血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

ラベル 性行為感染症検査 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 性行為感染症検査 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2012年7月15日日曜日

性行為感染症検査-14.梅毒血清反応定量法-


梅毒血清反応には、カルジオリピンを抗原とするSTS検査としてのガラス板法とRPR検査(現在ガラス板法はほとんど実施されていません)と梅毒トレポネーマを抗原とするTP検査があることはよく知られていることです。

これらの検査は、単に陽性(+)または陰性(-)だけを判定するのではなく、陽性の場合は血清を生理食塩水で2倍連続希釈して何倍まで陽性となるかを判定します。

これを抗体価と呼びます。

※事例 RPR法 128倍、TPHA 5120倍

単に陽性と陰性を判断するのは、「定性検査」と呼びます。

一方血清を希釈して何倍まで陽性であるを調べるのは、「定量検査」と呼びます。

「定量検査」は、梅毒の治療の判断のために必要な検査法です。

【定量検査の解釈】

1.RPR法4倍、TPHA陰性の場合は、偽陽性反応(BFP:生物学的偽陽性反応)の疑いが濃く、1ケ月後に再検査を行い、同じ結果であればSTSの偽陽性反応と判断します。

本当に感染していれば、1ケ月の時間経過により体内に梅毒抗体が産生されていることからSTSの定量値も高くなり、当然TPHAも陽性となっています。


2.RPR法16倍以上、TPHA陰性の場合は、1期梅毒と判断し治療を開始します。

この場合、FTA-absを実施して陽性を確認します。

3.RPR法16倍以上、TPHA640倍以上の場合は、2期梅毒と判断し治療を開始します。

4.RPR法陰性、TPHA640倍の場合は、無症候性梅毒あるいは過去に梅毒に感染したという梅毒既往ありと判断し治療せずに経過観察を行い、RPR法が陽性とならない場合は、過去の感染経歴として治療は行いません。

※TPHAは梅毒が完治した後も長期間或いは一生涯高い定量値のまま推移しますから、梅毒血清反応の解釈の不得手な医師により、治療か必要と誤診されて不必要な治療を加えられるケースが多く見られます※

性行為感染症の専門家でない医師は、抗生物質治療によってSTSが陰性化して、体の中の梅毒トレポネーマが死滅しているにもかかわらず、TPHAやFTA-absが陽性であることから、「梅毒は治っていない」として、TPHAやFTA-absが陰性化するまで抗生物質の投与が必要として治療続けますが、これは完全な間違いです。

幾ら強力に抗生物質を投与し続けても、TPHAやFTA-absが陰性化することはありません。

梅毒の治療効果の判定には、TPHAやFTA-absなどのTP検査は使用できません、STSの「定量法」で行います。

2012年7月8日日曜日

性行為感染症検査-13.唾液によるHIV抗体簡易検査


2012年7月3日、米食品医薬品局(FDA)は家庭で素早くHIV抗体検査(HIV-1/-2)が実施できる初の市販検査キットを承認しました。

FDAは1996年にも家庭で行えるHIVの検査キットを承認していますが、このキットは検体を検査機関に送付する必要があるものでした。

今回承認されされた簡易HIV抗体検査キットは、米国オラシュア・テクノロジーズ社が開発したもので、『オラクイック・インホームHIVテスト』と呼ばれるもので、歯茎を拭って採取した検体(唾液)を溶液の入った小瓶に入れると、陰性であればラインが1本、陽性であれば2本のラインが表示されるというもので、検査の所要時間は20分程度だということです。

この検査キットの信頼性は、危険な行為から3ケ月後に実施すればほぼ100%の信頼性が得られますが、3ケ月より早い時期に検査をすれば信頼性は低くなるとのことです。

※これはどのHIV抗体検査についても言えることです※

一方、偽陽性反応の出現率は、5000人に1人という結果が得られています。

※偽陽性反応の出現率は、血液を使用する迅速抗体検査に比べて低いと考えます※

この検査キットは、米国では、2012年10月上旬頃には店頭とネットで販売される予定です。

米国での販売が開始されれば、日本国内においても個人あるいは、代行業者によってこのキットを輸入して使用出来ると考えられます。

参考のために、オラシュア・テクノロジーズ社が提供した『オラクイック・インホームHIVテスト』の写真を紹介しておきます。




2012年7月1日日曜日

性行為感染症検査-12.ケジラミ症の検査


ケジラミ症は、ヒトシラミ科に属するシラミが寄生することにより発症します。

ケジラミの寄生している毛と接触すれば100%感染します。

ケジラミはアポクリン汗腺を好み、陰毛部でヒトの血を吸い生活しますが、24時間血を吸えないと死んでしまいますが、卵は約10日間栄養の補給がなくとも生き続けるため、 この期間に痒みがないことから治癒したと勘違いすることがありがちです。

性行為による陰毛どうしの接触感染が主なものですが、オーラルセックスによって肛門周囲の毛、わき毛、胸毛、太ももの毛、まゆ毛、まつ毛、口ひげ、頭髪などに寄生することもあります。

毛に寄生したケジラミが吸血することによって、激しい痒みに襲われます。

性行為やオーラルセックスをして、1~2ヶ月に毛の生えている箇所に激しい痒みが発生すれば、ほぼ間違いなくケジラミに感染しています。

【検査法】

皮膚科を受診して、痒みのある箇所の毛の中に体長1mm前後ケジラミの成虫または虫卵(長さ0.5mm)を検出することによって診断します。


【ケジラミの自己検査方法】

1.虫眼鏡やルーペなどので痒みのある部分の毛を注意深く観察すれば成虫や卵を見つけることができます。

2.白色の下着を1日身につけて、下着をよく観察して下着に黒色の点状のしみ(ケジラミの排泄する血糞)が付着していればケジラミが寄生していることになります。

※ケジラミの成虫や虫卵を発見したり、下着についた黒色の点状のしみを確認した場合は、直ぐに皮膚科を受診して治療を受けて下さい※

※ケジラミ症は性行為感染症の中で、唯一自己検査が可能です※

2012年6月25日月曜日

性行為感染症検査-11.咽頭淋菌検査TMA法-


TMA法(Transcription Mediated Amplification )の特徴としては、


1.1回の検査で咽頭のクラミジアトラコマチス・淋菌の結果が同時に検査が可能。


2.他の遺伝子検査と比較して高い特異性(ニセの陽性反応が出にくい)を有して、咽頭検査に適している。



3.他の遺伝子検査法と比較して約1,000倍高感度で検出可能である。


4.口の中の非病原性の細菌との反応がほとんどないことから偽陽性反応の出現率が極めて低い。


これらのことから咽頭淋菌感染の検査としては、極めて優秀な検査法です。

咽頭淋菌検査に、PCR法を行うと偽陽性反応が出ることを婦人科、泌尿器科、性病科の医師に周知徹底されていないことと、喉の専門家の耳鼻咽喉科医も十分周知徹底されていないのが実情です。

誤った検査法を採用して、咽頭淋菌感染症でもないのに、咽頭淋菌感染症と診断され、不必要な治療を行われている患者もいることは確かです。

※咽頭淋菌陽性と診断されて、幾ら抗生物質を服用しても治らない場合は、間違った検査法による偽陽性反応の可能性もあります※

咽頭淋菌の検査を受けるときには、検査名を良く聞き、PCR検査でなく、SDA法かTMA法を受けることです。

2012年6月17日日曜日

性行為感染症検査-10.咽頭淋菌検査SDA法-


近年風俗店でのオーラルセックスにより、咽頭への淋菌感染が多く報告されています。

オーラルセックスで淋菌が喉に感染しても、ほとんど症状が出ることはなく、仮に症状が出てても一種の咽頭炎のような症状ですから、喉への淋菌感染を疑う人は殆どいないのが実情です。

その為に咽頭淋菌感染は、感染していることに気づくことなく、相手に感染させるという危険性を伴います。


咽頭の淋菌感染検査としては、培養検査やPCR法がありますが、口腔内の常在菌であるナイセリア属などを検出してしまい、感染ない人を誤って淋菌陽性(偽陽性反応)としてみなしてしまうことが多く起こります。

そのことから、咽頭淋菌検査は常在菌のナイセリア属と淋菌との鑑別が可能なSDA法を使用すべきです。


SDA法(Strand Displacement Amplification)は、BD社が独自に開発した核酸増幅検査法のことです。

4種類のプライマーとDNAポリメラーゼおよび制限酵素を利用してターゲットDNAを増幅しながら蛍光プローブによりリアルタイムに検出を行なうことで、検体中の目的の微生物DNAの有無を調べます。

SDA法は、口腔内の常在菌の口腔内ナイセリア属との交差性が極めて少ないため、咽頭検体での検査が可能です。

検査方法としては、スワブと呼ばれる綿棒で喉の奥を拭って検査します。


咽頭淋菌感染の検査は、PCR検査を用いるのではなく、SDA法またはTMA法で検査をする必要があります。

【注意】

本来、咽頭の淋菌検査は耳鼻咽喉科で受けるべきですが、耳鼻咽喉科の一部では検査を実施していない施設もあります。

最近では、泌尿器科、性病科でも咽頭の淋菌検査を積極的に実施しています。

検査を受けられる時は、事前に咽頭淋菌検査としてSDA法またはTMA法を実施しているかを事前に問い合わせて下さい。

間違ってもPCR検査による咽頭淋菌検査を受けてはいけません。

PCR法による淋菌検査は、性器感染に関しては優れた検査法ですが、咽頭淋菌検査ではニセの陽性反応が出て、咽頭に淋菌感染がなくても陽性となってしまいます。

※TMA法については、次回紹介致します※

2012年6月11日月曜日

性行為感染症検査-9.クラミジア抗体検査-


クラミジア感染症は、我が国においては性行為感染症の中で一番多く見られる感染症です。

クラミジア感染症の検査の中で血液で検査されるクラミジア抗体検査について解説してみます。

クラミジア抗体検査は、IgA、IgGの2つの抗体を検査します。

これら抗体の検査結果の解釈としては、クラミジアに感染した直後はIgA抗体、IgG抗体とも陰性ですが、少しするとIgA抗体が陽性になってからIgG抗体も陽性になります。

まとめますと、

クラミジア感染→IgA抗体産生→IgG抗体産生→そしてIgA抗体はIgG抗体が産生された後しばらくして消失という状態となります。

治療によってIgA抗体が陰性化し、最後にIgG抗体が陰性化しますが、陽性化、陰性化するまでの期間は個人差があり一概には言えません。

また、完治してもIgG抗体の陰性化は10年近くかかる場合もありますし、一生陰性化しない場合もあります。

一般的に保健所では、無料でクラミジア抗体検査をしています。

しかし、このクラミジア抗体検査が問題になることが多くあります。

クラミジアに感染するとクラミジアに対する感染抗体が身体の中に出来ます。

この感染抗体を調べるのがクラミジア抗体検査ですが、この検査はクラミジアそのものを見つける検査ではありません。

本来感染病原体のクラミジアその物を見つけてこそ感染していると言えますが、感染抗体があれば、即感染しているとはいえません。

特にクラミジア抗体検査は、特異性(信頼性)が低いことから、感染していないのに陽性(偽陽性)となることが多くあります。

従って、クラミジア抗体検査は信頼性が低くあまりお薦めできる検査ではありません。

問題となるのは、一度も性交渉していないにもかかわらずIgA抗体陽性、IgG抗体陰性という人もいますし、IgG抗体陽性という人もいます。

「保健所でクラミジア抗体陽性と言われた」人の中に上記のような人が多く見られ、実際にクラミジアに感染している人はそのなかで20~30%程度です。

その逆に実際にクラミジアに現在感染しているのにもかかわらず、クラミジア抗体検査では陰性(偽陰性)となることもあります。

この原因は、クラミジア感染抗体が出来ていない時期に検査を受けたことです。

クラミジアに感染して感染抗体が出来る時期は、かなりの個人差があり感染後、数週間で抗体が出来る人もいれば、3ヶ月たっても出来ない人も存在します。

従って、血液を採取して信頼性の低い抗体検査をおこなうより、感染の可能性がある粘膜(咽頭、子宮頸部、尿道、肛門など)から検体を採取し、その抗原(クラミジア)を調べるのが一番信頼出来る結果が得られます。

大切なことは、クラミジア抗体検査の結果はあくまでも”参考”と考えるべきで、抗体検査が陽性になっても必ずしも現在感染しているわけではないということと、陰性と出たからといって(特に危険な性交渉から時間がたっていないときは)100%安心できるわけではないことには注意すべきです。

現在一部の進歩的な保健所は、クラミジア抗体検査の不備を認めて抗原検査に移行しているようです。



2012年6月3日日曜日

性行為感染症検査-8.鼠径リンパ肉芽腫-


性行為感染症のひとつで、クラミジア・トラコマチスのL型によって引き起こされます。

性器や咽頭に感染するクラミジア感染症とは全く別の感染症です。

淋病、梅毒、軟性下疳以外のもうひとつの性病という意味で「第四性病」と呼ばれることもあります。

現在、鼠径リンパ肉芽腫は、日本ではほとんど見られず、主に発展途上国に多い病気ですが、海外での無防備な性行為で感染して帰ってくる人がいます。

鼠径リンパ肉芽腫の化膿疹のある部分によってはコンドームでの感染予防は出来ません。

鼠径リンパ肉芽腫は、感染してから1~4週間後に、男女ともに性器(男性は主に亀頭・包皮・前部尿道など、女性は主に外陰部・膣・子宮頚管など)に痛みを伴わない発疹が出来、発疹はやがて水泡になり、水泡が破れて潰瘍になります。

その後、鼠径リンパ腺(太股付け根のリンパ腺)が硬く腫れ上がり、次第に化膿して最終的には破裂して、そこから膿が流れ出てきます。

これを治療をせず1年以上経つと、直腸や肛門部のリンパ腺まで症状が広がり、男女ともに性器に象皮病のような症状が現れます。

【検査法】

感染するような行為をしなかったかどうかの問診後、専用の細い綿棒状の物で化膿している部分の分泌物を採取して、クラミジア抗原の有無を調べ検査が一番信頼出来る結果が得られます。

上記に記載したような症状が現れた時には、直ぐに皮膚科を受診することです。

抗生物質の服用で3~4週間で治癒します。

2012年5月29日火曜日

性行為感染症検査-7.性器ヘルペス検査


性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(HSV)が原因で発症する性行為感染症のひとつです。

従来は口唇周囲は1型単純ヘルペス、性器とその周囲は2型単純ヘルペスとされていましたが近年、オーラルセックスによって性器ヘルペスでも1型感染の割合が増加してきています。

昔のように、1型は口唇ヘルペス、2型は性器ヘルペスと分類することは出来なくなってきています。

【検査法】

通常用いられる補体結合反応や中和抗体検査等の血液で行う血清診断法では、幼少時に1型に感染している人は、陽性となってしまいますから、性器ヘルペスか否かの判断は出来ません。

初めて単純ヘルペスウイルスに感染した場合は、急性期と回復期のペア血清(2本の血清)で抗体検査を行い、有意の抗体上昇によって診断することが可能です。

単純ヘルペスウイルスは、同一個体において幼少期の1型感染、青年期以降の性器への1型及び、2型感染、再発による病変形成といった様々な病態を取り得るので、血液による抗体検査から1型感染2型感染の判断は出来ません。

従って、性行為やオーラルセックスの2~10日前後に以下のような症状があるときには、直ぐに皮膚科を受診することです。

・感染部位(ペニスや外陰部)に痛痒さを感じ患部が赤くなり、徐々に〝痒み〟や〝痛み〟が強くなります。

・男女とも患部に小さな水泡ができ、チクチクと痛みが伴います。

・水泡が破れると、ジクジクした状態になります

2012年3月11日日曜日

性行為感染症検査-6.梅毒血清検査法その8.新生児梅毒の梅毒検査-


梅毒に感染した母親から胎盤を経由して胎児に感染します。

先天性梅毒を防止するために産婦人科では、妊娠早期に母親の検査をしていますが、最近出産直後に産婦人科を訪れる母親が見られ、この場合梅毒検査をしていないことから、胎児に梅毒感染してしまう事例が見られます。

母親の治療をしていないと、胎児梅毒の場合は、流産、早産、死産の可能性が高くなります。

発症の時期によって、梅毒の症状を備えて生まれる胎児梅毒、生後1~2か月で発症する乳児梅毒、7~8歳頃に発症する晩発梅毒に分類されます。

新生児の梅毒検査を行う際に注意することは、TPHAやFTA-abs検査を実施しますと、実際は新生児に梅毒感染がなくても、母親由来のTP抗体で陽性となってしまいます。

実際に梅毒に感染しているか、母親由来のTP抗体による陽性反応かの判断をする場合は、IgM-FTA-abs検査を実施します。

1.TPHAやFTA-abs検査が陽性でIgM-FTA-abs検査が陰性の場合は、母親由来のTP抗体を検出していることから、梅毒の治療は必要ありません。

この場合のTPHAやFTA-abs検査の陽性反応は、3~6ケ月後に陰性化します。

2.TPHAやFTA-abs検査が陽性または陰性であっても、IgM-FTA-abs検査が陽性の場合は、新生児は梅毒に感染していることから、治療が必要となります。

この様にIgM-FTA-abs検査は、新生児の梅毒感染の早期判断に利用されています。

2012年2月26日日曜日

性行為感染症検査-6.梅毒血清検査法その6.梅毒検査法による梅毒診断法-


各種梅毒検査の結果から、その判定法を解説します。

一般的に梅毒検査法は、STSとTPHA及びFTA-absを組み合わせて検査しますが、今回はこれに早期に信頼出来る結果が得られるIgM-FTA-absを組み合わせて判定方法を以下に示します。


【梅毒血清検査法による梅毒診断法】


※クリックしますと表が拡大します※

2012年2月19日日曜日

性行為感染症検査-6.梅毒血清検査その5.IgM-FTA-abs検査-


FTA-abs検査は、IgG型のTP抗体を検出する検査法ですが、IgM-FTA-abs検査はIgM型のTP抗体を検出するための検査法です。

梅毒に感染した初期には、IgM抗体が先に出来て、その後IgG抗体が出来ます。

このIgM抗体は、梅毒に感染後1週間程度で身体中にできることから、IgM-FTA-abs検査は梅毒に感染後1週間で受ければ信頼出来る結果が得られます。

そのことからして、早く感染の診断を下したい時に利用される検査法です。

梅毒感染後早く陽性となる順番は、以下のとおりとなります。

1.IgM-FTA-abs検査

感染後1週間

2.FTA-abs検査

感染後3週間

3.STS検査(ガラス板法、RPR検査)

感染後4週間

4.TPHA検査

感染後5~6週間

2012年2月12日日曜日

性行為感染症検査-6.梅毒血清検査その4.FTA-abs検査-


FTA-abs検査(梅毒トレポネーマ蛍光抗体吸収検査:Fluorescent Treponemal Antibody-absorption Test)は、スライドグラスに梅毒病原体であるトレポネーマ・パリーダムの菌体成分を吸着させ、TP抗体を間接蛍光抗体法で検出する検査法です。

非病原性トレポネーマとの交差反応による偽陽性反応を防止する意味で、非病原性トレポネーマで患者血清を事前に吸収処理して検査することから、偽陽性反応の出現率が低いのが特徴です。

吸収処理した血清を、トレポネーマ・パリーダムを吸着処理したスライドグラスの上に滴下し、乾燥しないようにして37度で一定時間反応させた後、血清成分を洗い流し、クライドグラスに蛍光抗体をのせ再び37度で反応後、蛍光色素を洗い流した後に、蛍光顕微鏡で観察します。

1.陽性

血清中のTP抗体+梅毒トレポネーマの菌体成分+蛍光抗体色素=梅毒トレポネーマが蛍光を発する。

2.陰性

血清中にTP抗体が存在しないことから、蛍光抗体色素が梅毒トレポネーマに吸着しないことから梅毒トレポネーマは蛍光を発しない 

TPを利用するFAT-abs検査は、感染後3~4週後にTPHA検査より早く陽性となりことから、STS陽性、TPHA陰性の場合の梅毒鑑別に利用されます。

FTA-abs検査もTPHA検査同様、一旦陽性となると治療して梅毒が完治しても、一生涯陽性反応が続くことから、治療の判定には適さない検査法です。

2012年2月7日火曜日

性行為感染症検査-6.梅毒血清検査その3.イムノクロマト法TPHA検査-


代表的な迅速検査法のエスプラインTPについて解説します。

【測定原理】

酵素免疫測定法を測定原理としたイムノクロマト法による血清または血漿中のTP抗体検出用試薬です。

この検査法は、TPの主要抗原と考えられているTpN47とTp15-17の2種類のリコンビナント抗原を使用しています。

検体滴下部に滴下した血清または血漿中にTP抗体が存在すると、酵素標識抗原〔アルカリホスファターゼ(ALP)標識リコンビナント抗原(TpN47)およびアルカリホスファターゼ(ALP)標識リコンビナント抗原(Tp15-17)〕と反応した後、展開液によりメンブレン上を移動し、判定部に固定されたTP抗原と結合して、血清または血漿中のTP抗体を介した3者のサンドイッチ複合体を形成し青色のラインが出現します。

反応確認用のレファレンスラインは、メンブレン上のTP抗原と異なる位置(下流側)へ抗ALP抗体を固定化したもので、固定化TP抗原とのサンドイッチ複合体形成に関与しなかったALP標識抗原と結合し、標識抗原の酵素反応によりラインが出現を確認することにより、血清または血漿、標識抗原、基質の展開および酵素反応が正常に行われたことを確認できます。

【操作上の注意】

血清または血漿を滴下後15分で判定する。

15分を経過後に青色のラインが出現しても陽性と判定しない。

必ずレファレンスラインに青色のラインが出現していることを確認する、レファレンスラインに青色のラインが出現していないときは再度検査を実施する。

【 判定方法 】

シート上に出現する青色ラインの有無を肉眼で判定します。

反応過程は複雑ですが、原理自体はいたってシンプルな方法を用いているため、従来の方法に比べ短時間で結果が得られます。

【判定ラインの画像】

1.陰性の画像

青色のレファレンスラインが認められ、青色の判定ラインが認められなかった場合。



※レファレンスラインの画像は省略しています※

2.陽性の画像


青色のレファレンスラインが認められ、青色の判定ラインが2本または1本認められた場合。


※レファレンスラインの画像は省略しています※

【検査のデメリット】

1.肉眼で判定するため、判定者個人による判定誤差が見られる。

2.測定時間を厳守しないと、陰性、陽性の判定が異なることがある。

2012年2月1日水曜日

性行為感染症検査-6.梅毒血清検査その2.TPHA検査-


TPHA(Treponema Pallidum Hemagglutination Test)は、梅毒病原体である梅毒トレポネーマ・ハリーダム(以下TPと略します)の菌体成分を抗原として使用する検査方法です。

梅毒の病原体であるTPの菌体成分を吸着させたゼラチン粒子が、TPの感染抗体によりゼラチン粒子の凝集反応を起こす状態を見て判断します。

※発売当初は、TPの菌体成分をタンニン酸処理した羊の赤血球に吸着させたものでしたが、現在はゼラチン粒子に吸着させています。

梅毒検査にTPHAを採用することのメリットは、偽陽性反応を引き起こすことが極めて少ないことから本検査が陽性の場合は、ほぼ間違いなく梅毒と判断できます。

デメリットとしては、梅毒トレポネーマに感染しても、TPHAで陽性を示すのは、感染後5週以降であるために、早めに診断をしたいという場合には不向きです。

そのために、早い時期にTPHAだけで梅毒の診断をすると感染を見逃すことがあります。

また、一度梅毒トレポネーマに感染してTPHAが陽性となると、抗生物質で治療して完治しても、陽性反応はまず一生涯消えることがありません。

そのためTPHA検査のみを使用して、陽性と判定されても、梅毒は治癒しているにもかかわらず、再度治療するという誤った認識をしている医師も見られます。

※治療判定の際の検査方法については、別途紹介します※

【附 則】

近年採用された全自動検査機器を使用しての『TPLA』は、従来のTPHAに比べて1週間前後早く陽性になる傾向があります。

2012年1月25日水曜日

性行為感染症検査-6.梅毒血清検査その1.STS検査-


梅毒トレポネーマが、感染して生体の組織を破壊したときに血液中に出てくる脂質カルジオリピンに対する抗体を検出する検査法を総称してSTS(Serologic Test for Syphilis)と呼びます。

ガラス板法、RPRカード法があり、血液中に抗体がなければ陰性となりますが、抗体があった場合には陽性と判定され、梅毒に感染している可能性ありと判定されます。

1.ガラス板法

カルジオライピン・レシチン抗原で感作したコレステリン粒子と患者血清をガラス板上で混和し、凝集塊の有無を顕微鏡で観察する検査。

2.PRテスト(Rapid Plasma Reagin Test)

カルジオライピン・レシチン抗原を吸着させた炭素粒子と、患者血清とを混和してできる凝集塊の有無を肉眼で観察する検査。

これらSTSは、感度に優れ、比較的早期から陽性になる反面、梅毒に感染していなても陽性となる生物学的偽陽性(BFP:Biological False Positive reaction)には常に留意が必要です。

生物学的偽陽性反応は、肝疾患、ウイルス感染症、自己免疫疾患、妊娠などで非特異的に抗体が産生される結果、抗カルジオリピン抗体保有者となり、梅毒に感染していないにもかかわらず陽性反応を示すことがあります。

※また、全く健康な人でも検査のたびにSTSが常に陽性となる人も存在します。

従ってSTSが陽性となっても生物学的偽陽性反応の可能性があることから、すぐに梅毒に感染しているとは言えません。

※STSが陽性となれば、必ず梅毒トレポネーマを使用したTPHA FTA-absで検査をしてから梅毒感染の判断を行う必要があります。

【STS検査を受ける時期】

これらの検査は、梅毒に感染すると4週程度で陽性となることから、行為から30日で受ければ信頼できる結果が得られます。

2012年1月19日木曜日

性行為感染症検査-5.咽頭淋菌検査-


淋菌が咽頭に感染することがありますが、性器に感染したときに比べて症状がほとんどでないことから、感染に気づく人は非常に少ないのが現実です。

仮に感染があっても喉の違和感、軽い咳など咽頭炎の症状しか出ませんので、耳鼻咽喉科を受診しても淋菌に感染す可能性のある行為をしたと医師に申告しないと単なる咽頭炎と診断されて、淋菌感染を見逃すことになります。

咽頭の淋菌感染の検査は非常に難しいことを解説しておきます。

口腔内には非病原性菌の常在菌であるナイセリア属が、わかっているだけで11種も存在しています。

病原性のある淋菌も実はこのナイセリア属です。

淋菌咽頭感染検査には、PCR法は使用できない!!

遺伝子増幅法であるPCR法はナイセリア属と交差反応を示すため、このナイセリア属の細菌を淋菌と間違えて検出してしまい、淋菌に感染していなくても陽性となってしまいます。

いわゆる"偽陽性反応"が起こるわけです、そのために淋菌の性器感染検査に使用される遺伝子増幅法であるPCR法は咽頭感染の検査には適していません。

それでは、淋菌の咽頭感染検査にはどの様なものがあるのでしょうか?

咽頭淋菌感染の検査は、ナイセリア属と交差反応をしめさないSDA法(Strand Displacement Amplification)または、TMA法(Transcription Mediated Amplificatio)による検査を行います。

咽頭に淋菌が感染しているかどうか、SDA法やTMA法検査を受けてないと分かりません。

淋菌に感染している不安があれば検査を受けてみてください。

自覚症状がなくても感染するリスクのある行為をした場合は、必ず検査を受けることです。

2012年1月15日日曜日

性行為感染症検査-4.性器感染の淋菌検査-


淋病は淋菌によって引き起こされる性行為感染症のひとつです。

淋病の症状

男 性

尿道内に感染して増殖し、尿道炎症状を引き起こします。

典型的な症状としては、感染後2~7日後に、灼熱感を伴う排尿痛があり、尿道口より膿が出ます。

しかし、排尿痛のみや尿道から少の膿しか出なかったり、全く症状の出ない場合もあります。

女 性
 
尿道に感染することは殆ど無く、膣から子宮頚管におよび子宮頚管炎を引き起こします。

症状としては、オリモノの増加、膿の混ざった悪臭のあるオリモノなどですが男性に比べ症状が少なく感染に気づく人は少ないのが実情です。

80%以上が無症状です。

感染に気づくことなく放置していますと、子宮頚管から上行性に子宮、卵管を経由して腹腔内へ感染が進みます。

淋菌の感染率は、1回の性行為で低くて30%高い場合は80%です。

検査法

男性の場合は尿や性器からの分泌物(膿)を採取し、女性の場合には膣の分泌物を採取し検査します。

1.顕微鏡検査

検査物をグラム染色して、顕微鏡で淋菌の有無を検査。

非常に簡単な検査ですが、検査物に淋菌が少ない場合には、感染していても陰性となってしまう欠点があります。

2.淋菌培養検査

検査物から淋菌を採取して培養し、増殖させて光学顕微鏡で調べる。

淋菌の生命力が非常に弱いことから、検査物採取から時間が経過しますと、淋菌が死滅して感染していても陰性となることから、この検査法はあまり利用されていません。

3.核酸増幅検査法

1)PCR(Polymer Chain Reaction)法

淋菌のDNAを化学的に増幅させて検査する方法です。

非常に感度がよく優れた検査法です。

2)SDA(Strand Displacement Amplification)法

PCR法とは検査の原理が異なりますが、核酸増幅検査のひとつです。

この検査方法は、クラミジア感染症と淋菌感染症の同時検査ができることと、検査の感度、精度もPCR法と同等かそれ以上ある優れた検査法です。

3)TMA(Transcription Mediated Amplification)法

SDA法同様、クラミジア感染症と淋菌感染症が同時に検査出来ます。

2012年1月11日水曜日

性行為感染症検査-3.咽頭クラミジア検査-


咽頭クラミジアは、クラミジア・トラコマチスが喉に感染して起こる性行為感染症のひとつです。

感染経路は、キスやオーラルセックスで感染します、また性器に感染したクラミジアが喉へ感染することもあります。

咽頭クラミジアの症状は、殆ど無くあっても風邪の症状に似た症状あるいは軽い咽頭炎を起こす程度ですから大多数の人が感染しても分からないのが現実です。

症状が咽頭炎や扁桃腺炎などに似ているために内科や耳鼻咽喉科を受診しても、診察した医師がクラミジア感染に気づくことは殆ど無く、単なる細菌感染による症状と診断して、セフェム系の抗生物質を処方されて、服用することによりその抗生物質が効けばこれらの症状は改善され治癒してしまいますので、クラミジア感染があったとは夢にも思わないのが実情です。

咽頭クラミジアの検査は、喉の奥をスワブという綿棒で拭って検査する方法(ぬぐい液法)と口腔内のうがい液(うがい液法)を検体として核酸増幅法(PCR法)と呼ばれる検査方法で調べます。

咽頭クラミジア検査では、うがい液を使用した検査の方が検出率が良いことから、最近ではうがい液による検査が多く採用されています。

ディープキスやオーラルセックスを行い、数日後に喉に違和感があれば、直ぐに受診する必要があります。

しかし、現実は感染してもまず自覚症状がないことから、極端な話し、一度でもディープキスやオーラルセックスをした経験のある人ならクラミジアに感染している可能性は〝ゼロ〟ではなく、知らず知らずのうちに感染している可能性があるので、特に風俗店を利用したことがある、不特定多数の異性とディープキスやオーラルセックスの経験のある人は、一度、しっかりと咽頭クラミジア検査を受けることを強くお勧めします。

咽頭クラミジア検査は、耳鼻咽喉科の取り扱いとなりますが、すべての耳鼻咽喉科で検査を実施しているとは限りませんので、事前に問い合わせることをお勧めます、また最近では泌尿器科や性病科でも検査を実施している所が多くなってきています。

2012年1月8日日曜日

性行為感染症検査-2.性器クラミジア検査-


性器クラミジア感染症は、クラミジア・トラコマチスによって引き起こされる性行為感染症のひとつです。

男性の性器クラミジア感染症は、尿道に軽い炎症を引き起こし、排尿時に尿道が僅かに痛んだり、尿道から濃い分泌物が少し出ることから異常にに気づきますが、症状が軽い場合は、感染に気づくことはありません。

女性の場合は、全くといってよいくらい症状がなく、ほとんの人が感染に気づくことはありません。

仮に症状が出ても、わずかなおりものがや、不正子宮出血や下腹部痛が出る程度です。

男女とも多くの感染者が、感染に気づくことなく放置して、パートナーや第三者に感染させていることが危惧されています。

男性の検査法

早朝あるいは、排尿からかなり時間が経った後の排尿の最初の尿には、分泌物が多く含まれているのでこれを検査に使用します。

昔のようにペニスに綿棒を入れて検査をすることはありません。

尿でクラミジアの核酸増幅法(PCR法、およびLCR法)などの抗原検査法を行います。


女性の場合

子宮頸管から綿棒で組織の一部を拭い取り、その組織でクラミジアの核酸増幅法(PCR法、およびLCR法)などの抗原検査法を行います。

また、女性の場合は尿による検査は一般的には実施しません。

検査を受ける時期は、男女とも感染するリスクのある行為をした次の日から受けることができますが、余裕を持って1週間前後で受ければよいでしょう。。

※最近では、子宮頸部、尿道、肛門などを綿棒で軽くこすってその場でクラミジアを調べる迅速検査が多く利用されています。

※過去から現在までの間にクラミジアに感染したことがあるかどうかを血液で調べるクラミジア抗体検査もありますが、信頼性が低いことから検査を受ける価値はありません。

理由としては、血液でのクラミジアのIgG抗体とIgA抗体という2種類のクラミジア抗体を調べますが、過去の感染と現在の感染の区別化つきにくいことと、治療が完了してもIgG抗体だけでなくIgA抗体も陽性となることがあるために、感染中なのか治癒しているのは鑑別ができないからです。

2012年1月5日木曜日

性行為感染症検査-1.HPV検査-


HPV(ヒトパピローマウイルス)は、女性が生涯で50-80%が感染すると言われており、仮に感染しても、ほとんどが自覚症状もなく、生体の免疫力でHPVが体外へ排除されてしまうと言われており、ほんの一部の人がHPVを体内から排除できず、HPV感染が持続することで病気になります。

HPVが引き起こす病気としては、性器コンジローマ、子宮頸がん、腟がん、外陰がん、喉頭咽頭がん、肛門がん、陰茎がんなどがあります。

子宮頸がんの99%が、HPVの持続感染が原因でがんになると言われています。

HPVは、100種類を超える型に分類されており、子宮頸がん発生に関連するHPVは13種類(16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68)で、これらをハイリスク型と呼んでいます。

またコンジローマの原因となる2種類の型(6、11)も存在します。

HPV検査は、グループ検査と型判定検査の2種類があります。いずれの方法においても子宮頸腟部から細胞を採取して検査を行うものです。

次に、HPVが男性に及ぼす影響ですが、現時点ではHPVが男性に与える影響については、不明な点が多く、稀に高リスク型HPVが陰茎がんなどを引き起こすことがあります。

しかし、これは、子宮頚がんの発生に比べてはるかに低い頻度です。

男性の場合は、入浴の際に陰茎亀頭部周辺を綺麗に洗う事によって陰茎がん発生の予防が可能だからです。

男性がHPVに感染すると、HPVが尿道から前立腺内に侵入して留まり、精液の中に混じり排出されることがあるので、HPVの混ざった精液によってセックスパートナーへ感染する可能性も当然あります。

女性のHPV検査は、積極的に行われていますが、男性のHPV検査はあまり行われていません。

その理由としては、陰茎以外にも肛門周辺、肛門内、尿道口、陰茎亀頭部周辺にもHPVは存在するため検査範囲が広すぎるためです。

更に、HPVに感染しても症状が殆ど無いことからして、感染していても気づくことがないことから、積極的にHPV検査を受ける男性はほとんでいないようです。

1.グループ検査

子宮頸がんの発生に関連の深い13種類のHPV感染の有無を判定する方法で、13種の型のいずれかに感染していれば陽性となりますが、どの型に感染しているかを特定することはできません。

2.型判定検査は

どのHPV型に感染しているのかを調べる検査です。