血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2014年5月21日水曜日

もっと知ろうHIV検査-2.NAT検査-

【NAT検査とは】

核酸増幅検査(Nucleic Acids Amplification test)のことです。

この検査は、ウイルスを構成する核酸(DNAまたはRNA)の一部を約1億倍に増幅(数を増やす)し検査を行うことから非常に感度と特異性が高く、ウインドウ・ピリオドの短縮を可能にします。

NAT検査は、日本赤十字社の血液センター専用の検査方法で、医療機関や保健所で受けることは出来ません。

血液センターでは1999年からNAT検査を導入しています。

また、この検査は、HIV、HBV、HCVのウイルスを同時に検出することが出来ます。

従ってNAT検査が陽性になるとHIV、HBV、HCVのそれぞれの個別NAT検査を実施してどれが陽性かを鑑別する必要があります。

現在のNAT検査は、HIV-2の検出も可能となっています。

NAT検査は、導入当初からプール法で検査されていましたが、プールすることにより検出感度が低下し、見逃しが発生したことから2014年8月をめどにプール法をやめてひとりひとり検査する1本法に変更する予定です。

NAT検査のウインドウ・ピリオドは、11日と考えられています。

【一言】

※一般的にリアルタイムPCR検査を含めて、NAT検査と総称していますが、NAT検査は血液センター専用の検査法で、リアルタイムPCR検査は医療機関と検査会社専用の検査法で、全く別の検査法です。

NAT検査という呼び方が一般的なっていることから、便宜上HIVのPCR検査をNAT検査と呼んでいるだけです。

【注意】

HIV-1とHIV-2が早い時期に高感度で検出できるからといって、検査目的の献血は絶対にしてはなりません。

HIVの感染を調べる場合は、保健所又は医療機関で受けて下さい。

NAT検査は、検査専門の会社に検査を依頼しますから、どこの病院、クリニックでも受けることは出来ます。

2014年5月13日火曜日

もっと知ろうHIV検査-1.HIV Ag/Ab検査とは何??-

HIV検査を受けて、検査成績書にHIV Ag/Abと記載されていることがありますが、これはどのような検査法なのでしょうか?

Ag(Antigen)は抗原、Ab(Antibody)は抗体の意味です。

従ってHIV Ag/Ab検査とは、HIV抗原抗体検査ということになります。

【HIV Ag/Ab検査は何を見つけることが出来るのか】

・不安な行為から30~50日前後で受けることによってHIV-1の抗原であるp24を検出できます。

・不安な行為から12週以降に受けることによって、HIV-1とHIV-2の抗体を検出できます。

【受けるときの注意】

・不安な行為から30日以前に受けると、いくらHIVに感染していても血液中のHIV-1の抗原であるp24の量が少ないことから見逃し偽陰性となります。

・不安な行為から50日を超えると血液中ののHIV-1の抗原であるp24の量が少なくなっていくことから見逃し偽陰性となる確率が高くなります。

・不安な行為から12週経過しないと検査で見つかるHIV-1とHIV-2の抗体の量が少く、偽陰性となります。

【HIV Ag/Ab検査の種類】

日本では数社から販売されています。

検査方法関しては、エンザイムイムノアッセイ法、エライサ法による検査とイムノクロマト法による迅速抗原抗体検査があります。

※イムノクロマト法による迅速抗原抗体検査は、日本においては"エスプライン HIV Ag/Ab"の一つしかありません※

【偽陽性反応の起こる頻度】

・エライサ法・・・・0.3%前後

・迅速抗原抗体検査・・・・3%前後

【正しく受けるためには】

・HIV-1の抗原であるp24を見つけるためには、不安な行為から30日で受けるのが最善。

・HIV-1とHIV-2の抗体を見つけるためには、不安な行為から12週で受ける必要があります。

【結果の解釈】

1)不安な行為から30日で陽性・・・HIV-1の感染の疑い

2)不安な行為から12週で陽性・・・HIV-1又はHIV-2の感染の疑い

※どちらに感染しているかは、再度HIV-1とHIV-2の検査を個別に実施する必要があります※

3)不安な行為から12週で陰性・・・HIV-1とHIV-2共に感染は否定。

4)不安な行為から30日で陰性・・・HIV-1の感染は否定できるが、HIV-2の感染は否定できていないので、12週で陰性を確認する必要があります。

2014年5月7日水曜日

血圧-6.家庭での血圧測定-

今やほとんどの家庭で家庭用血圧計を保有していると思います。

家庭用血圧計での血圧測定において、誤った測定をすると本来高血圧であるにもかかわらず正常となったり、正常であるにもかかわらず高血圧となってしまうことがあります。

【家庭用血圧計での測定値】

一般に家庭での測定値は、病院よりも低めになります。

「収縮期血圧が135mmHg以上、かつ拡張期血圧が85mmHg以上」を高血圧の目安とします。

家庭血圧による基準は、受診のための参考にするものですから、測定結果を自己判断して一喜一憂するのでなく、この数値に近い場合には早めに受診して下さい。

【何故家庭血圧測定が必要なのか?】

日々時間を決めて同じ条件で、また安定した状態で測定できるので、より正確で詳細な血圧を知ることが出来るようになります。

【家庭血圧の正しい測定方法】

日本高血圧学会のガイドラインでは、次のような方法が推奨されています。

1. 測定する位置

心臓の高さに近い上腕部での測定値が、最も安定しています。

2. 測定時の条件

朝:起床後1時間以内、排尿後、朝の服薬前、座った姿勢で5分間分間安静にした後に測定する。

夜:就床前(飲酒や入浴の後)、座った姿勢で5分間安静にした後測定する。

歩いた後、飲食の後、入浴後などは血圧は上昇しますから、血圧測定時には椅子などに腰掛け、体の力を抜いて5分間安静にしてから測定します。

3. 測定回数

朝夜各1回以上。

医師の指示によっては複数回測定し、平均値を記録することもあります。

※血圧測定はできるだけ長期間にわたり継続しておこない、毎日の測定値はすべて記録することです、数回の測の血圧値で一喜一憂してはいけません※

※血圧計によって測定方法が異なりますから、添付の使用説明書を熟読して正しい方法で測定する必要があります※

【仮面高血圧】

病院において測定した血圧値は正常血圧であるにも関わらず、家庭や職場で自分で測定した血圧値が高血圧となる状態。

家庭にある血圧計で測定すると血圧が高く出るにもかかわらず、病院などの診察室で測ると、正常な値となっていることがあります。

これは、診察室で測る血圧は正常なのに家庭で測る血圧が高く、診察室での測定だけでは高血圧であると分からない状態を、仮面をかぶったように本当の姿がかくされていることから「仮面高血圧」と呼びます。

白衣高血圧とは正反対の状態です。

※診察のときに測った血圧では高血圧と診断されなかった人でも、何回か家庭で血圧を測定した結果仮面高血圧であることが分かる場合があります※

【家庭用血圧計の選び方】

家庭用血圧計は、非常に多くの種類が販売されており、価格も高価なものから安価なものまで存在します。

自分が日々測定しやすい機器を店頭で自ら手にとって選ぶことが大切です。

性能は日本製であれば全く問題なく正確に測定できます。

価格も高くなればいろいろの機能が付加されていますが、自分が日々使いこなせる機能のみでよいと思います。

大切なことは、自分自身が使いやすい製品を選ぶことに尽きます。