血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2012年12月28日金曜日

ノロウイルスについて-1.ノロウイルスとは-


2012年11月頃から日本全国でノロウイルスが流行し始め、12月現在大流行しています。

未だ終息する気配がないことから、緊急にノロウイルスについて解説していきたいと思います。

ノロウイルスは、以前は小さな球形状のウイルス形状を持つことから"小型球形ウイルス(SRSV)"と呼ばれていましたが、2002年の国際ウイルス学会にて"ノロウイルス"と命名されています。

ノロウイルスは、ヒトに経口感染して十二指腸から小腸上部で増殖し、伝染性の消化器感染症を引き起こします。

死に至ることは稀ですが、苦痛(刺すような腹痛・下痢と嘔吐・発熱)が極めて大きく、稀に十二指腸潰瘍を併発することもあります。

現在特異的な治療法は確立されていなく、対処療法のみです。

感染から発病までの潜伏期間は12時間~72時間(平均1~2日)。

症状が収まった後も便へのノロウイルスの排出は1~3週間程度続き、7週間以上続くとも言われています。

その為に症状が収まった人の便から第三者へ感染する危険性が極めて高いのが特徴です。

流行は1年中見られますが、特に11~3月の発症が多く報告されています。


【症状】

主症状としては、突発的な激しい吐き気や嘔吐、下痢、腹痛、悪寒、38℃程度の発熱。

嘔吐の始まる数時間前から胃に膨満感やもたれを感じる場合もあります。

これらの症状は通常、1~2日で治癒し、後遺症が残ることはありませんが、免疫力の低下した老人や乳幼児では治癒が長引くことがあります。

死亡した例としては、吐瀉物を喉に詰まらせることによる窒息や誤嚥性肺炎による死亡が報告されています。

また感染しても発症しない不顕性感染や風邪症候群と同様の症状が現れるのみの場合もあります。


【感染経路】

ノロウイルスによる感染症は経口感染(口からの感染)が原因となります。

・ノロウイルスで汚染された食材や食品を喫食しての感染。

・ノロウイルスで汚染された水を飲用しての感染。

・ノロウイルス感染者の糞便や吐瀉物から手指を介して感染。

・飛散した飛沫から空気感染

・ノロウイルス感染者が十分に手を洗わず調理した食品を食べての感染。

※ノロウイルスは、衣服や寝具、家庭用品、家具などの表面に付着しても数週間生存することができることから、十分な手洗いや器具の洗浄が必要となります※

※ノロウイルスはアルコール(75%エタノール)では死滅しませんので、消毒剤としては塩素が一番適しています※

※加熱に関しても60度では死滅せず85度以上の加熱が必要となります※

2012年12月18日火曜日

結核の新しい検査-結核菌特異的IFN-γ(ELISPOT)-


結核の新しい検査、結核菌特異的IFN-γについて紹介します。

ELISPOT法は、QFT (クオンティフェロン) 検査と同様に結核感染の有無を診断する検査方法です。

【検査方法】

結核感染が疑われる患者から採血してリンパ球を分離し、 抗ヒトインターフェロン-ガンマ (IFN-γ) 抗体を底部にコーティングした培養プレートに一定量を分注後、 結核菌特異抗原ESAT-6およびCFP-10を添加して、20時間前後培養します。

結核感染者のリンパ球からはIFN-γが分泌され、抗ヒトIFN-γ抗体と結合することから、この状態を可視化し、IFN-γを産生する細胞の個数を計測し、IFN-γ産生細胞の数により結核感染を診断します。

【使用目的】

結核感染疑いのある人に対する補助診断として使用。

原因不明の熱が続き、結核に似た症状のある方にこの検査を行えば、 短期間で結核を発病しているか否かの診断が行えます。

感度が97.1%と非常に高いことから、この検査で結核の可能性があれば、結核患者の早期発見につながり迅速な対応が可能となり、感染の広がりを防止することが出来ます。

感染リスクの高い人や発病リスクの高い人に有効な検査法です。


【感染リスクの高い人とは】

医療従事者や集団生活者は、結核を発病した場合周囲の第三者への感染拡大という大きな影響を及ぼすことから、定期的に結核菌への感染を確認し、必要に応じて予防内服を行うことから、集団感染リスクを抑えることが可能となります。

【発病リスクの高い人とは】

何らかの理由で免疫力が落ちている人は、一般的に結核の発病リスクが高いと考えられています。

例えば、透析患者、糖尿病患者、免疫抑制治療を行っている患者、HIV感染者は発病リスクが当然高くなります。

従って免疫抑制治療を行う前には、結核の感染診断を行うことが推奨されていますし、HIV感染者も当然結核感染の有無の検査をしておく必要があります。

2012年12月9日日曜日

結核について


結核は呼吸器感染症で、結核を発病している人が咳やくしゃみをしたときに、結核菌が飛び散り、 吸い込むことにより感染することがあります。

結核菌を吸い込んでもすべての人が感染をするわけではなく、体の免疫力が勝てば当然結核菌は体内から排除されますが、免疫力が負ければ当然感染することになります。

結核菌が体内に残っていても体内に封じ込められたまま活動しない状態を「感染」と言い、「発病」は結核菌が活動を始め、菌が増殖していく状態を言います。

症状がすすむと咳やたんとともに空気中に結核菌が吐き出される (排菌) ようになりますが、発病していても排菌していない場合は結核を第三者に感染させる心配はありません。

感染した人が発病する確率、5~10%と考えられていますが、発症原因の解明は未だされていません。

言えることは、過労蓄積などに酔って免疫力が弱まっている時には注意が必要ということです。

感染から発病への契機とる最も重要な契機は免疫低下で、近年では特にHIV感染が要因となっています。

結核は、依然として世界各国で蔓延しています。

開発途上国だけでなく先進各国及び日本でも蔓延しています。

日本人の結核の罹患率 (人口10万人対の新規結核患者数:17.7) は、米国 (4.1) の4.3倍、カナダ (4.7) の3.8倍と際立って高いのが現実です。

また、近年ではHIV感染による日和見感染症の一つとして結核が注目され、感染者も増加しています。

新しい結核検査については次回解説致します。

2012年12月3日月曜日

HLA検査-7.まとめ「HLAを知って病気を予防する」-


内外の多くの研究者により、HLAとある種の疾患に関係があることが明らかにされています。

自分自身のHLAを知ることによって、どのような疾患にどの程度かかりやすいかがわかることがあります。

例を上げますと、

・糖尿病に他人より4倍発症しやすい(B54、DQB1*04:01、DRB1*04:05)

・腫瘍性大腸炎を4倍発症しやすい(DRB1*09:01、DR2、B52など)

・ベーチェット病(Behcet病)に9.3倍発症しやすい(B51)などがあります。

しかしマーカーとなるHLAを保有していても必ずその疾患を引き起こすわけではありません。

自分自身のHLAを知ることによって、日頃から体調に気を配り検診回数を増やすなどの自己管理で病気を防ぐことができるので、自分自身のHLAを知ることは意味があります。

2012年11月25日日曜日

HLA検査-6.HLAとナルコレプシーとの関連性-


ナルコレプシーは、日中場所や状況の区別なく起きる、強い眠気の発作を主な症状とする睡眠障害で、「居眠り病」とも呼ばれています。

日本人における有病率は0.16~0.18%と言われています。

ナルコレプシーはすべての人種において発症が見られますが、日本人のナルコレプシーの有病率は世界で最も高く、1万人当たり16人~18人(0.16~0.18%)と言われています。

ナルコレプシーの発症年齢は、10代から20代前半に集中しており、特に14~16歳がピークという統計があり、中年期以降に発症することは稀とされています。

ナルコレプシー発症原因は、脳内物質や血液が深く関係していると言われていますが、未だ不明な点も多く、すべては解明されていないのが現状です。

ナルコレプシーの病因のひとつとして関連性が注目されているは、HLAとの関連性があります。

日本人症例の全例がHLA-DR2/DQ1という血清型をもつことが発見され、現在、HLA遺伝子のDQB*0602(ハプロタイプ)が生物学的指標として診断補助に用いられています。

※健康な人でも同じHLAを持っている場合もあるので、このHLAを保有していれば必ずしもナルコレプシーが発症するとは言えません※

2012年11月12日月曜日

HLA検査-5.HLAとベーチェット病との関連性-


ベーチェット病とは全身に色々な症状が繰り返し現れる病気で、トルコの皮膚科医ベーチェットによって初めて報告された病気です。

ベーチェット病には、口腔内アフタ、皮膚症状、眼症状、外陰部潰瘍の四つの症状があります。

ベーチェット病患者は、HLA-B51抗原を有していることが多く、患者群では40-80%と高率でであり、健常群の10-30%と比べて明らかに高い保有率が確認されています。

即ち、ベーチェット病患者ではHLA-B51抗原を保有する人が有意に多いことです。

このことは、国や人種を越えて認められる所見であり診断の参考になります。

※しかし、HLA-B51抗原を保有する人が必ずしもベーチェット病になるとは限りません※

近年、第6染色体のHLA領域の解析によってHLA-A26抗原が、HLA-B51抗原とは連鎖しないで独立にベーチェット病と相関していることもわかってきました。

その結果、HLA-A26抗原がベーチェット病の第2の疾患感受性遺伝子であることが示唆されています。

HLA-B51抗原、HLA-A26抗原の両抗原のどちらかを保有している患者は、ベーチェット病患者全体のおよそ80%に認められています。

HLA-B51抗原とHLA-A26抗原のどちらを有するか、または両抗原とも有するか、両抗原とも保有しないかということで、ベーチェット病の病態や重症度に違いも認められています。

2012年11月4日日曜日

HLA検査-4.HLAと強直性脊椎炎との関連性-


強直性脊椎炎とは、脊椎、仙腸関節、股関節や肩の関節などに炎症が起こるいくつかの病気をまとめて脊椎関節炎と呼びますが、強直性脊椎炎はその中の代表的な病気です。

強直性脊椎炎は、病状が進行すると脊椎の間に強直が起こるのが特徴です。

強直性脊椎炎の原因は、未だ明らかにはされていません。

強直性脊椎炎の患者は、白人では0.4%と多く、日本人では、0.0065%と低く中国・韓国人は、発生頻度が高いとされています。

また、男女比は12:1と男性に多く、発症年齢は、10歳~35歳です。


しかし、強直性脊椎炎はHLAのうち、ある特定の遺伝子型であるHLA-B27をもつ人が多いことが明らかにされています。

しかし、強直性脊椎炎の患者の中には、HLA-B27以外のHLA型を有する人もいること、病気を起こすのはHLA-B27をもつ人の中でも一部であることからして、HLA-B27だけが強直性脊椎炎を引き起こすとは言えません。

※HLA-B27を有する人、即ち強直性脊髄炎ではありません※

現実、強直性脊椎炎の人の90%がHLA-B27陽性であるという事実は間違いありません。

このことは、HLA-B27の頻度の多い国でも少ない国でも同様の結果がみられます。

強直性脊椎炎とHLA-B27の関連については、

1)HLA-B27自体が関与するという説

2)HLA-B27と極めて近くに存在するほかの遺伝子が原因とする説

二つの仮説がありましたが、近年では、種々の研究結果からHLA-B27自体が原因であるという説を強く支持されています。

現在では、HLA-B27 がどのようにして強直性脊椎炎を引き起こす原因になるのかということが研究の焦点になっています。

2012年10月28日日曜日

HLA検査-3.HLAと関節リウマチの関連性-


HLAタイプと関節リウマチの発生率に関連性があることが現在では明らかにされています。

ある種のHLAタイプを持つ人は、間接リウマチになりやすい傾向があります。

関節リウマチの患者を調べた結果では、患者のおよそ70%がHLAのDR4を持っていることが明らかにされています。

その結果として、HLAのDR4を持っている人が関節リウマチになる危険率は、HLAのDR4を持っていない人の4~5倍であり、症状も重度になりやすくなります。

関節リウマチの人全てがHLAのDR4を持っているのではなく、関節リウマチの人の60-70%くらいが持ち、健康な人でもおよそ40%がこの遺伝子を持っているといわれています。

HLAは関節リウマチを引き起こす決定要因というよりは、関節リウマチの遷延化や重症化に関与するとも考えられています。

現時点では、何故間接リュウマチになるかという原因は解明されていませんが、関節リウマチの発症には遺伝的因子と環境的因子が複雑に関与していると考えられています。

では、素朴な疑問として関節リウマチ患者の家系内に関節リウマチの人が多いのは何故でしょう?

関節リウマチを引き起こす遺伝因子の影響は、絶対的なものではなく発症に関わる関与は遺伝がおよそ30%人が多く存在しても当然のことと言えます。

【注意】

※HLAのDR4を保有している人は、必ず間接リユマチを発症するとは限りません。

2012年10月21日日曜日

HLA検査-2.HLAと病気との関係-


多くの研究者により、HLAとある種の病気とに関係があることが明らかにされています。

自分自身のHLAを知ることによって、どのような病気に、どの程度かかりやすいかがわかることがあります。

ただし、ある種の病気を発症させるマーカーとなるHLAをもつ人が必ずその病気を必ず発症するわけではありません。

自分のHLAを知ることによって日頃から体調に気を配り検診回数を増やすなどの自己管理で病気を防ぐことが可能となります。

ひとつ例を上げますと、Ⅰ型糖尿病に他人より4倍なりやすいHLAのB54、DQB1*04:01、DRB1*04:05などを持つ人は、日頃から食生活に気をつけて生活することにより、糖尿病を予防することも可能となります。

次回からは具体的な病気とHLAの関係を解説しいたします。

2012年10月16日火曜日

HLA検査-1.HLA検査とは-


HLAは1954年に白血球の血液型として発見されたことから、「Human Leukocyte Antigen」と命名されてその頭文字を取って一般的にHLAと呼ばれています。

日本語では、「ヒト白血球抗原」と訳されています。

HLAは発見当初は、白血球だけに存在すると考えられていましたが、ほぼすべての細胞と体液に分布していていることから、組織適合性抗原(ヒトの免疫に関わる重要な分子)として働いていることが明らかにされています。

一般には、HLAは臓器移植の時に調べられる検査しとして認識されています。

HLAもメンデルの遺伝の法則に従って遺伝しますから、遺伝子は父親と母親から受け継がれることになります。

人はHLAの遺伝子型ごとにふたつの型を有します。

その理由としては、父親と母親の型を1つずつ受け継いでいるからです。

両親から受け継いだ遺伝子の染色体は一対で、そのためにHLAも同様に両親から受け継いだふたつの型が一対となってひとつのセットを形成しています。

これを「HLAハプロタイプ」と呼びます。

HLAはA,B,C,DR,DQ,DPなど多くの抗原の組み合わせで構成され、さらにそれぞれが数十種類の異なるタイプ(アリル)をもち、ハプロタイプの組み合わせは、数万通り存在します。

※ハプロタイプは、生物がもっている単一の染色体上の遺伝的な構成(DNA配列)のことを言います。※

HLAはある種の疾患やHIV感染に関与していることが明らかになってきています。

次回からはこれらについて順次解説していきます。

2012年10月7日日曜日

性交行為感染症検査-15.ヒトパピローマウイルスタイピング(HPVタイピング)-その3.PapiPlex(TM)法-


HPVタイピング解析法:PapiPlex(TM法)

PapiPlex(TM)法は、株式会社ジェネティックラボで開発されたHPV解析法で、迅速・簡便なおかつ低コストで高い再現性を有する優れた検査です。

PapiPlex(TM)法の検出感度は、反応液中に100コピーのHPVゲノムDNAが存在すれば、16種類全ての型で検出・同定が可能です。

【同定可能なHPV型】

HPVの6、11、16、18、30、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、66の16種類が特異的に検出できます。

更に複数の型のHPVが感染していた場合でも各々の型について同定することもできます。

【保険点数】

2000点で、健康保険が適応となりますから、自己負担は3割で600点即ち6000円です。

※受診してこの検査を受けると検査代金以外に、初診料・検査管理料・採血料などが加算されます※

2012年9月30日日曜日

性交行為感染症検査-15.ヒトパピローマウイルスタイピング(HPVタイピング)-その2.検出可能なタイプとは-


HPV検査は、14種のHPVハイリスク型の中の一種でも感染が見られれば「陽性」となり、その後細胞診で定期的な追跡検査が行われます。

しかし、この検査では感染しているHPVの型別の判定や、尖圭コンジローマを起こす6型・11型の診断はできません。

感染しているHPVの型を調べるのがHPVタイピング検査です。

HPVタイピング検査は、子宮頸癌と関係が深いハイリスク型の中で、特に日本人と関係が深い14種類(16,18,31,33,35,39,45,51,52,53,56,58,59,68型)と、子宮頸癌とは直接関係はありませんが性行為感染症のひとつの尖圭コンジローマを引き起こす6,11型の感染の有無も調べることが可能です。

HPVは、およそ80%の人が一度は感染しますが、多くは自然に体内から消えていきます。

がんになるのは、体内から消えることなく持続的に感染が続いたごく一部の場合です。

男性が問題になるのは6型、11型の感染によるイボの発症ですが、尖圭コンジローマは感染してから、3週間~8ケ月(平均で3ケ月)しないと、イボが発現して来ません。

そのイボは、男性では亀頭周辺だけでなく陰裏、肛門周辺や外尿道口など、女性では外陰部、膣、子宮頚部、肛門周辺や外尿道口などに出来ます。

当然この検査は、女性だけでなく男性も受けることが可能です。

2012年9月23日日曜日

性交行為感染症検査-15.ヒトパピローマウイルスタイピング(HPVタイピング)-その1.検査の意義


HPVはヒトの皮膚、膣、口腔などに感染してイボをつくるウイルスです。

このウイルスの中には子宮頸がんを引き起こす型があり、それらを「ハイリスク型」呼び、14種類が知られています。

また、「ローリスク型」と呼ばれる6型、11型は尖圭コンジローマを引き起こしますが、これらは子宮頸がんとは関係ありません。


HPVは、現在100種類以上の遺伝子型が同定されています。

例えば、子宮頸癌からは16, 18, 31, 33, 35, 39,45, 51, 52, 56, 58, 59, 68, 82, 26,53,66の各型が証明されています。

HPVの6型、11型は尖圭コンジローマの原因です。これらは子宮頸がんとは関係ありません。

子宮頸がんを引き起こすHPVは、16型、18型がその代表で、16型が全体の過半数、HPV18型が約10%を占めています。

この「ハイリスク型」のHPVの感染があるかどうかを調べる検査をHPV検査と言いますが、このHPV検査では、「ハイリスク型」のどの型に感染しているのかは判断できません。

その為に、高度な技術を用いてHPVの遺伝子(DNA)の型を解析し、HPVの遺伝子型を調べる検査が「HPVタイピング検査」です。

2012年9月16日日曜日

A型肝炎検査-5.HAV-RNA検査-


HAV-RNA検査は、血液中及び糞便中のHAVを直接検査する最も信頼性の高い検査ですが、現時点において技術的に確立された測定法がないことと、HAV-RNAを検査する検査キットがありません。

更にHAV-RNA検査を実施してたとしても、特殊検査となり健康保険の適用外であるために日本においては日常検査としては実施されていません。

従って、HAV感染の判断はIgM-HA抗体が第一選択肢となります。

IgG-HA抗体は、過去の感染を調べる検査で、衛生状態の悪い国へ出張・旅行をする前にはこの検査を受けて陰性であれば、HAV感染防御抗体がないいことからA型肝炎ワクチンを接種しておくことが無難です。

近年オーラルセックスによるA型肝炎の感染も報告されていますので注意が必要です。

2012年9月9日日曜日

A型肝炎検査-4.IgG-HA抗体検査-


IgG型抗体は、IgM型抗体にやや遅れて1~4週後に陽性化しますが、その後も長期間陽性のままとなります。

IgG-HA抗体を測定する理由としては、過去にHAVに感染したかどうかを調べることにあります。

【基準値】

単位:Cut off index

測定方法:EIA法

陰性 0.8未満

判定保留 0.8~1.2未満

陽性 1.2以上

※測定に使用する機種によっては、数値が若干異なる場合があります※

【検査結果の解釈】

陰性 過去にも現在もHAVに感染していない。

陽性 過去にHAVに感染し、現時点では治癒したと判断でき、再度HAVに感染することはありません。

A型肝炎の感染予防にはA型肝炎ワクチンがありますが、IgG型抗体が陽性の場合には、ワクチンの接種は必要ありません。

2012年9月2日日曜日

A型肝炎検査-3.IgM-HA抗体検査-


HAVに感染すると血液中に発症の初期(1~4週間)からIgM-HA抗体が出現し、約3~6カ月後に消失します。

血液中のIgM-HA抗体を検査して陽性であれば、最近HAVに感染したことを意味します。

従ってA型肝炎の鑑別診断にはIgM-HA抗体の測定がより確実な手段となります。

【基準値】

測定方法:EIA法

単位:Cut off index

陰性  0.8未満

判定保留  0.8~1.1

陽性  1.2以上

【検査結果の解釈】

陰性  HAVに感染していない。

陽性  3~6ケ月以内にHAVに感染したことを意味します。

2012年8月26日日曜日

A型肝炎検査-2.HA抗体検査-


A型肝炎検査は、血液中のHAVに対する抗体を調べます。

血液を採取して、血液中にHA抗体(A型肝炎ウイルスに対する抗体)が存在しているかを調べます。

HAVに感染したA型肝炎患者の血液中には、発症の初期にはIgM-HA抗体が出現し、約3~6カ月後には消失します。

一方、IgG-HA抗体は、IgM-HA抗体にやや遅れて1~4週後に血液中に出現しますが、その後も長期間陽性を持続します。

HA抗体検査は、

①IgM-HA抗体検査

②IgG-HA抗体検査

の2種類の検査があります。

これら検査についての意義・検査結果の解釈等は、次回解説致します。

2012年8月19日日曜日

A型肝炎検査-1.A型肝炎とは-



A型肝炎はA型肝炎ウイルス(HAV:hepatitis A virus )によって起こされる急性のウイルス性肝炎です。

A型肝炎ウイルスの感染経路としては、A型肝炎に感染した人との接触、A型肝炎ウイルスに汚染された食品・魚介類、肛門を介したオーラセックスなどあります。

A型肝炎ウイルスの潜伏期は通常15-50日、平均で28-30日です。

症状としては、食欲不振、嘔気、嘔吐、腹痛、気分不快、発熱、頭痛などが挙げられます。

黄疸が現れる前に暗色の尿が出てから前触れ症状に続いて黄疸が現れ、黄疸の出現とともに、前触れ症状は消える場合もありますが、長引く場合もあります。

黄疸は日本人は肌が黄色いために分かりにくいですが、白い眼球の白目の部分が黄色く染まることから判断はできます。

黄疸などの症状が現れなくてもA型肝炎になっている場合がありますが、この場合は血液中のAST、ALTなどの肝機能検査や抗HAV抗体検査などをすることで感染の判断は可能となります。

A型肝炎ウイルスは、急性の肝炎を引き起こしますが、長期にわたる慢性の肝炎にはまずなりませんし、完治すれば、一生涯にわたる免疫を獲得することから、再度感染することはありません。

更にいつまでも感染源としてA型肝炎ウイルスを持ち続けることもありません。

※現在日本においては、A型肝炎ウイルスの流行はほとんど無く、発展途上国への旅行で、A型肝炎ウイルスに汚染された水・氷・女貝類・果物などから感染して帰国する人が多く見られます。

※肛門を口で愛撫するオーラルセックスで感染者(特に男性同性愛者)が多く発生しています。

2012年8月12日日曜日

C型肝炎検査-【附則】HCV感染予防ワクチンは何故出来ないか?-


多くのウイルス感染は、病原体であるウイルスに感染すれば、

1.感染指標となる感染抗体

感染の判断をするために調べる抗体(HCV抗体)

2.次回感染時にウイルスを無毒化する中和抗体(感染防御抗体)

が産生されます。

HCV の場合はHCVの外殻(エンベロープ)の一部が非常に変異を起こしやすいため、HCV に感染した宿主(人)がこの部分に対する抗体を作った時には、すでにHCVエンベロープのタンパク構造に変異が起こっているため、うまく抗原抗体反応を行うことができません。

このように、HCV には宿主に中和抗体(感染防御抗体)を作らせず、自分自身の身の保全を図っています。

このようにHCVは、エンベロープの変異を繰り返しながら持続感染状態を維持しています。

動物実験においても、感染させたHCVはエンベロープを次々と変化させて、生体の免疫機能の攻撃からうまく逃れて生存することが確認されています。

HCV はこのようなエンベロープの急速な変異を付く返す特徴を持っているため、現在のところ、感染を予防するために有効なワクチンや免疫グロブリンはまだできていません。

これは、HIVについても同じことが言えます。

2012年8月5日日曜日

C型肝炎検査-3.サブタイプ検査-


HCVは、いくつかの型に分類できます。

即ち、ジェノタイプ(genotype)とセログループ(serogroup)に分類できるということです。

これらの検査は、治療効果予測のために実施されます。

1.ジェノタイプによる分類(遺伝子型)

ジェノタイプ分類は地域別、疾患別のHCV型の頻度、感染源や感染経路の推定にも役立ち、C型慢性肝炎の病態把握、特にインターフェロンの治療効果の予測の上で重要な検査です。

HCVの遺伝子の塩基配列の類似性から分けられた遺伝子型で、1a型 1b型 1c型 2a型 2b型 2c型 3a型 3b型 4型 5a型 6b型に分類することができます。

日本では1b型が70%と多く、続いて2a型の20%、2b型の10%でこれ以外の型はごく少数にみられるに過ぎないことが明らかにされています。

2.セログループによる分類(血清型)

HCVの塩基配列の相違から作られる蛋白も異なり、それに対する抗体の違いから、その抗体を検出することによって分類する方法です。

1群(Group1):主に1a型 1b型 1c型
2群(Group2):主に2a型 2b型 2c型

※日本で見られるのは、主に1b型、2a型、2b型というタイプで、日本人に最も多いタイプは1b型ですが、インターフェロン療法の効果はあまり良くありません。

※インターフェロン療法の効果が最も期待できるのは、2a型と2b型のタイプです※

※ジェノタイプ検査は保険が通っていませんが、セロタイプ検査は保険適応となっています※

2012年7月29日日曜日

C型肝炎検査-2.HCV-RNA検査-


血液中のHCV遺伝子を検出する検査で、HCV(C型肝炎ウイルス)に感染しているかどうかの指標になります。

HCV抗体検査で陽性となった場合は、以下の区別をする必要があります。

1.現在HCVに感染していて体内にHCVが存在している状態(HCVキャリア)

2.過去にHCVに感染したが既に体内からHCVが排除された状態

HCVキャリアと過去に感染した人との区別を的確にするには、HCV抗体価を調べるのと同時にHCV-RNAの検出検査を実施する必要があります。

HCV感染既往者は、HCV抗体が陽性でも一般的には抗体価が低く、HCV-RNAは陰性ですが、HCVキャリアはHCV抗体が高く、HCV-RNAが陽性となります。

また、急性C型肝炎においてもHCV抗体の陽性化には感染後通常3ケ月を要するため、早期の確定診断には HCV-RNA定性検査を実施する必要があります。

現在HCV-RNA定性・定量検査法としては、リアルタイムRT-PCR法であるHCV-RNA定量(TaqMan)検査が広く採用されています。

【検査方法】 コバス TaqMan HCV 「オート」

【測定範囲】 1.2~7.8 LogコピーIU/ml

【基準値】 検出せず

【検査を受ける時期】 感染後約1週間後に血液中のHCV-RNAは検出可能となります。

2012年7月22日日曜日

C型肝炎検査-1.HCV抗体検査-


C型肝炎とは、C型肝炎ウイルス (HCV) に感染することで発症するウイルス性肝炎のひとつです。

C型肝炎ウイルス(HCV)が体内に侵入すると、身体はこれに対抗するためにHCV抗体という感染抗体つくります。

HCVは、直径55~57nmの球形をしたRNA型のウイルスで、HCV粒子は二重構造をしており、ウイルスの遺伝子(RNA)とこれを包んでいるヌクレオカプシド(コア粒子)、そして、これを被う外殻(エンベロープ)から出来ています。

HCV抗体とは、HCVのコア粒子に対する抗体(HCVコア抗体)、エンベロープに対する抗体(E2/NS-1抗体)、HCVが細胞の中で増殖する過程で必要とされるタンパク(非構造タンパク)に対する抗体(NS抗体:C100-3抗体、C-33c抗体、NS5抗体など)のすべてを含む総称です。

そのHCV抗体の有無及びその量(HCV抗体価)を血液検査によって調べるのがHCV抗体検査です。

HCV抗体陽性の人の中には、『現在HCVに感染している人(HCVキャリア)』と『HCVに感染したが治ってしまった人(感染既往者)』とが存在します。

そのため、HCV検査が陽性となった時は必ず、体内に今「HCVがいるかどうか」の精密検査が必要で、HCV抗原検査およびHCV核酸増幅検査を肝臓専門医によって調べて貰う必要があります。

HCV抗体陽性例のうち、HCV抗体「高力価」群では、その98%以上にHCV RNAが検出される即ちHCVキャリアですが、HCV抗体「低力価」群では、そのほとんどがHCV RNAは検出されないことから、ほとんどがHCVの感染既往例と判断されます。

HCVに感染した直後は、身体の中にHCVがいても、HCV抗体が作られる以前(HCV抗体陰性)の時期(HCV感染のウインドウ期)に検査を受ける場合もありますが、これは新規のHCV感染の発生が少ないわが国ではごくまれなこととされています。

C型肝炎は進行が極めて遅く、感染後10~20年たってから発病します。

急性肝炎では症状が現れず、気付かない人が殆どで、身体の中からHCVが排除されないまま無症候性キャリア(体内にウイルスがいるが障害が見られない状態)や慢性肝炎に移行します。

気付かないうちに病気が進行し肝硬変になると、10年後には70%の人が肝臓がんになります。

日本におけるHCV感染の原因は、20年ほど前までは注射針の共用や輸血用血液で大勢の人が感染した経緯があるので、1980年代以前に輸血を受けた人や針の使い回しで予防接種を受けた人は、症状の有無に関わらず検査を受けたほうがよいでしょう。

近年では、輸血時のHCV検査が行なわれているので、輸血によるC型肝炎は極めて少なくなってきています。

また、注射器の使い回しをしないことから予防接種や注射、採血からのHCV感染はありません。

【HCV抗体検査の受け方】

血液で調べます。

スクリーニング検査では、HCV抗原は測定せず、HCV抗体を測定して感染の有無をチェックします。

食事をしてからの検査でも何の問題はありません。

【基準値】

陰性(-)

※HCV抗体は感染後1ヶ月で血液中に現れるため、感染直後は陰性でも、1ヶ月後に陽性となることがあります※

※HCVの感染力は非常に弱く、現在では性行為での感染はまず無いと考えられています。

2012年7月15日日曜日

性行為感染症検査-14.梅毒血清反応定量法-


梅毒血清反応には、カルジオリピンを抗原とするSTS検査としてのガラス板法とRPR検査(現在ガラス板法はほとんど実施されていません)と梅毒トレポネーマを抗原とするTP検査があることはよく知られていることです。

これらの検査は、単に陽性(+)または陰性(-)だけを判定するのではなく、陽性の場合は血清を生理食塩水で2倍連続希釈して何倍まで陽性となるかを判定します。

これを抗体価と呼びます。

※事例 RPR法 128倍、TPHA 5120倍

単に陽性と陰性を判断するのは、「定性検査」と呼びます。

一方血清を希釈して何倍まで陽性であるを調べるのは、「定量検査」と呼びます。

「定量検査」は、梅毒の治療の判断のために必要な検査法です。

【定量検査の解釈】

1.RPR法4倍、TPHA陰性の場合は、偽陽性反応(BFP:生物学的偽陽性反応)の疑いが濃く、1ケ月後に再検査を行い、同じ結果であればSTSの偽陽性反応と判断します。

本当に感染していれば、1ケ月の時間経過により体内に梅毒抗体が産生されていることからSTSの定量値も高くなり、当然TPHAも陽性となっています。


2.RPR法16倍以上、TPHA陰性の場合は、1期梅毒と判断し治療を開始します。

この場合、FTA-absを実施して陽性を確認します。

3.RPR法16倍以上、TPHA640倍以上の場合は、2期梅毒と判断し治療を開始します。

4.RPR法陰性、TPHA640倍の場合は、無症候性梅毒あるいは過去に梅毒に感染したという梅毒既往ありと判断し治療せずに経過観察を行い、RPR法が陽性とならない場合は、過去の感染経歴として治療は行いません。

※TPHAは梅毒が完治した後も長期間或いは一生涯高い定量値のまま推移しますから、梅毒血清反応の解釈の不得手な医師により、治療か必要と誤診されて不必要な治療を加えられるケースが多く見られます※

性行為感染症の専門家でない医師は、抗生物質治療によってSTSが陰性化して、体の中の梅毒トレポネーマが死滅しているにもかかわらず、TPHAやFTA-absが陽性であることから、「梅毒は治っていない」として、TPHAやFTA-absが陰性化するまで抗生物質の投与が必要として治療続けますが、これは完全な間違いです。

幾ら強力に抗生物質を投与し続けても、TPHAやFTA-absが陰性化することはありません。

梅毒の治療効果の判定には、TPHAやFTA-absなどのTP検査は使用できません、STSの「定量法」で行います。

2012年7月8日日曜日

性行為感染症検査-13.唾液によるHIV抗体簡易検査


2012年7月3日、米食品医薬品局(FDA)は家庭で素早くHIV抗体検査(HIV-1/-2)が実施できる初の市販検査キットを承認しました。

FDAは1996年にも家庭で行えるHIVの検査キットを承認していますが、このキットは検体を検査機関に送付する必要があるものでした。

今回承認されされた簡易HIV抗体検査キットは、米国オラシュア・テクノロジーズ社が開発したもので、『オラクイック・インホームHIVテスト』と呼ばれるもので、歯茎を拭って採取した検体(唾液)を溶液の入った小瓶に入れると、陰性であればラインが1本、陽性であれば2本のラインが表示されるというもので、検査の所要時間は20分程度だということです。

この検査キットの信頼性は、危険な行為から3ケ月後に実施すればほぼ100%の信頼性が得られますが、3ケ月より早い時期に検査をすれば信頼性は低くなるとのことです。

※これはどのHIV抗体検査についても言えることです※

一方、偽陽性反応の出現率は、5000人に1人という結果が得られています。

※偽陽性反応の出現率は、血液を使用する迅速抗体検査に比べて低いと考えます※

この検査キットは、米国では、2012年10月上旬頃には店頭とネットで販売される予定です。

米国での販売が開始されれば、日本国内においても個人あるいは、代行業者によってこのキットを輸入して使用出来ると考えられます。

参考のために、オラシュア・テクノロジーズ社が提供した『オラクイック・インホームHIVテスト』の写真を紹介しておきます。




2012年7月1日日曜日

性行為感染症検査-12.ケジラミ症の検査


ケジラミ症は、ヒトシラミ科に属するシラミが寄生することにより発症します。

ケジラミの寄生している毛と接触すれば100%感染します。

ケジラミはアポクリン汗腺を好み、陰毛部でヒトの血を吸い生活しますが、24時間血を吸えないと死んでしまいますが、卵は約10日間栄養の補給がなくとも生き続けるため、 この期間に痒みがないことから治癒したと勘違いすることがありがちです。

性行為による陰毛どうしの接触感染が主なものですが、オーラルセックスによって肛門周囲の毛、わき毛、胸毛、太ももの毛、まゆ毛、まつ毛、口ひげ、頭髪などに寄生することもあります。

毛に寄生したケジラミが吸血することによって、激しい痒みに襲われます。

性行為やオーラルセックスをして、1~2ヶ月に毛の生えている箇所に激しい痒みが発生すれば、ほぼ間違いなくケジラミに感染しています。

【検査法】

皮膚科を受診して、痒みのある箇所の毛の中に体長1mm前後ケジラミの成虫または虫卵(長さ0.5mm)を検出することによって診断します。


【ケジラミの自己検査方法】

1.虫眼鏡やルーペなどので痒みのある部分の毛を注意深く観察すれば成虫や卵を見つけることができます。

2.白色の下着を1日身につけて、下着をよく観察して下着に黒色の点状のしみ(ケジラミの排泄する血糞)が付着していればケジラミが寄生していることになります。

※ケジラミの成虫や虫卵を発見したり、下着についた黒色の点状のしみを確認した場合は、直ぐに皮膚科を受診して治療を受けて下さい※

※ケジラミ症は性行為感染症の中で、唯一自己検査が可能です※

2012年6月25日月曜日

性行為感染症検査-11.咽頭淋菌検査TMA法-


TMA法(Transcription Mediated Amplification )の特徴としては、


1.1回の検査で咽頭のクラミジアトラコマチス・淋菌の結果が同時に検査が可能。


2.他の遺伝子検査と比較して高い特異性(ニセの陽性反応が出にくい)を有して、咽頭検査に適している。



3.他の遺伝子検査法と比較して約1,000倍高感度で検出可能である。


4.口の中の非病原性の細菌との反応がほとんどないことから偽陽性反応の出現率が極めて低い。


これらのことから咽頭淋菌感染の検査としては、極めて優秀な検査法です。

咽頭淋菌検査に、PCR法を行うと偽陽性反応が出ることを婦人科、泌尿器科、性病科の医師に周知徹底されていないことと、喉の専門家の耳鼻咽喉科医も十分周知徹底されていないのが実情です。

誤った検査法を採用して、咽頭淋菌感染症でもないのに、咽頭淋菌感染症と診断され、不必要な治療を行われている患者もいることは確かです。

※咽頭淋菌陽性と診断されて、幾ら抗生物質を服用しても治らない場合は、間違った検査法による偽陽性反応の可能性もあります※

咽頭淋菌の検査を受けるときには、検査名を良く聞き、PCR検査でなく、SDA法かTMA法を受けることです。

2012年6月17日日曜日

性行為感染症検査-10.咽頭淋菌検査SDA法-


近年風俗店でのオーラルセックスにより、咽頭への淋菌感染が多く報告されています。

オーラルセックスで淋菌が喉に感染しても、ほとんど症状が出ることはなく、仮に症状が出てても一種の咽頭炎のような症状ですから、喉への淋菌感染を疑う人は殆どいないのが実情です。

その為に咽頭淋菌感染は、感染していることに気づくことなく、相手に感染させるという危険性を伴います。


咽頭の淋菌感染検査としては、培養検査やPCR法がありますが、口腔内の常在菌であるナイセリア属などを検出してしまい、感染ない人を誤って淋菌陽性(偽陽性反応)としてみなしてしまうことが多く起こります。

そのことから、咽頭淋菌検査は常在菌のナイセリア属と淋菌との鑑別が可能なSDA法を使用すべきです。


SDA法(Strand Displacement Amplification)は、BD社が独自に開発した核酸増幅検査法のことです。

4種類のプライマーとDNAポリメラーゼおよび制限酵素を利用してターゲットDNAを増幅しながら蛍光プローブによりリアルタイムに検出を行なうことで、検体中の目的の微生物DNAの有無を調べます。

SDA法は、口腔内の常在菌の口腔内ナイセリア属との交差性が極めて少ないため、咽頭検体での検査が可能です。

検査方法としては、スワブと呼ばれる綿棒で喉の奥を拭って検査します。


咽頭淋菌感染の検査は、PCR検査を用いるのではなく、SDA法またはTMA法で検査をする必要があります。

【注意】

本来、咽頭の淋菌検査は耳鼻咽喉科で受けるべきですが、耳鼻咽喉科の一部では検査を実施していない施設もあります。

最近では、泌尿器科、性病科でも咽頭の淋菌検査を積極的に実施しています。

検査を受けられる時は、事前に咽頭淋菌検査としてSDA法またはTMA法を実施しているかを事前に問い合わせて下さい。

間違ってもPCR検査による咽頭淋菌検査を受けてはいけません。

PCR法による淋菌検査は、性器感染に関しては優れた検査法ですが、咽頭淋菌検査ではニセの陽性反応が出て、咽頭に淋菌感染がなくても陽性となってしまいます。

※TMA法については、次回紹介致します※

2012年6月11日月曜日

性行為感染症検査-9.クラミジア抗体検査-


クラミジア感染症は、我が国においては性行為感染症の中で一番多く見られる感染症です。

クラミジア感染症の検査の中で血液で検査されるクラミジア抗体検査について解説してみます。

クラミジア抗体検査は、IgA、IgGの2つの抗体を検査します。

これら抗体の検査結果の解釈としては、クラミジアに感染した直後はIgA抗体、IgG抗体とも陰性ですが、少しするとIgA抗体が陽性になってからIgG抗体も陽性になります。

まとめますと、

クラミジア感染→IgA抗体産生→IgG抗体産生→そしてIgA抗体はIgG抗体が産生された後しばらくして消失という状態となります。

治療によってIgA抗体が陰性化し、最後にIgG抗体が陰性化しますが、陽性化、陰性化するまでの期間は個人差があり一概には言えません。

また、完治してもIgG抗体の陰性化は10年近くかかる場合もありますし、一生陰性化しない場合もあります。

一般的に保健所では、無料でクラミジア抗体検査をしています。

しかし、このクラミジア抗体検査が問題になることが多くあります。

クラミジアに感染するとクラミジアに対する感染抗体が身体の中に出来ます。

この感染抗体を調べるのがクラミジア抗体検査ですが、この検査はクラミジアそのものを見つける検査ではありません。

本来感染病原体のクラミジアその物を見つけてこそ感染していると言えますが、感染抗体があれば、即感染しているとはいえません。

特にクラミジア抗体検査は、特異性(信頼性)が低いことから、感染していないのに陽性(偽陽性)となることが多くあります。

従って、クラミジア抗体検査は信頼性が低くあまりお薦めできる検査ではありません。

問題となるのは、一度も性交渉していないにもかかわらずIgA抗体陽性、IgG抗体陰性という人もいますし、IgG抗体陽性という人もいます。

「保健所でクラミジア抗体陽性と言われた」人の中に上記のような人が多く見られ、実際にクラミジアに感染している人はそのなかで20~30%程度です。

その逆に実際にクラミジアに現在感染しているのにもかかわらず、クラミジア抗体検査では陰性(偽陰性)となることもあります。

この原因は、クラミジア感染抗体が出来ていない時期に検査を受けたことです。

クラミジアに感染して感染抗体が出来る時期は、かなりの個人差があり感染後、数週間で抗体が出来る人もいれば、3ヶ月たっても出来ない人も存在します。

従って、血液を採取して信頼性の低い抗体検査をおこなうより、感染の可能性がある粘膜(咽頭、子宮頸部、尿道、肛門など)から検体を採取し、その抗原(クラミジア)を調べるのが一番信頼出来る結果が得られます。

大切なことは、クラミジア抗体検査の結果はあくまでも”参考”と考えるべきで、抗体検査が陽性になっても必ずしも現在感染しているわけではないということと、陰性と出たからといって(特に危険な性交渉から時間がたっていないときは)100%安心できるわけではないことには注意すべきです。

現在一部の進歩的な保健所は、クラミジア抗体検査の不備を認めて抗原検査に移行しているようです。



2012年6月3日日曜日

性行為感染症検査-8.鼠径リンパ肉芽腫-


性行為感染症のひとつで、クラミジア・トラコマチスのL型によって引き起こされます。

性器や咽頭に感染するクラミジア感染症とは全く別の感染症です。

淋病、梅毒、軟性下疳以外のもうひとつの性病という意味で「第四性病」と呼ばれることもあります。

現在、鼠径リンパ肉芽腫は、日本ではほとんど見られず、主に発展途上国に多い病気ですが、海外での無防備な性行為で感染して帰ってくる人がいます。

鼠径リンパ肉芽腫の化膿疹のある部分によってはコンドームでの感染予防は出来ません。

鼠径リンパ肉芽腫は、感染してから1~4週間後に、男女ともに性器(男性は主に亀頭・包皮・前部尿道など、女性は主に外陰部・膣・子宮頚管など)に痛みを伴わない発疹が出来、発疹はやがて水泡になり、水泡が破れて潰瘍になります。

その後、鼠径リンパ腺(太股付け根のリンパ腺)が硬く腫れ上がり、次第に化膿して最終的には破裂して、そこから膿が流れ出てきます。

これを治療をせず1年以上経つと、直腸や肛門部のリンパ腺まで症状が広がり、男女ともに性器に象皮病のような症状が現れます。

【検査法】

感染するような行為をしなかったかどうかの問診後、専用の細い綿棒状の物で化膿している部分の分泌物を採取して、クラミジア抗原の有無を調べ検査が一番信頼出来る結果が得られます。

上記に記載したような症状が現れた時には、直ぐに皮膚科を受診することです。

抗生物質の服用で3~4週間で治癒します。

2012年5月29日火曜日

性行為感染症検査-7.性器ヘルペス検査


性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(HSV)が原因で発症する性行為感染症のひとつです。

従来は口唇周囲は1型単純ヘルペス、性器とその周囲は2型単純ヘルペスとされていましたが近年、オーラルセックスによって性器ヘルペスでも1型感染の割合が増加してきています。

昔のように、1型は口唇ヘルペス、2型は性器ヘルペスと分類することは出来なくなってきています。

【検査法】

通常用いられる補体結合反応や中和抗体検査等の血液で行う血清診断法では、幼少時に1型に感染している人は、陽性となってしまいますから、性器ヘルペスか否かの判断は出来ません。

初めて単純ヘルペスウイルスに感染した場合は、急性期と回復期のペア血清(2本の血清)で抗体検査を行い、有意の抗体上昇によって診断することが可能です。

単純ヘルペスウイルスは、同一個体において幼少期の1型感染、青年期以降の性器への1型及び、2型感染、再発による病変形成といった様々な病態を取り得るので、血液による抗体検査から1型感染2型感染の判断は出来ません。

従って、性行為やオーラルセックスの2~10日前後に以下のような症状があるときには、直ぐに皮膚科を受診することです。

・感染部位(ペニスや外陰部)に痛痒さを感じ患部が赤くなり、徐々に〝痒み〟や〝痛み〟が強くなります。

・男女とも患部に小さな水泡ができ、チクチクと痛みが伴います。

・水泡が破れると、ジクジクした状態になります

2012年5月20日日曜日

血液一般検査-番外編-CD4/CD8検査-


白血球には、T細胞(細胞性免疫に関与)、B細胞(液性免疫に関与、抗体を産生する) 、null細胞(T細胞でもB細胞でもない)があります。

このうちCD4陽性細胞は、B細胞の免疫グロブリン産生を補助し、CD8陽性細胞は免疫グロブリン産生を抑制します。

リンパ性の悪性腫瘍や免疫不全症では、T細胞とB細胞の比率、さらにCD4陽性細胞、CD8陽性細胞の比率が変わるため、診断や治療経過観察のためにこの検査は行われます。

CD4陽性細胞は、HIVが非常に結合しやすいために、HIV感染症ではHIVがCD4陽性細胞に感染し細胞を破壊することから、CD4が低値となります。

逆に成人T細胞性白血病(ATL)では、HTLV-1がCD4陽性細胞に感染しCD4陽性細胞が腫瘍化し増殖します。

検査方法としては、血中のT細胞とB細胞の比率を、それぞれの細胞に特異的なモノクローナル抗体により測定します。

【基準値】

CD4 25~56%
CD8 17~44%
CD4/CD8比 0.6~2.9

※基準値は、検査施設によって若干異なります※


【基準値より上昇】

1.CD4

・成人T細胞白血病、HHV-6感染

2.CD8

・EBウイルス感染症

【基準値より下降】

1.CD4

・HIV感染、特発性CD4陽性細胞減少症、先天性免疫不全症候群

2.CD8 

先天性免疫不全症候群

【HIV感染とCD4の数の関係】


※HIV感染すると、通常1年間に60~100個/μlずつ低下しますが、AIDSの発症が近づくと
低下速度が速くなる傾向が見られます。


※CD4陽性リンパ球数が少ないほどAIDSの発症が近いので、500個/μl以下となれば、抗HIV薬の予防投与を開始します。


※350個/μl以下となった場合には、積極的に抗HIV薬による治療を開始する必要があります。


※100個/μl以下になりますと、ほとんどがAIDSを発症してしまいます。

2012年5月13日日曜日

血液一般検査-7.血小板数-


血小板の数が減少したり、その機能が低下すると、出血が止まりにくくなります。

その為、軽く何かに身体を当てても内出血をして青あざができたり、けがをしても出血がなかなか止まらなかったり、鼻血が出やすい、歯肉から出血することが頻回に起こります。

貧血があって慢性出血が疑われるときには、必ず血小板数の検査は行なわれます。

逆に、血小板の数が余りにも多くなりすぎると、血液が固まりやすくなり、血液が固まってできた血栓が血管をふさいで、脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こす危険性が増大します。

血液1μl中の血小板数が10万以下で血小板減少症、40万以上で血小板増多症とされます。

10万以下になると血が止まりにくくなり、さらに5万を切ると自然に鼻血が出たり皮下出血が始まって皮膚に紫色の斑点が出たりします。

3万以下では腸内出血や血尿が起こります。

2万個以下になると頭蓋内出血を起こすなど生命も危険になります。

血小板が極端に増加している場合は、血栓症が引き起こされるのを予防するためワーファリンなどの薬剤を投与します。

※血小板の異常な増減には、重い病気が隠されていることが多いので、血液内科のある専門病院で精密検査を受けることをおすすめします。


【基準値】

13.0万~34万/μl

※自動血球計算機で測定しますから、使用する機種によって若干の変動があります。

【基準外】

Ⅰ.減少

1.軽度の減少 5~15万

・白血病、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、抗腫瘍化学療法後、薬剤性血小板
減少症、巨赤芽球性貧血、膠原病、脾機能亢進、肝硬変、ウイルス感染など。

2.中等度の減少 2~5万

・白血病、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、抗腫瘍化学療法後など。

3.高度の減少 2万以下

・白血病、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、抗腫瘍化学療法後など。

Ⅱ.増加

1.中等度の増加 40~80万

・慢性的な出血、鉄欠乏性貧血、術後、膵臓摘出、感染症、慢性骨髄性白血病など。

2.高度の増加 80万以上

・本態性血小板血症、慢性骨髄性白血病、真性多血症など。

2012年5月6日日曜日

血液一般検査-6.白血球分類検査-


白血球は、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球の5種類に分類することが出来ます。

白血球を染色してこれら5種類に分類する検査を白血球分類検査または、血液像と呼びます。

これら5種類の白血球は、身体が正常な状態のときはそれぞれの占める割合が一定範囲内に保たれていますが、身体になんらかの異常が発生すると比率に変化が現れます。

これら5種類の白血球の働きを簡単に説明しておきます。

1.好中球

白血球の半分以上を占め、外界から病原菌や異物が侵入すると増加して、病原菌や異物を食べて分解し生体に無害なものにします。

感染症に感染した時や炎症があるときに増加します。

2.リンパ球

免疫を司り、Tリンパ球とBリンパ球があり、病原菌が侵入した時に、その病原体に対する抗体を作って撲滅する働きをするとともに、侵入した病原体を記憶する働きを持っています。

ウイルス感染で増加します。

3.単球

マクロファージ(大食細胞)とも呼ばれ、病原菌や異物などを食べて生体に無毒なものにし、免疫抗体を作り出すことを促す働きをします。

4.好酸球

生体の防御反応に関与し、アレルギー性疾患に感染すると増加します。

寄生虫に感染すると増加します。


5.好塩基球

ヒスタミンやヘパリンなどの物質を含み、アレルギーや血管拡張などの作用に関与することから、細胞内の顆粒(ヒスタミン等)を放出し即時型アレルギーをおこします。

【基準値】

好中球 40~70%
リンパ球 20~45%
単球 3~7%
好酸球 0~5%
好塩基球 0~2%

※白血球分類は、自動血球計数機で自動的に分類されることから、使用機器の種類により基準値は若干異なることがあります。

【白血球増加の原因】

1.好中球

感染症、炎症、血液疾患及び膠原病など。

2.リンパ球

ウイルス感染症、リンパ性白血病など。

3.単球

感染症、悪性腫瘍、単球性白血病など。

4.好酸球

アレルギー疾患、寄生虫感染、慢性骨髄性白血病など。

5.好塩基球

慢性骨髄性白血病、粘液水腫など。

【白血球の減少】

1.好中球

ウイルス性肝炎、インフルエンザ、急性白血病など。

2.リンパ球

AIDS、再生不良性貧血など。

3.単球

細菌により血液中に毒素が分泌されて発症する内毒素血症など。

4.好酸球

感染症の感染初期など。

5.好塩基球

甲状腺中毒症、過敏症などの急性のアレルギー反応など。

2012年4月29日日曜日

血液一般検査-5.白血球数-


白血球は、身体の組織に侵入した細菌や異物を取り込み、消化・分解し無毒化します、更に身体の免疫機能を司ります。

そのことから、白血球が増加したり、減少したりするということは、身体のどこかに細菌・ウイルスなどの異物などが侵入した時や、身体の中の何処かで炎症を起こしていると考えられます。

白血球数が減少すると、免疫機能の低下から身体の抵抗力が衰えて感染症にかかりやすくなります。

3000個以下になると、感染症に罹りやすくなることから十分な感染症対策注意が必要となります。

特に1000個以下になると無菌室に入り、感染症に感染しないようにしなければなりません。

逆に2万個以上になった場合、慢性白血病や敗血症などの恐れがあります。

【基準値】

3,300~9,000個/μl

※自動血球測定器の機種によって若干の変動があります。

※白血球数は個人差が大きく、また同じ人でも朝は少なく、夜になれば増加する傾向があります。

そのため多少の変動はあまり気にする必要はありません。

【軽度~中等度の増加】 10000~50000

細菌による感染症、自己免疫疾患、重症の代謝異常(腎不全、肝不全など)、薬物中毒、白血病、骨髄増殖性疾患、妊娠、心理的ストレスなど。

【高度の増加】50000以上

白血病、骨髄増殖性疾患、重篤な感染症、悪性腫瘍の全身転移など。

【軽度から中等度の減少】 1000から3000

再生不良性貧血、ウイルス感染症、抗癌剤の投与、薬剤アレルギー、放射線治療、癌の骨髄転移、悪性貧血、脾機能亢進症など。

【高度の減少】1000以下

再生不良性貧血、抗癌剤の投与、薬剤アレルギー、放射線治療、癌の骨髄転移、悪性貧血、ウイルス感染症、AIDSなど。

※白血球の数だけでは、どの様な疾患に感染しているかわかりにくいことから、白血球の種類を調べる白血球分類検査を同時に行います。

※HIVに感染しても感染初期は、一過性に白血球数は軽度減少しますが、本来の数値に戻りますから、HIV感染を白血球数で判定することは出来ません。

※HIVに感染して数年が経過後、目に見えて白血球数が減少してきますが、これはHIVが白血球を破壊することに由来し、免疫機能を司る白血球が減少することによりやがて免疫不全に陥り、AIDSの発症が起こります。

白血球分類検査に関しては、次回紹介致します。

2012年4月22日日曜日

血液一般検査-4.赤血球恒数-


赤血球恒数とは、赤血球の大きさ、赤血球に含まれるヘモグロビンの量を調べる検査のことを言います。

この赤血球恒数には、以下の三種類があります。

1.MCV(平均赤血球容積):血中に含まれる赤血球の大きさを表す。

2.MCH(平均赤血球血色素量):血中に含まれる赤血球1個あたりのヘモグロビンの量を表す。

3.MCHC(平均赤血球血色素濃度):血中に含まれる赤血球1個あたりのヘモグロビン濃度を表す。

貧血になる疾患には、その病態によって特徴的な赤血球恒数の異常を示すものがありますから、赤血球恒数を調べることによって、「小球性低色素性貧血」、「正球性正色素性貧血」、「大球性高~正色素性貧血」の3つの型に分類して鑑別診断を進めることがてきます。

【赤血球恒数の計算方法】

1.MCV(平均赤血球容積)= ヘマトクリット値 / 赤血球数 × 1000 

※ヘマトクリット値、つまり容積を 赤血球数で割ったもので、赤血球の1個あたりの容積の平均値。
   
2.MCH(平均赤血球血色素量) = 血色素量 / 赤血球数 × 1000

※一定量の中の血色素量を、赤血球数で割ったもので、赤血球の1個あたりのヘモグロビン量の平均値。
   
3.MCHC(平均赤血球血色素濃度)= 血色素量 / ヘマトクリット値 × 100  

※個々の赤血球の容積に対する血色素量の比を%で表したもので血色素濃度の高低、すなわち低色素性、高色素性の程度を表す。

注:これらの計算は、自動血球計算機で血液検査を行うことにより、自動的に計算されます。

【基準値】

MCV  男性:84.9~99.6   女性:80.6~98.7  (fl )
MCH  男性:27.5~32.3   女性:25.0~31.9  (pg)
MCHC  男性:31.2~33.8   女性:30.3~33.4  (g/dl)

※使用する自動血球計算機の種類により若干数値が変動します。

基準値を外れた場合

・MCV:79fl以下、MCHC30%以下の場合

小球性低色素性貧血で、鉄欠乏性貧血、鉄芽球性貧血、セラセミアの疑い。

・MCV:80~100fl、MCHC31~35%の場合

赤血球とヘモグロビン数に異常がない貧血で、溶血性貧血、急性出血、腎性貧血、再生不良性貧血などの疑い。

・MCV:101fl以上、MCHC31~35%の場合

大球性貧血で、巨赤芽球性貧血、腎性貧血の疑い。

2012年4月15日日曜日

血液一般検査-3.ヘモグロビン量及びヘマトクリット値


1)ヘモグロビン量(Hb)

ヘモグロビンは赤血球に含まれ、酸素を運搬する働きをすることから、この量が低下すると貧血となります。

反対にヘモグロビン量の増加は赤血球の増加に伴って見られます。

【基準値】

男性 13.8-16.6g/dL

女性 11.3-15.5g/dL

減りすぎている場合

・鉄欠乏性貧血:鉄分の不足による貧血で特に若い女性に多くみられます。

・病気や傷口からの出血が原因の貧血:痔、胃潰瘍、子宮筋腫など、日々気付かないほどの少量の出血でも、長期に続くと貧血になります。

・悪性貧血:ビタミンB12の不足。

・再生不良性貧血:骨髄の造血機能の低下。

・溶血性貧血:赤血球の寿命が短くなって、骨髄での赤血球の製造が間に合わない。

増えすぎている場合

・激しい運動後など身体が脱水状態の場合、循環血漿量が減少するため、見かけ上高値となります。

・高地居住者の場合、酸素濃度が少なく、その状況下で体内に酸素を必要量取り込む必要があるために高値となります。

・喫煙者では高値を示すことがあります。

2)ヘマトクリット値(Ht)

血液中に占める血球の割合を示します。

貧血があるとヘマトクリット値は低下し、多血症では増加します。

【基準値】

男性 40~52%

女性 35~47%

減りすぎている場合

・貧血:大部分は女性に多い鉄欠乏性貧血、悪性貧血、再生不良性貧血、白血病やがんの転移による貧血です。


増えすぎている場合

・脱水症状:全身の衰弱がひどく、飲食物を口からとれない、日射病、熱射病など。

・多血症:赤血球が徐々に増え、白血球や血小板も増えてくる。

※赤血球数やヘモグロビン量の検査結果を加味して赤血球恒数(次回解説予定)を求めれれば、貧血の種類や性質をおおよそ診断することができます。

※ヘモグロビン量とヘマトクリット値は、現在では自動血球計算機で赤血球数とともに自動的に測定されます。

※使用する自動血球計算機の機種によって基準値は若干異なります。

2012年4月8日日曜日

血液一般検査-2.赤血球数-


赤血球はヘモグロビン(血色素)を主成分として出来ています。

ヘモグロビンは、肺から取り込まれた酸素と結合して身体の各細胞に酸素を運び、同時に不要になった炭酸ガスを肺に運ぶ働きをしています。

赤血球の数を調べることにより、赤血球数が少ない病気や赤血球数が多すぎる病気が分かります。

赤血球の数が少ないと、全身運搬される酸素量が減少し、立ちくらみを起こしたり、血液を早く全身に運び酸素の運搬量を増やそうとすることから、脈が速くなったり、動悸、息切れといった貧血症状を起こします。

また、赤血球の数が多すぎる場合は、赤血球の数そのものは正常ですが脱水などで血液中の液体成分が減って相対的に赤血球の濃度が高くなっている場合は、水分を補給すれば問題ありません。

赤血球数そのものが増えている場合は、心臓や肺の病気で不足しがちになる場合の酸素供給を補うために増える二次性多血症と、病気のために赤血球が多く作られる真性多血症があります。

真性多血症は注意が必要な病気で、赤血球だけでなく白血球や血小板も増加しています。
赤血球数が多すぎるために血栓ができやすく、脳梗塞を起こしたりしますので、積極的に赤血球数を減らす治療が必要になります。

一方、ストレス多血症と呼ばれるものがありますが、これにはストレス、高血圧、喫煙、肥満などが関係していることがあり、中年男性に多くみられますが、これは生活習慣を改めることにより改善されます。

【基準値】

男性 430~570万/μl

女性 380~500万/μl

※基準値は検査方法や測定方法、測定機器、用いる試薬、単位などにより値が異なります。

男女とも1μl(=1mm3)中の赤血球数が300万個以下の場合は、明らかな貧血と診断されます。

ただし貧血の種類は、その他の検査を組み合わせて行わないと解りません。

赤血球の数が増えすぎて600~800万個になる場合は、多血症(赤血球増多症)と考えられます。

※HIVの感染の判断は、赤血球数検査では解りません。

2012年4月1日日曜日

血液一般検査-1.血液一般検査の種類-


血液一般検査とは、体調が悪くなり受診した時や健康診断では必ず行われる検査のひとつです。

検査を実施する理由としては、身体に異常があるとそれが血液にいち早く反映されるため、病気の有無の判断や健康状態を調べる上で血液一般検査はとても重要な検査のひとつと言えます。

血液一般検査の検査項目には、以下の種類があります。

1.赤血球数

2.ヘモグロビン量及びヘマトクリット値

3.赤血球恒数

4.白血球数

5.白血球分類

6.血小板数

上記の検査を順次わかりやすく解説していきます。

2012年3月25日日曜日

炎症マーカー検査-2.赤血球沈降速度検査-


赤血球沈降速度検査とは、赤血球が試験管内を沈んでいく速度を測定する検査で、一般に血沈、ESRとも呼ばれます。

抗凝固剤を使用して固まらないようにした血液をガラス管に入れて一定時間放置すると赤血球が下へ沈み、その上部に淡黄色の血漿が残ります。

液の上端から赤と透明の境界線までの長さが赤血球の沈んだ距離に相当し、1時間に何mm沈んだかを測定します。

この検査は、主に身体の中に炎症をともなう病気の有無や程度がわかりますが、異常がなくても異常値を示すことがあり、逆に、明らかに病気であるのに正常値になることもあるため、この検査だけで診断を下すことはできません。

また、特定の病気を診断する事もできません。

当然HIV感染の判断もできません。

【基準値】

男性…1~10mm(1時間後)
女性…2~15mm(1時間後)

軽度亢進:<25mm
中等度亢進:25~50mm
高度亢進:>50mm

※変動範囲は、個人差があることから20mm以内であれば、あまり問題にはなりません。
※女性では軽い貧血があるときや妊娠後期、生理時に沈降が進み、やや高値になります。

【異常な場合に疑われる病気】

1.高値の場合

感染症…肺炎、結核、腎盂腎炎など
心臓病…心筋梗塞、心内膜炎、心筋炎など
消化器病…肝炎、胆のう炎、膵炎、潰瘍性大腸炎など
免疫の異常…全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチなど
血液疾患…多発性骨髄腫、白血病、悪性貧血など
がん…ほとんどの進行中のがん

2.低値の場合

多血症、異常ヘモグロビン症、播種性血管内凝固症候群(DIC)、低フィブリノゲン血症など

最近では、自動測定機器を使用して、1時間値及び2時間値を計算上から求めることが出来る自動赤沈測定装置が利用されています。




2012年3月18日日曜日

炎症マーカー検査-1.CRP検査-

身体の中に炎症の有無を調べる検査です。


今回はその中のひとつのCRP検査(C反応性蛋白)について解説します。

CRPとは、「C-リアクティブ・プロテイン」の略で、炎症や組織細胞の破壊が起こると血清中に増加するタンパク質の一種です。

肺炎血球(ストレプトコッカスニューモニエ)が持っているC多糖体に反応するため、C反応性タンパクと名づけられました。

体内で炎症反応が起こり、組織が破壊されると血液中のC反応性蛋白が増え、炎症が収まると正常値に戻る性質を持っています。

CRP検査では、単に体内で炎症が起こっていることしか分からず、その炎症の程度が重大かそうでないかということは分かりません。

「HIVに感染すると身体の中に炎症が起きることから、CRPでHIVに感染の判断はできるか?」と言う質問をよく受けますが、CRPは単に身体の中で炎症があることしか分からず、その炎症の原因を特定できないことから、HIVの感染の判断指標にはなりません。


【CRPの基準値】

定  性

(-) :陰性
(±) :偽陽性
(1+) :弱陽性
(2+) :陽性
(3+) :強陽性

定  量

基準値:0~0.3mg/dl

基準値外

軽度   :(0.3~1mg/dl)
中程度 :(1~10mg/dl)
重度   :(10mg/dl~)
 
※定量値の値は、検査に使用する機器によって若干異なります※

陽性反応が強い場合は、結核などの細菌感染症、膠原病、リウマチ熱、心筋梗塞、肝硬変、敗血症、悪性腫瘍などが疑われます。

弱陽性の場合は、ウイルス性疾患、急性肝炎、脳炎、内分泌疾患などの疑いがあります。

2012年3月11日日曜日

性行為感染症検査-6.梅毒血清検査法その8.新生児梅毒の梅毒検査-


梅毒に感染した母親から胎盤を経由して胎児に感染します。

先天性梅毒を防止するために産婦人科では、妊娠早期に母親の検査をしていますが、最近出産直後に産婦人科を訪れる母親が見られ、この場合梅毒検査をしていないことから、胎児に梅毒感染してしまう事例が見られます。

母親の治療をしていないと、胎児梅毒の場合は、流産、早産、死産の可能性が高くなります。

発症の時期によって、梅毒の症状を備えて生まれる胎児梅毒、生後1~2か月で発症する乳児梅毒、7~8歳頃に発症する晩発梅毒に分類されます。

新生児の梅毒検査を行う際に注意することは、TPHAやFTA-abs検査を実施しますと、実際は新生児に梅毒感染がなくても、母親由来のTP抗体で陽性となってしまいます。

実際に梅毒に感染しているか、母親由来のTP抗体による陽性反応かの判断をする場合は、IgM-FTA-abs検査を実施します。

1.TPHAやFTA-abs検査が陽性でIgM-FTA-abs検査が陰性の場合は、母親由来のTP抗体を検出していることから、梅毒の治療は必要ありません。

この場合のTPHAやFTA-abs検査の陽性反応は、3~6ケ月後に陰性化します。

2.TPHAやFTA-abs検査が陽性または陰性であっても、IgM-FTA-abs検査が陽性の場合は、新生児は梅毒に感染していることから、治療が必要となります。

この様にIgM-FTA-abs検査は、新生児の梅毒感染の早期判断に利用されています。

2012年3月4日日曜日

性行為感染症検査-6.梅毒血清検査法その7.梅毒の治療効果判定法-


梅毒に感染して一度身体の中にTP抗体が出来てしまいますと、一生涯TP抗体は消えることがありませんので、TPHAやFTA-absは陽性のままとなります。

そのことから、梅毒の治療効果を判定するのにはTPHAやFTA-absを利用することは出来ません。

STSによって治療効果の判定を行います。

間違ってTPHAやFTA-absを治療効果の判定に利用しますと、STSが陰性になっているにもかかわらず、TPHAやFTA-absは陽性の状態が続くことから、いつまでも不必要な抗生物質の投与を行い、TPHAやFTA-absの陰性化を待つという誤った治療が行われることがあります。

現実、STSが陰性化して梅毒は完全に治癒しているにもかかわらず、TPHAやFTA-absが陽性のためTPHAやFTA-absの陰性化を目指して、延々と治療を続けることがよく見られます。

梅毒の感染の判断には、STSとTPHAやFTA-absを組み合わせて検査を行い、梅毒感染であると判断された後の治療効果の判定には、STSを使用して検査を行います。

TPHAやFTA-absは、治療効果判定の指針検査とはなりません。

2012年2月26日日曜日

性行為感染症検査-6.梅毒血清検査法その6.梅毒検査法による梅毒診断法-


各種梅毒検査の結果から、その判定法を解説します。

一般的に梅毒検査法は、STSとTPHA及びFTA-absを組み合わせて検査しますが、今回はこれに早期に信頼出来る結果が得られるIgM-FTA-absを組み合わせて判定方法を以下に示します。


【梅毒血清検査法による梅毒診断法】


※クリックしますと表が拡大します※

2012年2月19日日曜日

性行為感染症検査-6.梅毒血清検査その5.IgM-FTA-abs検査-


FTA-abs検査は、IgG型のTP抗体を検出する検査法ですが、IgM-FTA-abs検査はIgM型のTP抗体を検出するための検査法です。

梅毒に感染した初期には、IgM抗体が先に出来て、その後IgG抗体が出来ます。

このIgM抗体は、梅毒に感染後1週間程度で身体中にできることから、IgM-FTA-abs検査は梅毒に感染後1週間で受ければ信頼出来る結果が得られます。

そのことからして、早く感染の診断を下したい時に利用される検査法です。

梅毒感染後早く陽性となる順番は、以下のとおりとなります。

1.IgM-FTA-abs検査

感染後1週間

2.FTA-abs検査

感染後3週間

3.STS検査(ガラス板法、RPR検査)

感染後4週間

4.TPHA検査

感染後5~6週間

2012年2月12日日曜日

性行為感染症検査-6.梅毒血清検査その4.FTA-abs検査-


FTA-abs検査(梅毒トレポネーマ蛍光抗体吸収検査:Fluorescent Treponemal Antibody-absorption Test)は、スライドグラスに梅毒病原体であるトレポネーマ・パリーダムの菌体成分を吸着させ、TP抗体を間接蛍光抗体法で検出する検査法です。

非病原性トレポネーマとの交差反応による偽陽性反応を防止する意味で、非病原性トレポネーマで患者血清を事前に吸収処理して検査することから、偽陽性反応の出現率が低いのが特徴です。

吸収処理した血清を、トレポネーマ・パリーダムを吸着処理したスライドグラスの上に滴下し、乾燥しないようにして37度で一定時間反応させた後、血清成分を洗い流し、クライドグラスに蛍光抗体をのせ再び37度で反応後、蛍光色素を洗い流した後に、蛍光顕微鏡で観察します。

1.陽性

血清中のTP抗体+梅毒トレポネーマの菌体成分+蛍光抗体色素=梅毒トレポネーマが蛍光を発する。

2.陰性

血清中にTP抗体が存在しないことから、蛍光抗体色素が梅毒トレポネーマに吸着しないことから梅毒トレポネーマは蛍光を発しない 

TPを利用するFAT-abs検査は、感染後3~4週後にTPHA検査より早く陽性となりことから、STS陽性、TPHA陰性の場合の梅毒鑑別に利用されます。

FTA-abs検査もTPHA検査同様、一旦陽性となると治療して梅毒が完治しても、一生涯陽性反応が続くことから、治療の判定には適さない検査法です。

2012年2月7日火曜日

性行為感染症検査-6.梅毒血清検査その3.イムノクロマト法TPHA検査-


代表的な迅速検査法のエスプラインTPについて解説します。

【測定原理】

酵素免疫測定法を測定原理としたイムノクロマト法による血清または血漿中のTP抗体検出用試薬です。

この検査法は、TPの主要抗原と考えられているTpN47とTp15-17の2種類のリコンビナント抗原を使用しています。

検体滴下部に滴下した血清または血漿中にTP抗体が存在すると、酵素標識抗原〔アルカリホスファターゼ(ALP)標識リコンビナント抗原(TpN47)およびアルカリホスファターゼ(ALP)標識リコンビナント抗原(Tp15-17)〕と反応した後、展開液によりメンブレン上を移動し、判定部に固定されたTP抗原と結合して、血清または血漿中のTP抗体を介した3者のサンドイッチ複合体を形成し青色のラインが出現します。

反応確認用のレファレンスラインは、メンブレン上のTP抗原と異なる位置(下流側)へ抗ALP抗体を固定化したもので、固定化TP抗原とのサンドイッチ複合体形成に関与しなかったALP標識抗原と結合し、標識抗原の酵素反応によりラインが出現を確認することにより、血清または血漿、標識抗原、基質の展開および酵素反応が正常に行われたことを確認できます。

【操作上の注意】

血清または血漿を滴下後15分で判定する。

15分を経過後に青色のラインが出現しても陽性と判定しない。

必ずレファレンスラインに青色のラインが出現していることを確認する、レファレンスラインに青色のラインが出現していないときは再度検査を実施する。

【 判定方法 】

シート上に出現する青色ラインの有無を肉眼で判定します。

反応過程は複雑ですが、原理自体はいたってシンプルな方法を用いているため、従来の方法に比べ短時間で結果が得られます。

【判定ラインの画像】

1.陰性の画像

青色のレファレンスラインが認められ、青色の判定ラインが認められなかった場合。



※レファレンスラインの画像は省略しています※

2.陽性の画像


青色のレファレンスラインが認められ、青色の判定ラインが2本または1本認められた場合。


※レファレンスラインの画像は省略しています※

【検査のデメリット】

1.肉眼で判定するため、判定者個人による判定誤差が見られる。

2.測定時間を厳守しないと、陰性、陽性の判定が異なることがある。

2012年2月1日水曜日

性行為感染症検査-6.梅毒血清検査その2.TPHA検査-


TPHA(Treponema Pallidum Hemagglutination Test)は、梅毒病原体である梅毒トレポネーマ・ハリーダム(以下TPと略します)の菌体成分を抗原として使用する検査方法です。

梅毒の病原体であるTPの菌体成分を吸着させたゼラチン粒子が、TPの感染抗体によりゼラチン粒子の凝集反応を起こす状態を見て判断します。

※発売当初は、TPの菌体成分をタンニン酸処理した羊の赤血球に吸着させたものでしたが、現在はゼラチン粒子に吸着させています。

梅毒検査にTPHAを採用することのメリットは、偽陽性反応を引き起こすことが極めて少ないことから本検査が陽性の場合は、ほぼ間違いなく梅毒と判断できます。

デメリットとしては、梅毒トレポネーマに感染しても、TPHAで陽性を示すのは、感染後5週以降であるために、早めに診断をしたいという場合には不向きです。

そのために、早い時期にTPHAだけで梅毒の診断をすると感染を見逃すことがあります。

また、一度梅毒トレポネーマに感染してTPHAが陽性となると、抗生物質で治療して完治しても、陽性反応はまず一生涯消えることがありません。

そのためTPHA検査のみを使用して、陽性と判定されても、梅毒は治癒しているにもかかわらず、再度治療するという誤った認識をしている医師も見られます。

※治療判定の際の検査方法については、別途紹介します※

【附 則】

近年採用された全自動検査機器を使用しての『TPLA』は、従来のTPHAに比べて1週間前後早く陽性になる傾向があります。

2012年1月25日水曜日

性行為感染症検査-6.梅毒血清検査その1.STS検査-


梅毒トレポネーマが、感染して生体の組織を破壊したときに血液中に出てくる脂質カルジオリピンに対する抗体を検出する検査法を総称してSTS(Serologic Test for Syphilis)と呼びます。

ガラス板法、RPRカード法があり、血液中に抗体がなければ陰性となりますが、抗体があった場合には陽性と判定され、梅毒に感染している可能性ありと判定されます。

1.ガラス板法

カルジオライピン・レシチン抗原で感作したコレステリン粒子と患者血清をガラス板上で混和し、凝集塊の有無を顕微鏡で観察する検査。

2.PRテスト(Rapid Plasma Reagin Test)

カルジオライピン・レシチン抗原を吸着させた炭素粒子と、患者血清とを混和してできる凝集塊の有無を肉眼で観察する検査。

これらSTSは、感度に優れ、比較的早期から陽性になる反面、梅毒に感染していなても陽性となる生物学的偽陽性(BFP:Biological False Positive reaction)には常に留意が必要です。

生物学的偽陽性反応は、肝疾患、ウイルス感染症、自己免疫疾患、妊娠などで非特異的に抗体が産生される結果、抗カルジオリピン抗体保有者となり、梅毒に感染していないにもかかわらず陽性反応を示すことがあります。

※また、全く健康な人でも検査のたびにSTSが常に陽性となる人も存在します。

従ってSTSが陽性となっても生物学的偽陽性反応の可能性があることから、すぐに梅毒に感染しているとは言えません。

※STSが陽性となれば、必ず梅毒トレポネーマを使用したTPHA FTA-absで検査をしてから梅毒感染の判断を行う必要があります。

【STS検査を受ける時期】

これらの検査は、梅毒に感染すると4週程度で陽性となることから、行為から30日で受ければ信頼できる結果が得られます。

2012年1月19日木曜日

性行為感染症検査-5.咽頭淋菌検査-


淋菌が咽頭に感染することがありますが、性器に感染したときに比べて症状がほとんどでないことから、感染に気づく人は非常に少ないのが現実です。

仮に感染があっても喉の違和感、軽い咳など咽頭炎の症状しか出ませんので、耳鼻咽喉科を受診しても淋菌に感染す可能性のある行為をしたと医師に申告しないと単なる咽頭炎と診断されて、淋菌感染を見逃すことになります。

咽頭の淋菌感染の検査は非常に難しいことを解説しておきます。

口腔内には非病原性菌の常在菌であるナイセリア属が、わかっているだけで11種も存在しています。

病原性のある淋菌も実はこのナイセリア属です。

淋菌咽頭感染検査には、PCR法は使用できない!!

遺伝子増幅法であるPCR法はナイセリア属と交差反応を示すため、このナイセリア属の細菌を淋菌と間違えて検出してしまい、淋菌に感染していなくても陽性となってしまいます。

いわゆる"偽陽性反応"が起こるわけです、そのために淋菌の性器感染検査に使用される遺伝子増幅法であるPCR法は咽頭感染の検査には適していません。

それでは、淋菌の咽頭感染検査にはどの様なものがあるのでしょうか?

咽頭淋菌感染の検査は、ナイセリア属と交差反応をしめさないSDA法(Strand Displacement Amplification)または、TMA法(Transcription Mediated Amplificatio)による検査を行います。

咽頭に淋菌が感染しているかどうか、SDA法やTMA法検査を受けてないと分かりません。

淋菌に感染している不安があれば検査を受けてみてください。

自覚症状がなくても感染するリスクのある行為をした場合は、必ず検査を受けることです。

2012年1月15日日曜日

性行為感染症検査-4.性器感染の淋菌検査-


淋病は淋菌によって引き起こされる性行為感染症のひとつです。

淋病の症状

男 性

尿道内に感染して増殖し、尿道炎症状を引き起こします。

典型的な症状としては、感染後2~7日後に、灼熱感を伴う排尿痛があり、尿道口より膿が出ます。

しかし、排尿痛のみや尿道から少の膿しか出なかったり、全く症状の出ない場合もあります。

女 性
 
尿道に感染することは殆ど無く、膣から子宮頚管におよび子宮頚管炎を引き起こします。

症状としては、オリモノの増加、膿の混ざった悪臭のあるオリモノなどですが男性に比べ症状が少なく感染に気づく人は少ないのが実情です。

80%以上が無症状です。

感染に気づくことなく放置していますと、子宮頚管から上行性に子宮、卵管を経由して腹腔内へ感染が進みます。

淋菌の感染率は、1回の性行為で低くて30%高い場合は80%です。

検査法

男性の場合は尿や性器からの分泌物(膿)を採取し、女性の場合には膣の分泌物を採取し検査します。

1.顕微鏡検査

検査物をグラム染色して、顕微鏡で淋菌の有無を検査。

非常に簡単な検査ですが、検査物に淋菌が少ない場合には、感染していても陰性となってしまう欠点があります。

2.淋菌培養検査

検査物から淋菌を採取して培養し、増殖させて光学顕微鏡で調べる。

淋菌の生命力が非常に弱いことから、検査物採取から時間が経過しますと、淋菌が死滅して感染していても陰性となることから、この検査法はあまり利用されていません。

3.核酸増幅検査法

1)PCR(Polymer Chain Reaction)法

淋菌のDNAを化学的に増幅させて検査する方法です。

非常に感度がよく優れた検査法です。

2)SDA(Strand Displacement Amplification)法

PCR法とは検査の原理が異なりますが、核酸増幅検査のひとつです。

この検査方法は、クラミジア感染症と淋菌感染症の同時検査ができることと、検査の感度、精度もPCR法と同等かそれ以上ある優れた検査法です。

3)TMA(Transcription Mediated Amplification)法

SDA法同様、クラミジア感染症と淋菌感染症が同時に検査出来ます。