血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2018年8月21日火曜日

消毒・殺菌・滅菌・除菌について-4.除菌・抗菌-

除菌・抗菌という言葉は専門用語ではなく、どの程度まで病原菌を駆除できるかという曖昧な意味合いを持つ言葉です。

1.除菌とは

除菌とは「増殖可能な菌を対象物から有効数減少させる」という意味で、洗剤や漂白剤など「雑貨品」の表示にも使える言葉です。

家庭用合成洗剤・石鹸の公正競争規約の中に、台所用洗剤のスポンジ除菌と、住居用洗剤、洗濯用洗剤の除菌表示のための統一基準が設けられています。

すべての菌を除去する・すべて駆逐すると思われがちですが、実際は消毒と除菌は同じ程度なのです。

したがって除菌よりも効果が高い場合は殺菌になります。

いくら除菌しても菌は生き残り、10分から数時間で2倍に増殖できるのが細菌で、90%の細菌を殺しても、1~10時間後には元に戻ってしまいます。

2.抗菌

抗菌とは、菌を殺したり減少させるのではなく、"菌の増殖を抑制、あるいは阻害する"という意味しかありません。

抗菌は菌の増殖を阻害するという意味で、除菌よりも弱い効果しかありません。

よく抗菌文具や抗菌スリッパという言葉を耳にしますが、これらには菌がいないのではなく、菌が繁殖しにくいというだけです。

近年、日本国内においては清潔志向や安全志向が高まり、それに伴い抗菌加工製品の市場は拡大しており、そもそも日本人は、他の国と比較して清潔・安全志向が高い傾向にあるのが事実です。

近年多くの感染症が報告され、細菌に対する不安感や恐怖心が急速に増大し、その結果細菌への防衛策として、抗菌加工を施した製品が市場で多く販売、消費されるようになってきています。

【おまけ】

抗菌という言葉は、近年新しく使われ出した言葉で、現在までのところ抗菌という言葉について法令や業界、また学術的にも共通の定義あるいは認識がされていません。

一部の関係業界団体では、それぞれ独自に抗菌に関する用語の定義を定めており、各関係業界団体における抗菌の定義は、概ね"細菌の増殖を抑制する"としているが、その内容の表現には若干の違いがみられるのが現状です。

2018年8月8日水曜日

消毒・殺菌・滅菌・除菌について-3.滅菌-

滅菌とは、すべての細菌を死滅させることを言います。

増殖性を持つあらゆる微生物(主に細菌類)を完全に殺す、又は除去する状態を実現するための作用・操作のことを言います。

対照物を限りなく無菌に近づけるために、国際的に採用されている現在の基準としては「滅菌操作後、100万個のうち1個の対象物に微生物が付着している確率」で滅菌できれば良いとされています。

【滅菌方法】

1.火炎滅菌

菌を直接、ガスバーナー等で焼く方法で、一般的には検査器具の滅菌に利用される。

2.乾熱滅菌

ガスまたは電気を利用した機器で、乾燥させたまま160~180℃くらいの熱で滅菌を行う。ガラスや金属製品、手術器具などの滅菌に利用される。

3.高圧蒸気滅菌

オートクレーブで2気圧の飽和水蒸気によって温度を121℃に上昇させ、20分間処理する。
培地、包帯、ガーゼなどの滅菌に利用される。

医療機関における器材の再使用のための蒸気滅菌の第一選択は高圧蒸気滅菌です。

この方法は短時間で滅菌出来ますが、高温高圧に耐えられない材質のものには利用できない。

4.ガンマ線滅菌

医療機器の製造工程において利用される。

ガンマ線は透過力が強いことから人畜にも危害が及ぶため、人が作業する場所で同時に滅菌を実施することはできない。

5.ガス滅菌

オートクレーブが使用できないプラスチック製品等にエチレンオキサイドガスを使用して滅菌を行い。

高熱に弱い素材のものにも適用できることと、筒状や複雑な形状である医療機器についてもエチレンオキサイドガスが浸透するため適用しやすい利点があるが、ガス毒性が強く残留ガスが人体等に悪影響を及ぼす可能性があることに注意が必要とされる。

滅菌は殆どの場合医療現場で行われ、日常生活で行われることはまずありません。

【まとめ】

滅菌とは第十四改正 日本薬局方によると物質中の全ての微生物を殺滅または除去することを言い、生存する微生物がゼロである状態を指します。