫疾患

低下・・・・ネフローゼ、無ガンマーグロブリン血症、低蛋白血症

【おまけ】

新生児の場合は、成人よりも低値を示し加齢とともに増加して思春期には成人と同じ値となります。

加齢とともに低くなる傾向があります。

朝より夕方や安静時より運動後は高くなる傾向があります。

妊娠していると低くなる傾向があります。

2015年11月26日木曜日

肝機能検査-8.ロイシンアミノペプチダーゼ-(LAP:leucine aminopeptidase)

ロイシンなどのタンパク質を分解するはたらきを持つ酵素の一種で、肝臓や腎臓、膵臓、腸管、子宮、睾丸、脳などの細胞に含まれています。

肝臓障害などで胆道がつまって胆汁がうまく流れなくなる(胆汁のうっ滞)と、胆汁が逆流してロイシンアミノペプチダーゼが血液中に流れこむことによって血中の値が著しく上昇します。

【検査目的】

胆道閉塞を起こす病気の診断に有用な検査です。

この検査だけでは診断しきれないので、他の肝機能検査と組み合わせて検査を実施します。

【基準値】

20~70U/L

※検査方法にはさまざまな種類があり、測定単位も異なり、基準値も異なりますので注意が必要です※

【異常値】

軽度の上昇(70~200U/l)・・・胆石、慢性・急性肝炎、脂肪肝、肝硬変など

高度の上昇(200U/l以上)・・・肝臓がんや胆道系のがん、胆石、すい臓がんなどによる胆道閉塞、子宮がん、卵巣がんなど

低値の場合・・・・・・・・・特に問題なし

【アイソザイム】

α1、α2、βの3種類のアイソザイムが存在します。

1.α1が高い場合は何らかの原因で胆道が詰まっていることが多い。

2.α2が高い場合は妊娠している場合に多く見られる。

3.βが高い場合は、肝臓病の他、白血病や自己免疫疾患、悪性リンパ腫や感染症が疑われる。


【おまけ】

1歳未満の子供では高値を示しますが、それ以降は成人に向かうに従い安定します。

性別や食事、運動による影響はほとんどありません。

飲酒などアルコールの摂取が多いとγ-GTPと平行して上昇する場合もあります。

胎盤に多く含まれているので妊娠中は高い値を示します。

2015年11月18日水曜日

肝機能検査-7.コリンエステラーゼ(ChE:Cholinesterase)-

コリンエステラーゼは、肝臓の細胞のみでつくられる酵素で、肝臓のはたらきが低下すると産生量が低下します。

コリンエステラーゼは、コリンエステルという物質をコリンと酢酸に分解することによって、たんぱくをつくりだしています。

コリンエステラーゼには、アセチルコリンエステラーゼとブチリルコリンエステラーゼの2つの種類があります。

1.アセチルコリンエステラーゼ

真性コリンエステラーゼとも呼ばれ、赤血球や筋肉、神経組織の中に含まれています。

2.ブチリルコリンエステラーゼ

偽性コリンエステラーゼとも呼ばれ、血清や肝臓、膵臓、腸、肺などに含まれています。

健診などでは肝機能検査の一つとして、この偽性コリンエステラーゼを測定しています。

そのことから血液中のコリンエステラーゼ値をはかることで、たんぱくをつくり出す肝臓の機能をみることができます。

【検査目的】

コリンエステラーゼはアルブミンと同様に肝臓だけで産生されているので、コリンエステラーゼはほかの肝機能検査に比べていち早く異常値を示すので肝機能検査として広く利用されています。

コリンエステラーゼとその他の肝機能検査をあわせてみることによって、肝臓の障害されている程度が良くわかります。

要するに慢性肝炎や肝硬変などの慢性の肝臓病の経過をみていくうえで、とても重要な検査です。

【基準値】

男性:234~493IU/L

女性:200~452IU/L

※検査基準値の範囲は臨床検査を行う施設や測定方法により異なります※

※一般に女性は男性より値が低めで、月経前や月経中でもコリンエステラーゼが減少します※

※妊娠時も低下します※

【異常値】

低値の場合・・・・劇症肝炎、急性・慢性肝炎、肝硬変、肝硬変、転移性肝がん

高値の場合・・・・脂肪肝、ネフローゼ症候群、甲状腺機亢進症、高血圧症、糖尿病

極定値の場合・・・有機リン中毒、遺伝性ChE欠損症

【コリンエステラーゼは低値のときが重要】

肝細胞での合成能力下低下していることを反映しています。

肝臓疾患であれば、GOT・GPT、γ-GTP、A/G比、ICG試験などの血液検査や、尿ウロビリノーゲン、腹部超音波検査、腹部CT検査、腹腔鏡検査、肝生検などを行なう必要があります。

肝硬変では、コリンエステラーゼが正常に回復することはまずありえません。

【コリンエステラーゼのみが低値になる】

農薬や殺虫剤などに含まれる有機リンはコリンエステラーゼを失活させるため、肝疾患以外で著しい低下を認めた場合、有機リン中毒が疑われます。

他に異常がない場合にコリンエステラーゼのみ低値または高値となることがありますが、低値の場合はコリンエステラーゼ欠損によるコリンエステラーゼ遺伝性欠損症が疑われます。

高値はコリンエステラーゼ変異による本態性家族性高コリンエステラーゼ血症が疑われます。

いずれも症状がなく普段の生活には何ら支障はありませんが、遺伝性コリンエステラーゼ欠損症では手術時に使用される筋弛緩薬サクシニルコリンの分解が遅れて麻酔後長時間無呼吸を起こす危険性があります。

逆に本態性家族性高コリンエステラーゼ血症では麻酔抵抗性(麻酔が効きにくい)を示す可能性があるといわれています。

【おまけ】

コリンエステラーゼの値を下げる薬剤も存在します。

下記の薬剤を服用している患者は、コリンエステラーゼの値が低くても肝臓の状態とは無関係の場合もあります。

抗うつ剤・・・・ルジオミール錠、テトラミド錠など

緑内障の点眼薬・・・・眼圧を下げるための点眼薬(コリンエステラーゼを抑える成分が含まれている為)

アルツハイマー型認知症・・・・神経伝達を活性化するために、コリンエステラーゼ阻害剤を服用する場合があります。

2015年11月11日水曜日

肝機能検査-6.アルカリフォスファターゼ(ALP:Alkaline Phosphatase)-

ほとんどの臓器に含まれ、主に肝臓、骨、腸でつくられているリン酸化合物を分解する酵素です。

肝臓で作られて、胆汁の成分として胆管を通って、胆嚢に貯蔵されたあとに十二指腸に排出されます。

肝臓のALPは胆汁に排出されるので、肝臓や胆道系の病気で胆汁が流れる経路に異常が出ると血液中に増えます。

さらに骨や腸に障害が起こっているときも値が高くなります。


【検査目的】

慢性肝炎、急性肝炎、閉塞性黄疸など肝臓や胆道の病気のほか、甲状腺機能亢進症骨軟化症など骨の病気の検査に用いられます。


【基準値】

80~260IU/L

※検査基準値の範囲は臨床検査を行う施設や測定方法により異なります※


【異常値】

●軽度から中等度上昇 260~600IU/L

閉塞性黄疸(胆管がん・膵がん・総胆管結石など)、転移性肝がん、肝内胆汁うっ滞、胆道感染、薬物性肝障害、脂肪肝、慢性肝炎、急性肝炎、肝硬変、肝がん、悪性リンパ腫、転移性骨髄腫、サルコイドーシス、骨肉腫、慢性腎不全など

●高度上昇 600IU/L以上

顔が黄色くなるような明らかな黄疸が見られます。

閉塞性黄疸(胆管がん・膵がん・総胆管結石など)、転移性肝がん、転移性骨腫瘍、肝膿瘍、悪性リンパ腫、サルコイドーシス、甲状腺機能亢進、アミロイドーシス

●基準値より低い 80IU/L以下 

体調による一時的な低下で特に問題ない。

稀に遺伝性低ALP血症の可能性もあります。

※検査基準値の範囲は臨床検査を行う施設や測定方法により異なります※


【ALPアイソザイム】

肝臓型、骨型、小腸型の三つの型6種類があります。

6種類のアルカリホスファターゼを検査することで、病気を特定していきます。

これは"ALPアイソザイム"と呼ばれる検査方法で、ALPはalkaline phosphatase(アルカリホスファターゼ)の略で、アイソはiso(同じ)、ザイムはzyme(酵素)という意味です。

1.ALP1(肝由来)・・・胆道の閉塞性疾患や肝疾患で高い値を示す

2.ALP2(肝由来)・・・肝疾患や胆道疾患で高い値を示す

3.ALP3(骨由来)・・・骨芽細胞が増殖する病気や骨腫瘍、甲状腺機能亢進症・副甲状腺機能亢進症などで高い値を示す

※成長期の小児の場合、骨芽細胞の活動が盛んなことから、小児におけるALPの値の主体がこのALP3に由来しています※

4.ALP4(胎盤由来)・・・妊娠後期に出現します。
稀に肺がんや卵巣がんで高い値を示す

5.ALP5(小腸由来)・・・B型・O型の一部の人に、脂肪食摂取後に高値を示す場合があります

肝硬変、糖尿病、慢性腎不全などの病気で高い値を示す

6.ALP6(免疫グロブリン結合型)・・・免疫グロブリンと結合したALPで潰瘍性大腸炎などのとき上昇


【ALPアイソザイムで疑われる疾患】

ALP1の出現・・・閉塞性黄疸、限局性肝疾患(肝膿瘍、転移性肝癌、胆道胆石症)

ALP2の増加・・・急性・慢性肝炎(ウイルス性、薬剤性)、胆道系疾患(肝内胆汁うっ滞、原発性胆汁性肝硬変)

ALP3の増加・・・骨疾患(骨転移癌、クル病、骨軟化症)、副甲状腺機能亢進症

ALP4の出現・・・妊娠後期、悪性腫瘍の一部(肺癌、すい癌、白血病など)

ALP5の出現・・・肝硬変、慢性肝炎、糖尿病、慢性腎不全

ALP6の出現・・・潰瘍性大腸炎の活動期


【おまけ】

B型、O型の一部の人は食後に高い値を示すことがあるので、空腹時で採血をして下さい。

2015年11月4日水曜日

肝機能検査-5.LDH-

LDH(乳酸脱水素酵素は、からだの中でブドウ糖がエネルギーに変わるときにはたらく酵素で、血液細胞、肝臓、腎臓、肺、心筋、骨格筋など全身のほとんどの細胞に含まれていています。

これらの臓器や細胞がダメージを受けると、血液中に流れて高値になります。


【検査目的】

肝臓病、心臓病、血液の病気やいろいろな臓器のがんなどで高値になることが多く、これらの病気のスクリーニング検査として用いられています。

LDHはいろいろな臓器に含まれているので、この検査で異常値がでても、どの臓器に障害があるかまでは分かりません。

LDHの値は妊娠、運動などでも一時的に上昇します。
 
【基準値】

120~245IU/L

※基準値の範囲よりも低くなっている場合は、基本的に問題はありませんが、極端に数値が低い場合は、極めて稀なケースとして先天的に乳酸脱水素酵素の量が少ない場合もあります※

【異常値】

軽度の上昇:245~350IU/L・・・心不全、心筋症、肝硬変、慢性肝炎、慢性腎炎、ネフローゼ症候群、悪性腫瘍、関節リウマチなど

中等度の上昇:245~350IU/L・・・悪性リンパ腫、慢性白血病、悪性腫瘍、急性肝炎、心筋梗塞など

高度上昇:350~500IU/L以上・・・悪性リンパ腫、慢性骨髄性白血病、悪性リンパ腫、急性肝炎、心筋梗塞、悪性貧血など

※検査基準値の範囲は臨床検査を行う施設や測定方法により異なります※

【LDHアイソザイム】

LDHには、LDH1~LDH5までの5種類のアイソザイムが存在します。

このアイソザイムは、病気によって増える種類が異なります。

LDHの値が高いの場合は、LDH1~LDH5までの5種類のアイソザイムを調べて、壊れた細胞や臓器がどこかを調べます。

※LDHアイソザイムの検査でもがんか否かを診断することは出来ません※

LDH1とLDH2が上昇・・・心筋梗塞、溶血性貧血、悪性貧血

LDH2とLDH3が上昇・・・白血病、多発性筋炎、筋ジストロフィー

LDH3とLDH4とLDH5が上昇・・・転移がん

LDH5が上昇・・・急性肝炎、肝細胞癌、子宮がん


【おまけ】

LDHが一番上昇するのは、悪性リンパ腫と白血病の場合が多い
 

2015年10月26日月曜日

肝機能検査-4.γ(ガンマ)-GTP-

γ-GTP(ガンマーグルタミルトランスペブチターゼ)はGOTやGPTと同様に、たんぱく質を分解する酵素のひとつで、おもに肝臓の障害や、胆汁の流れが悪くなると血液中で上昇します。

【検査目的】
 
肝臓細胞や胆管細胞が壊れたことの指標として検査されます。

※γ-GTPが血液中に多くなっても、それ自体が何か悪い影響を及ぼすことはありません※

※健康診断でγ-GTPを測定する目的はアルコ-ル脂肪肝の測目的で検査されます※

【基準値】

成人男性 10~50IU/L

成人女性 9~32IU/L

※女性は女性ホルモンの影響で数値が低い※

※基準値よりも低すぎても問題はありません※

※人によっては異常がなくても生まれつきγ-GTP数値が高かったりする場合があります※

※γ-GTPは比較的アルコールに短期的に反応するので、飲酒を一週間もやめれば下がりだし、γ-GTPの値が100以下であれば、節酒あるいは禁酒することですぐに正常値にもどります※

【異常値】

○軽度の増加・・・基準値の上限~100IU/L

アルコ-ル性肝障害、薬物性肝障害、慢性肝炎、脂肪肝

※肝硬変、肝がんの可能性もあり※

○中等度の増加・・・100~200IU/L

アルコ-ル性肝障害、薬物性肝障害、慢性活動性肝炎

※肝硬変、肝がん、脂肪肝、胆道疾患の可能性もあり※

○高度の増加・・・200~500IU/L

アルコ-ル性肝障害、閉塞性黄疸、肝内胆汁うっ帯

※慢性活動性肝炎の可能性もあり※

○超高度の増加・・・500IU/L以上

急性アルコ-ル性肝炎、閉塞性黄疸、肝内胆汁うっ帯

【100IU/L以上になると必ず受診!!】

禁酒をして受診し、その他の肝機能検査と腹部エコー検査を受け、何が原因で高値になっているかを調べる必要があります。

【飲酒しない人でもγ-GTPが高くなるのは??】

全く飲酒しない人でもγ-GTPが高くなることはあります。

非アルコール性脂肪肝、胆石、胆道系のがん、原発性胆汁性肝硬変の場合や、抗てんかん剤、抗けいれん剤、向精神薬、ステロイド剤の服用によっても高くなります。

【おまけ】

健康な肝臓には3%を超える程度の脂肪が含まれていますが、この脂肪が10%を超えると細胞の中に泡状のものが現れるようになります。

この泡状が肝細胞の小さな集合体(肝小葉)の中に現れるようになった状態を脂肪肝といいます。
 
脂肪肝の原因は、肥満とアルコ-ルの飲みすぎが原因とされ、脂肪肝で肝臓に溜まった脂肪のほとんどはエネルギ-の過剰摂取と運動不足が原因で溜まった脂肪肝です。

肥満度が20%以上の場合、脂肪肝になりやすいといわれています。

脂肪肝を放置していると、脂肪肝が肝臓の繊維化を促進し、自覚症状がないまま肝硬変に移行してしまうことがありますので注意が必要です。

更に動脈硬化や高血圧になりやすく、心臓病や脳卒中のリスクも高いなってきます。

2015年10月19日月曜日

肝機能検査-3.GPT/GPT比-

健康な時のGOT/GPT比は1以上ですが、病状によって数値や比率が変わってくるので、両者の比較が重要になります。

【検査目的】

肝炎・心疾患・筋疾患の診断に使います

【検査目的】

GOTとGPTの比をとることにより、各種肝疾患のおおよその鑑別ができます。

1.慢性肝炎と肝硬変の鑑別

2.アルコール性肝炎の診断

3.心筋梗塞急性期など筋疾患の診断

【基準値】

GOT/GPT比は1以上となります。

すなわちGOT値がGPT値より大きいことになります。

【異常値】

GOT/GPT<1(GOT値が小さい)…慢性・急性肝炎、脂肪肝、肝硬変初期、胆汁うっ滞など

GOT/GPT>1(GOT値が大きい)…劇症肝炎、アルコール性脂肪肝、アルコール性肝炎、進行した肝硬変、溶血、うっ血性心不全、心筋梗塞など

GOT/GPT>2(GOT値が2倍超)…原発性肝がん、筋ジストロフィーなど

※急性肝炎では、GOPとTGPT両方の値が同時に上昇しますが、他の肝障害では一方が上昇します※

※慢性肝炎や肥満が原因による脂肪肝などでは、GPTの上昇が大きく、GOT/GPT比が1以下になります※

※脂肪肝でもアルコール性の場合や、肝硬変、胆汁うっ滞症などではGOT値の上昇が大きく、肝がんでは2~3倍にまでGOT値が上昇します※

2015年10月12日月曜日

肝機能検査-2.GPT-

GPTはGlutamic Pyruvic Transaminase(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ)と呼ばれる酵素です。

GPTは肝細胞に多く含まれているため、肝臓の細胞が障害を受けたり破壊されることにより血液中のGPTの値が異常に上昇してきます。

心筋や腎臓などにも存在しますが、特に肝臓に多く存在しくGPOTに比べて他臓器への分布が少ないため肝特異的といわれ、肝炎の経過観察によく利用されます。

半減期がGPTの10~20時間に比べて40~50時間と長いことから、肝障害の進行を知る手がかりになります。

肝臓の病気の種類や障害の程度によって、GPTの上昇度に差があり、細胞の障害が強いほど当然数値は高くなります。

逆に肝細胞が破壊し尽くされるとむしろGPTは低下します。

【検査目的】

肝臓の異常を調べる検査です。

【GPTの値が異常の時】

何らかの異常で肝細胞が破壊されることにより血液中に出てきたと考えられます。

GPTはほとんど肝臓にしか存在しない酵素ですから、GPT飲みが高い時には肝臓に異常があると判断します。

肝臓に関する情報より多くを得る為にその他の検査する必要があります。

更にエコー検査(超音波検査)も併用します。

【基準値】

36IU/l以下

※施設によって若干異なります※

【高値】

1000IU/l以上 … ウイルス性急性肝炎、劇症肝炎、薬物性肝炎、虚血性肝炎など

500IU/l以上 … ウイルス性急性肝炎、急性アルコール性肝炎、薬物性肝炎、総胆管結石など

100~500IU/l … ウイルス性慢性肝炎、自己免疫性肝炎、急性アルコール性肝炎、薬物性肝炎、脂肪肝、閉塞性黄疸、原発性胆汁性肝硬変など

33~100IU/l … ウイルス性慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌、脂肪肝、自己免疫性肝炎、薬物性肝炎、閉塞性黄疸など

【低値】

特に問題はありません。

【検査時の注意点】

赤血球中にも多く含まれるため溶血(赤血球が壊れる)すると値が高くなります。

【おまけ】

昔からGPTと呼ばれてきましたが、近年生化学者がALT(Alanine Aminotransferase:アラニンアミノトランスフェラーゼ)という名称を変更したためにGPTと呼ぶよりALTと呼ぶ施設が多くなってきています。

これは単に呼び方が代わっただけです。

2015年10月3日土曜日

肝機能検査-1.GOT-

GOTはGlutamic Oxaloacetic Transaminase(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ)と呼ばれる酵素です。

GOTは肝細胞に多く含まれているため、肝臓の細胞が障害を受けたり破壊されることにより血液中のGOTの値が異常に上昇してきます。

肝臓の病気の種類や障害の程度によって、GOTの上昇度に差があり、細胞の障害が強いほど当然数値は高くなります。

GOTは肝細胞のほか心臓の筋肉や骨格筋の細胞にも多く含まれているため、これらの病気の指標にもなります。

【検査目的】

肝臓の異常を調べる検査です。

【GOTの値が異常の時】

何らかの異常で肝細胞が破壊されることにより血液中出てきたと考えられますが、GOTは肝臓以外の臓器にも存在するため、数値の増減が必ずしも肝臓に関係しているとは限らずGOTの数値のみが高値を示す場合は、肝臓以外の病気である可能性もあります。

そのためには、肝臓に関する情報を得るには、GPTも一緒に検査する必要があります。

※GPTに関しては次回解説します※

更にエコー検査(超音波検査)も併用します。

【基準値】

35IU/l以下

【高値】

500IU/l以上 … 急性肝炎、心筋梗塞など

100~500IU/l … 肝炎、肝臓がん、アルコール性肝障害、心筋梗塞など

33~100IU/l … 慢性肝炎、肝硬変、アルコール性肝障害、心筋梗塞など

【低値】

特に問題はありません。

【おまけ】

昔からGOTと呼ばれてきましたが、近年生化学者がAST(Aspartate transaminase:アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)という名称を変更したためにGOTと呼ぶよりASTと呼ぶ施設が多くなってきています。

これは単に呼び方がかわっただけです。

2015年9月24日木曜日

クレアチンキナーゼ(CK)

クレアチンキナーゼ(CK:Creatine Kinase)は、クレアチンホスホキナーゼ(CPK:Creatine PhosphoKinase)とも呼ばれます。

クレアチンキナーゼは、本来筋肉の中にある酵素です。

クレアチンキナーゼの値が高いことは、筋肉の細胞が壊れたことを意味します。


【検査の目的】

1.神経や筋疾患、心疾患を疑うときや、その経過観察。

2.脳の損傷が疑われるときや、その経過観察。

【クレアチンキナーゼの種類】

クレアチンキナーゼには、アイソザイムと呼ばれる筋肉型(CK-MM)、心筋型(CK-MB)、脳型(CK-BB) の3種類が存在します。

正常な状態では、大部分のクレアチンキナーゼが筋肉に由来していますので、筋肉型(CK-MM)が90%で脳型(CK-BB)は殆ど見られません。

心筋型(CK-MB)は、心筋梗塞の時に限り上昇してきます。

従って通常の血液検査で検査されるのは、総クレアチンキナーゼ活性値です。

1.筋肉型(CK-MM)

骨格筋に多く含まれ、筋性疾患(筋ジストロフィー・多発性筋炎・皮膚筋炎 など)や甲状腺機能低下症などで高値となります。

2.心筋型(CK-MB)

心筋に多く含まれ、心疾患(心筋梗塞・心筋炎 など)で高値となります。

3.脳型(CK-BB)

脳、子宮、腸管に多く含まれ、脳疾患(脳血管障害・脳外傷 など)や悪性腫瘍 などで高値となります。

【CK-MBと心筋梗塞の関係】

CK-MBは心筋に多く含まれることから、心筋梗塞の診断や病態の把握のためにCK-MBを直接検査することがあります。

【クレアチンキナーゼの生理的変動】

男性の方が、女性よりも20~30%程高値を示しますが、これは男性の方が、女性よりも筋肉量が多いことに由来します。

女性の場合は、朝から夕方にかけて数値が上昇しやすく、妊娠後期と出産前後にやや高めになる傾向があります。

激しい運動後や肉体労働、筋肉注射後は筋肉が損傷を受けることがあるため、高値を示す場合があります。

また子どもの場合、採血前に大泣きすることによって高値を示すことがあります。

筋肉注射でも値は上昇します。

【参考基準値】
 
男性 50~250IU/l

女性 45~210IU/l

※基準値は施設ごとで異なる場合があります※

【高値示す場合】

・外傷、筋ジストロフィー、多発性筋炎、皮膚筋炎などの骨格筋疾患

・心筋梗塞、心筋炎、心膜炎などの心疾患

・てんかんなどの神経筋疾患

・胃がん、大腸がん、肺がん、前立腺がんなどの悪性腫瘍

・脳梗塞

・甲状腺機能低下症

【低い値を示す場合】

・甲状腺機能亢進症、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、シェーグレン症候群、妊娠、長期間寝込んだ場合(長期臥床)など。

【検査時の注意】

筋肉運動をすると筋肉からクレアチンキナーゼが血液中に漏れ出て上昇し、24時間前後でピークとなり、3~4日かけて元に戻ります。

したがって、検査を受けるときは、4日前ごろから激しい運動は控える必要があります。

検査当日の食事は普通にとって何の問題もありません。

2015年9月7日月曜日

ヘリコバクター・ピロリの検査-5.迅速ウレアーゼ検査-

ヒトの組織中にはウレアーゼは存在しませんが、ヘリコバクター・ピロリは非常に強いウレアーゼ活性を有しています。

この検査キットは、この特徴を利用したヘリコバクター・ピロリの検出用試薬であるピロリテック テスト キットについて解説します。

【検査目的】

胃カメラ等で採取した胃生検組織中のヘリコバクターピロリの検出。

【特徴】

1枚の検査パットで3部位まで同時検査が可能であることから部位別にも判定可能。

陽性の約90%はおよそ20分で、残りは60分までに判定が可能。

【検査原理】

試薬中の尿素が、ヘリコバクター・ピロリ菌体中のウレアーゼにより加水分解されてアンモニアを生じます。

アンモニアが生じるとpHが上昇し、pH指示薬であるブロムフェノールブルーの色調を黄色から青色に変化させることから、その色調の変化を判定することにより、ヘリコバクター・ピロリを迅速に検出できます。

ヘリコバクター・ピロリ菌体中のウレアーゼ

(NH2)2CO+H2O        →         2NH3+CO2

【検査の注意】

コロニーが形成されていない組織を検査した場合、偽陰性反応が起こることがあります。

【検査方法】

1.反応パッド上の陽性コントロールに赤色スポットがあることを確認。

2.試薬ストリップが内側を向くようにミシン目を折り曲げる。

3.湿潤試液4滴を、基質パッド全体が均一にしみわたるように滴下。

4.清潔な木製スティックなどで、生検組織を鉗子から直接反応パッド
上(上下各7mm内側)に押し出す。

5.試薬ストリップを折り曲げ、基質パッドを生検組織の上に重ね、黄色
の面を表にして反応ポーチの底まで差し込む。

6.反応パッド(黄色部分)上の色調変化を60分以内に観察。

【判定の注意】

60分を経過して出現する発色は無視して判定しない。

※偽陽性反応の可能性が高い※

【判定】

陽性・・・・60分以内に陽性コントロールの青色と同じ色調のスポットが出現。

陰性・・・・60分以内に陽性コントロールの青色と同じ色調のスポットが出現。

判定保留・・60分以内に陽性コントロールに青色の色調のスポットが出現しない。

【感度と特異度】

感度 97.%

特異度 97.4% 

一致率 97.3%

【検査の利用方法】

ヘリコバクター・ピロリの感染判断には利用可能ですが、除菌後検査には適して
いません。

2015年8月24日月曜日

ヘリコバクター・ピロリの検査-4.便中H. pylori抗原検査-

生きたヘリコバクター・ピロリや既に死んだヘリコバクター・ピロリは共にH. pylori抗原として認識し、特異的に反応することを利用し、糞便中のH. pylori抗原の存在の有無を調べることが出来ます。

今回は、便中H. pylori抗原検査キットの『テストメイト ラピッド ピロリ抗原』について解説していきます。

【検査原理】

糞便中のヘリコバクター・ピロリ抗原に特異的に反応するモノクローナル抗体を用いた、イムノクロマトグラフィー法を原理とする糞便中ヘリコバクター・ピロリ抗原検出用試薬です。

本品は固相化抗体、標識抗体ともモノクローナル抗体を使用し、特異性が優れています。

【検査方法】

希釈した便検体を反応シートの試料滴下部位に滴下し検査を行います。

便検体中にヘリコバクター・ピロリ抗原が存在すると、反応シート中の赤色標識抗体と結合し、免疫複合体を形成し、この免疫複合体は毛細管現象により移動し、反応シート上の固相化された捕捉抗体に捕捉され、赤色判定ラインを形成します。

便検体中にヘリコバクター・ピロリ抗原が存在しない場合は、免疫複合体を形成しないことから赤色標識抗体は、固相化されたコントロール抗体に捕捉されて赤色コントロールラインを形成しますので、検査の正確性の指標となります。

これらの赤色ラインを目視で確認する事により、便検体中のヘリコバクター・ピロリ抗原を検出することが出来ます。

【判定】

判定は試料滴下後10分後に行い、10分以上経過してから出現する赤色ライン(非特異なライン)は無視する必要があります。

【検査を受ける際の注意点】

偽陰性判定を避けるため除菌薬服用終了後、4週間以上経過して検査を受ける必要があります。

採便後できるだけすみやかに医療機関に便検体を提出する必要があります。

便の先端部、中央部、尾部、また、表面、内部のどこから採取しても検査結果に影響はありません。

弁に血液が含まれていたしとても検査結果には影響を与えることはありません。

【感度と特異度】

感度 94.9%

特異度 100% 

一致率 96.3%

【検査の信頼性】

感度と特異性からして信頼できる結果が得られる検査です。

【検査の利用方法】

ヘリコバクター・ピロリ感染のスクリーニング検査及び除菌判定に利用可能です。

2015年8月12日水曜日

ヘリコバクター・ピロリの検査-3.尿中抗H. pylori IgG抗体検査-

ヘリコバクター・ピロリに感染すると、この菌に対する抗体が患者の血液中に産生されることから、血液や尿を用いてこの抗体の量を調べることが出来ます。

今回はイムノクロマト法による尿中抗H.pylori 抗体検出試薬『ラピランH.ピロリ抗体』を紹介します。

【検査原理】

抗原としてヘリコバクター・ピロリ菌抽出タンパクを固相化したニトロセルロースメンブランを用いた尿中抗H.ピロリ抗体検出用イムノクロマト法キットです。

尿中に抗H.ピロリ抗体が存在すると抗H.ピロリIgG抗体複合体がテストライン上に固相化されているH.ピロリ抗原と反応して捕捉され、赤色のラインとなってあらわれます。

尿中に抗H.ピロリ抗体が存在しない場合は、抗H.ピロリIgG抗体以外の免疫複合体は、テストラインを通過し、コントロールライン上に固相化されている抗ヒトIgGポリクローナル抗体(ヤギ)に捕捉され、赤色のラインとなってあらわれます。

【検査方法】

1.テストデバイスをアルミラミネート袋から取り出し、水平な台の上におく。

2.付属のスポイトの目盛を指標に尿検体約0.5mLを採取し、検体希釈液の入った容器に加え、ピペッティング操作により混和することにより尿がおよそ2倍に希釈されます。

3.この希釈された尿0.2~0.3mLをテストデバイスの検体窓(S)に滴下する。

4.室温でで20分間静置する。

5.テストライン及びコントロールラインの出現を肉眼で観察する。

【判定】

陽性・・・・・T部及びC部に赤色のラインが出現

陰性・・・・・C部のみに赤色ラインが出現。

判定保留・・・C部に赤色ラインが認められない時は、幾らT部に赤色ラインが認められても再度検査をし直す。

※測定開始から20分以内でも、T部及びC部に赤色のラインの出現を確認できた時点で陽性と判定する※

※測定開始から20分以上経過してT部に赤色のラインが出現しても陽性とは安定しない※

【検査を受ける際の注意点】

尿が混濁していると正しい結果が出ない場合がある。

新鮮な尿で検査する、長時間保存した尿は検査には適さない。

【検査の利用法】

尿検査なので患者への負担が少なく、人間ドックや検診などのスクリーニングに利用されています。

【感度と特異度】

感度・・・・90~98%

特異度・・・78~95%

【検査の信頼性】

抗体が陰性の時は、感染初期や免疫不全などの特殊な場合を除き、ヘリコバクター・ピロリの感染はないと診断できる。

小児では、精度が低下するという報告がある。

除菌成功後も抗体の陰性化あるいは有意な低下には1年以上を要することがあるため、除菌の成否を早く知りたい場合には適さない。

しかし、抗体の陰性化が証明できれば除菌成功の可能性はより高いと判断できる。

2015年7月30日木曜日

ヘリコバクター・ピロリの検査-2.尿素呼気テスト(UBT:Urea Breath Test)-

【検査原理】

ヘリコバクター・ピロリ菌が持つウレアーゼという酵素は、胃の中の尿素を分解してアンモニアと二酸化炭素を生成します。

この尿素の分解により、アンモニアと同時に生じた二酸化炭素は速やかに吸収され、血液から肺に移行し、呼気中に炭酸ガスとして排泄されます。

この原理を利用して、検査を実施します。

ヘリコバクター・ピロリ菌に感染していると、尿素が分解されるため呼気に13CO2が多く検出されます。

一方ヘリコバクター・ピロリ菌に感染していない場合は、尿素が分解されないため大部分が尿中に排泄され呼気には13CO2の排泄はほとんどありません。

【検査方法】

1.検査薬服用前に呼気を検査用バックに吹き込みます。

2.13C-尿素を含有した検査薬をつぶしたりせず、空腹時に水100mLとともに噛まずに速やかに(5秒以内に)服用します。

3.5分間左側臥位(さそくがい)の姿勢を保つ。

4.その後15分間座位の姿勢を保つ。

5.検査薬服用20分後の呼気を再度検査用バックに吹き込みます。

13C-尿素を含有した検査薬を服用後、呼気中の13CO2を測定します。

【測定方法】

呼気中の13CO2の測定は質量分析法や赤外分光分析装置で行います。

【判定】

検査薬服用前後の13CO2量の差2.5‰以上を持ってヘリコバクター・ピロリ菌陽性と判定します。

【検査を受ける際の注意点】

食べるものによっては胃粘膜の表面を覆ってしまい、内服した尿素とピロリ菌由来のウレアーゼと反応しないため偽陰性となることがあります。

さらに13CO2を多く含むトウモロモシやパイナップル、豚・鶏肉、卵などの摂取で測定値に影響を及ぼす可能性があります。

検査を受ける際には、最低食後4時間は空ける必要があります、

【検査の信頼性】

この検査法は簡便かつ高精度で感染診断のみならず除菌判定にも有用です。

従ってヘリコバクター・ピロリ菌の感染診断のみならず、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌治療の効果判定の目的に利用されています。

【服用する13CO2の安全性】

13CO2は、自然界にはおよそ1.1%存在します。

そして放射活性を有しない安定元素ですから、服用しても問題はありません。

2015年7月20日月曜日

ヘリコバクター・ピロリの検査-1.総論-

【ヘリコバクター・ピロリとは】

ヘリコバクター・ピロリ(一般的にピロリ菌と呼ばれます)は胃粘膜に生息する微好気性グラム陰性らせん状桿菌で、ウレアーゼという尿素を分解する酵素を持っています。

強酸の胃液が分泌される胃には、昔から細菌をはじめとする微生物は生存しないものと考えられていましたが、1983年、オーストラリアのロビン・ウォレン(1937~)とバリー・マーシャル(1951~)が胃粘膜からをヘリコバクター・ピロリを分離・培養することに成功して後、強酸性の胃液が分泌される環境下でも棲息可能な微生物が存在することが明らかにされました。

そしてヘリコバクター・ピロリが胃炎、胃潰瘍や十二指腸潰瘍と関係することをも証明したわけです。

この業績によりこの二人は2005年ノーベル生理学・医学賞を受賞しています。

【ヘリコバクター・ピロリの形状】

ヘリコバクター・ピロリは、直径0.5~1.0μm、長さ2.5~5.0μmで、2~3回ねじれたらせん形を呈し、両端に2~6本の鞭毛を有しています。

鞭毛をスクリューのように回転運動させることにより胃粘液中を移動して棲息します。

【感染するとどうなるのか】

ヘリコバクター・ピロリは、慢性胃炎、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃癌や MALTリンパ腫やびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫などの発生に繋がることが報告されています。

更に特発性血小板減少性紫斑病、小児の鉄欠乏性貧血、慢性蕁麻疹などの胃外性疾患の原因となることが明らかにされています。

【感染率】

一昔前までは、世界中のほとんどの人がヘリコバクター・ピロリに感染していたと考えられていました。

しかし現在では、衛生環境の向上により感染者数は減少しています。

反面発展途上国の人々のヘリコバクター・ピロリ感染率は依然高率です。

現在全世界の40~50%の人がヘリコバクター・ピロリに感染しているといわれていますが、わが国の場合、30歳代以下の人の感染率は約25%と低いものの、50歳代以上の人は70%以上といわれ、発展途上国並みの高さを示しています。

わが国ではおよそ3500万人の感染者がいると推測されています。

【感染経路】 

感染経路については未だ解明されていません。

この細菌が胃の中に存在することから口からの感染が強く示唆されています。

感染の例をあげますと、免疫力の未熟な乳児への離乳食の口移し、ヘリコバクター・ピロリ感染者との濃厚なキス、また糞便に汚染された食物・水の摂取による感染が考えられています。

【自然治癒はあるのか】

一度持続感染が成立すると自然消滅することは稀で、除菌や胃粘膜の高度萎縮などの環境変化がないかぎり感染が持続すると考えられています。

【検査法】

日本ヘリコバクター学会のガイドラインでも、以下の診断法が採用されています。

1.尿素呼気テスト (urea breath test, UBT)

2.血中・尿中抗ヘリコバクター・ビロリ IgG抗体検査

3.便中ヘリコバクター・ビロリ抗原検査

4.内視鏡生検検査

5.迅速ウレアーゼ試験 (rapid urease test, RUT)

6.組織鏡検法

7.培養法

※次回からこれら検査法について解説していきます※

【除菌】

胃及び十二指腸潰瘍は治療しても再発を繰り返し一生の病気といわれてきました。

現在では、しかし、ヘリコバクター・ビロリを除菌すれば、再発を防止できるようになってきました。

【除菌療法】

プロトンポンプ阻害薬(PPI)とアモキシシリン水和物(AMPC)及びクラリスロマイシン(CAM)の3剤併用治療(PAC)による第一次除菌治療を行います。

一次除菌が不成功の場合は、クラリスロマイシンをメトロニダゾール(MNZ)に変更して3剤併用療法(PAM療法)による二度除菌治療を行います。

※二次除菌までが保険適応となります※

【除菌の問題点】

近年言われていますが、除菌率が年々低下していることが問題になっています。

その原因としては除菌治療に使用されている抗生物質に対してヘリコバクター・ビロリが耐性を獲得してきていることが考えられます。

【除菌失敗率】

除菌成功率はおよそ80%です。

また、除菌成功例でのピロリ菌の再感染率2~3%ですが、除菌後にも胃がんが発見されるなどの報告もありますので、定期的に検査をしていく必要はあります。

2015年7月7日火曜日

ペプシノーゲン検査

【何を調べる検査なのか】

胃がんのスクリーニング検査として有用な検査のひとつです。

血液中のペプシノーゲンのⅡに対するⅠの割合を調べることにより、胃粘膜の萎縮の広がりとその程度、胃液の分泌機能、胃粘膜の炎症の有無が分かるほか、胃がんのスクリーニング検査として有用な検査方法とされています。

【ペプシノーゲンⅠ、Ⅱとは】

ペプシノーゲンⅠは胃酸の分泌する胃底腺領域に限局しており、ペプシノゲンⅡは、胃酸分泌領域およびガストリン分泌領域にまたがって広くみられます

【検査原理】

ペプシノーゲンは蛋白分解酵素であるペプシンの不活性型前駆体で、血清ペプシノーゲン値は胃粘膜の形態と外分泌機能を反映します。

そして胃酸の働きによってタンパク質を分解する酵素ペプシンにより、胃の分泌される場所によってペプシノーゲンⅠとⅡに分類されます。

※前駆物質は前駆体とも言い、物質代謝ではある物質が一連の反応で別の物質へと代謝される場合,反応のはじめの方により近い物質を,あとの方の物質に対して前駆物質と呼ぶ※

【検査方法】

数mlの血液で検査は簡単にできます。

【検査を受ける際の注意】

胃酸分泌抑制剤の中で、プロトンポンプ阻害剤を内服中の人は、ペプシノーゲンが高値になることからこの検査は適していません。

みぞおちの痛み、嘔吐、血便、体重減少など胃や十二指腸の疾患が強く疑われる症状がある場合は、ペプシノーゲン検査を受けずに、最初から上部消化管内視鏡検査などの精密検査を受けることをおすすめします。

【陰性と陽性の判定基準】

陰性・・・・・・Ⅰ値70以上かつⅠ/Ⅱ比が3以上。

陽性・・・・・・Ⅰ値70未満かつⅠ/Ⅱ比が3未満。

中等度陽性・・・Ⅰ値50未満かつⅠ/Ⅱ比が3未満。

強陽性・・・・・Ⅰ値30未満かつⅠ/Ⅱ比が2未満。

【検査結果の判定】

陽性・・・・胃粘膜に萎縮があると考えられ、萎縮性胃炎、胃がんが疑われます。

※ペプシノーゲン検査単独で胃がんと判定することは出来ないので、上部消化管内視鏡検査などの画像診断との併用が必要不可欠となります※

※陰性でその数値が高い場合には、胃液の分泌が多いと考えられ、胃炎や胃・十二指腸潰瘍、ヘリコバクター・ピロリの感染が疑われます※

※ヘリコバクター・ピロリが除菌されると正常値(Ⅰ値70以上、かつⅠ/Ⅱ比3以上)になるので、除菌治療の効果を判定するのに利用されています※

【ペプシノーゲンⅠ/Ⅱ比の欠点】

胃の萎縮と関係なく発症する未分化型腺がんや、間接X線法では容易に診断できる進行がんが逆に見逃されると言われています。

【ペプシノーゲンⅠ/Ⅱ比の欠点を補うには】

ペプシノーゲンⅠ/Ⅱ比でスクリーニングを実施し、陽性になった人は胃カメラによる精密検査を実施します。

陰性者は胃X線検査を受けるという方法が最適であると考えられています。

【何故ペプシノーゲン検査を実施するのか】

慢性萎縮性胃炎は、胃がん発生と密接な関係があることから、慢性萎縮性胃炎は胃がんの高危険群とされています。

その為慢性萎縮性胃炎を的確に診断することが、胃がんの早期発見と早期診断の向上に有効となります。

要するにペプシノーゲン法によるスクリーニングは、分化型の胃がんのみならず、未分化型の胃がんも数多く発見できる利点があるということです。

2015年6月24日水曜日

膠質反応について-3.ZTT-

【ZTTとは】

Zinc sulfate turbidity test (硫酸亜鉛混濁試験)の頭文字を取った検査です。

【ZTTは何を調べる検査】

肝硬変などにより肝機能が低下すると、血清たんぱくのうちアルブミンが低下し、γ-グロブリンが上昇します。

γ-グロブリンが増加すると、肝臓の線維化、慢性肝炎や肝硬変に進展していることが疑われるため、この検査を実施してその程度を調べることができます。

γ-グロブリンの中のIgGとIgMと相関します。

ZTTは肝臓疾患を見つけるための検査というよりも、すでに慢性肝炎や肝硬変を発症した人の経過観察で、肝臓の症状が改善されているかどうかを確認するための指標によく用いられます

【どのようにして検査するのか】

検査前日の夕食の後は絶食し、翌日の空腹時に採血をし、血液を遠心分離し得られた血清成分に検査試薬の硫酸亜鉛バルビタール緩衝液を加えてその混濁の程度を測定することにより、IgGの量を測定します。

【基準値】

2~12 U(Kunkel単位)

※免疫機能の活性と比例するので、免疫機能を抑制する副腎皮質ホルモン剤(ステロイド)や抗がん剤を長期投与していると、ZTTの数値は低くなります※

※基準値は医療機関によって異なる場合があります※

【異常値と疑われる疾患】

高値:高脂血症、急性及び慢性肝炎、自己免疫性肝炎、肝硬変、肝細胞がん、慢性炎症、膠原病など

低値:脂肪肝、胆汁うっ滞症、ネフローゼ症候群、糸球腎炎、骨髄腫、無グロブリン血症、糖尿病、

【異常が見られたら】

特異性が低い検査ですから、異常値となった場合には蛋白分画やAST、ALT、LDH、ALPなどの肝機能検査やCRP、抗核抗体、IgM-HA抗体など関連する検査を実施して総合的に判断します。

血液検査の前日に脂肪分の多い食事を取った場合にはγ-グロブリンが増加しやすくなり、数値が高くなる傾向があります。

【ZTTでHIV感染の判断はできるのか】

この検査は、血清中のγ-グロブリンの増加の度合いを調べる検査ですから、HIV感染に特異的な検査ではないのでHIV感染の判断には利用できません。


HIVに感染して肝機能障害やリウマチ,膠原病などがないにも係わらず,ガンマグロブリンの値やZTTの値が高値になる場合がありますが、ZTTの値が高値になったからHIVに感染しているとはいえません。

HIV感染の判断は適切な時期にHIV検査を受けないと分かりません。

2015年6月11日木曜日

膠質反応について-2.TTT-

【TTTとは】

Thymol Turbidity Test(チモール混濁試験)の頭文字を取った検査です。

【TTTは何を調べる検査】

ガンマーグロブリン(特にIgM、IgG)の増加やアルブミンの減少及び脂質の増加と相関し、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、多発性骨髄腫などで上昇します。

特にA型急性肝炎で極めて高い数値を呈します。

従って肝機能のスクリーニング(ふるい分け)検査のひとつとして実施されます。

【どのようにして検査するのか】

検査前日の夕食の後は絶食し、翌日の空腹時に採血をし、血液を遠心分離し得られた血清成分に検査試薬のチモールを加えて血清中のガンマーグロブリンとベータグロブリンが混濁するの量(混濁)する度合いを調べます。

グロブリンや脂質及びリポタンパクなどが増加すると混濁度が増しますが、アルブミンが減少すると混濁度が下がるので、グロブリンとアルブミンの量的な比率と変化を測定する事ができます。

【基準値】

0~4U以下(Maclagan単位)

※男女差があり、男性のほうが少し数値が高めですが、妊娠中あるいは更年期の女性になると男性とほぼ同等以上の数値となります※

※基準値は医療機関によって異なる場合があります※

【異常値と疑われる疾患】

高値・・・・・A型肝炎、慢性活動性肝炎、高脂血症、膠原病、脂肪肝、多発性骨髄腫、肝硬変など

低値・・・・・栄養不良、転移性肝がん

【異常が見られたら】

特異性が低い検査ですから、異常値となった場合には蛋白分画やAST、ALT、LDH、ALPなどの肝機能検査やCRP、抗核抗体、IgM-HA抗体など関連する検査を実施して総合的に判断します。

血液検査の前日に脂肪分の多い食事を取った場合にはガンマグロブリンが増加しやすくなり、数値が高くなる傾向があります。

【TTTでHIV感染の判断はできるのか】

TTTはHIVの感染の判断が出来るのかと質問を受けますが、

この検査は、血清中のガンマーグロブリンの増加の度合いを調べる検査ですから、HIV感染に特異的な検査ではないのでHIV感染の判断には利用できません。


HIVに感染して肝機能障害やリウマチ,膠原病などがないにも係わらず,ガンマグロブリンの値やTTTの値が高値になる場合がありますが、TTTの値が高値になったからHIVに感染しているとはいえません。

HIV感染の判断は適切な時期にHIV検査を受けないと分かりません。

2015年6月3日水曜日

膠質反応について-1.総論-

【膠質反応とは】

血清アルブミンとガンマーグロブリンの増加を調べる検査です。

【膠質反応は何を調べる検査】

肝機能検査のスクリーニング検査として使用されます。

ガンマーグロブリンが増加すると、肝臓の線維化・慢性肝炎・肝硬変に病態が進展していることが疑われるために膠質反応を調べることにより病気の程度を調べられる検査です。

【どのようにして検査するのか】

検査前日の夕食の後は絶食し、翌日の空腹時に採血をし、血液を遠心分離し得られた血清成分に検査試薬を加え、その混濁する具合を調べます。

【血清とは】

血液を採取して、遠心分離すると試験管の底には血液が固まりその上層部に黄色い液体が得られます。

これが血清です。

生化学検査の多くはこの血清を用いて検査を行います。

【異常が見られたら】

膠質反応の検査だけでは、診断を確定できないので、GOT・GPT、γ-GTP、ALP、LDH、血清総たんぱく分画、γ-グロブリン、コレステロールなどの測定も行ない、肝臓の病気かどうかを確かめます。

【膠質反応の種類】

ZTT(Zinc sulfate Turbidity Test:硫酸亜鉛混濁試験)とTTT(Thymol Turbidity Test:チモール混濁試験)があります。

※次回からZTT及びTTTについて紹介します※

2015年5月16日土曜日

HIV感染による初期症状について

HIVに感染した時の初期症状についてよく質問されますので、臨床検査とは直接的には関係ありませんが紹介しておきます。

【いつ頃現れるのか】

HIVに感染してから通常2~6週以内に現れます。

【HIVに感染した人全てに現れるのか】

感染した人の約半数から2/3に、これらの症状が起こることがあります。

 全ての感染者にこのような症状が現れるとは限りませんし、全く症状の現れない人もあります。

【初期症状はどのくらい続くのか】


大部分が数日で治り消失しますが、2週間程度続くこともあります。

また症状の続く期間は人によりまちまちです。

【初期症状が収まった後に再度初期症状が出ることがあるのか】

HIVに感染して感染初期に出るから"初期症状"と言います。

初期症状が出て、消失した後に再度初期症状は出ることはありません。

【初期症状が出なければHIVに感染していないのか】

HIVに感染して初期症状が全く出ない人もありますし、出ても軽く気づかない人もあります。

初期症状は何もしなくて放置しておいても自然に消失しますから、初期症状が出ないからHIVに感染していないとは絶対に言えません。

【主な初期症状の一覧】


【初期症状でHIVの感染は判断できるのか】

上記の症状はHIVに感染していなくても他の感染症でも出ますから、これらの症状だけでHIVの感染の判断はできません。

※HIV感染の判断は、適切な時期に適切なHIV検査を受けないと分かりません※




2015年4月20日月曜日

HIV検査に応用されている検査手法について-7.セロディア・HIV-1/2について-

【セロディア・HIV-1/2とは】

HIV-1抗体およびHIV-2抗体検出用試薬です。

【販売メーカ】

富士レビオから販売されています。


【検査原理】

ゼラチンを粒型化した人工担体に不活化処理HIV-1抗原および不活化処理HIV-2抗原をそれぞれ吸着させ、これらの感作粒子が検体中のHIV-1抗体またはHIV-2抗体と反応し、凝集することを応用した粒子凝集反応法(PA法:Particle Agglutination Test)検査です。
【検出抗体】

ヒト血液中のHIV-1抗体とHIV-2抗体を区別して検出出来ます。

【特異性】

非常に高い特異性を有することからヒト血液中のHIV-1抗体とHIV-2抗体を区別して検出できます。

【非特異反応の出現率】

ゼラチン粒子に対して非特異的に反応をするヒトがいることから、0.03%以下の偽陽性反応が見られます。

【検出可能なグループとサブタイプ】

HIV-1の以下のタイプに対する抗体は全て検出可能

グループM(サブタイプA~H)

グループ0

グループN

HIV-2のサブタイプA~Gに対する抗体は検出可能

【日本での普及率】

HIV抗体スクリーニング検査で陽性となった場合、HIV-1抗体とHIV-2抗体のどちらを有するかを検査して、HIV-1またはHIV-2の感染であることを区別する目的で利用されている。

【判定基準】

・陽 性 

未感作粒子の反応像の読みが(-)で、HIV-1感作粒子またはHIV-2感作粒子の反応像の読みが(+)以上を示すものを陽性と判定。

・陰 性 

未感作粒子の反応像の読みが(-)で、HIV-1感作粒子またはHIV-2感作粒子の反応像の読みが(-)を示すものを陽性と判定。

・判定保留

未感作粒子の反応像の読みが(-)で、HIV-1感作粒子またはHIV-2感作粒子の反応像の読みが(±)を示すものを判定保留判定。

・非特異反応

未感作粒子の反応像の読みが(+)で、HIV-1感作粒子またはHIV-2感作粒子の反応像の読みが(+)又は(-)を示すものを非特異反応として判定保留判定。

※判定保留又は非特異反応の場合は、再度検査を実施する※

【結果判定】

1.HIV-1感作粒子とHIV-2感作粒子が共に陽性:HIV-1とHIV-2の感染。

2.HIV-1感作粒子のみが陽性:HIV-1の感染。

3.HIV-2感作粒子陽性:とHIV-2の感染。

4.HIV-1感作粒子とHIV-2感作粒子が共に陰性:HIV-1とHIV-2の感染は無し。

※HIV-1とHIV-2陽性の確認は、ウエスタンブロット法などの異なる専用試薬で再検査を実施する※

【利用上の注意】

セロディア・HIV-1/2は、HIV-1とHIV-2の感染を区別する検査ですから、HIV抗体のスクリーニング検査としては利用できません。

あくまでもHIV抗体のスクリーニング検査で陽性となった場合に初めて使用して、HIV-1とHIV-2のいずれかに感染しているかを判断するために使用する検査法です。

2015年4月9日木曜日

HIV検査に応用されている検査手法について-6.もうひとつのリアルタイムPCR検査 アキュジーン m-HIV-1について-

HIV検査のPCR検査は、リアルタイムPCR検査がよく知られていますが、現在わが国で
実施されているもう一つのPCR検査の"アキュジーン m-HIV-1"について解説してみます。

【アキュジーン m-HIV-1とは】

HIV-1 RNAを定量的に検出するRT-PCR法(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)を用いた検査です。

【販売メーカ】

アボット社が販売しています。

【最小検出感度】

検体量0.6ml→40コピー/ml

検体量0.5ml→75コピー/ml

検体量0.2ml→150コピー/ml

【測定範囲】

40コピー/ml~10の7乗コピー/ml

【特異性】

100%

【非特異反応の出現率】

おそらく0%

【検出可能なグループとサブタイプ】

HIV-1の以下のタイプは全て検出可能

グループM(サブタイプA~H)

グループ0

グループN

※HIV-2は検出できない※

【HIV-1 グループPは検出可能なのか】

メーカはグループPでの検出検討をしていないのでコメントできないとの回答

現実グループPで検査を行わないと検出出来るか否かは不明です。

【検査はどのようにするのか】

アボット社のAbbott m2000rtアナライザーを使用して全自動で検査を行います。

【アキュジーン m-HIV-1はリアルタイムPCR検査なのか?】

リアルタイムPCR検査です。

【TaqMan HIV-1「オート」の比較】

感度、特異性、検出可能なHIV-1はTaqMan HIV-1「オート」と同じ。

【日本での普及率】

日本国内では、TaqMan HIV-1「オート」が先行販売されたことから、後発販売となったアキュジーン m-HIV-1の普及率は低いのが現状です。


2015年3月30日月曜日

HIV検査に応用されている検査手法について-5.日本におけるHIV抗原抗体検査について-

【HIV抗原抗体検査とは】

第四世代のHIV抗原抗体検査のことです。

【HIV抗原抗体検査とは】

HIV-1の抗原の一部であるp24を検出できる特徴があり、尚且つHIV-1/2の抗体をも検出できる検査法です。

しかし、HIV-2の抗原は検出できません。

【何処で検査が受けられるのか】

医院やクリニックから検査を受ける検査専門の会社では、第三世代の抗体検査から全て第四世代の抗原抗体検査に切り替えられています。

大都市の保健所の一部でも採用されていますが、ほとんどの保健所では受けることは出来ません。

大学病院や大手の病院では、検査室で実施している場合が多いです。

【適切な受ける時期は】

不安な行為から30~50日前後(30日で検出可能)でHIV-1の抗原であるp24を検出出来ますが、HIV-1/2の抗体は不安な行為から12週で検出できます。


【現在使用されている第四世代HIV抗原抗体検査キット】




【キットについての解説】

1.アーキテクト Ag/Ab コンボアッセイ・ダイナパック

被検検体にアクリジニウム・エステルを標識した抗体と固相化抗体を反応させサンドイッチ法により測定する検査であるCLIA(Chemiluminescent Immunoassay:化学発光免疫測定法)を利用した検査法です。

2.アキシム HIV Ag/Ab コンボアッセイ・ダイナパック

被検検体にアクリジニウム・エステルを標識した抗体と固相化抗体を反応させサンドイッチ法により測定する検査であるCLIA(Chemiluminescent Immunoassay:化学発光免疫測定法)を利用した検査法です。

3.ジェンスクリーン HIV Ag-Ab

電解反応により生成されるエネルギーによりルテニウムピリジン錯体を励起して発光させる化学発光法の一種であるECLIA(Electro Chemiluminescent Immunoassay:電気化学発光免疫測定法)を利用した検査法です。

4.エンザイグノスト HIV インテグラ

電解反応により生成されるエネルギーによりルテニウムピリジン錯体を励起して発光させる化学発光法の一種であるECLIA(Electro Chemiluminescent Immunoassay:電気化学発光免疫測定法)を利用した検査法です。

5.バイダスアッセイキット HIV DUO Ⅱ

蛍光基質を用いた酵素免疫測定法であるELFA (Enzyme Linked FluorescentAssay:) 法を採用し、ツーステップサンドイッチ法により検体中の抗原と抗体を検出
します。

6.エクルーシス試薬 HIV combi

試薬の反応により、複合体が形成させこの複合体を磁力で集磁した後に洗浄を行い、未反応物を除去後、発光試薬を添加し発光量を測定するECLIA(Electrochemiluminescence Immunoassay:電気化学発光イムノアッセイ)を利用した検査法です。

7.ルミパルス HIV Ag/Ab

被検検体にアクリジニウム・エステルを標識した抗体と固相化抗体を反応させサンドイッチ法により測定する検査であるCLIA(Chemiluminescent Immunoassay:化学発光免疫測定法)を利用した検査法です。

8.ルミパルスプレスト HIV Ag/Ab

被検検体にアクリジニウム・エステルを標識した抗体と固相化抗体を反応させサンドイッチ法により測定する検査であるCLIA(Chemiluminescent Immunoassay:化学発光免疫測定法)を利用した検査法です。

9.HISCL HIV Ag+Ab試薬

被検検体にアクリジニウム・エステルを標識した抗体と固相化抗体を反応させサンドイッチ法により測定する検査であるCLIA(Chemiluminescent Immunoassay:化学発光免疫測定法)を利用した検査法です。

10.エスプライン HIV Ag/Ab

イムノクロマト法を応用した迅速抗原抗体検査です。

日本においては迅速抗原抗体検査はこれ一種類しか存在しません。

※発売当初、血液中に多量のHIV-2抗体が存在すると見逃す危険性が専門家により指摘されことから、メーカは自主回収し改良を行い現在のキットは見逃す危険性はありません※
【自動分析装置とは】

1~9の検査は、自動分析装置で検査を行います。

それぞれのメーカが独自に自動分析装置を販売していますので、この自動分析装置を使用して自動で検査を行います。

2015年3月14日土曜日

HIV検査に応用されている検査手法について-4.日本におけるHIV抗体検査について-

現在は、第一世代及び第二世代のHIV抗体検査キットは何処のメーカも製造販売していません。

従って現在日本で使用されているHIV抗体検査は、第三世代のHIV抗体検査です。

以下に現在保健所及び医療機関で使用されている第三世代のHIV抗体検査を紹介しておきます。

現在使用されている第三世代HIV抗体検査キット






【キットについての解説】

1.ダイナスクリーン HIV-1/2

迅速抗体検査または即日抗体検査と呼ばれている検査で、迅速HIV抗体検査はわが国ではこれ一種類しかありません。

以前はダイナボットが製造・販売していましたが現在は、製造はダイナボットで、販売はアリーアメデイカルがしています。

2.ルミパルス オーソ HIV-1/2

エライサ法の一種のCLIA(Clinical Laboratory Improvement Amendments:化学発光免疫測定法 )を利用した検査法です。

3.ルミバルスプレスト オーソ HIV-1/2

エライサ法の一種のCLIA(Clinical Laboratory Improvement Amendments:化学発光免疫測定法 )を利用した検査法です。

4.ジェネディア HIV-1/2ミックスPA

ゼラチン粒子を単体にし、この単体にHIVの抗原成分を吸着させこのゼラチン粒子の凝集を利用した検査法です。

PA法とは、Particle agglutination method (ゼラチン粒子凝集法)のことです。

5.ケミルミ Centaur  HIV-1,2抗体

エライサ法の一種のCLIA(Clinical Laboratory Improvement Amendments:化学発光免疫測定法 )を利用した検査法です。

6.ビトロス HIV-1/2抗体

エライサ法の一種のCLIA(Clinical Laboratory Improvement Amendments:化学発光免疫測定法 )を利用した検査法です。

7.ランリーム HIV-1/2 抗体

ラテックス粒子の表面にHIVの抗原を吸着させ、検体中のHIV抗体と抗原抗体反応をさせて、その生成物による濃度を吸光度としてとらえ、既知濃度の標準物質から得た標準曲線から検体中のHIV抗体の濃度を測定する方法です。

8.HISCL HIV ab試薬

エライサ法の一種のCLIA(Clinical Laboratory Improvement Amendments:化学発光免疫測定法 )を利用した検査法です。

※ 1~8の検査は、不安な行為から12週以降に受ければ信頼できる結果が得られます。

※ 1,4の検査は、肉眼で判定します。

※ 2,3,5~8の検査は、自動分析装置で検査を行います。


2015年3月2日月曜日

HIV検査に応用されている検査手法について-3.第三世代抗体検査(2)-

(2)PA法

【PA法とは】

PA法というHIV検査のは日本の富士レビオが開発した検査法です。

PA法とはゼラチン粒子凝集法のことで、Particle Agglutinationの頭文字のPAを取って命名されています。

【測定原理】

ゼラチンを粒型化した人工担体にリコンビナントHIV抗原(HIV-1/gp41、HIV-1/p24、HIV-2/gp36)を吸着させたもので、この感作粒子が検体中の抗HIV-1抗体または抗HIV-2抗体と反応し、凝集することを応用した粒子凝集反応試薬です。

HIVの抗原を吸着させたゼラチン粒子に血清を加えて一定時間静置して、ゼラチン粒子の凝集の有無を肉眼で判定します。

【検査方法】

マイクロプレートで血清を4倍・8倍・16倍と希釈し、8倍の所に未感作粒子(ゼラチン粒子のみでHIV抗原は吸着させていない)を、16倍の所に感作粒子(HIV抗原を吸着させたゼラチン粒子)を滴下してよく混和し、2時間静置します。

【測定結果の判定法】

血清中にHIV抗体が存在しなければ、ゼラチン粒子は一点に集中しますが、HIV抗体が存在すればゼラチン粒子は円形に広がります。

【反応像の読み】

(-):ゼラチン粒子がボタン状に集まり、外周縁が均等でなめらかな円形を示す。

(±):ゼラチン粒子が小さなリングを形成し、外周縁が均等でなめらかなもの。

(+):ゼラチン粒子リングが明らかに大きく、その外周縁が不均等で荒く、周辺に凝集の見られる。
(++)凝集が均一に起こり、凝集粒子が底全体に膜状に広がっているもの。

【判定基準】

陽性:未感作粒子に凝集なしで感作粒子に(+)~(++)の凝集が見られる。

陰性:未感作粒子と感作粒子共に凝集が見られない。

判定保留:未感作粒子に凝集なしで感作粒子に(±)の凝集が見られる。
この場合は再度検査を実施し直す。

再検査:未感作粒子と感作粒子共に(±)以上の凝集が見られる。
この場合は再度検査を実施し直す。

【判定の解釈】

陽性の場合は、HIV-1とHIV-2の何れの抗体が存在するかの判断はできません。

確認試験でHIV-1とHIV-2の何れの抗体があるかを検査し直します。

【偽陽性反応の出現率】

およそ0.3%と低いのが特徴です。

【検査の信頼性】

不安な行為から12週以降に受けて陽性となれば、HIVに感染している可能性が極めて高いです。

※陽性の場合は、必ず確認試験で本当の陽性か否かを調べる必要があります※

2015年2月19日木曜日

HIV検査に応用されている検査手法について-2.第三世代抗体検査(1)-

(1)エライサ法

【HIV抗体検査のエライサ法とは】

エライサ法とは免疫学的測定法のひとつで、抗体を使った免疫学的測定法のひとつでもあり、正式名称は,Enzyme-linked immuno-sorbent assay と言います。

エライサとは、このEnzyme-linked immuno-sorbent assayの頭文字のELISAの略称です。

別名酵素免疫測定法とも言われますがエライサ法の方がよく知られています。

また、EIA法とも呼ばれます。

EIA法は、Enzyme Immunoassayの略称です。

【測定原理】

エライサ法とEIA法の測定原理は同じです。

エライサ法は、マイクロプレートやチューブにHIV抗原を吸着させて検査を行いますが、EIA法はビーズにHIV抗原を吸着させて検査を行います。

エライサ法は抗体と酵素を使った測定法です。

一般的には、96のウェル(穴)を持つマイクロプレートを使い、このウエル内部の表面にHIV抗原を吸着(コーティングとか固相化とも言います)させて使用します。

このHIV抗原は、血清又は血漿中にあるHIV抗体を補足するために使われます。

HIV抗原を吸着したウエルに血清または血漿を加えて一定温度で一定時間放置し、ウエルを薬品で洗浄しそこに酵素標識抗体を加え更に一定温度で一定時間放置し、ウエルを薬品で洗浄し最後に基質を加えてから、酵素標識抗体の発色を機械で測定します。

血清又は血漿中にHIV抗体が存在すれば、ウエルに吸着させたHIV抗原にHIV抗体が結合し、この結合物に酵素標識抗体が更に結合し、発色するわけです。

血清又は血漿中にHIV抗体が存在しなければ、ウエルに吸着させたHIV抗原には何も結合しませんので、酵素標識抗体も結合すること無く発色もしません。

【カットオフインデックス(C.O.I.)の計算】

C.O.I.=(検体の発光量)/C(カットオフ値)

C:HIV 抗体用標準陽性溶液の発光量?0.25

上記の式に基づき検体のC.O.I.を計算します。

【測定結果の判定法】

発光量の測定は全て機械が自動的に行い、カットオフインデックス(C.O.I.)の計算も行ってくれます。

従って陰性、陽性間判定も機械が自動的に行なってくれますから、肉眼で検査する場合と比べて検査を行う人の主観は介在する余地はありません。


【判定基準】

陽性:C.O.I.が1.0以上を示す場合。

陰性:C.O.I.が1.0未満を示す場合。

【利用されているHIV抗原はHIVそのものなのか?】

ウエルやビーズに吸着させているHIV抗原は、ウイルスその物ではなく遺伝子操作によって作られたリコンビナント抗原を利用しています。

あるメーカでは、

HIV-1 Env 13リコンビナント抗原

HIV-1 Env 10リコンビナント抗原

HIV-1 p24リコンビナント抗原

HIV-2 Env ALリコンビナント抗原

の4つのHIVリコンビナント抗原をミックスして使用しています。

2015年2月9日月曜日

HIV検査に応用されている検査手法について-1.イムノクロマト法-

【はじめに】

現在のHIV検査には、

1.リアルタイムPCR検査

2.第三世代の抗体検査

・エライサ法
・PA法

3.第四世代の抗原抗体検査

・酵素免疫測定法
・エライサ法

4.迅速抗原抗体検査及び迅速抗体検査

などがあります。

多くの方からHIV検査とその検査手技についての質問を受けますので、数回に分けてHIV検査の手技について解説していきたいと思います。

今回は第一回目として、イムノクロマト法について解説いたします。

【HIV抗体検査のイムノクロマト法とは】

イムノクロマト法により血漿、血清、全血を使用してこれらの中に存在する抗HIV‐1抗体及び抗HIV-2抗体を検出するキットです。

日本において厚生労働省から認可を受けているキットは、アリーアメディカルから販売されている『ダイナスクリーン』一つしか存在しません。

【測定原理】

検体(血液・血漿・血清)中の抗HIV抗体は、シート下部のセレニウムコロイド標識HIV抗原と反応し、抗HIV抗体-セレニウムコロイド標識HIV抗原の結合物を形成し、この結合物はシート上を移動して、シート上部に固相化されたHIV抗原と結合し、固相化HIV抗原-抗HIV抗体-セレニウムコロイド標識HIV抗原のサンドイッチ型の結合物を形成します。

その結果結シート上の判定窓に出現するセレニウムコロイド由来の赤色のラインの有
無を目視で判定します。

この場合、必ずコントロールラインに赤色のラインが出現している必要があります。

コントロールラインに赤色のラインが認められない場合は、検査が正しく実施されていないことから、再度検査を実施する必要があります。

【測定結果の判定法】

シートの各ストリップ上には、上下に分かれて 2 つの判定窓があり、この 2 つの窓を観察し、赤色のラインの有無を確認する。

結果を判定する前に、測定操作が正しく行われたことを確認するために、ストリップ上部のコントロール窓の中に赤色のライン(コントロールライン)が現れていることを必ず確認する。

コントロールラインが認められる場合は検査結果は有効であるが、認められない場合は検査結果は無効とし、再検査を行う。

※判定ラインに赤色のラインが認められた場合は、赤色の強弱にかかわらず陽性と判定する※

※判定ラインの赤色の強さは、HIV抗体の力価を定量的に反映しません※

※定められた判定時間15分を経過後、判定ラインに薄くラインが出現しても陽性とは判定しない※

【判定基準】

陽 性:ストリップ上部の判定窓の中に赤色のコントロールラインが認められ、ストリップ下部の判定窓の中に赤色のライン(判定ライン)が認められた場合

陰 性:ストリップ上部の判定窓の中に赤色のコントロールラインが認められ、ストリップ下部の判定窓の中に赤色のライン(判定ライン)が認められない場合。

再検査:ストリップ上部の判定窓の中に赤色のコントロールラインが認められない場合。

【イムノクロマト法の欠点】

判定ラインの色調を肉眼で判定することから、どうしても判定者の主観に左右されてしまいます、その結果神経質的に判定すればどうしても薄くラインが有ると判定し偽陽性反応が出現しやすい検査法です。

逆に大雑把な人が判定すれば、薄い判定ラインを見逃すこともあります。

しかし、判定を厳格に見すぎての偽陽性反応が圧倒的に多いのが現実です。

【イムノクロマト法 『ダイナスクリーン・HIV-1/2』の判定方法】

以下を参照下さい。
 ↓ ↓
【イムノクロマト法 『ダイナスクリーン・HIV-1/2』の判定方法】

2015年1月30日金曜日

寄生虫感染症検査-5.マラリア原虫-

【マラリア原虫とは】

分類学上ではプラスモディウム(Plasmodium)属に入る寄生性の単細胞生物です。

マラリア原虫は、ウイルスでも細菌でもない寄生虫でヒト以外にチンパンジーやアカゲザルなどの霊長類、ニワトリやペンギンなどの鳥類、ハ虫類などに寄生するものが数百種類存在しますが、ヒト以外に寄生するマラリア原虫は、例外を除いてヒトには感染することはありません。

【マラリアの分類】

熱帯熱マラリア、三日熱マラリア、卵形マラリア、四日熱マラリアの4種類が存在します。

これら4種のマラリアは、形態が異なるので比較的容易に鑑別診断が可能です。

熱帯熱マラリア以外は重症化することは稀ですが、熱帯熱マラリアは重症化しやすく、発症してから5~6日間不適切な治療で経過すると、痙攣や昏睡などの脳症、肺水腫、急性呼吸窮迫症候群、急性腎不全、重症貧血、循環不全によるショック代謝性アシドーシスなどの重篤な症状や合併症を呈する重症マラリアとなり、最終的に死に至ることがあります。

【マラリアの種類による発熱発作の周期】

マラリアの種類によって独特の発熱周期が見られます。

熱帯熱マラリア 不規則

三日熱マラリア 48時間

卵形マラリア 48時間

四日熱マラリア 72時間


【マラリア原虫の感染経路と寄生部位】

ハマダラカの体内で増殖したマラリア原虫のスポロゾイト(胞子が殻の中で分裂して外に出たもの)は唾液腺に集まる性質を持つことから、ハマダラカに吸血される際に蚊の唾液と一緒に大量の原虫が体内に送り込まれます。

血液中に入ると45分程度で肝細胞に寄生し、肝細胞の中で1~3週間かけて成熟増殖し、分裂小体(メロゾイト)が数千個になった段階で肝細胞を破壊し赤血球に侵入します。

赤血球の中で8~32個に分裂すると赤血球を破壊して血液中に出るサイクルを繰り返します。

したがってマラリアで発熱するのは、マラリア原虫が人の赤血球を破壊することにより起こるわけです。

【マラリアの現状】

現在では、日本やヨーロッパなどの温帯地域はマラリアの流行はありません。

熱帯、亜熱帯地域の70か国以上で流行しています。

患者は、全世界で年間3~5億人、累計で約8億人の患者が発生し、死者数は100~150万人に上ると報告されています。

現時点では、日本やヨーロッパなどの温帯地域はマラリアの流行はありませんが、地球温暖化による温度の上昇で温帯地域の温度が上昇すればマラリア原虫を媒介するハマダラカが発生し、マラリアの流行が起こり始めると専門家は危惧しています。

【日本国内でのマラリア】

日本でのマラリアは、『輸入熱帯病』としてのマラリアで、海外で感染して帰国するケースが多く年間100例ほどが報告されています。

【治療】

マラリアの治療薬としてはキニーネが有名ですが、クロロキン、メフロキン、ファンシダール、プリマキン等がありますが強い副作用があるので注意が必要です。

【感染予防対策】

第一に蚊に刺されないようにすることです。

マラリア流行地から帰国後、1~2週間後に高熱が発生した場合はマラリアが疑わることから、直ちに受診する必要があります。

マラリアワクチンは、日欧米の数社から発表されその有効性が期待されています。

【マラリア原虫の検査】

1.顕微鏡下でギムザ染色した赤血球内のキラリア原虫を調べる。

2.海外ではイムノクロマト法による迅速抗原検出キットが発売されており、15分以内で検査が終了し、熱帯熱マラリアと他の3種類を区分できます。

※イムノクロマト法を利用した簡易キットとして、ICT Malaria P.f./P.v.R(オーストラリア製)、OptiMALR(米国製)などがありますが、日本では承認されていせん※

3.実験室レベルでは種々のPCR法も開発されています。


【マラリアと輸血】

平成6年12月鹿児島県で開催された第36回日本熱帯医学会総会において、血小板輸血によって熱帯性マラリアに感染した症例が報告されています。

献血された血液のマラリア原虫の検査は、行われていませんので輸血によるマラリア感染は今までにも報告されており、今後も発生する可能性があります。

従って赤十字血液センターでは、献血者の問診を行うことにより、輸血によるマラリアの感染を防ぐよう努めていますが、完全に感染を防止することは不可能です。



2015年1月18日日曜日

寄生虫感染症検査-4.横川吸虫-

【横川吸虫とは】

横川吸虫は、小腸に寄生する人体寄生虫の1種で成虫の体長は1-1.5mmでほぼ楕円形で、雌雄同体です。

横川吸虫という和名は、明治44年に台湾のアユからはじめてこの寄生虫を発見した医学者横川定(1883~1956)に由来します。

日本では近年減少傾向にありますが、依然感染報告者数第2位の寄生虫(因みに第1位はアニサキス、第3位は広節裂頭条虫)です。


【横川吸虫の感染経路】

人間の便の中にあった横川吸虫の卵が淡水産のカワニナの中でふ化し、その後いろんな形態を経ながら(虫卵→ミラキジウム幼生→スポロキスト幼生→セルカリア幼生)アユやシラウオなどの淡水魚の体内に入り感染型の幼生になり、この魚を人間が生や加熱不十分な状態で食べる事により感染します。

【横川吸虫の寄生部位】

口から取り込まれ小腸まで移動して感染し、小腸に寄生し成虫となります。

【症状】

横川吸虫の少数感染の場合は、ほとんど自覚症状がない人が大半だと言われています。

症状としては、多少下痢が多くなる程度なのでこれが感染による症状とは殆どの人が気づいていないのが現実です。

度重なる感染で寄生数が多くなると下痢や腹痛、食欲不振、体重減少等の消化器症状(横川吸虫症)を引き起こします。

また、小腸の絨毛の間に侵入することが慢性炎症につながるとする説もあります。

【治療】

早朝空腹時にプラジカンテルを投与し、約2時間後に下剤を与えて排泄を促すのが有効な治療法とされています。

【感染予防対策】

1.中間宿主となるアユやシラウオをなどを生で食べない。

※横川吸虫の少数感染では深刻な症状を起こすことが稀で、成虫の寿命も短いために採り立てて真剣に感染予防の措置がとられていないのが現状です※

2.生焼け状態の組織に少数のメタセルカリア幼生が生存していたり、アユを調理したまな板に、脱落した鱗などからメタケルカリア幼生が付着して他の食材に付着して感染源となることが報告されています。

3.近年では、生シラウオが鮮度を保った状態で流通するため感染者数が増加してます。

【横川吸虫の検査】

疑いのある患者の便を用いて、遠心沈殿集卵法により虫卵を検出します。

横川吸虫が感染していても、成虫が自然に排出されて虫卵が検出されなくなることもあります。

血清検査は行いません。

【判定】

便の中に横川吸虫の虫卵があれば、横川吸虫に感染していると判断します。

2015年1月1日木曜日

謹賀新年

多くの方にとって役立つ臨床検査についての事項を解説していきますので、今年もよろしくお願い致します。