血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2015年9月24日木曜日

クレアチンキナーゼ(CK)

クレアチンキナーゼ(CK:Creatine Kinase)は、クレアチンホスホキナーゼ(CPK:Creatine PhosphoKinase)とも呼ばれます。

クレアチンキナーゼは、本来筋肉の中にある酵素です。

クレアチンキナーゼの値が高いことは、筋肉の細胞が壊れたことを意味します。


【検査の目的】

1.神経や筋疾患、心疾患を疑うときや、その経過観察。

2.脳の損傷が疑われるときや、その経過観察。

【クレアチンキナーゼの種類】

クレアチンキナーゼには、アイソザイムと呼ばれる筋肉型(CK-MM)、心筋型(CK-MB)、脳型(CK-BB) の3種類が存在します。

正常な状態では、大部分のクレアチンキナーゼが筋肉に由来していますので、筋肉型(CK-MM)が90%で脳型(CK-BB)は殆ど見られません。

心筋型(CK-MB)は、心筋梗塞の時に限り上昇してきます。

従って通常の血液検査で検査されるのは、総クレアチンキナーゼ活性値です。

1.筋肉型(CK-MM)

骨格筋に多く含まれ、筋性疾患(筋ジストロフィー・多発性筋炎・皮膚筋炎 など)や甲状腺機能低下症などで高値となります。

2.心筋型(CK-MB)

心筋に多く含まれ、心疾患(心筋梗塞・心筋炎 など)で高値となります。

3.脳型(CK-BB)

脳、子宮、腸管に多く含まれ、脳疾患(脳血管障害・脳外傷 など)や悪性腫瘍 などで高値となります。

【CK-MBと心筋梗塞の関係】

CK-MBは心筋に多く含まれることから、心筋梗塞の診断や病態の把握のためにCK-MBを直接検査することがあります。

【クレアチンキナーゼの生理的変動】

男性の方が、女性よりも20~30%程高値を示しますが、これは男性の方が、女性よりも筋肉量が多いことに由来します。

女性の場合は、朝から夕方にかけて数値が上昇しやすく、妊娠後期と出産前後にやや高めになる傾向があります。

激しい運動後や肉体労働、筋肉注射後は筋肉が損傷を受けることがあるため、高値を示す場合があります。

また子どもの場合、採血前に大泣きすることによって高値を示すことがあります。

筋肉注射でも値は上昇します。

【参考基準値】
 
男性 50~250IU/l

女性 45~210IU/l

※基準値は施設ごとで異なる場合があります※

【高値示す場合】

・外傷、筋ジストロフィー、多発性筋炎、皮膚筋炎などの骨格筋疾患

・心筋梗塞、心筋炎、心膜炎などの心疾患

・てんかんなどの神経筋疾患

・胃がん、大腸がん、肺がん、前立腺がんなどの悪性腫瘍

・脳梗塞

・甲状腺機能低下症

【低い値を示す場合】

・甲状腺機能亢進症、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、シェーグレン症候群、妊娠、長期間寝込んだ場合(長期臥床)など。

【検査時の注意】

筋肉運動をすると筋肉からクレアチンキナーゼが血液中に漏れ出て上昇し、24時間前後でピークとなり、3~4日かけて元に戻ります。

したがって、検査を受けるときは、4日前ごろから激しい運動は控える必要があります。

検査当日の食事は普通にとって何の問題もありません。

2015年9月7日月曜日

ヘリコバクター・ピロリの検査-5.迅速ウレアーゼ検査-

ヒトの組織中にはウレアーゼは存在しませんが、ヘリコバクター・ピロリは非常に強いウレアーゼ活性を有しています。

この検査キットは、この特徴を利用したヘリコバクター・ピロリの検出用試薬であるピロリテック テスト キットについて解説します。

【検査目的】

胃カメラ等で採取した胃生検組織中のヘリコバクターピロリの検出。

【特徴】

1枚の検査パットで3部位まで同時検査が可能であることから部位別にも判定可能。

陽性の約90%はおよそ20分で、残りは60分までに判定が可能。

【検査原理】

試薬中の尿素が、ヘリコバクター・ピロリ菌体中のウレアーゼにより加水分解されてアンモニアを生じます。

アンモニアが生じるとpHが上昇し、pH指示薬であるブロムフェノールブルーの色調を黄色から青色に変化させることから、その色調の変化を判定することにより、ヘリコバクター・ピロリを迅速に検出できます。

ヘリコバクター・ピロリ菌体中のウレアーゼ

(NH2)2CO+H2O        →         2NH3+CO2

【検査の注意】

コロニーが形成されていない組織を検査した場合、偽陰性反応が起こることがあります。

【検査方法】

1.反応パッド上の陽性コントロールに赤色スポットがあることを確認。

2.試薬ストリップが内側を向くようにミシン目を折り曲げる。

3.湿潤試液4滴を、基質パッド全体が均一にしみわたるように滴下。

4.清潔な木製スティックなどで、生検組織を鉗子から直接反応パッド
上(上下各7mm内側)に押し出す。

5.試薬ストリップを折り曲げ、基質パッドを生検組織の上に重ね、黄色
の面を表にして反応ポーチの底まで差し込む。

6.反応パッド(黄色部分)上の色調変化を60分以内に観察。

【判定の注意】

60分を経過して出現する発色は無視して判定しない。

※偽陽性反応の可能性が高い※

【判定】

陽性・・・・60分以内に陽性コントロールの青色と同じ色調のスポットが出現。

陰性・・・・60分以内に陽性コントロールの青色と同じ色調のスポットが出現。

判定保留・・60分以内に陽性コントロールに青色の色調のスポットが出現しない。

【感度と特異度】

感度 97.%

特異度 97.4% 

一致率 97.3%

【検査の利用方法】

ヘリコバクター・ピロリの感染判断には利用可能ですが、除菌後検査には適して
いません。